居住地域と中学受験:サピックス考(7) 埼玉編:南浦和校以南に開校するなら?

二月の勝者ドラマ版最終回記念(便乗)エントリです(納期切らないと書かないので最終回前に公開)。

間違ってリクエストボタンを押してしまったのがきっかけでスペースに参加させていただいたりしましたが、当初2001年ネタなどオープニングは迷走気味でしただったもののドラマ版は中受クラスタ内では盛り上がりましたね。


ドラマは10回で一気に1年経ってしまいますが、リアル中受もこの2ヶ月で一気に本番が迫り、原作の年末年始を描く14巻では1話ごとに涙腺が緩む始末。


前回は大井町校もいっぱいになった話を書きましたが、その後、新1年生だけで見るとあいているところのほうが少なく、小受→SAPIX文学を爆誕させてしまいました。


埋まりっぷりで見ると、都心周辺以外では埼玉方面が激しいです。伝統ある南浦和校が新6年生以外埋まっているのを筆頭に、大宮校も新3年生まで一杯、都内でも埼玉に接する北区の王子校、練馬区の練馬校は全学年一杯。

サピックス南浦和校

まずはベンチマーク対象となる南浦和校の進学実績はこちら。

くりあげくん【2021年】サピックスの校舎別の合格実績「南浦和校」

開成が2020年7人→2021年4人など男子はちょっと苦戦した模様。いっぽう、女子は地元らしく浦和明の星女子中学校がトップなのに続き、豊島岡14、桜蔭5など善戦している印象です。いっぽう、この実績が浦和高校を筆頭とする公立王国埼玉の難しさを端的に示していると思います。埼玉県は中学受験の解禁が1月10日のため、2月解禁の東京・神奈川の受験生が前受けと呼ばれるお試し的な受験の対象にもなります。有名なところでは1万人以上受験する栄東(「えいとう」でなく「さかえひがし」)や、さいたまスーパーアリーナも会場の一つとなる開智など、東大合格者数20人くらいの上位校もあるのですが、難関校の実績をウリにするサピックスが実績を謳う学校は都内に集中しています。

中受は埼玉でもやはり都内が主体なことも含め、校舎の特徴はこちらの記事が参考になります。

思考力・記述力育成に重点を置き、浦和エリアから難関中学受験をサポートする/SAPIX小学部 南浦和校(埼玉県)

――「南浦和校」の概要についてご紹介ください。在籍する生徒数、クラス数などはいかがでしょう。

大津さん:「南浦和校」は「浦和」駅隣のJR「南浦和」駅の西口を出て徒歩約5分の場所にあります。現在ある48校の中でも初期に開校した校舎のひとつです。生徒数は「SAPIX小学部」のなかでは中規模くらいの校舎になります。

(中略)

――「南浦和校」の生徒はどの辺りから通われていますか?

大津さん:通塾エリアとしては近隣の方がほとんどで、周辺の公立小学校の生徒が多いですね。電車等を利用する場合でも通塾時間は30分程度の方が多いです。ただし、浦和エリアのアクセスの良さから、まれに遠方から通塾される方もいますね。

規模の大きい校舎に行った方が良いかと聞かれることもありますが、「ご自宅から一番近いところが一番良いですよ」とお答えしています。私も2児の父親なのですが、学校が終わった後に通うことを考えると、遠いところは子どもにとっても負担ですし、親としても心配ですよね。「SAPIX小学部」は全校舎でサービスの均一化に努めていますし、教材も同じものを使用しています。どの校舎で授業を受けても差はありませんので、まずは家から近い校舎を訪ねてみてください。

――「南浦和校」に通う生徒の進学希望先の傾向などはありますか?

公立の中高一貫校や国立の中学校に進学される方も一部いらっしゃいますが、南浦和校に入室を希望される生徒は受験をして私立中学校に進学したいという方がほとんどです。浦和エリアはアクセス性が高く、進学先の選択肢もさまざまですが、多くの方が都内の中学校を第一志望にされています。また、埼玉県内は入学試験の時期が少し早いこともあり、ほとんどの方が県内の学校を併願で受験します。

なるほど、埼玉随一の文教地区浦和にあるのはよいとして、大津さんがおっしゃるように新1年生から入るのでも厳しい状態で30分以上はキツいですね。となるとより都内の私立中にも近くなる荒川周辺エリアに新校舎を開校する可能性は検討すべきです(使命感)。マーケティング上、まずはニーズがあるかの検証から。

埼玉県の私立中学進学率

東京都内の私立中進学率は秋に出てくる東京都教育委員会の「公立学校統計調査報告書【進路状況調査編】」で中学受験率がわかるので、毎年記事になっています。

東京23区「私立中学進学率ランキング」…2021年、1~23位を発表

サピックス考シリーズが誕生したのも、この手データが千代田区の公立一貫校の九段中学を考慮していないことへの疑問からでした。

居住地域と中学受験:サピックス考(1)総論

それに対し、埼玉県はなんと市町村別の私立進学率のデータがないとのこと。


その後、埼玉県内で次はどこにサピックスが開校するかの話題が盛り上がったので、「スムログ向けに分析します」と宣言してしまったのがこのエントリの発端です(開校する前提?!)。



川口、戸田、和光あたりの名前が挙がっていましたが結果やいかに。

データ算出方法

埼玉県も、学校基本調査は公開しています。

これにより、市区町村単位で小学校、中学校それぞれの各学年人数はわかります。

公立小から公立中に進学する場合、基本的には同じ市町村の学校に通うので、令和元年度の小6と、令和2年度の中1の人数を比較しました。本当は最新のデータで比較したいのですが、令和3年度のデータは速報値のため男女の別など細かい数値が取れず一年遅れのデータとなっています。2表のみで算出するため、引っ越しなどの要素は無視しています。

令和元年度学校基本調査 統計表 4 小学校 第25表 市町村別学年別児童数

令和2年度学校基本調査 統計表 5 中学校 第35表 市町村別学校数・学級数・学年別生徒数

市区町村ごとの人数は公立以外(国立・私立)も含むので、個別に示されている数字を引いて公立間で比較しました。次でパーセンテージを算出しています。

(1-令和2年度公立中生徒数公立中進学数/令和元年公立小6年児童数)×100

さいたま市内の区ごとのデータ算出にもチャレンジしたのですが、転入や区外の学校に行くケースなどがあるようで小学校→中学校で増えるケースがあるなど正確性に欠けるため断念しました(浦和区が私立進学率29.4%など興味深い数値は出ています)。また、町村部も絶対数が少なすぎ一部マイナスになったりしており除いています(基本的にはランク外なのでえこちらも影響は少ないかと)。なお、このデータ上、県外の中学に進学した人数は725人と推定され、意外に少ない印象です。

ランキング発表の前に、県全体の数値は次のとおりで、この算出法でもまきしまさんの結果に近いことは確認できました。

全体 6.0%、男 5.9%、女 6.1%

ランキング発表

では上位ランキング、まず18位→11位。
順位 自治体 全体 人数
18 幸手市 5.5% 5.6% 5.4% 21
17 ふじみ野市 5.5% 7.1% 3.9% 56
16 白岡市 5.8% 4.1% 7.7% 24
15 富士見市 6.4% 6.8% 6.0% 59
14 吉川市 6.6% 7.8% 5.4% 51
13 三郷市 7.1% 6.8% 7.5% 83
12 八潮市 7.3% 8.7% 5.7% 54
11 新座市 7.4% 7.2% 7.5% 112
いかんせん母数が少ない(新座でも112人)ので、四捨五入で6%以上を入れましたがちょっと微妙ですが気にせず10位→4位。
順位 自治体 全体 人数
10 狭山市 8.0% 8.5% 7.4% 96
9 所沢市 8.0% 7.6% 8.4% 227
8 朝霞市 8.2% 8.9% 7.6% 103
7 本庄市 8.3% 6.9% 9.7% 52
6 さいたま市 8.6% 8.0% 9.2% 984
5 志木市 8.7% 8.8% 8.6% 54
4 川口市 8.8% 8.4% 9.2% 437
四捨五入で8%~9%のゾーン。さいたま市を全体にしたので千人近くと人数は多めですが、それより比率が多い川口は絶対数も多くやはり注目ですね。本庄、志木など私立中があるところは周囲のロケーションや絶対人数に対し進学率が高いようです。ではトップ3。
順位 自治体 全体 人数
3 戸田市 10.2% 10.2% 10.2% 135
2 和光市 11.5% 10.8% 12.4% 82
1 蕨市 11.9% 12.6% 11.2% 60
川口を抜き戸田、和光がトップ3、そして栄えある1位は日本で最も小さい市で、東京23区を除けば人口密度も最も高い蕨でした(でも60人…)。

冒頭で挙げた記事によれば東京は23位が江戸川区11.5%、22位足立区12.2%なので、やはり埼玉県が公立王国なことを実感させる結果でした。

結果を、白地図ぬりぬりで可視化してみました。四捨五入で赤12%、橙10%、黄9%、緑8%、水7%、青6%(埼玉県平均)です。

埼玉中受率ホットスポット

埼玉中受率ホットスポット


あらためて可視化すると、さいたま市内は不明ながらはやり都心方面に直結するエリアが明らかに高いことがはっきり見てとれますね。

開校場所予想

最高で12%いかないならサピックス新規校舎いらなくない?と思った方は中受の現状をまだご存じないと言えましょう。私も、子どもが小学校に入るまでは公立中でいいのでは?と思っていたクチです。


上の子(いわゆる「湾岸戦争」期生まれ)が新4年生でサピックスに入室以降、都心湾岸エリアの人口増に応じて増え続け、新4年生で入れたのは下の子(2021中受終了)までで、いまは新小1が初日30分で埋まる状況になっています。

冒頭で書いた王子校が満室なのは、南浦和校には遠い川口市、戸田市のお子さんが荒川を渡って通っているためもあると推測しています。玉突き的な影響か、埼玉県に接していない巣鴨校も全学年満室ですし。

和光は成増校が近く、蕨は南浦和に十分通塾可能なので除外。土地勘ないので変なところはご容赦ですが、駅ベースで予想してみました。

本命:川口駅 本当に住みやすい街、連続1位から2022もランキング2位の実力
対抗:戸田公園駅 王子校が満タンなので赤羽以北の埼京線沿線を総取りできて川口からのバス通塾も見込める(逆に、川口にできても戸田公園からもこられる?)
大穴:川口元郷 川口市内はもちろん、埼玉高速鉄道を一手に引き受け

と書いていて、まとめて赤羽でいいような気も…いやいや白金高輪校-白金台校並みに近くなっちゃうし。冒頭の”2001年”じゃないですが難解なパズル、そう2月本番受験パターンのような正解のない感じ。

荒川越えマンション事情

相方の距離感的にちょうどよいので戸田・川口付近はロードバイク朝活でよく走っています。


ピチピチのレーサージャージにビンディングシューズでMR訪問するわけにもいかないし、そもそも朝早くはMRやってないのでロードバイクで乗りつけはやっていません。埼玉の新築マンションはスムログ企画でプラウドタワー川口を見た以外に記憶がないので、周辺事情等含め完全に守備範囲外です。プラウドタワー川口も書いてないですがはるぶーさんのスムログ記事はこちら。

プラウドタワー川口のMR訪問

というわけで、素直にYahoo!不動産で見つかる、各市における現在の新築リストだけ載せておきます。蕨ははずしたつもりが、レーベン北戸田SOLIDのアドレスは蕨でした。上の予想では想定していませんでしたが、ほとんど埼玉高速鉄道または埼京線沿線で、リスト中唯一京浜東北線のプラウドタワー川口クロスが強気なのもわかるような。

川口市

プラウドタワー川口クロス JR京浜東北線 川口 徒歩3分

(仮称)イイな!BASE KAWAGUCHI JR武蔵野線・埼玉高速鉄道 東川口 徒歩1分

レーベン東川口 GRANDEST JR武蔵野線・埼玉高速鉄道 東川口 徒歩1分

デュオヒルズ東川口テラス JR武蔵野線・埼玉高速鉄道 東川口 徒歩8分

戸田市

オーベル戸田公園レジデンス JR埼京線 戸田公園 徒歩6分

パークホームズ戸田公園 JR埼京線 戸田公園 徒歩6分

プレシス戸田公園ソルティエ JR埼京線 戸田公園 徒歩8分

ジオ戸田公園 JR埼京線 戸田公園 徒歩9分

THEパームス戸田マスターグレイス JR埼京線 戸田 徒歩8分

蕨市

レーベン北戸田SOLID JR埼京線 北戸田 徒歩7分

「ここから親子ともに皆極まっていきます。打てる手は惜しみなくすべて打ちます」

二月の勝者 7巻 季節は6巻に続きまだ9月、席替えを意図的にするところで黒木校長が語るシーンです。7巻は女子回が多く、母親のプレッシャーがすごい今川さん、彼女にシャーペンを隠される山本さん、生成が落ちて悩む大内さんの女子バトルでトラブルが多く、黒木校長が化学反応を期待したじゅりまる(樹里&まるみ)の歩道橋「伸びしろしかないじゃん」「そっくりそのまま返すよ」の名シーンと続きます。
マンション探しも、幾多の極まるハードルを超えつつ、惜しみなく手を打っていくのは同じですね。


そして10月に入り、面談での黒木校長のセリフには力づけられます。

2月1日の本番その日まで、学力は伸びます…!!

ドラマ版二月の勝者最終回の展開は読めませんが、経験からも本番まで伸びるのは本当です。2022年組の皆さん、あと一息です!

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港区湾岸タワーマンションに在住の計算機技術者(でありたい)。 23区では同エリアしか居住経験がなく、いまも湾岸エリアで評判のMRは見に行っています。 自分の新築リノベーション経験を振り返りつつ、主に湾岸を中心に常に変化し続ける街の情報などを追うことで、次のリノベーションへのヒントを得ようという目論みです。

2 件のコメント

  • 通りがかり より:

    今回の記事大変興味深く拝見しました。
    埼玉県の中受率が公表されていない状況において、参考となる記事だと思います。
    但し、浦和区の私立中進学率を、都内平均や川崎市麻生区をも上回る29.4%と推定されているのは、かなり過大な数字なのではないか、と思います。
    というのは、ある程度浦和に地縁がある人間なら知っていることですが、浦和区については、区外(主に南区)の公立中が進学先となっている地域がかなり広く設定されているからです。
    高砂の全部、岸町の全部、仲町の一部、東高砂町の全部、東岸町の全部、東仲町の全部、本太の一部が該当のエリアとなっており、わかりやすくまとめると、浦和駅の中心エリアの住人は、浦和区外の公立中に進学します。
    したがって、今回計算結果として出された29.4%のうち相当な割合は、単に区外の公立中に進学したケースを私立中進学とカウントしてしまっているものと思われます。
    ご参考になれば幸いです。

    • タビー より:

      通りがかりさん、コメントありがとうございます。
      “29.4%”の件、結果の表に入れておらず「正確性に欠けるため断念しました」と書いたとおりです。
      「転入や区外の学校に行くケースがあるようで」という想像は間違っていなかったようですが、数値を出してしまうと独り歩きしがちですね。
      いただいたコメントは、これから記事を見られる方の参考になると思います。

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