「残債割れしないマンションを教えてください」
スムログ読者から、この種の相談を受けることは少なくない。
ところが検証すると、残債割れリスクは『物件』だけでは決まらなかった。
保有年数・頭金・ローン年数・金利を変えながら分析してみた。
見えてきたのは、購入時に自分で決められる「買い方」の重要性である。
立地や築年数、管理状態が重要であることは言うまでもない。
一方で、残債割れリスクという観点では、「どのように買うか」も無視できなかった。
残債割れとは、マンションの売却価格よりも住宅ローン残高の方が多い状態を指す。
特に近年はマンション価格の高騰が続いている。
「今は高値掴みではないか」
「数年後に暴落したらどうしよう」
「買い替えの時に身動きが取れなくなるのではないか」
そうした不安を抱く人が増えるのも無理はない。
目次
残債割れの本当のリスクとは何か
残債割れの怖さは、資産価値が下がることそのものではない。本当に困るのは、転勤や子どもの成長、親の介護などで住み替えが必要になったときに動けなくなることである。
売りたいのに売れない。
売れてもローンが残る。
結果として住まいに縛られてしまう。これが残債割れの本質的なリスクだ。
では、東京23区のマンションは実際にどれほど下落してきたのだろうか。
※出典:東日本不動産流通機構(REINS)「不動産市場動向(年度)」より筆者作成
東京23区の中古マンション価格は、リーマンショックや東日本大震災を経験しながらも長期的には上昇基調を維持してきた。
REINSの年度データ(東京23区の中古マンション成約㎡単価)によると、最も大きな前年比下落率は2011年度の▲4.7%だった。
もちろん、これは東京23区全体の平均値にすぎない。
それでも、「東京23区のマンションは簡単に半値になる」というイメージとは異なる。
それなのに、なぜ多くの人が残債割れを心配するのだろうか。
その答えは「どの物件を買うか」よりも「どのように買うか」にあるのではないかと考えた。
そこで、保有年数・頭金・ローン年数・金利を一つずつ変化させながら影響度を測る分析(感度解析)を行った。
残債割れを決めるのは何か
この分析では、条件を一つずつ変化させながら「何%の価格下落まで耐えられるのか(下落耐性)」を検証した。計算条件
一般的な一次取得者を想定し、以下の条件を基準ケースとした。- 購入価格:7,000万円
- 頭金:10%
- 借入額:6,300万円
- 金利:全期間固定1.5%
- ローン期間:35年
- 保有期間:10年
- 売却コスト:3.5%
保有年数は想像以上に重要だった
保有年数によって下落耐性は大きく変化する。
時間の経過とともにローン残高が減るため、価格下落に対する余裕も大きく広がっていく。
ただ、重要なのは「20年住めば安心」という話ではない。
本当にリスクが高いのは最初の5〜10年である。
転勤や介護、家族構成の変化などで住み替えが発生しやすい最初の5〜10年は、価格下落への耐性がまだ弱い。
頭金の効果も大きい
※頭金率とは、購入価格に占める頭金の割合のこと。
頭金を増やすほど下落耐性は高まる。
保有年数に次いで差が大きかったのが頭金だった。
フルローンが珍しくなくなった現在でも、頭金が残債割れリスクに与える影響は小さくない。
50年ローンが抱えるトレードオフ
ローン期間が長くなるほど下落耐性は低下する。
特に50年ローンでは、その傾向が顕著だった。
月々の返済額は軽くなるが、元本の減り方は遅くなるからだ。
返済負担を下げることと、残債割れリスクを下げることは別問題である。
金利の影響は意外と小さい
金利による差は約6ポイントにとどまった。
少なくともこの試算では、残債割れリスクという観点では、保有年数や頭金、ローン年数の方が影響は大きかった。
なお、この試算は固定金利を前提としている。変動金利では将来の金利上昇によって元本の減り方が変わる可能性がある点には注意が必要である。
特に金利上昇局面では、毎月返済していても元本が想定ほど減らず、今回の試算より残債割れしやすくなる可能性がある。
物件選びと買い方を分けて考える
この分析を始める前、私は「残債割れしないマンションを探したい」という相談に対して、まず立地や築年数の話になるのだろうと考えていた。実際、マンションの将来価値を左右する要素として、立地や駅距離、築年数、管理状態が重要であることは間違いない。
しかし、この分析で見えてきたのは少し違う景色だった。
残債割れリスクは、「どの物件を買うか」だけで決まるわけではない。
将来の価格を正確に予測することは難しい。
一方で、
- どれくらい住むつもりで買うか
- 頭金をいくら入れるか
- 何年ローンを組むか
分析結果を見ると、こうした要素が残債割れリスクに大きく影響していた。
最も差が大きかったのは保有年数である。
価格下落そのものはコントロールできない。しかし、価格下落に対する耐性を高めることはできる。
残債割れを恐れる人ほど、物件選びに意識が向きがちだ。
立地や築年数、管理状態が重要であることは言うまでもない。
ただ、分析結果を見る限り、「どのように買うか」も同じくらい重要なテーマと言えそうだ。
長く住む前提で購入する、頭金を増やす、ローン期間を短くする──分析結果を見る限り、こうした工夫は残債割れリスクの低減につながる。
もっとも、それぞれに家計とのバランスはある。
頭金を入れすぎれば手元資金は減るし、ローン期間を短くすれば毎月の返済負担は重くなる。
それでも、残債割れリスクへの備えとして重要なのは、将来の価格を当てにいくことよりも、自分でコントロールできる条件を整えることではないだろうか。
今回の分析から見えてきたのは、「値下がりしない物件」よりも、「値下がりしても耐えられる買い方」の重要性だった。
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