首都圏では、新築マンションも中古マンションも価格上昇が続いている。
「マンションを諦めた人は一戸建てへ流れているのではないか」と考え、データを集め始めた。ところが、調べるほど当初の仮説とは少し違う景色が見えてきた。
用いたのは、リクルート、不動産経済研究所、東日本不動産流通機構(REINS)の公表データである。
一戸建てを買った人は、マンションを比較しなくなっていた
最初に見たのは、リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向調査」である。
※調査対象は首都圏で新築分譲一戸建てを契約した世帯。
2014年には40.8%だった「集合住宅(マンション)も検討した人」は、2025年には28.8%まで低下した。「一戸建て住宅のみ検討した人」は59.1%から68.5%へ上昇している。
このグラフは予想と違っていた。
マンション価格が上がれば、マンションを比較検討した末に一戸建てを選ぶ人が増えていると思っていた。
データが示していたのは、私の想像とは少し違う姿だった。
一戸建てを購入した人は以前ほどマンションを比較していない。
この調査だけで理由までは分からない。
読み取れるのは、「マンションと一戸建てを比較した結果、一戸建てを選んだ人」が増えたというより、一戸建てを中心に住まい探しを進める人が増えているように見えることだ。
住まい探しの出発点そのものが、変わり始めているのかもしれない。
市場全体では何が起きているのか
市場全体にも目を向けてみる。
首都圏の新築マンション供給戸数は、2015年の40,449戸から2025年には21,962戸まで減少した。
中古一戸建ての成約件数は2025年に21,632件となり、前年比52.5%増となっている。
この数字は、そのまま受け取ることはできない。なぜならばREINSは2025年から成約登録の適正化を目的としたシステム改修を実施しており、成約件数にはその影響が含まれる可能性があると注記しているからだ。
したがって、この増加だけをもって、「マンションから一戸建てへ需要が移った」と結論付けることはできない。
それでも、一つだけ確かなことがある。新築マンションの供給は、この10年間で約半分まで減少した。住まい探しの前提条件そのものが変わりつつあることは、意識しておきたい。
データから見えてきたこと
この記事を書き始めたとき、知りたかったのは「マンションを諦めた人は一戸建てへ向かっているのか」ということだった。ところが、データを追っても、その仮説を裏付ける決定的な証拠は見つからなかった。
逆に印象に残ったのは、一戸建てを購入した人が以前ほどマンションを比較していないという変化である。
この変化が一時的なものなのか、それとも住まい探しそのものが変わり始めているのかは、もう少しデータを追う必要がある。
これから住まいを探す人は、最初からマンションだけに絞ってしまう必要はない。
例えば、予算6,000万円で探しているなら、一戸建ても検索条件に加えてみる。
同じ予算でも、広さ、立地、通勤時間、維持管理の考え方など、見えてくる選択肢は大きく変わる。
資産性や利便性を重視するならマンションが適している人もいる。広さや住環境を重視するなら戸建が合う人もいる。
大切なのは、最初に答えを決めてから住まい探しを始めないことである。
今回のデータが教えてくれたのは、「戸建が正解」ということではない。
マンションしか見なければ、一戸建てという選択肢は比較の対象にすらならない。今の市場では、それだけで選択肢を一つ失っている。
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