新築価格の上昇は、中古市場にどのように影響しているのか。
「新築が上がれば中古も上がる」と言われることは多い。しかし実際の市場を見ると、両者は単純に連動しているわけではない。価格の動き方も、スピードも違う。
そこで今回は、不動産経済研究所の新築データと、REINSの中古成約データを使いながら、東京23区のマンション市場を整理してみたい。
ポイントになるのは、「価格」だけではない。
中古市場では、価格より先に在庫が動いた局面もある。同じ「23区」でも、エリアごとの温度差は大きい。
まずは、新築と中古の価格推移を並べてみよう。
方向自体は似ている。細かく見ると、動き方にはかなり差がある。
新築と中古の価格差は広がっている
※REINSは23区平均単価を直接公表していないため、5エリア別データを成約件数加重平均し、独自に23区平均単価を集計している。
中古価格も上昇している。一方で、新築価格は月ごとの振れ幅が大きい。
新築平均価格は超高額物件の影響を受けやすく、単月で大きく跳ねることがある。2023年3月の急騰も、一部超高額案件の影響が含まれている。
「新築だけが一方的に上がっている」と単純化できるわけではない。
それでも足元では、新築と中古の距離感が以前より広がっているのは確かだ。「新築は難しいので中古へ」という話が珍しくなくなっているのも、その表れだろう。
では、その中古市場では何が起きていたのか。
価格の前に、在庫が動いた局面がある
中古マンション市場は、価格だけ追っていると少し分かりにくい。価格は基本的にゆっくり動く。個別交渉が中心のため、新築のように急には跳ねにくい。
市場の変化が先に出るのは、むしろ在庫の方だ。
コロナ前には2.3万件前後で推移していた中古在庫は、2020〜2021年にかけて急減した。その後はいったん回復するが、足元でも以前ほど潤沢な状態には戻っていない。
一方、中古価格はこの間も上昇基調が続いている。
在庫が動く理由は一つではない。低金利環境の長期化もあった。売り控えもあっただろう。新築価格の上昇を受けて「新築ではなく中古へ」という需要が流れ込んだ面もある。
少なくとも2020〜2021年の局面では、在庫の急減と価格上昇はほぼ同じタイミングで進んでいた。価格だけ見ていると変化を見落としやすい。在庫の動きを併せて見ると、市場の空気感が少し早めに見えてくる。
「23区平均」では見えない温度差
ここまで見てきたのは、東京23区全体の平均値である。エリア別に分けると、動き方はずいぶん異なる。
※今回は成約件数が比較的多い「都心3区・城東・城南」を掲載
特に目立つのは都心3区だ。
2010年代後半から差が生まれ始め、2020年代に入ると上昇ペースの違いはさらに鮮明になる。2025〜2026年には、都心3区の指数は2013年比で3倍を超える水準まで達している。
城東と城南も上昇基調ではあるものの、動きは都心3区ほど急ではない。もっとも、こちらも一様ではない。
城東は2020年代以降、比較的安定した上昇が続いている。城南は伸びが緩やかな時期もあるが、2024年以降は再び水準を切り上げてきた。
「23区で価格上昇」と言っても、その中身はかなり違う。都心3区のように高額取引層の影響を受けやすいエリアもあれば、実需中心に比較的滑らかに動くエリアもある。
「23区平均価格」だけで相場感を掴もうとするとズレる。新築価格の高騰も、中古市場へ一律に波及しているわけではなく、エリアごとにかなり異なる形で表れている。
「23区相場」は、一枚岩ではない
「23区中古マンション」と一括りにすると、相場は分かった気になりやすい。実際には、
- 新築だけ大きく跳ねる局面
- 在庫が急減する局面
- 都心だけ先に上がる局面
実需で物件を探していると、「価格が上がったか下がったか」が気になりやすい。今回のデータを見ると、それだけでは少し足りない。
- 在庫は減っているのか。
- 値動きが強いのはどのエリアか。
- 新築価格の高騰が、自分の検討エリアまで本当に波及しているのか。
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