マン点流!裏ワザ(リビングの日当り具合を知る方法)

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「メンバーへの質問やお便りコーナー」を通じて、スムログ読者からバルコニーの日差しへの影響に関する質問を頂戴した。

バルコニーの奥行に対して、リビングへの日差しがどのように影響するのか、簡便な計算方法を紹介しよう。

【もくじ】
読者からの質問
計算モデルの設定
太陽位置(高度・方位)の計算
「リビングへの射し込み長さ」の計算
計算結果
まとめ(バルコニーの有用性)
おまけ

 

読者からの質問

いつも楽しく拝見させていただいておりますせいじと申します。
この度マンションの購入の検討にあたり、スムログの皆様にひとつ質問がございます。

「バルコニーの奥行」ですが、確か2mまでは床面積に入らないと記憶しております。
ですが、バルコニーが2mもあると日当たりの方はどうなのかなと心配しております。

確かに広くて使いやすそうだし、夏は日を遮ってくれそうだけど、冬至のような太陽が低い時期はともかく、春や秋のやや高めの時期にはしっかりとした日照がとれるのかと心配です。

そこで「バルコニーの快適性」をテーマにメンバーの皆さんのご意見等がお聞きできればすごく参考になると思いメッセージさせていただきました。
ご検討よろしくお願いいたします。

計算モデルの設定

バルコニーの日差しへの影響を計算するためのモデルを次図のように設定した。

計算モデルの設定
各記号の意味は次のとおりである。
H:開口部高さ
h:太陽高度
D:バルコニーの奥行
L:日差しの長さ

太陽位置(高度・方位)の計算

日差しの計算をするためには、太陽の位置(高度・方位)を知る必要がある。

太陽の位置を調べるために、国立天文台が提供している「こよみの計算」サイトを利用する。

同サイトにアクセスすると、左サイドに「太陽の高度と方位」が表示されている(次図)。
太陽位置(高度・方位)の計算

「計算日時」と「計算地点」をプルダウンメニューで選択し、「オプション」メニューの「間隔と期間」で「1時間おきに1日」のボタンを押す。さらに、「太陽の高度と方位」の横にある「Go」のボタンを押すと1時間おきの太陽の高度と方位が表示される(次図)。


※方位は北を0°とし、東回りに測った角度。

ちなみに、「オプション」メニューの「アニメ」のチェックボックスにチェックを入れておくと、太陽位置の動きが分かるアニメーションも表示される(次図)。

(↓ 太陽が動き出すまで数秒かかる)

「リビングへの射し込み長さ」の計算

「太陽位置(高度h・方位α)」のデータが得られたら、冒頭の計算モデルで設定した「バルコニーの奥行D」、「開口部高さH」から、「日差しの長さL(=H×sin α’/tan h」を計算し、「リビングへの射し込み長さ(=L-D)」を求める。

バルコニーの奥行Dを2.0m開口部高さHを2.4mとした場合の、東京の冬至(17年12月22日)の南向きリビングへの射し込み長さを計算した結果(1時間ごと)を次表に示す。

次表から、たとえば12時のリビングへの射し込み長さ(バルコニーの奥行2mを引いた値)は2.0mであることが分かる。南向きリビングへの射し込み長さ

計算結果

上記の方法を用いて、バルコニー奥行が「2m」と「0m(バルコニーがない)」のケースそれぞれについて、東京の「南向きリビング」の夏至、冬至、春・秋分のリビングへの射し込み長さを計算した結果が次のグラフ。

夏至12時は、バルコニー奥行2mがあればリビングには日差しが入ってこないが、バルコニーがないと日差しが0.5m入ってくることが分かる。

冬至12時は、バルコニー奥行2mの射し込み長さ2.0mに対して、バルコニーがないと4.0mに倍増する。

春・秋分12時は、バルコニー奥行2mがあればリビングには日差しが入ってこないが、バルコニーがないと日差しが1.7m入ってくる。

南向きリビングへの射し込み長さ(東京)
早朝と夕刻にリビングへの射し込み長さが長くなる計算結果となっているが、実際には太陽高度が低い時間帯であるため、周辺建物に日射が遮られる可能性が高いことに要留意。

東京の南東向きリビングへの射し込み長さは次図のとおり。
午後は、ほとんど日は入ってこない。
南東向きリビングへの射し込み長さ(東京)

東京の南西向きリビング への射し込み長さは次図のとおり。
夏は西日が厳しそうだ。
もちろん午前中は、ほとんど日は入ってこない。
南西向きリビングへの射し込み長さ(東京)

まとめ(バルコニーの有用性)

奥行2mバルコニー付き南向きリビングの日照環境が優れていることが改めて確認できた。すなわち、冬は長時間日差しが得られる一方で、夏は日差しが入ってこない

特に、バルコニーの奥行が重要だ。バルコニーがないと、南向リビングといえども夏の直射にさらされる

バルコニーの奥行きは、経済合理性の観点からは、延べ床面積に算入されないぎりぎりの、2mの奥行きあるバルコニーを備えたマンションが望ましい

バルコニーのない「ダイレクトビュー」を売りにしているマンションもあるが、日照調整機能が劣るだけでなく、雨仕舞いの問題や防災面などの点でも不利だ。

バルコニーは火災時の避難経路にも使えるし、消防隊から救出するまでの待機スペースにもなり得る。また、万が一ガラスが飛散しても、階下の通行人を襲うことがない

また、奥行2mのバルコニーがあれば、椅子を置いて憩いの空間を創造したり、ベランダ・ガーデンを楽しんだりすることもできる。

筆者はこの春から、「マンションのバルコニーで水耕栽培に挑戦!」している(⇒試験栽培を終え、現在は栽培面積拡大中・・・)。

おまけ

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ABOUTこの記事をかいた人

一級建築士/マンションアナリスト/長寿ブロガー(19年超)

5 件のコメント

  • おさむ より:

    はじめまして。いつも楽しく拝読させて頂いています。

    今回の日差しの検証は、論理的で理解し易く有益な情報でした。いつもながら感心させられました。

    他のブロガーとは違った視点での記事を、また楽しみにしております。

  • 通りすがり より:

    最初の質問からずれた回答になっていませんか。
    「春や秋のやや高めの時期にはしっかりとした日照がとれるのかと心配」
    とあるように、夏至と冬至のことは分かっているんだと思います。

    質問者がいう「日照がとれる」とは何を指すのか具体的に不明ですが、
    室内にまで陽が入ってほしいのであれば、2メートルのベランダだと春と秋は日照はとれないとなり
    ベランダに日が当たればいいのであれば心配はいらないということになる。

  • 匿名 より:

    上の通りすがりさんへ、
    今回の記事でわかったことは、例えば南向きなら春分秋分で1.7mの日差しが入るということなので、
    1.5mバルコニーなら20cm日差しが入る、
    2mバルコニーなら30cm足りない、
    ということではないでしょうか。結論としてどっちもどっち(大差はない)と受け取りました。

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