お便り返しです。
差出人: ひろ
誰に答えて欲しいですか?
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いつも楽しく拝見させていただいております。
スムログで勉強させていただき、2019年末に中古マンションを買うことができました。
スムログメンバーの皆様の記事には背中を押していただきました。ありがとうございます。
その後私もマンション好きになってしまい、マンションを見るためだけに様々な場所を訪れるようになってしまいました(笑)。
質問なのですが、皆様の記事にでてくる「都心」、「近郊」、「郊外」という言葉がそれぞれどこを指しているかをお教えいただく存じます(ブロガー様によっても定義が違うと思いますので、これがわかると皆様の記事が更に楽しく読めると思い質問させていただきました)。
都心は、
①都心3区
②山手線の内側かつ中央線の南側
③都心6区
④東京15区
⑤山手線の内側
⑥23区
など様々な意見があるかと思います。
ここまでは確実に都心、ここらへんはグレーゾーン、ここからは明らかに近郊・郊外などの意見も記載していただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
実は、マンションマニア先生はすでに別の方の質問で近郊・郊外について回答済みですね。
都心
私はというと、マンションマニアさんと逆に「近郊」「郊外」はおそらくこれまでいずれの記事中でも触れていないと思います(笑)が、「都心」については、かなり前に都心×湾岸の流れで考察しました。
都心に住む最新号を確認しましたが、定義は次でこの15年間13区は固定のままですね。
「都心に住む」では、上で紹介している都心13区とその近隣エリアの一部の物件情報を掲載しています。江東区、墨田区、台東区、荒川区、北区は一部エリアが含まれます。詳細は都心エリアMAPをご覧ください。特集記事内の「都心14区」は、上記13区+江東区を指します。
江東区を地図には入れないまま、「都心14区」として別途に扱っているスタンスも変化なし。一部エリアが含まれる区まで入れると18区となり、これにも含まれない足立区、板橋区、江戸川区、葛飾区、練馬区(50音順)はもはや希少な存在です。
都心の重心が東京市15区時代からかなり西に偏っていることを示しており、現状の物件価格(全体にはあがっていますが…)からもこの線は大きくズレていないと思います。
これで終わるのもなんですので、近郊・郊外については中学受験にからめて考察しておきます(笑)。
近郊
「近郊」についてはマンションマニアさんの記事でほぼカバーされてしまっていますが、マンションを語る文脈ではあまり使いませんね。私にとっては、マンションマニアさん記事にあるJR「東京近郊区間」がしっくりきます。ただし、現在はたとえば伊東、松本、水上、日光などかなり広いので、1999年までの約70km圏(平塚、大月、小山、土浦、成田あたり)のイメージですね。いっぽう中学受験では近郊といえば社会の「近郊野菜」と決まっています(断言)。
令和元年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)
トップの北海道は当然として、2位鹿児島を3位茨城、4位千葉が追い、5位はふたたび九州・宮崎。上記リンクにあるとおり、平成25年までは2位茨城、3位千葉でした。いかに物流が進化しても、作物によっては東京に近いことが重要であることがわかります(茨城・千葉は野菜が多く、鹿児島・宮崎は畜産が多い)。
さらに以前は千葉が2位で、なんと千葉県としては2位復活を狙っています。
千葉県の農業産出額、18年も4位 2位復帰難しく
県は21年度までに2位に復帰する目標を掲げているが、台風・大雨が相次いだ19年も産出額が減少する公算が大きく「2位奪還は難しくなった」(県の担当者)との見方が出ている。
減少の詳細な理由は確認していませんが、茨城県、千葉県は人口が減少に転じており、農業の担い手が減っていると思われます。また、畜産は住環境との共存を考えると千葉・茨城では難しくなっているのかもしれません。
話をマンションに戻すと、千葉は後述の郊外に含まれるエリアも多くもともと一定のニーズがありますが、茨城はマンション不毛地帯でした。が、首都圏のマンション高騰化に伴い、つくばなどTX沿線はもちろん、パークホームズ土浦が最近話題になるなど、suumoに茨城県のマンション情報が増えていくのかもしれません。
郊外
人にもよるのでしょうが近郊が上記だとすると郊外は少し都心に近いイメージですね(もともとはお城の城壁の外の意)。マンションマニアさんと同じく鉄道で考えると、次の記事がイメージしやすいです。東京の鉄道、「都会」「郊外」の境目はこの駅だ
「郊外か否かは、マンション事業が可能なエリアか、難しいエリアかで判断できます」と、杉原氏は言う。たとえば、駅ごとに新築および中古のマンション供給量や取引価格を見ていくと、ある駅を境に傾向ががらりと変わる。つまりその駅が郊外分岐点ということになる。(略)
杉原氏が首都圏の主要13路線について、マンション市場の郊外分岐点の共通項を見たところ、都心からの絶対距離はおおむね25キロ前後、急行等の速達列車に乗って30分前後で都心駅に行ける距離だという。
こちらの分析だと、都心からの距離は25キロが目安で中央線は立川、京王線は聖蹟桜ヶ丘から先が郊外となっているのですが、現在の市況では国分寺・立川に駅直結でシティタワー国分寺ザ・ツイン、プラウドタワー立川がそれぞれ建ち、聖蹟桜ヶ丘はBrillia Tower 聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンスが話題となりました。小田急線は向ヶ丘遊園から先となっていますが、相模大野の伊勢丹跡地(仮称)相模大野四丁目計画が電気・ガス CO₂排出量実質ゼロのプレスリリースで話題になっているなど流れが変わるかも? 以下、「東横線に「郊外」はない」など興味深い話もありますがキリがないのでご興味あれば記事を参照ください。
中学受験では、郊外といえば社会の「ベッドタウン」「昼夜間人口比」「ドーナツ化現象と都心回帰」などが定番ですね。が、これだと当たり前で面白くいないので、理科の「ドラえもん問題」などで有名な麻布中の問題を。ちなみにドラえもん問題はこちら:
99年後に誕生する予定のネコ型ロボット「ドラえもん」。
この「ドラえもん」が優れた技術で作られていても、生物として認められることはありません。
それはなぜですか。理由を答えなさい。
ここでは、麻布中2017年社会を見てみます(以下、適宜引用)。
田園調布に住む「僕」が「父」の「二世帯住宅にしたいと思うんだ」という唐突な切り出しから、同潤会アパートの話をはさみ、「多摩のおばちゃん(おじいちゃんの妹)」の話題になります。
僕「そういえば、多摩のおばちゃんはなぜ多摩ニュータウンに住もうと思ったのかな?」
父「結婚して子どもが生まれた時にい、夫婦で話し合ってきめたそうだよ」
僕「どういうところに注目して決めたのかな?」
父「キ.1970年代、多摩ニュータウンは新しく作られたばかりの住宅地で、まだ土地の価格も安かったんだよ。都心の混雑したところより広くて、当時は子育て世代に人気があったんだって」
(実際には問題文が続く)
問7 太字部キについて。下の地図は、多摩ニュータウンができる前(地図3)と入居が進んだころ(地図4)のものです。この2枚の地図を比べて以下の問いに答えなさい。
(1)多摩ニュータウンではどのような地形のところに住宅がつくられましたか。
(2)9ページのグラフ2は多摩ニュータウンのある東京都多摩市の1980年のと2015年の5歳ごとの人口構成を表したものです。現在多摩ニュータウンに住む人びとは、(1)との関係で、どのような問題をかかえていると考えられますか。
聖蹟桜ヶ丘の話題も出したところで、なかなか考えさせられる問題ですね。
さらに問題は、ハワードの田園都市論から「青天を衝く」渋沢翁の田園都市株式会社の話をまじえつつようやくベッドタウンの話題に触れます。冒頭の都心推移の話とからんで、もともと田園調布はベッドタウンとしてつくられた郊外ですね。さらに田園調布が抱える固定資産税や、相続税が払えず土地分割に至るケースを述べることで冒頭の二世帯住宅の話に至ります(問8は田園都市憲章(1982年制定)を参照しつつ、憲章に定めた街の維持が難しくなっていることに関する問題)。
正直なところ、おとうさんが、僕がおとなになったときのことまで考えているとは思わなかったので、とまどった。(略)ケ.そういう時代に向けて、どういうふうに建築物を工夫したらいいのだろうか。とても難しい問題だ。このことは、僕の家族や街のことだけではなく、もっと広い視点で考えなければならないと思った。
問9 太字部ケについて。わたしたちは社会の変化に応じて建築物を工夫し、さまざまな問題を解決してきました。しかし、広い視野で見直すと、また別の問題が見えてきます。下の例から一つ選び、こうした工夫がどのような社会の問題を解決してきたかということと、見えてきた別の問題を、100字~120字で説明しなさい。ただし、句読点も1文字分とします。
例 防犯カメラ付き住宅 オール電化住宅 高層マンション
震災復興住宅 郊外の大型ショッピングセンター
マンクラの皆さん、「高層マンション」をお題に解いてみてください! 解答例はこちらにありますが、郊外の大型ショッピングセンターですね。
麻布の問題は後半記述の長さなどは特殊(全体で50分!)ですが、中受に親しみのない方には単に知識を詰め込むのでなく、社会問題を理解しないと解けないことが伝われば。受験生ガンバレ!
ひろさんのご質問からだいぶ逸脱した感もありますが、もしひとつでもご参考になれば。
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お便り返し その176「どこまで近郊?どこから郊外?」【マンションマニア】
湾岸考古学シリーズ:都心×湾岸の推移 前篇
湾岸考古学シリーズ:都心×湾岸の推移 後篇
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