第293回 「旧耐震マンションについて問われたとき」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

最近のこと、テレビの報道番組を見ていて気になるコメントに気付きました。それは、都心マンションで築40年超えのレトロな物件を買う人が多いというものです。どのくらいの数があるというコメントがなかったのは残念でしたが、一部の動きを指して言ったのでしょうか?

 

ただ、「大規模修繕をしてあるので、古いが綺麗で古さを感じさせないものもある」というコメントが気になり、しばらく目が釘付けになりました。

 

今日は、古いマンション、特に築40年を越えるマンションについて述べようと思います。

 

古いマンション売買が普通の時代が来るのか?

日本に分譲マンションという名の集合住宅が販売されたのは昭和35年が最初であったという記録が残っています。

 

当時の有名な物件は「四谷コーポラス」です。2019年に建て替え工事が終わっていますが、1956年に竣工したという記録があるので、解体工事が2016年とするなら、築60年で歴史を閉じたことになります。

 

古いマンションは建築法規も今とは異なりますし、100年耐久などの長寿命マンションは殆どなかったのですが、1983年以降の建築基準法改正で「耐震基準」が強化され、耐震性の高いマンションが当たり前になりました。

 

市場に分譲マンションが登場してから60年を経過していることが分かるのですが、新耐震マンションに限れば、まだ38年の歴史です。しかし、旧耐震マンションが普通であった時代は建築戸数も少なかったので、旧耐震より新耐震のマンションの数が多くなったのでしょう。

 

今後は、ますます「新耐震マンション」が旧耐震マンションを数的に圧倒することになりそうです。新築マンションの供給戸数が最近10年に限れば大幅に減っている昨今ですが、それでも、耐震性に問題ないマンションが当然の時代となっていると言えます。

 

旧耐震マンションの購入相談があると・・・

旧耐震マンションでも、計画時の設計家が安全率を高く取ろうとした例もあると聞きました。としたら、全てのマンションが問題ということではないはずです。

 

しかしながら、古いマンションには設計図書や構造計算書も残っていないことが多いらしく、数十年経て、図面上で強度を確認することは殆ど不可能になっているのです。

 

そのためもあって、筆者にもお答えのしようがないのですが、旧耐震マンションのご検討なさる人から、「耐震性はどうか」と問うて来ることがあって戸惑います。

 

東日本大震災の2011年、大半が大丈夫だった首都圏のマンションですから、「まあ大丈夫」と言いたくなりますが、「天災は忘れところにやって来る」と先人は言いました。 それに、宮城県・福島県などに比べると、東京は震度も小さかったため、被害も少なく、巨大地震の恐ろしさを体感した人はいないのです。

 

翻って、筆者は阪神大震災の発生当日に大阪市に滞在し、巨大地震の被害状況を目にした一人です。仕事で何度も関西を往復していた筆者は、震災前と震災後の姿を目に焼き付けています。

 

一方、東日本大震災の当日は東京在住でしたが、仙台に居住する妹二人から恐怖の叫びがリアルタイムで届き、電話ながら励ましたことが思い出されます。

 

こうした体験・経験から地震の恐怖と同時に鉄筋コンクリートの建物、なかでも比較的新しいマンションの安全性を確認して来た一人です。同時に、傾いたり、折れ曲がったりした旧耐震基準の古いマンションの姿も見てしまった一人なのです。

 

このような経験から、旧耐震マンションの購入相談に対しては、否応なくネガティブな答え、つまり、「お止めになった方がいい」と言わざるを得ないのです。

 

修繕工事によって見違えるほど綺麗になったマンションもあるが・・・

外見的には、古いマンションなのに想像以上にキレイだったし、価格も安いので、ぜひとも前向きに考えたいが、あと何年住めるだろうか、10年後に売ることは可能か・・・といったご相談が時おり届きます。

 

先述のように「天災は忘れたころにやって来る」のです。巨大地震は、50年に一度程度のことですが、長生きする人が増えたので、一生に2回の遭遇があるかもしれません。

 

震度5程度なら、今後もマンションは大丈夫と言えるでしょうが、震度6強・震度7クラスの巨大地震が来ないと誰が言い切れるでしょうか?

 

その意味で、外形的には美しくても「旧・耐震マンション」は避けるべきというほかないのです。

 

新耐震基準のマンションを検討するとき安全性は分かるの?

性善説ではありませんが、長く分譲マンションを建設販売して来たデベロッパーの新耐震マンションなら一応は大丈夫と言えるでしょう。

 

買い手個人では安全性を確認する術はないからですが、10年、20年と傾くことなく存在し続けているマンションは、それだけで安心と考えて良い。筆者はス答えます。

 

付け加えると、構造上の問題がある場合、傾きやひび割れという形で素人目に分かる現象が現れるものです。従って、少なくとも中古マンションで築10年近い年数が経過していれば、危険の臭いは確認できるはずです。

 

3年、5年程度では欠陥は露見しません。その意味もあって、筆者は中古マンションを検討するときは、築浅(ちくあさ)より10年経過の物件を勧めます。無論、10年未満の築浅マンションが危険という意味ではありません。

 

もうひとつ付け加えます。大手デベロッパーや大手企業傘下のデベロッパーが分譲した物件を選ぶようにした方が良いという点です。

 

最悪の場合は、建て替えという英断が期待できるからです。過去の例を見ても、建て替えが必要と判断して本当に建て替え工事を実行した大手デベロッパーもあったことはご記憶のことと思います。そのうちの3件の例は、いずれも築後10年未満でした。

 

要するに、建て替えをしなければならないほどの欠陥マンションは、10年足らずで、欠陥が露呈するものだと言えるのです。

 

上記の3例は、いぜれも200戸を超える大型マンションでしたから、建て替え工事費、居住者の仮住まい費用、3度の引っ越し費用、迷惑料といった費用が巨額に上ったことは想像に難くありません。それを負担できたのも、大手デベロッパーが分譲主だったからです。

 

老朽化した物件を買うときの覚悟は?

一般論として、築40年の古いマンションに長く住み続けることはできるのでしょうか?

 

「マンションというのは、手入れさえすれば何年でも住める」という声をときどき聞きます。また、「鉄筋コンクリートの建物で世界最古のアパートがフランスに現存するそうで、築100年を超える。そのくらいの実績はあるのだから、100年は持つだろう」と語る専門家もあるようです。

 

本当に、100年も住み続けることが可能なのでしょうか?

 

カギは、手入れにかかる費用にあるのです。老朽化が進むに連れて修繕費は嵩み、積立金不足に陥るのではないか? そうなれば、老朽化の進行を止めることができなくなって住みにくい状態になる。結局は放置されることになりかねないからです。

 

マンションは寿命が近づくに連れ、不具合があちらこちらで露呈します。排水不良や水勢の低下、壁面の劣化・タイルの剥離・崩落、サッシ周りに隙間が発生して風が入り込む、換気装置の機能不全などです。

 

とりわけ、コンクリートのひび割れが雨水の浸透を許し、鉄筋の錆び、そして膨張、爆裂といった症状を引き起こします。これらは、耐震性の劣化にも重なります。そして、雨漏り、結露、ジメジメ感といった住み心地を悪化させる現象が増えて来ます。

 

何十年も経つと、度重なる修繕に根本的な対策の必要度が増し、応急措置の繰り返しでは限界を思い知ることとなりそうです。

 

不具合があまりにも頻繁になると、修繕の意欲も薄れ、劣化した箇所を放置したまま、すなわちメンテナンス放棄という事態となるのです。管理費の滞納や修繕積立金の枯渇などが、これに拍車をかけます。

 

日常管理もおろそかになり、共用部分にゴミが溜まり、自転車置き場が雑然としたまま、壊れた機械式駐車場は使用不能、メールボックスの扉は半分開いたまま。エレベーター内部は傷だらけで汚れもひどい・・・このような古いマンションを筆者も何度か目にしました。

 

入居者の中には、あまりにも住み心地が悪いので、やがて賃貸するか売却して住み替える道を選ぶ人が出てきます。賃貸戸数が増えますが、賃料が高くないため、入居者の質が問題になったりします。それが更に住み心地を悪くさせます。

 

すべてのマンションがそうなるわけではありませんが、入居者が足並みを揃えて維持管理に関心を持ち、お金をかけて改修を適切に行ないながら、また管理規約をしっかり守って共同生活を営み、共用部分も我が家の一部としてみんなで慈しんで行けば、50年経ても快適な住まいであり続けることでしょう。

 

しかし、現実はそうならず、50年経つマンションはスラム一歩手前に陥る可能性が高いのです。そのような状態になったら売却金額もしれています。二束三文と覚悟した方がよいかもしれません。

 

マンションが分譲のカタチで登場してから50年を経過した今

50年前、筆者はマンション住まいではなかったですし、マンション業界に所属していたわけでもないので、当時の新築マンションがどのようなものであったかを正確に説明することはできません。

 

記録によれば、都心でマンションが分譲されると、社会のエリート層や海外生活経験者が購入して住んだそうです。

 

公団住宅や民間賃貸マンションなどに鉄筋コンクリートの集合住宅は既にありましたが、分譲は数が少なかった時代のこと、1956年には先述の「四谷コーポラス」が完工しました。

 

その後、「秀和レジデンス」というシリーズのマンションが一世を風靡したそうですが、こちらも分譲マンションの草分け的な存在で、今も都区内各地に多数見られます。

 

これらは築50年前後、四谷コーポラスは60年を超えました。それぞれの住人に取材をしたわけではないので確かなことは分かりませんが、現地を訪ねると、まだ十分住んでいけそうな気配です。

 

ただ、耐震性能がどうか、診断を受けたか、その結果はどうだったか、耐震補強工事を済ませたか、その費用はスムーズに捻出できたのか等々は不明です。疑問は尽きませんが、今も堂々とした構えを見せています。

 

秀和レジデンスは壁とバルコニーデザインに特徴があるので、それと直ぐ分かるのですが、外壁を最近に塗り直したらしいことも分かります。

 

ライオンスマンションも歴史の長いブランドなので、初期の物件はそろそろ50年が近付いているはずです。初期のマンションブーム時代、最も数多く分譲した業者は商社の日商岩井(現、双日)だったことが記録に残っています。初期は、不動産業者以外の参入が多かったのです。

 

ライオンズの大京(その頃は大京観光)も、別荘分譲が主力商品でマンションは多くなかったようです。

 

商社の中では日商岩井が際立っていましたが、伊藤忠、丸紅、蝶理、ニチメンといった総合商社が軒並みマンション分譲に参入した時代がありました。そして、その設計と施工を数多く担ったのが、長谷川工務店(現、長谷工コーポレーション)でした。

 

当時の長谷工設計・施工のマンションは、デザインもどれも同じで、個性のないものでした。長谷工自身も、自ら土地を買って盛んに分譲していました。この頃が、第二次マンションブームと呼ばれた時代で、マンション大衆化時代の本格的な到来だったのです。

 

最近、筆者に届くお便り(マンション評価サービスのご依頼)には、築40年~50年の物件が増えています。それだけ古いマンションが市場に数多く出始めていること、すなわち古いマンションが増えていることの表われと気付きます。

 

寿命の短い物件は不具合が頻繁に起きる?

最近の新築マンションは、高強度コンクリートを採用し、かつ耐久性の高い工法を用いて75~90年の耐久性を謳う物件が増えています。

 

これに対し、築30年以上の古いマンションの中には耐久性で劣るものが多く、メンテナンスを怠ると築後50年ほどで真剣に建て替えを検討しないといけない状態になってしまうと言われています。雨漏り、結露、タイルの剥離、給水の異常など、不具合が度々発生するためです。

 

築30年40年の古いマンションを買ってしまうと、そこから20年もしないうちに煩わしい問題を抱え込むことになるかもしれないのです。

 

購入を検討するときは、それまでの修繕履歴をチェックし、度々起きている問題がないか、どのような修繕工事を施して来たか、中でも排水管の洗浄や交換といった工事をしたことがあるかどうか、雨漏りがなかったかどうか、結露が出て売主や施工会社ともめたことはなかったかどうか等々の記録を見つけることが重要です。

 

素人では難しい点もあるので、建築士などの専門家に見てもらうことが必要になるかもしれません。

 

修繕積立金が枯渇していれば、新たに徴収するか、銀行から借入れて毎月の返済分を管理費の値上げで対応することになるかもしれません。古くて修繕費が少ないマンションは要注意です。

 

目安は、1軒当たり100万円以上の残高を持っているかです。大規模修繕工事を終わったばかりで3年経っていないマンションなら50万円以上といった額と覚えて置かれるといいようです。

 

総額で1億円あっても戸数が200戸あれば1軒当たり50万円です。50戸のマンションなら5000万円しかなくても1軒当たりにすれば100万円なのです。

 

賃貸住戸の比率が高いために管理状態が悪化する恐れも

最初は全戸が自己居住用であったマンションも、時間が経つと転勤その他の理由で転居する人が増えて行き、そのあとを売却するだけでなく、賃貸するオーナーも増えて行きます。

 

分譲マンションなのに賃貸マンションのようだ。そのような感想を述べるオーナーの多いのが、古いマンションの特徴です。

 

賃借人は、自分の家ではないので管理意識が高いとは言えません。モラルが低い住民の多いマンションは、整理・整頓・清掃が乱れて綺麗な状態を保つことが難しくなります。それがマンションの雰囲気を悪くしてしまったりもします。当然、価値が低下します。

 

更に、どこか遠くへ行ってしまったオーナーは、保有マンションの現状を見ていないため、管理に熱心になることはなさそうです。こうしたことが、メンテナンスの軽視と実施の遅れにつながり、マンションの寿命を一層短くしてしまう恐れがあるのです。

 

以上のような懸念があれば、古過ぎるマンションには、長く住めないかもしれない、そう覚悟して購入することが必要と言えるでしょう。

 

 

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