積立金の改定が総会で特別決議だって!?

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最近とあるマンションで、積立金の値上げを総会に上程したら、なぜか反対派の人が無数書き込んでいて匿名掲示板が大荒れだとかで、それを憂える住民の方からSNSで相談を受けました(マンション名は伏せます)

反対派が説明会の2回目に大挙して押し寄せて見ていて怖かったとか。
ポイントはいくつかあり、まとめると以下の感じ:

① 直前の総会で、積立金の改定に必要な総会の決議レベルが、全戸の3/4の特別決議から過半数の通常決議に代えてある。本来特別決議であるものを、二段階で気付かせずに外しているのは不適切だ
② 2回程度の説明会では十分に説明を尽くしたとはいえず拙速だ
③ 議論や説明が尽くされたとみなせるまで、マンションを2つに割ることは望ましくないから、現在上程中の総会での議案の採決は延期すべき
④ 委任状は賛成に使われてしまうから、無関心層の票を理事会が自由に使えるのは、反対する側から見て不公平だ

理事会の手腕凄そう

該当するマンションは、私の理事長の会には加入の理事の方はいませんが、総会への議決権参加率がいつも99%とかあるようで、凄い運営だなと注目していたところ。この割合は97-98%の私のマンションより上。世の中上には上がある、負けたっ・・・!!

総会への議決権参加率が非常に高い理事会が凡庸であるということはまずおこり得ません。実際に、機械式駐車場撤去やコンビニの無人化など定石ともいえる財務改善をこの組合が進めてきたことがネット上の情報からわかります。

理事会の手腕が凄いから従えというものでもないのは確かです。積立金をどう集めるかは、完全にそのマンションの自治範囲ですから、実際に総会をやってみていやずっと今もままで構わんという人が過半数なら外から部外者がどうのこうの言うものでもない。

ただ今回総会で否決したとして、2年後と7年後に誰かが元の予定通りの値上げを断行してくれますかねぇ・・・今の水準は激安レベルで、長期に放置されたらスラム化リスクが高い金額に見えます。

反対のためのいいがかりというか、いわれのない批判もあるかなと思うのです。今回は上の批判のうち①についてのみとりあげます

積立金改定が特別決議になる場合

特別決議は、全戸の3/4の賛成が必要。74%の賛成でも可決されないほどに高い賛成率で合意形成を目指せというもので、区分所有法が必ず3/4でやれとしているのは8つの場合に絞られます管理規約の改定、法人化、共用部の大きな変更、建て替え等のほか、規約の違反者への厳しい措置など。

国交省が規約の雛形として示す標準管理規約でも、特別決議となる範囲は、区分法による上記の強行規定と一致させて作られていて、それ以外は全て普通は単なる過半数決議です。管理会社の変更や、大規模修繕工事の実施が単なる過半数の典型例です。

過半数の人が「管理費を値下げ」したいと思っているのにできないのでは困りますよね。”上げる”場合も”下げる”場合も議決レベルは変更ですから全く同じです。下げるほうで考えれば過半数でできないのは非合理なことはすぐわかるんじゃないかなと。因みに私のマンションの管理費は過去10年で大きく下げたことが1回、細かく上げたことが3回です。

管理費や積立金(”管理費等”と呼ばれる)の改定は管理規約では通常決議の対象となっているのが普通です。
標準管理規約の48条では総会で決めろとしていて、直前の47条では3/4以上とはなっていないですから。通常マンションの規約は、これに準拠して作られていて、今回連絡を貰ったマンションの場合もそうでした。

一方で規約には全戸の専有面積比例での共有持ち分を定めるための、”別表”が必ずついています。ここに載せた図みたいなもの。



なんか横にあいたスペースがもったいないなで、この規約別表に、”管理費”や”積立金”の表をのっけてしまう売主さんが多い。これはやらかしてしまうととても困ったことになります。

規約の本文中には、変更は ”通常決議”だと書いてあるにも関わらず、この別表そもものは規約の一部ですから、規約の変更は”特別決議”ということになって変更のための議決レベルに、規約の内部的な矛盾を作ってしまっていることになります。
…例)全ての豚はうそつきであるとはるぶーは言った

いわば、原始規約に売主が初期設定で勝手に埋め込んだバグなわけですから、どっちか決まらないのでは困りますから修正するしかない。私は、管理費・積立金の上げたり下げたりする問題とは別に、規約の不整合は別途バグ修正として先行して是正して、管理費などの徴収表は明確に規約本体の一部ではないことを明確化することをお薦めしています。 

バグをとるのと、管理費・積立金を改定するのは、全く別のことですから、このマンションの場合でも、まず総会の決議レベルを明確化したことと、その後で積立金改定を提案したのは別の話ですから①の批判は当たっていないわけです。

うちの規約集の場合

うちの管理費・積立金の徴収表は、最初もっとすごくて、どこからも引用されることなく、初期設定だけであることを示す記載の日付けなどもなしに、規約集で規約本体のすぐ後ろのページに挟まれていて、その後に色の違う紙が挟まっていて、”細則等”とか書いてあって・・・細則の変更は通常決議・・・実際に細則がその後のページから始まっていました。

この表規約の一部に見えますよね?とか訊いたら、売主さん、売主系管理会社の人ともそうですねぇ・・・ とか。なまじなにも書いてないからもっと危険。ピシピシ打診棒で百叩きの刑にしたいところですが、そこはじっと耐えてさっさと直すことに。

変更するときに議決レベルが違う!とかで叱られても困るので、どこからも引用されていないのに規約本体にみえるところにおいてある表はその機会に撤去することに。

管理費とか積立金は、財務会計細則の別表というとこに式で定義して書いて、その細則および別表のおのおのに、この変更は総会の過半数決議で可能と明記しています。 戸別の徴収表というものは、そもそも作成するとミスがでやすいので、ないほうがいいよねで、その部屋の部屋番号と管理費・積立金が分る表は一切規約からはなくしてしまいました。(いくらだか分らんと一部で不評ですが、表にしなければ間違えようはない

今の規定だと、管理費は、
『1㎡あたり138円に、その月の消費税等の税率分を加えて、1円未満の端数は切捨て。
それにその部屋の、規約別表に書かれた専有面積を掛け算して再び1円未満の端数を切り捨てた金額』
とする式の計算結果がその月の管理費ですと細則別表のなかに書いてあります。当然単価変更というか138円の部分の変更は過半数決議で行うことを同じ細則中にさらに念のために明記してあります。

理事会としてどうすれば『安心』か

リスクの度合いは規約にどう書いてあるかにもよります。

管理規約本文に「修繕積立金の額は別表の通りとする」との記載がされていて、その別表に修繕積立金等の金額が記載されている場合、この別表は管理規約の一部とみなされることになるため、修繕積立金等の改定を行う場合は特別決議が多分必要です。

これに対し、「修繕積立金の額は別に定める」という表記の場合は、管理規約とは別という扱いになるため、普通決議で大丈夫ということになります。表のまんまどこかに残す場合にはこっちのほうがスマートです。表のほうには、「○○年○○月○○日現在、管理費等一覧表」なんて名前をつけて数字が恒久的なものではないことも明確化できます。

この規約での議決レベルの不整合の除去は、管理費や積立金の金額設定とは無関係な規約の内部的なバグの除去にすぎないので先に済ませておくのは常識ですし、規約をメンテする人の義務のようなものです。

くだんのマンションでの理事会批判については、ちょっと思うことはほかにもいくつかあるのですが、次のブログで。

総会の決議レベルの参考記事・判例

この手のぎりぎりの話は、実際の判例を研究した上で、その判決の”射程範囲”をじっくり研究して、そのマンションの場合に適用できるかどうかを、”そのマンションの規約”をベースに検討しないといけません。法人化されているかどうかで変わるかもとか詳細なチェックが必要な場合があります。

いざ裁判になってもこれ大丈夫ですかねみたいな境界領域の話は、私は自分のマンションでは管理組合法人の顧問弁護士に相談しています。
・・・ちょうど最近規約別表を書き換える総会の決議レベルで相談しました。

組合の法務関連のネットの記事も、やはり弁護士さんの書いたものは一味違う。ここでは標準管理規約の逐条解説本でおなじみの篠原先生の記事を引用しておきます。
はるブログとかいらんやろって? それは言ってはならない。大人の事情あり。最後まで読んでね。

篠原みち子さんの記事
『管理費等の改定は、普通決議、特別決議どちらで行うべきでしょうか?』

http://kanrikyo.or.jp/oyakudachi/vol05_2312.html

その中で引用されている有名な判決 (出展:ストロー・ジャパン)
神戸地裁 平成14年11月5日 平14(レ)90号 判決
も必見。

この本にお世話になってる理事も多いはずです。


近況

この時期になるとなぜかスムログのブロガーが全員目覚めてせっせと書き始めるのは運営から、忘年会前に一本はブログを書くよーにとかのメールが届くから・・・とか書いていいんだろうか。
書かないと、映す価値なしとかでブログが消えるとか、忘年会の席がござになって、食べ物も・・・とか皆密かに恐れています。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。 特に総会の決議レベル等間違えると著しく危ないものは、弁護士に相談してアドバイスを受けることを強くお薦めします。裁判になった後では桁違いに高くなるので。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

7 件のコメント

  • 匿名 より:

    勉強させて頂いています。
    引用されているURLが違うっぽいです。

    http://www.kanrikyo.or.jp/oyakudachi/vol05_2312.html#s01

  • 管理規約第28条第2項において、『管理費は各区分所有者の共用持分に応じて算出する』と定めているのに、細則で平米×専有面積としてしまっていて、整合性がとれていませんけど大丈夫でしょうか?

    • はるぶー より:

      別表3には専有面積≡共用持ち分を示していて、これに”応じて” 
      算出していると思うのですが。比例してとは規約側にはでてこないので、
      端数計算などの問題はありません。
       
      財務会計細則の別表の中で、同じ規約別表3の専有面積に応じて定められる式で
      その部屋の管理費を定めていますが、”共用持ち分” と ”専有面積”は
      同別表で完全に比例関係にありますから、特に問題はないと思います。
      ケチつけるならもう少し本質的なとこで欲しいですねぇ・・・

  • はるぶー より:

    == この先のコメントは削除させていただきました。ご自分でブログを立ち上げるなどして主張されたらよろしいかと==

  • 匿名 より:

    いろいろ調べていたら、この記事にたどりつきました。

    うちのマンションの場合は、もうすこし複雑で、駐車場の負担金が、マンション規約の別表内に記載されています。
    それで、マンション管理会社が3/4だと主張するのです。もちろん、反対者も主張します。
    そして、本当にギリギリで3/4取れずに上げられません。

    しかし、そこで反対が出ると、現状の駐車場の利用形態を維持できないところまで切羽詰まっていて、事実上変更しなければなりません。
    つまり、
    一 敷地及び共用部分等の変更
    の、「効用の著しい変更」の必要性が生じて、それを
    を3/4で承諾してもらわないといけないというデッドロックになっています。

    実際には駐車場を今のままで維持してほしい人が多いのに、「効用の著しい変更」が通るはずはありません。

    つまり、どこかで強引に進めないといけない状態になってしまいました。

    • はるぶー より:

      規約別表は規約の一部なので、3/4の賛成をとってねという
      管理会社や反対の方の主張は正しいと思います。

      可決できない理由が”全戸を総会に集めたら”100%参加でも26%反対なので
      あればもうあきらめるしかないです。
      一方で”議場に8割しか集めていないなかで”10%の反対で落とすのはまだ
      努力できるだろうと思うわけです。

      本当に100%近く総会に集める努力をしたかどうかですね。

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