最新データが出そろい、新築と中古の分岐がより鮮明になった月である。
高値圏が続く中でも、市場のあちこちで「見かけ通りではない動き」が目立った。在庫が増えたのに値下げ幅が縮小した湾岸・都心、件数は減ったのに強気な晴海フラッグの転売市場──単純な需給の図式では説明しきれない局面が広がっている。
不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」(マンション市場分析)から、2026年8月の注目トピックを図表とともに振り返る。
市場はどう動いているのか
首都圏新築分譲マンション市場動向
不動産経済研究所(8月20日発表)データを分析すると、23区の億ション率は6か月移動平均で68.3%となり、過去最高を更新したことがわかる。
発売戸数は伸びておらず、供給量の拡大ではなく価格帯構成の変化がもたらした最高値である。
首都圏中古マンション市場動向
東日本レインズの月例データによると、7月は成約件数・単価・価格がそろって前年割れとなった。
在庫は5か月連続で増加しており、特に都心3区で増加が先行している。
在庫・滞留・価格改定から読む湾岸と都心
江東区・港区の定点観測(8月15日更新)では、在庫が2,000件を突破する一方、価格改定率は両区とも改善するというねじれが生じた。
今後の焦点は、在庫増加が続いたときに、今回見られた価格改定率の改善が維持されるかどうかである。
高値を支える構造要因
中東情勢緊迫化に伴う建設資材価格・需給動向を読む
建設物価調査会の8月レポートでは、塗料や防水材などで需給のひっ迫が続く。
企業物価指数で見るシンナー価格は6月をピークに7月はやや低下したが、高値圏は続いている。
新築vs中古、単価推移の全体像【東京23区】
23区の新築・中古単価差は6か月移動平均で108万円/㎡まで再拡大し、70㎡換算で約7,560万円の開きとなった。
7月は港区の高額物件発売という特殊要因が大きく、構造的な拡大と断定はできない。
買い手はどこで折り合いをつけているのか
「広さも築年も譲れないなら、通勤時間を延ばせばいい」は本当か?
読者コメントをきっかけに、「何を諦めるか」を考えたエッセイである。
データで検証しようとしたが、単純な比較では答えが出ないという結論に至った。
中国人は日本のどこでマンションを買っているのか
中国人向け不動産サイト「神居秒算」の掲載件数は、東京が全国で突出し、23区では港区・新宿区が上位を占める。
住宅ローン返済、みんなどれくらい負担している?
2025年度のフラット35利用者調査では、首都圏の総返済負担率の中央値は新築22.6%・中古20.5%で、いずれも前年度より低下した。
「30〜35%が目安」とされる基準より、実際の負担水準は低いことが改めて確認された。
注目テーマ:晴海フラッグの今
晴海フラッグ転売市場に何が起きているのか
2026年8月時点の転売希望件数は実質24件(前月35件)で、大半をSKY DUOが占める。
件数は減る一方、上乗せ率は95%から98%へ上昇しており、価格の底堅さがうかがえる。
晴海フラッグ PORT VILLAGE(賃貸街区)募集状況の推移
賃貸街区の募集住戸は8月5日時点で63戸となり、2025年8月の236戸から約3割の水準まで減少した。
A〜C棟は減少が続く一方、D棟だけは前月から5戸増加しており、棟ごとの動きは一様ではない。
今月のまとめ
今月の一連のデータが示しているのは、新築の最高値更新と中古の前年割れが併存する分岐である。ただし、今月とりわけ示唆的だったのは湾岸・都心の定点観測だ。在庫は増えているのに、価格改定率はむしろ改善した。「在庫増=弱含み」という単純な図式では捉えきれない局面に入っている。晴海フラッグの転売市場でも、件数は減りながら上乗せ率は上がるという、似た構図が見られた。
買い手側では、フラット35利用者の返済負担率が中央値ベースで低下する一方、通勤時間や中古の条件トレードオフなど、「何を諦めるか」という論点が改めて浮上した月でもあった。
「在庫が増えた=弱含み」とは限らない。今月の数字は、そう教えてくれた。






















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