「南向き=高い」は本当か──江東区中古市場で見えた“方位以外”の価格差

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「南向き=高い」は本当なのか。江東区の中古マンション583件を集計すると、意外にも北系住戸が最高単価だった。そこから見えてきたのは、“方位以外”が価格を左右する市場構造だった。

「とりあえず南向き」で探していないか

中古マンションを探し始めると、多くの人が最初に設定する条件がある。

「駅徒歩10分以内」
「2LDK以上」
そして、「南向き」である。

実際、SUUMOの検索条件でも「南向き」は定番だ。「できれば南向きで」という人は少なくない。

理由は分かりやすい。

日当たりが良いし、冬でも室内が明るい。洗濯物も乾きやすい。

「南向き=良い条件」という感覚は、戸建てでもマンションでも長く共有されてきた。

ただ、実際にはどれくらい価格差があるのだろうか。

数十万円なのか。
数百万円なのか。

あるいは、マンションによっては、そもそも「南向き」がそこまで強い条件ではないのかもしれない。

特に江東区では、湾岸タワーマンションを中心に、「日当たり」だけでは説明しにくい価格の付き方が増えている。
  • 高層階からの眺望
  • 運河や東京湾への抜け感
  • 夜景
そうした要素が、「どの向きが高いのか」を少し変え始めているようにも見える。

そこで今回は、江東区の中古マンション掲載データを整理し、「方位」と「価格」の関係を見てみたい。

全体を見ると予想外の結果

今回、江東区内の中古マンションについて、
  • 駅徒歩15分以内
  • 築10年以上
  • 55㎡以上85㎡未満
  • 2LDK〜3LDK
  • 重複掲載を排除
という条件で整理したところ、分析対象は583件となった。

極端な築浅住戸や投資向けコンパクト住戸の影響を避けるため、ファミリータイプ中心に絞っている。

なお、SUUMOの方位表記をもとに、
  • 南・南東・南西 → 南系
  • 北・北東・北西 → 北系
とし、東系・西系はそれぞれ単一方位として集計した。

図1_方位別㎡単価中央値(江東区・中古マンション)
まず全体を見て驚くのは、必ずしも「南向きが最も高い」という結果ではなかったことだ。

今回の集計では、北系住戸の㎡単価中央値が最も高かった。

ただし、これは「北向き人気」を意味するわけではない。

実際、北系88件のうち約8割がタワーマンションであり、約85%が湾岸エリアに集中していた。つまり、「単価の高い湾岸タワー」が北系サンプルに多く含まれていた影響がかなり大きそうである。

見えているのは、「方位そのもの」の価格差というより、タワーの有無やエリア(湾岸・内陸)、階数といった“方位以外の要素”を含んだ価格差と言った方が実態に近いのかもしれない。

特に江東区は、湾岸タワーマンションの存在感が大きい。

高層階からの眺望や開放感が重視される市場では、「日当たり」だけで価格が決まっているわけではなさそうだ。

なぜこうなったのか? タワーと湾岸が価格に与える影響

では、何が価格差を作っていたのだろうか。

まず、「タワーマンションかどうか」で分けてみる。

図2_方位別㎡単価中央値(タワー非タワー別)
すると、全体集計とはかなり違う景色が見えてくる。

非タワーマンションでは、方位ごとの差はあるものの、価格水準そのものは比較的落ち着いている。

一方、タワーマンションでは、どの方位も単価水準が大きく上昇していた。

しかも興味深いのは、タワーマンション内では、必ずしも南系が最も高いわけではなかったことである。

今回の集計では、東系(209万円/㎡)・西系(207万円/㎡)に加え、北系(197万円/㎡)も南系(184万円/㎡)を上回っていた。

どうやら今回の集計では、「方位」以上に、「タワーマンションかどうか」の影響がかなり大きそうである。

さらに、「湾岸/内陸」で分けると、その傾向はよりはっきりする。

図3_方位別㎡単価中央値(湾岸内陸別)
湾岸系では、南系(173万円/㎡)に対し、東系(207万円/㎡)・西系(201万円/㎡)・北系(196万円/㎡)が上回っていた。

ここには、湾岸タワーマンション特有の価格形成がありそうだ。

例えば湾岸タワーでは、東・西方向に水面や都心夜景が広がるケースも多い。

高層階からの抜け感や眺望が、単価へ反映されている可能性はありそうだ。

「日当たり」だけで価格が決まる世界ではない。

実際、今回の集計でも、北系住戸は湾岸・タワーに偏っていた。

つまり、「北向きが高い」というより、

“湾岸タワーの北向き”が価格を押し上げていた

と見た方が、実態には近そうである。

なお、非タワーの北系や、内陸側の北系はサンプル数が少なく、個別物件の影響を受けている可能性には留意が必要だろう。

結論:「条件を単純化すると見落としがある」

今回の分析で見えてきたのは、「南向きは意味がない」という話ではない。

日当たりや室内の明るさは、暮らしやすさへ直結する。特に在宅時間が長い世帯では、南向きの快適性は今も大きな価値を持っている。

ただ一方で、中古マンション市場の価格は、それだけでは決まっていなかった。

特に湾岸タワーマンションでは、
  • どの方向へ視界が抜けるか
  • どんな夜景が見えるか
  • 高層階かどうか
といった要素が、方位以上に価格へ影響している場面が見えてくる。

つまり、「とりあえず南向き」で条件検索をしてしまうと、特に湾岸タワーマンションでは、価格の付き方を見誤る可能性がある。

実際、今回の集計でも、湾岸タワーでは東系・西系・北系が高い水準となっていた。

マンション探しでは、つい条件を“記号化”したくなる。

南向き。
駅近。
角部屋。
高層階。

しかし実際の住み心地や価格形成は、それほど単純ではない。

「どの向きか」だけでなく、

“その部屋から何が見えるのか”

まで含めて見ることが、これからの中古マンション選びでは重要になっていくのかもしれない。

注記

  • 本記事はマクロ的な市場動向の考察を目的としており、特定の物件取引を推奨するものではない。
  • データの正確性には注意を払っているが、掲載情報をもとにした独自集計であり、実際の成約価格とは異なる場合がある。
  • 分析対象は、2026年5月時点のSUUMO掲載情報。湾岸系には、有明・東雲・豊洲などを含む。
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  • 6890万円~2億1990万円※権利金含む
  • 1LDK~4LDK
  • 36m2~85.81m2
  • 20戸 / 522戸

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