共用部の電気代が爆騰!予算を超えるが臨時総会で補正予算って必須??

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最近総会で通したばかりの予算案を電気代が超えちゃいそうだから、臨時総会を提案したら理事会で否決されたという理事長さんからのご質問です。私単独指名でくるのはヘビーなのが多いなぁ・・・

質問は・・

差出人: 雷電丸

誰に答えて欲しいですか?
はるぶー

メッセージ本文:
大規模マンション管理組合で理事長をしております。理事長として2年目です。電気代が高騰しており、今年度予算の電気代を明らかにオーバーしそうな勢いです。

これをうけて自分は臨時総会を開いて電気代予算を拡充したいと発言したところ、5月に総会をしたばかりのため、管理会社担当は「まだ予算を使い果たしてないし、予備費があるから、そのまま赤字決算して最後穴埋めすれば良い」と発言。その言葉を他の理事たちも信じて、私の臨時総会開催案は否決されてしまいました。

赤字決算の是非については規約を読んでもよくわかりませんでした。規約は管理会社が標準管理規約準拠した形で手を入れてきています。

こうした対応を続けると他の事案も予備費でいいやとなってしまい財政規律が保てないと思うのですが、理事たちも管理会社担当も「気にしすぎ」「無駄な仕事を増やすな」と言ってむしろ私が批判されます。

築年数は10年ほどなのですが、過去にも費目の赤字決算、予備費からの予算流用を繰り返しており、常態化しています。繰越金が多いので、問題も顕在化してこなかったようです。

電気代高騰をきっかけに、こうした財政規律問題に気がついたのですが、周囲は反応も鈍く、あまり騒いで欲しくないようです。

管理組合の財政規律はどうあるべきでしょうか。臨時総会は否決されましたが、こうした状態を続けていても大丈夫なのでしょうか。教えていただけたらありがたいです。

【結論】臨時総会は必須ではないと考えます

組合の運営は規約に従っての自治が大きく認められているので、そのマンションの規約を熟読しないと正確な回答は不可能です。”標準準拠”と書かれているので、以下は標準管理規約通りだと仮定します。

予算を組んだ時点では予測できない理由で、予算案の個別費目が予算を超過してしまうことは、実際に緊急必須の修繕が発生などで、よく起こることです。

結論から先に申し上げれば、臨時総会は必須ではないと思います。

予算の変更には、「予算の補正」と「予算の修正」がありますが、雷電丸様が提案されたのは、予算案そのものを総会で変更する「予算の補正」です。標準管理規約では第58条第2項に、「予算の補正」に関する規定がありますから、これに従って期初の予算表を修正すること自身は間違いではなく、例えば他にも議案があってもともと年度の途中で臨時総会の開催予定があったなど容易に抱き合わせの議案として上程可能であれば望ましいことでもあります。

標準管理規約:(収支予算の作成及び変更)
第58条 理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。

然し、単に1費目の”不可避な”(理事会側に一切の責任や裁量のない)超過でそこだけの超過に対応した臨時総会が必須であるかといえば私は否定的です。過去に常にそうしてきたのなら、筋を通すために臨時総会の招集もありですが、メガマンションなら準備と集計などでまるまる1月とかの理事会のリソースが1回の総会で飛んでしまいます。

総会をしてもしなくても、今期支払う電気代が変わるわけではありません。無理押しした結果の今期決算や今期実施できることが変わるわけでもないのに、莫大な手間を臨時総会にかけるよりももっと他にやることがあるように思うからです。具体的にいえば、その1月を、”このまま電気代が上がっていって” ”しかもそれが長期に固定された” 場合に組合はどう対処すべきなのかの検討に理事会は時間を割くことができます。”未来を変える”ことは理事会だけにできる仕事ですからね。

管理会社の担当さんや、他の理事さんが乗り気でないからで総会の招集は否決になりました。理事長さんは最終的な責任を負うから、怖いという場合には自分のクビをより安全に守る目的なら、理事長から提案したら理事会で否決になったという証拠を議事録に残しておけばそれだけで十分かと。

さて、臨時総会はしないとなると、「予備費」を流用するいうことになります。他の費目にない支出(予備費のまま使う)のでない限りは、予備費を一部を減額して、予算超過した科目の予算に加えて、その科目の予実を一致させたうえで、決算書にその旨を記載して通常総会で事後承認をとればOKかと。

貴マンションのこれまでの歴史(非常に厳しい財政規律などを規約に定めて遵守もしてきたわけではないこと)や他の理事会のメンバーが、乗り気ではないということを考えに入れるとこの方法で十分かと思います。なお、標準管理規約には”予備費”に関わる規定はないはずですが、非常に多くのマンションで実際に使われている科目です。

ところで予備費ってそもそも項目がないか、総一般会計予算の2%未満程度とわずかしか計上がないマンションが8割くらいですがそこは大丈夫かな・・・・うちも1%あるかどうかです。

赤字決算ではいけないのか?

例えば、理事会が必須とはいえないものにお金を使うとかなら、臨時総会による「予算の組み換え」も必須でしょう、もともとぎりぎりの予算案から、突然”はるぶーの豚像”をオブジェでエントランスに立てましたとかやるなら、臨時総会での「予算の補正」は必須です。この例なら否決になるでしょう、

一方、今回は総会の直前にプーチンが発狂した今期予算への影響を”あらかじめ正確に”予測できる人などいませんでした。5月総会なら予算案は3月には組み始めていた可能性が高いですからね。
ー事前に予測が困難であった
ー予算を超過したことが完全に外的要因であり、理事会から見て不可避のものである
などの状況を考えれば、上記予備費を使った「予算の修正」(の事後承諾)の結果として、単年度赤字の決算となっても、それでいけないということはないでしょう。過年度の剰余金があるでしょうから。

そもそも通常規約にはどこにも、”赤字決算”ではいけないとはでてきません。むしろ管理費に不足がでた場合には、面積按分で追加負担を求めることができると規約に明記してあるのが普通です。

標準管理規約:(管理費等の過不足)
第61条 収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。
2 管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。

(註)この第1項があるから、たとえ総会で決議しても管理費会計の剰余金は、積立金会計に移動できないという珍説を総会などで主張される方はよくでてくるのですが、実は間違い(詳細は理事長の会RJC48の掲示板の中)。

こんなご託宣も・・・


単年度の決算が”赤字”になるのは規約違反だから問題なのではなく、一般会計の収支にもともと余裕がなさすぎることが原因だからその財務体質を変えるべきなわけです。

科目ごとに全部予算の範囲内に支出をおさえなさい、1つでも失敗したら総会ですとするなら、もともとかなり”各費目毎”に余裕のある予算案でなければなりません。一般(管理費)会計に、理事会がなにも裁量的な事業を実施しなければ10%程度は収入>支出となる予算を計上できるような組合でなければ実際には困難なことで、とりたてて総会などで超過は許せん!とか指摘して、理事会に文句をいうなら、もっと管理費払えよとか私は思うわけです。

収支に余裕がなさすぎる問題は収入(管理費徴収)を増やすなり、支出を減らすなりして対応すべきもので、財政問題として、規約違反を指摘されるかもといった手続き的な問題とは全く別に考えるべきです。どうも手続き面にこだわられているように感じました。

電気代:他のマンションの状況は・・・

3月期末のマンションは多いのですが、プーチンが発狂してウクライナに攻め込んだのは2月の末です。4-5月に総会をしたマンションでは、今期の電気代の予算枠として、前期と同額程度か、2月頃までに上がってきていた分2割増し程度までを計上している組合が殆どです。

燃料代の高騰で、ウクライナ紛争の”後”の分だけで輸入代金を計算するのは(3-5月の貿易統計できまる)8月の電気代からで、6月に激しく進んだ円高の影響の折り込みは9月からのスタートです。これまで、燃料調整費はこんな勢いでⅠkWhあたり10円もわずか1年半で上がってきたのですが、まだまだあがるというのが現実的な予測です。

※重要※ 高圧の燃料調整費には、一般の家庭向けの契約とか異なり、契約上燃料調整費の上限打ち切りはありません。(勘違いしている理事長さんも多い)



3月決算のマンションは今期の電気代は(高圧の通常の東電の契約で)前期の+40%程度は見込む必要があります。(これは詳しくは次回)それに対してせいぜい2割ましまでで予算計上したマンションが2/3ですから、首都圏のマンションの2/3以上で今後予算超過は発生します。


でもって、その対応は、
① 電気は止められないし
② 総会やったからといって年間の電気代が変わるわけでもないから
予算の大幅超過でも、事後承諾ですませるとするマンションが実際に圧倒的だろうと思います。

ある意味不可避な支出増なので、やるべきことは今期予算を組み替えるかどうかより、今のままの管理費で来年以降の電気代でやっていけるのかどうかを真剣に考えることではないかなと。


マンションのオーナーは、管理費のどれだけの割合が電気代に使われているかには通常とても関心は低くて、そもそも組合の払っている共用部の電気代がいくらなのかを調べる方法すらご存じない方のほうが多い。なのでこれは理事会が主体的に取り組まないといけない仕事です。(赤字だから管理費あげないと来年ヤバいですよなんて管理会社は言ってくれません。委託経費下げろとか無茶言われて藪蛇だから)


正解は、”通常総会の第1号議案(決算報告)を見る”です。一般会計の支出に必ず計上されてます。

電気代の話はまだ続く

電気代の管理組合への影響は、マンションによってかなり異なります。一番大きな影響があるのは(内廊下の)タワーマンションです。その日の電気利用料が、EV脇に表示されているタワマンって結構あって(湾岸だとSKYZなど)1日で10000kWh とかでていると、燃料調整費が10円あがったら1日10万円組合の支出アップか・・・とか。

なかには電気代を昨年度と同額に計上したうえで、何千万円か管理費を”値下げ”してるタワーマンションまであってあとで炎上しないかな・・・とか心配にも。さすがに前年度と今期の電気代で“同額計上”ってのは、もうちょっと理事会なり、お世話してる管理会社のフロントがしっかりしろよとか思うのですが。

元は好青年”風”だったがすたまさんがこんなタイトルでブログにしろとかおっしゃっているので(大分前だな・・・)すが、なんか完全に暗黒面に堕ちちゃって・・・


理事会など執行部の方向けの電気代編はまだ続きます。

支出が変わるのは燃料調整費が殆どで、前の年の同じ月と基本は同じだけ電気を使う仮定でいいわけですから、前期の12月分の毎月の電気代の請求伝票をとりそろえるところから。この次の回を読む理事長さんは先に、毎月の電気の利用料と、請求額を1年分手元に用意してくださいまし。自分のマンションの電気代の影響が、管理費の1平米単価いくら分の影響なのか?はまず知っている必要があるわけです。

雷電丸さんも、是非電気代の月別の利用量と請求金額を確認(理事長なら管理会社に指示するだけです)したうえで次の回をお読みくださいませ。総会で怒られないのと、財政問題が解決しているのは別ですので。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

2 件のコメント

  • 雷電丸 より:

    早速お返事をくださいまして、誠にありがとうございます。

    ご指摘通り、自分は手続き論にこだわりすぎる傾向があるので、今回の事は非常に勉強になりました。電気代については予備費取崩しで通常総会で対応したいと思います。

    今年度は収入に対して支出が多い赤字決算になる見込みとはいえ、繰越金のおかげでなんとか今年度と来年度は余裕で持ちこたえられるかなと思っています。

    財政規律は財政規律で頭が痛いです。管理会社からは昨年から委託費の値上げをほのめかされていますし、保険料もかなり上がると言われていて、今後は電気代と合わせて三重苦で管理費会計が火の車になりそうです。

    臨時総会をしないで良くなったので、繰越金を食いつぶす前に収入と支出のバランスを取れる管理費の調整をはかるほうに頭を使ってみます。

    でも管理費上げるのは臨時総会開催とは比較にならず、理事や組合員の反発を受けそうで、正直面倒でこわいです。自分だけの事を考えるとこのまま何もせず、次の理事会にお鉢を回すのもアリかなと思っています。

    とはいえ、この度は大変お世話になりました。

    • はるぶー より:

      極論すれば質問された人1人だけのために書いたようなブログ
      ですから読んでいただけてよかったです。

      私の場合は、ずっと副理事長で、会計と営繕が担当なんで、
      翌年送りしても逃げられないんですよねぇ…

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