電気自動車の充電器を組合に導入して貰うには?【お便り返し】

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マンションへのEV受電設備の補助金を使った導入の話を、うまく管理組合に要望して通すためには?という質問。何名か指名されていましたが、“理事会から見て”受けられるかどうかですので、昨日通常総会が終わってブログでも・・・ってんでリハビリ兼ねて?私が回答します。

実は、昨日EV受電のうちのマンションへの導入可能性を考えるため、現地調査を案内したばかりです

質問は

差出人: 「EVくん」 から

こんにちは。

私は、東京西側の大規模マンションに住んでいる者ですが、近く、電気自動車購入を予定しておりますが、当然マンションには、充電設備はないため、近隣の充電スタンドを利用することになるかと思います。

昨今の脱炭素の流れの中で、今後EVシフトはますます進むことに思い、管理組合に新規充電設備導入を要望してみたいと思います。国や自治体の補助金制度を活用すればイニシャルコストも抑えられるからです。

みなさまへの質問としては、

[1] EV用充電器のマンション新規設置の現実性(ランニングコストなど実際、運用可能なのか)
[2]このような補助金を使えるとはいえ高額(400万円)な新規投資の要望を、管理組合で検討してもらうための作法

この2点をアドバイス頂きたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

結論から

理由は書くと長くなるので先に結論から。

管理組合が、EV充電器導入にあっさり同意してくれるのは、以下の条件の「殆ど」に合致する場合に限られると思います:

① かなり大規模な駐車場をもつマンションで
② 平置き・自走式など”機械式”中心でない駐車場設置で
③ 高速充電器ではない(6kWまでの一晩かける)充電方式で
④ 高圧一括受電など特殊な電気契約をしておらず
⑤ 理事会がそこそこアクティブでEVだぁとか新しいもの好きではあるが、受益者負担でのランニングコスト計算をシビアにやるほどには厳しくない場合。

※ 後ろに①ー⑤とかで理由を並べていきます。

私の回答はいつも“理事会目線”です。毎度ありがちな回答ですが、これ“EVくん”さんが理事にでもなって自分で汗をかいてとりくまないと難しいだろうと。EV車のオーナーでもない理事が、わざわざ本気で時間を割いて取り組むには現時点ではEV車の数は少なすぎてちょっと理事会からみて優先的に導入するだけの”うまみ”は少ないです。


現行の普及率が低すぎるための困難

助成金をせっせと撒いて国や自治体が進めようとする事業は、推進はしたいけれども、「補助金がないと成り立ち得ないもの」に限られます。シビアに損得計算すれば、なかなか組合にとってはペイしない。増えてきたとはいえ、日本のEV普及率は現時点では、プラグインハイブリッドを含めても1%にも満たないから。

実際に駐車場にEVを設置して助成金がもらえるのは、収容台数の1.5%(1台未満端数繰り上げ)が上限です。70台以上とかの収容台数がないと補助金で設置可能なのは1台だけになります(上の条件①)。実際には充電しようとしたらもう埋まっていたでは厳しいので複数区画への導入が基本になろうと思うので。カーシェアも2台からが普通ですし。

多くの区画に一気に設置して、その全部を助成金でまかなおうとはできないわけなので、台数の大きな駐車場のごく少数の区画を、既にマンション内にあるかなり多くの台数でのEV/PHVで使いまわせないとまずは設置代での受益者負担が実現できないため、平置き/自走式の未利用区画で多くの台数で使いまわせる場合と異なり、車と区画の1:1対応に近い条件になる、機械式の場合には設置してもなかなかペイしにくくなります。機械式への設置の場合機械式駐車場メーカーが施工を行うのが普通かと思いますので、関わる会社の数が増えて難易度が上がります(上の条件②)

受益者負担の“縛り”

本件、マンションが導入するには、総会における承認が必要です。

例え理事会がかなり新しいもの好きであったとしても、かなり大型のマンションでも現段階では僅か1%しかいない利用者のために、残りの99%にも総会で賛成してもらわなければなりません。

理事会役員を経験してみればわかりますが、オーナーは自分に利益のない(支出のある)案件には、その該当者にとってはどれほど切実な問題でも極端に冷淡なものです。自分にメリットのない支出には、完全受益者負担を達成しないと絶対にその総会の議案に賛成はしてくれません。マンション”居住者専用”の保育施設が売主の初期の助成のなくなる5年でほぼ全数撤退になるのはこのため。

最近マンションの駐車場の設置率は下がってきていますから、そもそも駐車場を使わない人が多数派とかなってくると、本件“無関係の人は1円も負担しない”(完全な受益者負担の最初からの達成)が理事会が総会上程する絶対条件になります。(上の条件③)

特に都内の場合で、本体費用の助成が、国と都(東京都以外はないかも)からダブルででて、ほぼ助成金で本体の導入費用が賄えるというのは、一晩かけて充電する普通充電器の場合のみです。工事代は一部組合自腹。質問で書かれている、急速充電器を巨額の投資で導入する場合、かなりの額の初期投資をマンションは行わなければなりません。これを最初は僅か数台までの利用者に受益者負担とするととんでもない充電の電気代に設定するしかなく、それだと誰も使わない。急速充電器でペイするのは、高速の上での経路充電などで、ひっきりなしに車が入れ替わって充電する場合に限られます。

例えば私のマンションも昨年駐車場に300万円とかお金をかけていますが、駐車場棟の中の照明設備をLED化するための工事で、それ自身に自治体の助成金がでるほか、初期投資は節電で下がる電気代で4年弱で回収できます。5年目以降の浮いたお金は“全戸”のメリットにできます。同じ助成金の申請書類を書くなら”次の別のアップグレードのための資金を生み出す”点からもこっちが先になります。
・・・「得できて」「全戸にそれがいきわたる」ものが組合活動的には優先ですから、LED節電すら実施途上の理事会(例えばうち)に提案してもなかなか受けてはもらいにくいわけです。

例えほぼただで充電器が生えてるってのが可能になっても、節電といった”得をできる”ものに比較すると優先度を高くは設定できないわけで、数年以内に黒字化がみこめるくらいの収益達成の見込みがないと、提案しても理事会はまともに運営しているところほど「他にも一体やることあるから」でのってこないと思います。

要するにいいだしっぺ(EVのオーナー)が自分で理事会内での汗をかくしかないかなと。

課金はどうする?

下に貼ってあるのは“テスラ”という会社が、これを管理組合にだしてくださいとしてホームページにアップしている申し入れ書の雛型です。英語を日本語訳するときにしくじっているせいもあるのですが、マンションの駐車場は共用部で、日本では1需要場所1契約の原則があるということや、設置が総会マターであるということが考慮されていません。これ届いたら、理事会はなめてる!とか怒るだろうなと。

テスラ社が、購入者に組合に出せとしているお手紙ひな形


組合からみると、共用部“全体”の毎月の電気代があがり、その上がった分をの電気代を最低でも全額適切に利用者のみに従量課金するシステムの導入が必要です。

以下の例のように、スマホで予約して従量課金をクレカ支払いなどで可能にするシステムは、開発している会社があり、この会社のシステムを導入しているメガマンションは、私が代表をしている理事長の会RJC48の中にもあります。
⇒ https://yourstand-ev.com/app/
個別の従量課金の問題はクリアされてきていると思いますが、問題は組合が設定するそのお値段です。

EV車を買う人の動機の一つが、ランニングコストが安いせいもあると思うわけで、街中にある充電ステーションの充電単価を“超えた”設定では、せっかく助成金使いまくりで安価に(例えただで)設置できても誰も使ってくれないなら、「マンションの事業」としては大失敗です。世の中的な相場は、1kWh あたり25円まで。6kWの充電器で、1時間150円までが組合が課金できる金額の“上限”で、この料金設定の中で、数年で初期投資コストを、システム利用料などを運営会社に払った上で、黒字にはならないまでも組合の持ち出しがなくなるように回収できることお考えないと、総会を通せません。これは実際には至難です。

マンションの共用部の電気契約の特殊性

マンションの共用部は、内廊下のマンションでもない限り大して大きな電気を使っているわけでもないので、大口の需要者とはいえず、安くで電気は買えないので大量購入に伴うメリットは生かしにくい。
その一方で、EV受電施設が成り立つようなマンションであれば、共用部全体が高圧の契約になっているのが普通です。東電の500kWまでの電気代単価は、通常の高圧契約で、夏季で、燃料費調整額が高騰している時期には1kWh 20円を超えることもあるので、25円を超えて設定できないのはかなり厳しい条件です。

高圧の電気代は、基本料金の締める割合が大きくて、過去1年間で一番電気を使った30分の“最大需要電力”でその先1年の基本料金が決まっています。1年で一番電気を使う時間帯に、さらにEV充電器が1台使われると、6kW分基本料金は高くなるので、ざっと年間の電気代は10万円ほどアップします。区画の契約者1台のみが利用するような(長時間充電なのでで、EV専用の月極めの区画を設定して1台だけが充電可能にしていて)これが起こると駐車場料金のほかに“月1万円”近い充電の基本料金を、極端な場合では年に30分充電しただけで「その区画の利用者に課金する」しかなくなるわけです。

うちのマンションでは、真冬の寒い日(空調利用)の夕方、皆が帰宅してきてEV運転全開、照明がついて、炊事などで揚水ポンプに利用も多い時間帯が年間にピークです。ここで6kWのEV充電器がいくつも同時に使われてしまうと過去何年分のピークカットの節電効果が吹き飛びます。うちのここ半年でのピークの日はこんな感じ。真冬の18-20時は充電しないでくれればこの問題はないわけですが。(空調の運転のない時期は1日のピークでも80kWくらい;うちは500戸ちょい、駐車場も約500台)

私のマンションの電力消費(過去半年のピークと今日)


さらに節電を進めているマンションでは、マンションは夜間電力と、昼間の電力の利用量に差がすくない(夜間は照明を使うから)ために同じ高圧の契約でも、夜間だけ料金の安い季節別時間別の契約をしていることが多く、この場合には昼間の電気代はさらに高くなっていますから、下の図の”夜間料金”の時間のみ充電を受けるなどしなければ難しい。うちでもし導入するなら夜間料金時間帯を中心とした設定(例えば20時ー8時のみ充電スタンドが生きている)が必須になると思っています。

東電の季時別料金設定の考え方。これで契約して夜間電力を安くしているマンションは多い。


さらに高圧一括受電などが導入されていると、専有部・共用部の電力利用量のバランスで割引を共用部に設定しているので、もともと高圧の契約である共用部側の電力利用が急に増える条件では、高圧一括受電を受けている電力会社がちょっと困ってしまうわけです。

”電力の契約が、全ての共用部分で全部同じになること”に伴う困難というのは考えないといけない。(上の条件④)

理事会からみた難しさ

助成金を使った事業は、国や自治体の会計年度内で閉じていて、先払いで、報告だして後からお金を受け取るので縛りは厳しくやってみればわかりますが結構大変です。

ここ数年の助成金は6-9月が申請でそこは理事会決議でOKですが、EV補助金は、今期は、理事会承認で6-9月に申請、確か工事の完了報告を1月に実施しないといけないので、必ず秋口に総会をしないと工事⇒支払いの証拠を出すのに間に合いません。

もとから夏ー秋口に年1回の通常総会のあるマンションであればいいのですが、世の中に多い3月竣工引き渡しのマンションの通常総会は4-6月が多く(私のマンションも一昨日総会をやったばかりです)このためだけに臨時総会を開催することを辞さずといった機動性のある“腰の軽い”理事会でないと受けてもらうことは難しいでしょう。

長い目で見ればEV車の割合は増やしていきたいのが国の意向で、実際段々増えてくるのでしょうが、例え助成金ダブルで0円に近くても、受益者負担で損にはならない設定を探るのは、ルール面の整備も含めてかなりの力量を理事会に求めることになります。

それで儲かる・・というものではないので、うちはEV充電器を後付けで設置しました!!とかな売り文句は欲しい、機動性はあるそこそこの実力の理事会だけど、超シビアなコスト計算まではしない程度には情弱?だか甘めの理事会でないとほいほいとは受けてくれないことになります。結構ありがちではない気もします。(上の条件⑤)

理事会への提案の作戦

組合理事会側がどう考えるかの”理事会側の論理”を考えた上で、できれば例えば導入までの業者との交渉に参画するなど、”お手伝い”する形で提案すると、うまくいくと理事会も動いてくれるかもしれません。その場合には電気代のことはあんまり言わないで、都内だから助成ダブルでうまくいくとただ同然!とかランニングコストの話はしないで提案されたほうがうまく通る率は高そうに思います。(このブログを理事が読んでいなければ・・・)

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

2 件のコメント

  • めるか。 より:

    いつも組合や理事会のコアに関わる貴重なお話を、本当に有り難うございます。
    うちの理事会でも充電施設について話題になりましたが、私がイメージしてたのは急速充電の方で、こんなにコストを要するとは思いませんでした。他にも電気代の請求手順や組合全体の使用ピーク、電力会社の本音など、大変参考になりました。
    今までガソリンスタンドが担っていたエネルギー施設を、マンションに導入して素人が管理していくのは無謀に思えます。やはりガソリンスタンドのように、街中に急速充電スタンドが増えないと厳しいと思いました。

    • はるぶー より:

      書いてある条件が全部あてはまって、東京都のように国と都からダブル助成で非常に安価に初期導入ができた上で、さらにはマンションの高圧の電力契約が時間で値段が異なる場合の夜間充電のみペイすることが可能な気がするんですよね。

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