管理組合の立ち上げ前に、電気代高騰で管理費値上げってあり?

スポンサードリンク

今回は私ご指名での「お便り返し」で、管理組合の立ち上げ前に電気代高騰が原因で、管理費が変更になるのは納得がいかないとのご相談。
実は特にタワーマンションで、似た事例は既に3箇所ほど私は知っていて、昨今”かなりよくある”事例です。

質問は

差出人: マンションを購入した人

メッセージ本文:

いつも拝見させていただいております。
新築マンションを購入し入居待ちの状況なのですが、先日デベロッパーから、「光熱費高騰の影響で管理費を値上げする可能性がある」と通知がありました。
まだ入居前なのですが、入居前にこの様なことは多々あるのでしょうか?
また、管理組合が立ち上がる前の「値上げの可能性がある」という通知は納得がいきません。

初めての新築マンション購入で分からないこと多いため質問させていただきました。
私見でかまいませんのでご意見をいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

電気代は特にタワーで管理費高騰の主因

以下は、ウクライナ紛争からこっち1年ほどで管理費の改定があったかどうかをタワマンとそれ以外にわけて聞いたもの。タワマンでは30%/タワマン以外は17%とこの1年ほどで管理費の改定あり。改定のあった割合には約2倍の差があります。


実は、タワーマンション(以下タワマン)は管理コストに対して電気代の占める割合が高いため、空調などで節電を頑張っても電気代が大きく変わると、もともとの管理費ではやっていけなくなりやすいです。”新築のマンション”で、”入居の前に”管理費が改定された(予告された)という話を私が知っているのは全てタワマンです。

タワマンは普通のマンションより専有部分の面積あたりで3-4倍電気を使います。これは基本は「上下移動させるものの動力」なので、上水のポンプや、高速のエレベーター(各々が時に1つで小さな板状マンション1つくらい電気を使うことも)といったライフラインを止めない限り板マンなみの電気代になることはありません。

”タワーであることで必須”のコストなので、板マンなみにしろと言っても不可能。皆割と空調が電気代のメインだと錯覚しているのですが。季節・時間変動を見てみればすぐにそうではないことは誰にでも判ります。内廊下の空調を完全に切っても板マンと同じとはいかない。並びであるエレベーターの一部を止めるとか震災のあとでやったタワーもありましたが、待機電力は無視できるほどなのでほぼ効果はないものです。

結論から言うと・・・

契約と違う!!とかオーナーから文句を被弾しやすいので、管理会社としては「わざと何も言わない」で、そのまんま1期目から管理費会計は赤字です・・いやぁ電気代じゃしょうがないですね理事会に解決はお任せしますとやる手もありえます。

その場合、1期目から理事会は収支が赤字か殆ど余裕のない予算案をおしつけられて、理事長ほか理事が苦労するだけです。電気代のような”避けることができない”急なコスト変動は、最初から管理費を改定して吸収するほうが、1期目の理事にいきなり管理費値上げといった酷な課題を初期設定でおしつけて管理をスタートさせるよりはデべ・管理会社として良心的ではないかなと私は思います。わざと憎まれ役を買ってくれているわけなので。1期目にほぼなにも理事会はできない予算案を押し付けられた理事長さんの気持ちは、私がそうだったけどかなり哀しいです。

電気代の管理費への影響の話を先にして、管理費会計に全く余裕がないとどう困るのかの話には後で戻ります。

電気代の最近の変遷

下の図は、東京電力の高圧の電気代の”変動部分”である燃料調整費と再生エネルギー賦課金の過去の推移です。



 

500kW以下の高圧の契約(中規模ー大規模(超大規模除く))のもの。

4月頃から契約月の差によって、順次燃料費”等”調整額に移行していて、燃料の割合の変更・昨年8月頃での値にベースの電気代の電気料金の再定義(もともとの+6円を調整費上では0円に原点をつけかえているほか、電気の約1/3が市場価格(JPEX)の直近平均に連動する形に変更になっているので、”調整額”の数字だけみると一部が”基本料金側”に引っ越していて連続性がないため旧契約のままの場合の”燃料調整費”(「等」がはいらない)ほうにしか過去との継続性がないので、そちらでプロット。
今暫く継続中の国の補助-3.5円/kWh は燃料調整費の中に組み込まれている表記(東電もそう発表している)です。

東電(大手電力会社)の毎月の電気代の発表はわざとわかりにくいように、また過去からの推移が追いにくいに陰険な表しからになっていますねぇ・・・

かなり短期間に激変していて、僅か2年ほどの間に1kWhあたり17円も上昇したあと、今年に入ってからは、燃料価格が少し下がったことと、政府補助(高圧だと秋まで-3.5円)、再生エネルギー賦課金の値下げ(ちょっと驚きました)などがあって少し落ち着いてきていますが、なお”政府補助”なしだと昨年秋口あたりの価格となっています。

これだけ激変するんだと管理費にも”電気代調整費”をいれたいくらい。
マンションの予算や決算は1年ごとなので、何月が決算月なのかによって影響はかなり異なって見えますが、よくある3月頃の決算だと、2年前に対して終わったばかりの昨年は+5割程度のアップ(予測困難な上昇なので予算を超えたマンションも多かった)で、この週末で総会をほぼ終えた筈の4月からの今期も少なくとも昨年並み以上予算額を用意した組合が多数派だと思います。昨年うわ予算超過だぁ!で懲りたせいで昨年実績に少し積み足したくらいの組合が以下のように多い。うちもそう。


 

電気代の管理費への影響の評価

下の図はうちの毎月の電気利用と、支払っている電気代の推移。ちょっと変わった契約方式(高圧一括受電)なので普通の契約よりも1kWhあたり7円ほど安いのと、この電気代が上がってきている間に節電工事を2回(オレンジの2つの矢印のとこで1000万円以上を実施)やっているせいで直接他の組合の参考になるものではないです・・・講演会用の今のトレンドってことで無理に1ページにまとめていて見にくいのはご容赦。



理事会による”ざっくり”した評価では、共用部の使っている電力量の1月あたりの平均値が、管理費を発生させている専有部の面積1㎡あたりどれだけにあたるかが、電気代の変化の管理費への影響の目途となります。

うちは、年間に70万kWhほどの利用(理事会は毎月の電気代の伝票から確認できます)で、管理費の発生する専有面積合計が41000㎡ほどですから、使っている電気代は各戸の負担に直すと1.4kWh/㎡/月になります。専有面積・月あたりの単位に直せば、電気代が1kWhあたり1円変わると管理費会計にどれだけ影響があるかは概算可能になります。
・・・この数字はマンションによって大きく異なり通常の板マンだと1以下程度も多いですが、タワマンだと3-4倍にになります。

2年ほどで+17円ほどの電気代の変動がありますが、タワマンでの影響は50-70円/㎡/月程度。70円だと70㎡で月3500-5000円。管理費ってのはせいぜい1㎡あたり300-400円程度までが普通ですから、この影響をなにも管理費改定なしに”のみこめる”としたら、もとは凄い黒字がでていたことになります。実際この1年で管理費を改定したタワーは人件費高騰などもあわせて1㎡単価で100円程度の思い切った改定をしたところが多かったです。

今引き渡し時期にあるマンションの管理設計を行ったときには、わりと長く安定してきた1kWhあたり17円程度(変わったことをなにもしないで盗電と契約の場合)で考えていた可能性が高いですから、そのあと急に電気代が上がったのをなにも価格改定しないで受け止めろには少し無理があるというか、改定させてくださいと言わないとしたらもともと管理費を高く設定しすぎだったのでは?という気もしなくもない。

一般会計の収支が赤字だと理事会は何もできない

下の図は、超ざっくりと書いた管理組合の収入と支出です。



 

収入は殆どが住民から徴収する管理費(や駐車場代)だけですから、人件費が上がって委託経費がアップしたり、電気代高騰で、支出>収入となったら、管理費等の住民の負担額をあげなければ遠くない将来「赤字で失血死」は免れません。一方で1期や2期といった経験の浅い理事会が”値上げの議案”を総会で通すのはあまりにも負担が大きい。

なお、図の通り、駐車場からの収入も日々の管理に使っているマンションが圧倒的な数なのですが、収支が厳しいからで、管理費を保ったままで、駐車場の収入を全部日々の管理(の価格高騰に全部)使ってしまおうというマンションは結構多いものです。特に機械式の駐車場はメンテ+更新にとてもお金がかかるので、実質破綻状態だけど”気がついていない”ケースはとても多い。

これは避けた上で、管理費の会計(一般会計)には、なにも理事会が動かなければ年に5-10%程度の黒字がでる程度の余裕は最低でも必要だと思います。単年度で赤字の決算を出し続けることは無理だから、収支が必須の支払いのみでぎりぎりだと理事会に裁量的な経費が全くないために、なにか問題がおこってもお金を払って解決することができません。私のマンションも2期目くらいまでそうでした、

実はマンションは経年とともに収入は減る一方で、支出は増えていきます。

収入減は駐車場の契約が大抵長期的には減っていくせい。支出は、新築時には2年アフターでただで直してもらえるものが、10年も経年すると板マンでも年に1戸あたり2万円とかのお金を一般会計の修繕費(計画外の修繕経費)に計上しないといけませんし、共用部の保険は毎年のように保険料があがり、委託経費のメインである人件費もここ10年ほど年に3%ほどで上昇を続けています(管理員や清掃員の時間単価は法で下限の定めをしている最低賃金に近い)。

1期や2期で”とんとん”に近い収支では、遠からず”理事会が裁量で使える行先が決まっていないお金”は予算上0に近くなり、例えば定常のメンテでも植栽が痛んできても何も支出ができないとかなりがち。”昨日とは違う明日”にしていくのが理事会の仕事ですが、その施策の殆どにはカネがかかりますから、理事会に何もするなというのと同じです。
計画修繕にない緊急の節電工事をうちが実施できたのは1300万円を2年で無理なく一般会計から拠出できたからで、”節電するにもお金はかかかる”わけで手元にお金がないと何もできなくなりかねません。理事会運営としては収支差益は維持するほうが先で、余っているなら何かはできるで、支出から先に気軽に増やすのだけはやってはいけないと思ってます。

電気代の上昇分くらいのみこんでも”まだ赤字ではない”程度のマンションでも、この観点から初期管理費の改定を提案されている事例もあり、私はそれを良心的かなと思っています。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者のマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

コメントを残す

「コメント」と「名前」は必須項目となります。


※個別物件への質問コメントは他の読者様の参考のためマンションコミュニティの「スムログ出張所」に転載させて頂く場合があります。
※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)