第207回 間取りと設備も大事だが、見えない重要な検討テーマがある

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

第95回「間取りや設備などの細部に目をやる前に」https://www.sumu-log.com/archives/8288/の記事でも触れたのですが、ものごとを判断するときは、「マクロとミクロの両面を見る」、「利害関係のない第三者の意見も聞いてみる」、「時間を少し置いて頭を冷ましてみる」、「何事もオモテとウラがある(メリットがあれば必ずデメリットもある)といった視点が必要なものです。

 

本稿のタイトル「間取りと設備も大事だが、見えない検討テーマがある」は、「優先順が違います」という指摘でもあるのです。間取りも設備も大事ですが、もっと大事なことは他にあります。

そのマンション全体の価値はどうか?すなわち、その立地・環境は価値あるものですか?あなたにとって最高の部類ですか?最高ではなくても、あなたと家族にとってふさわしいものですか?ピンポイントの立地・環境は良いとしても、マクロ的に見て価値ある立地ですか?

 

このような自問自答をしてみましょう。マンションは住んで快適かどうかと資産価値はどうかという二大テーマがあるのです。

 

●現地・モデルルームを見て陥る罠

マンションの価値判断は実物を見ただけでは分かりません。しかし、誰でも現地とその周辺、新築ならモデルルームを見に行きますし、中古なら室内に入り、日当たりや眺望を確認しに行きますが、その行為がしばしば目を曇らせるのです。

近視眼的発想に陥るのがヒトの常ですが、視界に入るもののみで価値判断をしてしまいがちです。

 

相談者の多くは、買いたいという気持ちが嵩じています。前のめりになっています。しかし、様々な角度から検討して、欠点もあるが全体としては良い物件だと思うし、家族の意見も一致し、購入の意思は固まりつつある。ただし、念のために第三者の意見も聞いてみよう。どこか抜けていないか、自分の判断は適切か?

 

それは結構なことですが、前のめりになっている気持に水をかけるような筆者の所見には怒りがこみあげて来るという人もあります。依頼者・ご相談者を怒らせても筆者には何のメリットもないのですが、客観的な視点で評価するサービスなので、結果的にそうなってしまうことが少なくないのです。

 

依頼者・ご相談者は、「良い物件を選ばれましたね」と言って背中を押してほしいのかもしれませんし、「自分の判断を褒めてほしい」のかもしれませんが、しばしば期待を裏切る回答(レポート)なので失望してしまうのでしょう。

 

ともあれ、依頼者の期待と筆者の所見の間に生まれるギャップはどこから来るかというと、目に焼き付いた光景が強烈だからと考えられます。営業マンの巧みなプレゼンテーションも心に残り、目と耳に残った印象によって購買意欲がピークに達しつつあることを表しています。

 

未完成の新築マンションなどは、綺麗に化粧したモデルルームの印象が強烈過ぎていて、そのとりこになってしまう人も少なくありません。舞い上がってしまい、営業マンに誘導され契約してしまったと後悔している人もあります。

参考記事はこちら「第9回 モデルルームの魔法を解く」https://www.sumu-log.com/archives/3739/

魔法にかかった人をこれまでたくさん見て来ましたが、契約前に相談して来た人はまだしも、契約後に相談されても手付金を取り戻すのは容易ではありません。(筆者が同行し、交渉のサポートをして取り戻したことは何件かありましたが)

 

前に進めましょう。

目に焼き付けた物件の自分評は、多分間違っていないのです。しかし、マンション選びを資産性の観点でとらえようとしたとき、その判断材料は現地を見ても殆どつかめません。まして、市場(マーケット)などというものは、豊洲市場で並んだ魚を見るのとは訳が違います。ズバリ言えば、目に見えないものが市場(マーケット)なのです。

 

複数の候補物件を見て比較したり、何度も現地を訪問して担当者の話を聞いたりしながら、これで大丈夫と思えるようになるまで慎重な行動したと語る人もありますが、それを何度繰り返しても、マーケットは見えて来ません。

しかし、様々な角度から検討をした、何度も念を押した、慎重に行動したと、その行為自体に自己満足してしまう人も多いようです。

 

筆者は、目に見えない部分で、つまり市場評価を中心にレポートを作成します。売出し価格が高いのか妥当な価格なのか、市場でどのくらいの位置づけになるマンションなのか、将来の価値はどの程度かといった答えをお届けしています。

 

モデルルームだけでは価値判断はできませんし、設備仕様がいくら上級でも、間取りが素晴らしいとしても、建物全体のレベルが低ければ市場価値は低くなります。また、立地条件が良いと惚れこんでしまっても、マーケット価値的には良い立地と言えない場合もあるのです。

マンションの価値を目に映るものだけで判断しようとすれば、将に片手落ちです。

 

●マーケットでの価値をどうやって判断すればいい?

筆者は、このブログで具体的な物件の評価はしない方針にしています。それには次のような理由があります。

 

シビア過ぎて辛口批評になるからというのもありますが、ブログで露骨な批評を書けば、同マンションの契約者・オーナーからクレームが入るからです。既に購入した人を傷つけるのは本意ではありません。これから買おうとしている人だけに「こっそり」当該マンションの市場価値を客観的、かつ冷徹に評したレポートを差し上げるのが筆者の仕事です。

 

レポートを通じて、ズバリ資産性に斬りこむ方針なので、依頼者にとっては、耳が痛いコメントも少なくありません。

ただ、レポートは依頼者が興味を持ち、魅力を感じたマンション、言い換えればお気に入りの物件を冷徹に評価するものとはいえ、依頼物件を飾りのない言葉によって、あたかも貶めるかのような誤解を与えてしまう場合があるのです。ときどき失礼じゃないかとお叱りを受けることもあって、言葉選びにはいつも苦悩します。

 

マンション評価サービスは、単にマンションに点数を付けるのが目的ではありません。どちらかと言えば、「マンション購入の迷いを解いて決断の後押しすること」にあります。従って、「ダメ出し」は控え目にし、枝葉末節の部分は大らかに見ようと努めています。

その過程で、評価した結果を淡々と伝えるだけでいいか、このマンションはやめた方がいいと踏みこんで言うべきか、あるいは立地条件に少々問題がある気がするが、「現地を見ていないので」と曖昧なコメントで逃げるべきか、立地に問題はあっても購入する価値はあるという理由をコメントすべきか等々、表現方法にひとしきり悩むのが常です。

 

客観的、かつ具体的に所見を述べることをモットーにしています。しかしながら、言葉選びを誤れば相談者の感情を害することもあるので、ときどき困惑します。

 

さて、筆者の個人的見解ではなく、市場評価はどのようにして下しているのでしょうか?新築と中古に分けて簡単に説明しましょう。

(中古マンションの場合)

市場評価の簡単な方法は、中古マンションなら比較的簡単です。売買事例を見ればいいのです。売出し中のマンションではなく、成約実績を過去2年くらい遡って、同一階数、同一面積、同一方位の取引事例を見れば、それが指標になります。みなさんが、検討なさるときは、仲介業者に依頼すれば事例を探して出してくれるはずです。

 

もちろん、売買事例が少ないマンションもあるので、そのときは「より近い住戸」を、同じマンションの取引事例がなければ近隣物件を探してもらいましょう。

注意しなければならない点は、たまたま高く売れた物件たまたま安く売ってしまった物件があるので、必ず複数のサンプル(事例)を手に入れることです。

 

(新築マンションの場合)

こちらは中々難しいですが、「他社比(近隣物件との比較)」からスタートするのが基本です。

 

比較項目は、あまり多いと混乱するので、重要な項目だけにした方がいいのです。

項目は6つです。①立地条件(利便性と環境。地域イメージ・マクロ的な人気度)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。

 

この中で最も資産価値を左右するのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。

また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。そして最も大事な要素は「価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、将来価格は期待外れになるからです。

立地に関しては、マクロとミクロの両方から考えてみましょう。できたら都心に近いこと。または都心へのアクセスが良いこと。最寄り駅に近いこと。5分以内が理想。妥協しても7分です。

環境が良いに越したことはないですが、駅近とは両立しにくいものなので、距離が優先します。

また、その駅の周囲はどのような施設が、どの程度集積しているか(=駅力えきりょく)も重要なポイントになります。駅力と駅からの距離は、大きく資産価値を左右する要素になります。

 

②のスケール、これも重要です。小さいと存在感に欠けるきらいがあるからです。また、小さ過ぎると管理費が割高になるか、管理内容が悪くなるためもあります。さらに、一定の規模がないと共用スペース・共用設備も貧弱になって豪華さを醸し出すのが難しいためでもあります。

共用施設も、建物規模が大きいほど様々な利便施設や癒しの空間を設けることが可能になりますが、小規模マンションでは集会室(談話室・雨天こども遊技場など)すら用意できないものです。

 

③のデザインは、どのようなものが良いかの法則はありませんが、抽象的な表現を使うと、「格好がいい」、「豪華絢爛な雰囲気」、「個性的で異彩を放つ」、「上質・高級な感じ」、「美術館や博物館みたい」、「高級ホテルのようだ」など。

 

④の建物プランは、共用設備の装備内容や耐久性・耐震性の高い構造かどうか等で価値が変わります。専有部分に関しては、向き、階数、間取り、設備・仕様などを総合的に見て判断されます。

これらをひとくくりにしたのは、小項目が持つ資産価値のシェアは高くないからです。

 

⑤のブランド力も無視できません。ただ、ブランド価値も築30年を超えた辺りから価値判断には関係がなくなる傾向が見られます。

 

⑥の管理体制ですが、建物規模と密接な関係になるのが管理人の勤務態勢です。最も懸念されるのが巡回管理という管理人不在マンションです。小規模マンションに多い管理方式で、いわば取締り(番人)がいないマンションはルール違反者が増え、秩序の乱れが常態化してしまう危険があるからです。管理とは、清掃が行き届いていればよいわけではないのです。

 

マンションは管理を買えといわれるほど重要な管理は、管理人がいればそれで良しといった単純なものではないものの、少なくとも週5日以上、1日6時間以上はマンションに勤務・滞在し、目配りをすることが必須なのです。

長期的なメンテナンスをいかに実行していくかは、資産価値の維持の観点では最も重要な項目と言ってもよいのです。築20年くらいまでは、どのマンションも見た目で差はできにくいのですが、その先は徐々に格差が生まれます。

管理費と修繕積立金のレベルもチェックしましょう。管理費の標準は250円/㎡です。タワーマンションの場合は300円/㎡が目安になります。修繕積立金は、長期(例えば20年)の支払額を合計して判断しなければなりませんので、ここでは省略します。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。http://www.syuppanservice.com

 

※こちらのBLOGも是非ご購読ください。

670本以上の記事があります。(https://mituikenta.com

ちなみに、4月25日の第679回は「便利で快適な暮らしにはコストもかかるが・・・」です。

 

 

★三井健太の新刊「選手村マンション・晴海フラッグは買いか?」

2019年5月13日発売アマゾンにて予約受付中

https://www.amazon.co.jp/dp/4023317926/

<プロローグより>

賛否両論が飛び交う注目の物件。「果たして買いか否か」その判断のために公平な指針となる書を目指したい。これが執筆動機です。

筆者の日常業務は、買い手(購入を検討している人)からのマンションの評価レポートを作成することですが、人気のマンションでも不安要素があるものなので、大規模になると複数の検討者からレポート依頼が届きます。晴海フラッグも戸数が多いこと、販売が数年に渡ることからみて、大量にご相談・評価依頼が来るだろうことを予想しています。交通便で疑問が残る物件だけに、判断しかねる人も多いだろう。そうなると大変だな、いったいどれだけ来るだるうか。

この本でレポートの前段部分を代用できたら助かるなどと思っています。

前後しますが、特定の物件だけで1冊の本にするというのは、冒険かもしれない。商品になるだろうか?そんな疑問も持ちましたが、走りながら考えようと決心して動きだしました。朝日新聞出版の調査協力の申し出があったことも決心の後押しになりました。

業界関係者は無論、購入を検討する買い手の迷い・悩みの解消に資するなら筆者の日頃のスタンス、すなわち購入者向けアドバイザーの立場としても本望であるし、売り手にとっても第三者の客観的な意見はマイナスにはなるまい。このように、筆者自身の心の整理をして臨むことにしたのです。

分譲マンションだけで4000戸余の極めて大きな分譲プロジェクトゆえに、また、選手村マンションという話題性もあって、全国的な規模で関心を持つ人が多い。ゆえに出版の意味は十分にあるとも思いました。

 

前著でも「晴海フラッグ」のことを少し書きましたが、情報が十分でない中で述べることができたのは、僅か12頁でした。

ページタイトルは、「選手村マンションの激安価格に思う」でしたが、内容は少々疑念に満ちたものでした。価格は格安とは思わないとか、BRTの運行に期待していいのかといったことでした。

前著を書き上げてから数か月の時間が経過し、販売活動(いわゆるプレセールス)も始まっています。この本が店頭に並ぶ頃には、検討者の手元には細部の情報が届くことでしょうから、この書では物件の細部について論評することは最小限に抑え、販売現場ではおそらく聞けない情報を主体に紹介しながら、読者の判断に有益な書にしたいと執筆しました。

<主な内容>

*晴海フラッグというマンションの位置づけを整理する

*バス便マンションの将来価値を考証する

*晴海フラッグに魅力を感じる階層を予想

*カギを握るBRT

*晴海フラッグの将来価格を予想する?

 

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