第255回 「なってしまった億ション」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

「結果億ション」とか「なってしまった億ション」」といった言葉が新聞や週刊誌で踊った時代がありました。 バブル時代のことです。

 

最近の新築マンションにも同様の物件が散見されるようになってきました。

今日は、高額マンション選びで注意したい点について書こうと思います。

億ションなんて別世界のことと思っている人も少なくありませんが、低金利の今、夫婦合算の所得があると億ションに手が届いているサラリーマン家庭が増えているのです。

 

新築マンションの価格動向

マンションの価格動向を見ていると、バブル経済勃興から崩壊の過程を例外として、1990年頃から2020年の今日まで、は新築マンションの価格は上昇を続けて来ました。

 

正確には、上がって止まり、横ばいが続いて、また上がり、そして今、ようやく天井にぶつかって止まったらしいのです。

3003年 2007年 2011年 2015年 2019年
首都圏 180万円 203 214 257 290万円
東京23区 223万円 282 268 326 371万円
     ※グラフに注意:2019年の23区は僅かながら低下※
 

昨年、23区の平均は坪単価で@371万円になりました。2011年に比べると38%余の高騰です。

 

@371万円は23区の平均ですから、都心では坪単価@500万円、@600万円といった物件が目白押しです。3LDKの標準を70㎡(約21.1坪)とすると、1億円を超えるものが普通のことになってしまったのです。

 

予算が7000万円程度の人は、50㎡程度の物件しか買えないことになってしまいました。

 

50㎡では、1LDKか、コンパクトな2LDKです。新築マンションを都心・準都心で探すと、こうなるのです。

 

新築が上がると中古も上がるが・・・

都心・準都心では新築には手が出ないと知り、中古を探そうとしますが、中古も新築に連動して上昇しました。

 

新築を諦めて中古に向かう人が増え、中古人気も高まり、物件によって差異はあるものの、総じて中古も値上がりしているのです。下図がその様子を顕著に示しています。(不動産流通機構の統計)


「新築と変わらない中古なんて・・・」とは何度も耳にしたご相談者の声ですが、安いはずの中古が高いと感じるのは、「中古は安くて当然」という先入観があるからでしょう。

 

中古マンションは、ピンからキリと言って過言でないほど価格差は大きいものですが、築20年以上の中古が近隣の新築マンションより高いなどという例も少なくないので、そのような印象を持つ人もあるようです。

 

新築が高い理由

話を戻しましょう。新築マンションが高くなった要因は、地価が上がり、建築費も上がったことに他なりません。

 

地価、すなわち用地費はなぜ上がったのおでしょうか?一口で言えば、マンション用地が枯渇してしまったからです。

 

ひところ、多くの法人が社有地を放出したときがありました。バブルがはじけて経営難に苦しんだ企業が増えただけでなく、資本市場における透明化などから、法人の所有地放出が進んだのです。1990年代半ばから2010年頃まで、社宅・貸しビル・駐車場などを次々に放出する企業が急増したのです。

 

土地は持っていれば値上がりして含み資産をもたらし、資金の必要が出たとき、なかんずく資金繰り窮したとき土地を担保に銀行借り入れを可能にします。可能ならば不動産を増やそうと企業は考え、地価は「買うから上がる。上がるから買う」という循環を作り出したのです。

 

立地条件の良い土地、面積の広い土地は資金力の高い法人に買い占められて行きました。戦後の企業繁栄の根幹には「土地神話」があったとも言えます。大きな土地、便利な土地、社宅に向く土地、貸しビルに向く土地等々、余力があったら土地を買えと多くの法人・企業が土地を買った時代が長く続きました。

高値の土地は、錬金術に欠かせないものとなって広く企業の買収熱を高めることとなりました。

 

広い土地は、個人では買えないのに加え、先祖代々の個人所有の土地は、相続税の重みに耐えられず、手放す個人が増えて法人の所有に変わって行ったのです。

 

ところが、法人・企業が所有地を手放さなければならない時がやって来ました。

現在の価格(時価)が購入時の価格(簿価)よりも高い場合に、その差額のことを「含み益」と言いますが、税務処理上いまだ販売されていない資産については、つまり、含み益には法人税がかからないことになります。インターネット技術の発展や普及などで、多くの会社で株式などの金融資産の売買が日常的になってきたことや、世界の会計基準では時価によるものがスタンダードになってきたことなどから、取得原価主義では対応できなくなってきました。

 

不動産などの長期的に保有するものについては、含み益に課税はされません。しかし、資金繰りや株式市場における透明性の観点から、含み益や含み損を常に開示しなければならないことに伴って、土地を放出する企業・法人が増加したのです。

 

多くの法人が社有地を放出したので、ここぞとマンション業者はそれらを買い漁ったのです。1990年代半ばから2000年代初頭のことです。しかし、限界がすぐにやって来ました。条件の良い土地は当然のごとく競争が激しく高値で取引されるようになって行きました。その結果、マンション価格は急騰したからです。

土地を買ってからマンションとして売り出されるまでのタイムラグから、2000年代後半(2005年~2010年頃)に価格はバブル後の低下局面から、再び高騰期を迎えたのです。先のグラフデをもう一度見ていただければ、その様子がお分かり頂けると思います。

 

その後、価格は一時5%ほどの低下を見せることとなりましたが、ほどなく再高騰の曲線を描くこととなりました。用地費、建築費、すなわちマンションの2大原価が高くなって2014年頃から再び上昇曲線を描き、今に至っているのです。(➡先のグラフ)

 

建築費が高騰したのは、2011年発生の東日本大震災の被害地復興のために数多くのゼネコンが社員を東北地方に送り込みましたが、このために人件費が高騰したためでした。

 

2010年以降、都市再開発やリニア新幹線工事、山手線の新駅開設と関連工事といったものが目白押しに進められてきましたが、それらも拍車をかけてマンションの建築費がうなぎ上りとなったためでした。

 

高いだけのつまらんマンション

価格高騰は売れ行きの悪化をもたらすものです。最近3年ほどは「マンション不況」と言って過言でないほど、売れ行きが低迷しています。

 

それでも価格は一向に下がらないのです。無論、マンション業者も高値は売れ行きの悪化をもたらすことを知っていますから、コスト抑制に努力は続けています。

 

しかし、ゼネコン業界は多忙で、建築費を下げることができないのです。人件費は下げられないからです。高値の土地を仕入れ、建築費も高いと知りながらマンション開発を続けているマンション業界ですが、少しでも価格を下げようと工夫を続けて要るものの、現実は厳しいようです。

 

その結果、苦肉の策として品質の低いマンションを計画する例が増えてしまいました、品質の低いマンションとは、「グレード感に乏しいもの」だけでなく、「プロでないと分からない・気付かないもの」という意味ですが、中でも「変化に乏しい設計。画一的な間取り、付加価値として評価されて来た設計の排除」などが一般化しているのです。

 

一言で言えば、「つまらんマンション」ばかりになってしまいました。億ションでも、億ション=高級マンションではなく、レベルの低い「なってしまった億ション」なのです。

 

新築は高過ぎるーそれでも新築を探しますか?

単純比較で高値が普通になり、品質の低下分を勘案したら割高な新築マンションばかり。稀に高品質で付加価値も高い優良マンションがお目見えしますが、価格は「とんでもなく高い」ので、「興味は持ったし見学にも行ったが、買える部屋はなかった、もしくは狭くて住めないタイプか条件の悪い位置の部屋しかなかった」という声ばかりです。

 

早い話が、新築マンションはロクな物がないのです。手が届いても、場所や向きやブランドなどを妥協しないと買えないものばかりというわけです。

 

それでも新築にこだわる人が多いのも現実です。

 

連動するはずの中古価格と新築価格との乖離が大きくなり始めた

新築にこだわる人が多ければ多いほど、中古マンションの人気は高まらず、従って価格も上がらないということになりますが、最近は「新築マンションが高いので中古にしました」という人も増え、先のグラフで一目瞭然ですが、中古も値上がりが続いているのです。

 

新築マンションは原価積み上げ式に価格が決まるので高くて売れないと知りながら、高値販売に踏み切り、かつ時間がかかっても高値のまま売り切ろうとします。

 

これに対して、中古マンションの売り手は取得原価が安かったはずなので、下げ余地があります。売れなければ下げる決断もしやすいのです。決定権者は夫婦二人だけなので、3か月売れなければ値下げしようとなり、値上がりは止まるのです。直近の傾向を見ていると、そこに気付きます。

 

中古価格と新築との乖離幅が拡大して行くでしょう。とはいえ、物件個々に見ると、新築に並ぶ高値でも買い手がすぐ決まるような例も少なくないのです。結局、優良中古は高いという状態は続くと見なければならないようです。

 

中古の価格は市場が決める

もうお分かりのように、中古価格は市場が決めているのです。言い換えれば、買い手が決めるようなものです。

 

買い手がなければ、渋々ながらも値を下げざるを得ません。売らねばならない事情があれば個人の売り手は値を下げるのです。その決断も、新築売主の法人と違って早いものです。

 

安いときに買っていますし、ローン残債も減っているので、買ったときの値より下がっても新築の売主ように困る度合いは低いからです。

 

高値でも買う価値があるかどうか。そこが肝腎

新築にしろ、中古にしろ、こんな高値のマンションを買っていいものか、そんなご質問が増えました。

 

しかし、「待っていたら値下がりする」という期待は持てないと見るべきです。統計的には「値下がり」という数値も出て来ることでしょうし、報道でも「マンション価格大〇〇%ダウン」などという見出しが出て来るのも近いと見ていますが、それを鵜呑みにしてはいけないと筆者は言い続けています。

 

合成の誤謬と言うのでしょうか?マンション・不動産の値動きをマクロに見るだけでは判断を誤ると筆者は予想しています。

 

また、高値と知りながら家族のためにマンションを買っても、金銭の多寡や損得とは別の次元で得をするはずです。「高値でも無理なく買えるなら買おう。マイホームは家族にとって必要なのだから」そう思えるなら損ではありません。この点を肝に銘じてマンション購入の是非を判断なさったらいいでしょう。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

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