「あいみつ君」出現に悩む理事長

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私はRJC48という管理組合の理事長中心の勉強会の代表をしています。懇親会じゃ!で飲み会にいくと、理事長の皆さん、微妙にダークサイドに堕ちかかっていて、無理解な理事やオーナーへの愚痴が酒の肴になっているケースは実に多い。

曰く、
-管理会社がちゃんと仕事してくれない!
-理事会役員がケチだけつけて自分じゃ働かない!
-住民が理事会を手下か召使と思っていて斜め上からの発言ばかりする!
・・・ とか。まぁ大抵理事長って孤独なもの。

この中で頻繁にでてくるのが、声高に『相見積もりはとったのか?』とか叫ぶ人が次々でてくることへの悩みです。

自分では相見積もりをとってくる能力も時間もないんだけど、他人にはそれをしろと主張する人を以下このブログでは、「あいみつ君」という言葉で呼ぶことにします。

多くの理事長は、「あいみつ君」が大嫌いです。ただしこれは「理事会のうまくいっていない状況」の現れ方の一つなので、次々あいみつ君が湧いてでてくるとしたら、理事長の理事会運営に問題なしとも言えないかもしれません。

あいみつ君が嫌われるわけ

うちでも理事会内に定期的に「あいみつ君」は現れます。その典型的な主張は、工事の見積もりはどんなものでも必ず3社から相見積もりをして、一番安い会社に発注しなさいというもの。大抵のケースで管理会社が”3社の”見積もりを持ってきた中から一番安いものを選ぶとさらに、端数くらいは切れとかちょっと値引きを求めてそれでまぁ満足します。



うちでも、さすがに数百万~1000万級の大型工事だと1社に特命受注ということはなく数社の提案の比較をします。相見積もりというよりは、全ての会社で実際に工事をすることになる現場監督を呼んでのコンペとするほうが普通ですが。こまごまとした日常的な修繕工事(小修繕は殆どのケースで数十万円の桁でせいぜい100万円です)で相見積もりを管理会社に要求することはありません。

理由は3つです:

① 相見積もりを要求することで、工事実施までの期間が延びるから
② 相見積もりをとったからといって安くなるとは限らないから
③ 自分でやらず、誰か(特に理事長)にやれと命じるのは悪い習慣だから

直すより壊れるほうが早くない?

うちの理事会では、管理会社など”特定の相手の会社”を経由してやってきた見積もりは例え複数枚あっても”1つ”と数えます。だって管理会社自身が工事を受ける見積もりになっているから。”3社”相見積もりをとるとなると、残り2社は理事会側で探さないといけません。自分でメールを打つか、電話をかけまくって探すことに。

昨年発注された工事は全部で40件。殆どが経年でどこか傷んできたか壊された(大抵保険がでる)の修理で高額の工事は少ないけど件数は多い。確か全部で年に1000万以下しか使っていません。ほぼ全数を、管理会社の見積もりで発注していますが、もしも相見積もりがいるなら80の見積書を理事会で誰かがもってこないといけない。営繕を担当している理事会の理事は、私とあと2人、委員会に他に2人いるだけ。この見積もりをとるために、他に連絡とったり見積り調査にアテンドする人手をその中からは割けません。理事会の人にも本業はありますからね。

理事会や営繕の委員会は月1回、大体1回で決めて発注までいかないと、壊れていて直していない箇所のバックオーダーを大量に抱え込んで、”直すより壊れてくるほうが早い”とかなりかねない。

どこか壊されて穴が開いているとかは、放置しておいて、その姿を住民や、購入・賃貸の検討者に見られてしまうことによる損害のほうが大きい。40のどこかしらの工事でごりごり全数で自分で相手を見つけて直で発注して、せいぜい浮くお金は2-300万というところでしょう。

まぁどうでもいいとまでは言わないけど、マンションの財政を本格的に立て直せるほどのお金は『節約だけでは捻出困難』です。理事会がそこにかける時間をつかって、一括受電やるとか、駐車場を外部貸しするとか、どかっと年1000万とか収支改善するほうが私は好み。

専有部が例え綺麗にリフォーム済みでも、そこまで歩いてくる途中で、どこか灯りが切れあまま放置で、さらにエレベーターホールのの石壁が台車ぶつけて割れたまんま放置されていたとして、検討する人が売り手の言い値で買いますかねぇ。萎えちゃってとりあえず1割引きねとか言いそう。

ゲストルームの障子に穴が開いたまま放置とか、半年前に壊された椅子が直ってないとかな話はよく聞きます。なんから即決して工事発注できるシステムを理事会がもっていないとこうなってしまうわけです。

重要: 壊れているものは、スピード最優先で皆の目につく前にさっさと直す

本当に安くなるの?

”あいみつ君”は自分じゃ動かないで、管理会社に3社みつもりもってきて?とか気安く言う。でも逆の立場に立ってみると、数十万とかの工事で本気で3社見積もりとかあり得ません。 どんな安い工事でも、大抵現場を見に来て工事箇所をみておかないで見積もりが出せるとかは普通ないわけで、3社見積もりにきて、うち2社は仕事がもらえない。全部で数十万の仕事で? もういきたくない・・とかなる。

管理会社は多数の協力会社と関係がありますが、”あいみつ君”の湧いてくるいけてない理事会の要望で、どんどん付き合いを失うわけにもいかない。管理会社だって自分の責任になる仕事だからからそれなりに信用のおける会社を紹介するわけで、その繋がりのほうが時にいけてないマンション管理組合との付き合いより大事だったりします。

”あいみつ君”は自分じゃ動かないから、3回の現調に付き合う筈はない。実際に本気で見積るのは1社だけで、あとの2社は現場みないでそれより高い見積もりをつくらせて出してくるだけです。協力会社は普通3社くらいはありますから順番に回せばよい・・・なら最初から1社でいいよね。

”あいみつ君”は大抵値切るのも大好きで、端数は切れとか、値切って通ると満足するところがあります。積算資料の分厚い辞書みたいなのみて、見積書を1行1行あいみつ君がチェックするわけはないから、もともとの見積もりを盛っておけば気が付く筈はないわけです。いつも値切られているなら細かい詳細とかださないで、”一式”52万円なんて見積もりをもっていって、端数は後から出精値引きをうけましたとすればよい。

※ 管理士の黒ひつじさんのブログを参照。
https://blacksheep-mansion.com/kanrigaisyakoujitakai/

重要; 管理会社に複数社相見積りの指示は安くはならないから無意味

悪い習慣つけになる

実は、どのマンションにも、とにかく1円もお金を使いたくないという病気にかかっている人は一定数いて、理事会の中にも入ってきます。 『1円も払いたくない病』は、実は非常に多くの管理組合が罹患している病気なのですが、よかったらこちらから。 これは私が書いたものです。
→ マンション管理組合の『1円も払いたくない病』
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10789

”あいみつ君”は理事会の中で発生することも多い。

このブログを読んでいるような”やる気のある”理事長さんはがんがんマンションを良くしていきたいのですが、理事会内にあるとにかくコストカット命な一派が、意識してか無意識にか、この規定を持ち出してくることが多いんですよね。

とにかく1円もお金を使わないように頑張れってのは、やってみればわかりますが辛くてやる気は出にくい。理事の”あいみつ君”が自分で見積もりをもってきてくれるのかと思いきや、大抵は、高い!なんとかしろとか、月に1回だけでてくる理事会で文句をつけるだけです。

ある意味ではケチつけるのが業務である監事でもやってるならともかく、理事会には自分で体動かさないで文句だけつける人は不要です。その人にやらせるべき。



この2派の対立構図、いつもどっちかに偏って決まっているなら、ケチケチ路線もあるいはありかもでいいのですが、理事会は人が入れ替わる。今年節約したお金は、余っているんだわーいとかで来年はいけいけどんどんな理事会が使っちゃうかもしれません。 いったりきたりを年々か続けているとこんな感じに。



<理事会の進む方向性の混迷>

この図みたいになっても困りますよね。実はこうなりかけてた時に顧問で雇った管理士事務所の作で、うちの理事会内の説明で使われたものです。もう8年ほど前かな。

口だけで文句をいう人が、他の人をただで使おうというのだけは許してはなりません。理事会内の理事同士の関係でもそうですし、総会で”相見積もりはしたのか?”と聞いてくるオーナー相手のもそうです。

正しい理事長の回答は、『私はやらないから、来月までにここにあと2枚見積書を持ってきてください。いいだしっぺのあなたをその担当大臣にたった今任命します』です。

大抵相手は、『俺様は忙しいからできない』とか言い訳しますから、『私も忙しいから無理ですね。気が合いますね!!』とかの返し技までが様式美ですね。大抵相手はぷんぷん怒っていて、理事なら翌月からでてこなくなったりするので理事会内の浄化は完了。腐ったリンゴは伝染するから・・・

重要: 理事会内に出現する”あいみつ君”は、他の役員をただでこき使おうというのであればばっさり斬る。

昨年ほかで書いたもの

では見積書のただしい求めかたは?みたいな話は既に長くなったので、ちょっと上級編にもなりますからまた気が向いたときに。

リノシ―マガジンで、主に区分賃貸のオーナーの方向けに月次で連載を始めてます。自分で住みたくない管理状態のマンションを賃貸で高く貸せるかというと難しいでしょうから、『区分賃貸のオーナーも自己居住のオーナーも利害は変わらない』と私は思ってますから論調はいつもと変わりません。

『管理費や積立金は単なる固定費じゃない。不動産投資でマンション管理が大切なわけ』
→ https://www.renosy.com/magazine/entries/4291

『区分賃貸マンションオーナーにとって、管理状態のよいマンション選び』
→ https://www.renosy.com/magazine/entries/4320

はるぶーの近況

あけましておめでとうございます!!(遅いわ・・)
うちのエントランスの正月飾り。



毎年4月が総会なのに加えて、家庭のほうも今ばたばたしていて、理事会関係も押し気味が想定されているので、総会議案書を入稿する3月末くらいまではあんまりブログは書けないと思いますが、年間では月2本平均程度をスムログにアップするのが今年の「目標」ということで。

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

5 件のコメント

  • 裏方理事長14回目 より:

    お説ごもっともです。
    RENOSY ASSET MAGAZINEでの記事は、編集者がいいのか、理路整然として読みやすいです。
    ただ気分は、こっちのウマシカ野郎口調のほうがぴったりです。( ´∀` )

  • タワマン太郎 より:

    面白かったです。

  • ぴ~す より:

    うちは極めて合理的なビジネスマンだった前任理事長がルールをつくって文書化しました。
    ・管理会社にアイミツとらせても意味がない。関連会社内で回すだけ。
    ・理事に自分でアイミツとってくるようなヤツはたぶんいない。言うだけのヤツは無視。
    ・アイミツとって安くなる差額が、自分の時給×かける手間より小さいならすべて無駄。
    という考えに基づき、20万以下は理事長即決、20万以上100万未満はちゃんと自分で見積とってくる理事がいる場合はとるし、いなきゃ理事会で協議即決。100万以上は原則ちゃんとしたアイミツをとる。
    って感じです。

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