第223回 「スラム化マンション。日本で起こるとしたら」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

今日は築30年を超える古いマンションを購入するときの目の付け所についてお話しようと思います。マンション評価のご依頼の中に「築古ちくふる」マンションが最近は増えていrためです。

 

マンションは築40年、50年と古くなったらどうなるのだろう?そのような心配がふと頭をかすめることはないでしょうか?

高齢化が進み、今でも人間の平均寿命は80年余ですが、やがて90年に延びるかもしれません。平均ですから、100歳まで生きる人も今よりずっと増えることでしょう。

 

マンションを新築で購入した場合、40歳の購入者が90歳を迎えるとき、マンションの年齢は50歳です。そのときマンションはどんな状態になっているのでしょうか?

 

新築マンションを購入した人でも、長く住めばいずれは老朽化の問題に直面するときが来ます。中古マンションを購入した人は、そう遠くない日に心配の種を抱えるようになるかもしれません。

 

購入したマンションの将来に思いをいたすことは大切なこです。

 

●マンションもいつかは建て替えるときが来る

マンションの躯体(構造体)の耐用年数は税法上では47年ということになっていますが、実際は100年くらいの寿命があると言われます。

 

最近は百年コンクリートを採用し、コンクリートの劣化対策を施すマンションも増えていますから、適切なメンテナンスを継続的に実施すれば、生きている間に建て替え問題が浮上することはないかもしれません。

 

ただし、マンションが人間の生活に適するものであるためには、コンクリートの躯体以外に、電気や水道、ガス、排水といった機能が残っている必要があります。これらの寿命はコンクリートよりはるかに短いのです。従って、これらのメンテナンスと新品との交換などの措置が必須になります。

 

設備のメンテナンスや交換に配慮したマンションも着実に増えています。数は少ないものの、代表的なのは「S&I方式」のマンションです。「S&I」とはスケルトン&インフィルの略で、コンクリートの骨格部分と、内装・設備を完全に分離した構造にすることでメンテナンスや交換がたやすくできるようにしたものです。

 

これら長寿命化の流れは、スクラップアンドビルドが普通だった日本の建築の変化の現われと言えます。特に分譲マンションの場合、スクラップにして建て替えることは簡単ではないからです。

 

マンションの建替えは、区分所有法によって所有者の5分の4以上が賛成しないと実現できないことと、住民(所有者)の費用負担の問題などがあって、相変わらず難しいのが現状です。

 

建て替えの実現までには長い年数がかかっています。たとえば、渋谷区にある「同潤会代官山アパート(現、代官山アドレス)」の場合では12年を要していますし、10年、15年といった例が普通です。

 

建て替えには巨額の費用がかかります。これをどのようにしたのでしょうか?

本来は所有者が負担しなければなりませんが、それぞれのき経済事情は異なり、費用の捻出は簡単に行きません。

 

これまでの建て替え実績を見ると、総合設計制度の活用などの手法で容積を倍増して「保留床」という財産を生み出し、それをデベロッパーに売ることで、建て替え費用に充てるのが一番です。

 

容積率とは、「敷地面積の〇〇%までの床面積の建築を許す」という都市計画法に定められた建築の要素ですが、東京都心の超高層ビルが建っているような地域は500%、郊外の一戸建て住宅街は100%というように幅があります。

 

仮に、容積300%の地域に150%程度と余裕を残して建てられた老朽マンションがあったとします(郊外の旧・公団マンションに多い)。そこに、限度の300%まで面積を増やした新しいマンションを建設すれば、増えた150%分(保留床と言います)を売却して建設費を生み出すことができるのです。

 

ところが、このような条件の民間マンションは少なく、最初から容積率限度一杯に建ててしまうために保留床を生み出すことは殆んど不可能なのです。期待するのは、容積率アップの規制緩和策ですが、地域は限られてしまいます。

 

●マンションのスラム化が社会問題に

マンションは、適切なメンテナンスをして行けば50年や60年は問題なく住み続けることができるはずですが、30年でダメになるという警鐘を鳴らす向きもあります。

 

30年で住めなくなることはないにしても住みづらくなって転居する人が増え、管理費の滞納なども増えて次第に賃貸マンション化し、やがては空室が多くなってスラム化したり、幽霊マンションのようになったりします。

 

これまでの例を見ると、平均40年足らずで建て替えが実行されていますが、短いものでは何と18年(旧住宅公団の宇田アパート・東京都渋谷区)という例もあります。この短さの原因は、高度経済成長時代に「質より量」優先で建てられたことにあるのです。早く言えば、先のことまで考えられていなかった粗悪な集合住宅が多かったためです。

 

最近のマンションには、そうした粗悪なものは少ないようですから、どんなに短くとも50年以上は住めるだろうと考えられますが、問題は管理組合で建て替えの機運が起こって来るときのマンションの状態にあります。

 

建て替えの必要が起こる状態のマンションは、居住性が相当悪化しており、所有者が賃貸している比率も高く、最悪の場合はスラム化している可能性もあります。

そうなると資産価値も何もあったものではありませんが、これは既に現実の姿として起きていると、あるテレビ番組が取り上げていました。

 

そうだとすると、これは他人事ではありません。本当のところはどうなのでしょうか? マンションに住むときには、ある覚悟、覚悟が大げさであれば心構えと言い換えますが、そのようなものが必要なのかもしれません。

 

●そもそも「スラム化」とは?

①都市のスラム化

スラム (Slum) と聞いて、あなたはどのような光景を想像されますか?

スラムとは、都市部で極貧層が居住する過密化した地区のことであり、スラム街、貧民街などとも表現されます。都市の他の地区が受けられる公共サービスが受けられないなど荒廃状態にある状況を指します。世界中のほとんどの大都市にスラムがあると言われます。

 

発展途上国の多くのスラムは、農村部などからの移住者などが首都などの大都市に、必要な労働力を超えて押し寄せること、すなわち労働力超過によって、彼らは行き場を失い、環境の悪い町外れなどの未開発の地域に無秩序に住み着き、スラム街が形成されて行きます。

 

多くのスラム街では、消防車や救急車といった非常用車両の通行ができないほど道が狭く込み入っているため、火事が広がって多くの犠牲者を出す、急病患者や怪我人が助からないなど生活環境を悪化させる要因になっていると言います。

 

また、ゴミ収集車の立ち入りができないためにゴミの回収から地区全体が外されていることがあり、衛生状態を悪化させる要因になっている。いくつかのスラムは、ゴミ処理場の近くや中に作られており、ゴミのリサイクルで生活費を稼いでいたりします。

 

こうした光景は、日本のテレビ番組でもいろいろな形で放映されて来たことから、一度ならず見た人も多いことでしょう。日本はそこまでのスラムはありませんが、諸外国に比べて失業率が低く、貧困の程度もましな方だからと考えられます。

 

②マンションのスラム化とは

マンションのスラム化とは、上述の都市のスラム化になぞらえて表現されたものと考えられます。適正な維持管理が滞った結果、マンションが建物・コミュニティー共に荒れていくことを言うのです。

 

スラム化が進みやすいマンションの傾向としては、次のような要因が考えられます。

 

①築年数が長く、区分所有者が高齢化しているマンション

②区分所有者の殆どが住んでいないワンルームマンションやリゾートマンション

③繁華街に立地し、専有部分に夜の店舗が入ったり賃貸化した住戸が多いマンション

④賃貸化住戸にワンルーム系が多く、モラルの低い若者が入居してしまったマンション

 

こういったマンションでは、「管理組合の財務」と「住人同士のコミュニティー」の両方が崩壊し、「建物・設備のメンテナンス」も行われず放置されるため、内外からスラム化が進行します。

 

マンションの住人も次第に老いていきます。30歳~40歳代で購入した場合であっても、30年経てば60歳~70歳代となり、当初は似たような境遇の人が購入したかもしれませんが、長い間には事情が変わります。収入や財産においても、かなりの格差が生じていたりするものです。

 

その結果、修繕積立金、管理費用を払わない人も現れます。その結果、大規模修繕が思うようにできなくなります。思うような修繕・管理がされないことから、次第にそのマンションから出て行く人が増え、ますます資金難に陥ります。そのようにしてどんどん悪循環が進み、マンションが手入れもされず、見栄えも住み心地も悪くなってスラム化していくのです。

 

スラム化マンションの実例を簡単に紹介すると、次のようなものが挙げられます。

 

・外壁は汚れ、タイルも一部剥落している。

・ベランダや廊下の手すりはさびて落下しそうな印象。

・水道の蛇口をひねると赤水が出る

・非難ハッチが錆びて消防点検のたびに指摘されるが改善されない。

・自転車を共用部に放置

・ベランダ喫煙

・ゴミ出しマナー荒れる

・共用施設の乱暴な扱い、破壊

・管理費と修繕積立金滞納続出・・・etc.

 

●スラム化が進みやすい中古マンションに注意

一般的に、築年数の経っている中古マンションはスラム化しやすいと言われています。新築時ほどメンテナンスに情熱を傾ける人もなく、修繕積立金も集まりにくくなり、半ば放置状態になって行きます。

 

スラム化しやすいマンションの特徴として、テナントが入ったり、最初から賃貸向けワンルームが組み込まれたりしている複合マンションなどが挙げられます。

 

高すぎる管理費なども問題で、管理費や修繕費を滞納する人が増えます。そうなれば、修繕もろくにできず、建物もコミュニティも、そして財政も悪化していきます。

 

中古マンションを探すときは、スラム化しにくいマンションを見つけることが大事です。所有者が実際その物件に住んでいる比率が高い場合や、立地条件の良い物件は比較的荒廃しにくいと言われます。

 

スラム化の問題は、決して老朽マンションに限って見られることではありません。築20年にも満たないマンションでも、スラム化の影は迫っています。暗い、汚い、空き家が多いマンションがスラム化の始まりです。空き家が増え、次に管理費が集まらないために管理や修繕ができなくなったマンションの行き着く先はスラム化です。

 

こうしたマンションは特異なケースでも外国の話でもありません。日本でもその兆候のあるマンションは見られます。特に激安物件には要注意です。すごい掘り出し物だと思って実際見てみたら、スラム化が始まっている物件だったということが多いと思った方が良さそうです。

 

物件を購入する前には、その部屋の管理費の滞納がないかも調べましょう。それだけでも、スラム化マンションを掴んでしまう危険から遠くなります。

 

少子化、高齢化を迎えた日本では、こうしたマンションが増えるのは必然です。入居者が高齢化して行く中で次第に活力を失い、独居化し、そして入居者が亡くなった後には入る人もなく次第に入居者が少なくなってスラム化してゆくというリスクは多くのマンションが抱えることになります。

 

こうしたマンションは、都心や下町を連想する人もあるかもしれませんが、地方都市や都市の郊外に立地するマンションにも危険が迫っているのです。

 

●スラム化したら二束三文でも売れない

遠くない将来、スラム化したマンションに見切りをつける人も増えていくことでしょう。しかし、売却は困難です。

 

スラム化を防ぐ方策は、居住者・所有者の管理意識を高めるに限ります。みんなの材残はみんなで守るという意識を共有することです。

 

それを、建物が新しいうちから根付かせて、所有者が変わってもマンションの伝統とすることなのです。一流の、あるいは評判の大手管理会社だから大丈夫などとは思わないことです。管理会社任せでは、将来必ず行き詰まります。

 

この記事を読んでもピンと来ない人が多いと思いますが、ぜひ頭の片隅に残してほしいと思います。

 

スラム化を資産劣化と読み替えていただいても結構です。決して大げさな話ではないことを添えておきます。

 

今日の記事は、現実の問題としてスラム化、そこまで進んでいなくても資産価値の低下につながる劣化(建物とコミュニティとも)が皆さんの住む、または買おうとしているマンションに訪れないことを願いながら続けます。

 

●老朽化マンション・負のスパイラル

少し古い話ですが、2017年4月6日のTBSテレビが朝の報道番組で取り上げた話題を思い出します。

 

番組では、ベランダ崩落事故や、天井から雨漏りするマンション、バルコニーの軒裏に穴が開き、鉄筋がむき出しになったマンション、鉄製のバルコニー手すりが錆びてぼろぼろになったマンションなどを紹介していました。

 

「これら問題マンションのひとつは、45年間、一度も大規模修繕をして来なかった」とTVは語りました。修繕積立金すらないということでした。賃貸マンションでなく、分譲マンションでのことなので俄かには信じられない報道でした。

 

番組では、1.老朽化して危険なマンションまたは雨漏りなどによる不快なマンションからは転居者が続出し、居住者が減る。2.居住者が減ると管理費・修繕費が集まらない。3.管理費等が集まらないと老朽化は更に進む。1~2~3~1と負のスパイラルに陥ると結んでいました。

 

適時・適切な修繕をしなければ、コンクリ―といえども建物は必ず劣化します。筆者がマンション業界に飛び込んだとき、最初に教わったことは、新築マンションは完成したその瞬間から老朽化の道を歩み始めるということでした。そのときの上司の言葉が今も忘れられないのです。

 

そのせいでもないのですが、私たちが住んでいるマンションは何年の寿命があるのだろうかという疑問を長いこと持ち続けています。

 

何年か前に「人間の寿命・マンションの寿命」というタイトルでブログ記事を書いたことがありました。日本人の寿命がもうすぐ90歳になろうかという現在、マンションの寿命の方が短いなどということはあって欲しくないという思いから、筆者は常に注目しているテーマです。

 

以下はマンションに何年住み続けられるかという問題です。

 

このテーマを選んだのは、新築マンションの供給が低迷し、マンション探しをするうえで中古の選択は避けられなくなっているため、重要なものと考えてのことです。築浅のマンションなら心配は少ないものの、予算の関係で築20年、30年と古いマンションを検討せざるを得ない人が少しずつ増えているように感じるだけに、再び取り上げることにしました。

 

●新築マンションなら永住は可能?

マンションってそもそも耐久性はどのくらいあるのでしょうか?

 

業界人になったばかりの頃、先輩から教わったのは「60年」でした。しかし、実際に住人がいるマンション(鉄筋コンクリート造の集合住宅)で最も長く生きた(耐えた)マンションは同潤会アパートの上野稲荷町ではないかと思います。

 

建築された時期は確認できませんが、同潤会アパートが各地に建設されたのは1921年~1945年と記録されているので、およそ70~90年で姿を消したことになります。

 

最後は住まいではなかったけれど、使用され続けていたものでは「同潤会青山アパート」が続きます。「同潤会青山アパート」は、ご存知の「表参道ヒルズ」に形を変えています。

 

ついでに言えば、上野稲荷町は三菱地所レジデンスによって「ザ・パークハウス上野(全128戸)」という名の分譲マンションに生まれ変わって2015年3月に竣工しています。

 

同潤会アパートは大正時代に起こった関東大震災の復興住宅として東京・横浜の23か所に建てられたもので、鉄筋コンクリート造3階建ての賃貸アパートでした。何年か後に同アパートは居住者を中心に払い下げとなり、役目を終えた同潤会(財団法人)は解散したと伝えられています。

 

同潤会アパートの建て替え前の姿を記憶している人は少ないと思います。知っているのは、所有者と建て替えについて長きに渡り協議を続けたデベロッパー各社の開発や企画、建設部門の担当者や設計家、研究者、建築家など、ごく少数の人たちです。

 

筆者の脳裏にはっきり残っているのは、原宿と青山通りを結ぶ表参道沿いにあった「青山アパート」ですが、先に述べたように、ここに居住者はなく、3階まで店舗だったと聞きました。殆んどブティックか雑貨店だった記憶しています。

 

少し前まで住まいだった名残りを感じるのは、屋上に突き出たテレビアンテナでした。世界的にも有名な原宿、ファッションの街として外国のブランドショップが建ち並ぶ表参道。その道沿いの年輪を重ねた森に隠れるように建ち並ぶ低層の店舗群は不思議な光景でした。

 

ともあれ、「青山アパート」晩年、住宅としては生きられなかったのです。

 

コンクリート構造は、メンテナンスをきちんと行えば、100年くらい持ちこたえるのかもしれません。メンテナンスを適宜行わなければ冒頭で述べたTV報道のような危険な状態に至りますが、同潤会アパートの例からも80年くらいは住み続けることができた、すなわち雨露をしのぐことだけは可能だったのですから、手入れ次第では100年の寿命はオーバーな観測でも見解でもないのです。

 

最近の新築マンションは100年コンクリートを謳う物件や「劣化等級3」を表示した高耐久マンションも増えています。

 

しかし、住まいはコンクリートの箱があれば足りるわけではありません。エレベーターも必須ですし、電気設備、給排水・衛生設備、電波受信システムといったものが不可欠です。

 

簡単に言うと、マンションは構造と設備に分類され、構造は60年~100年、あるいは200年の耐用年数があっても、設備は15年程度しかないもの、長くても40年程度(エレベーターなど)です。部位によって寿命は大幅な差異があるのです。

 

コンクリートの構造部はしっかりしていても、設備が寿命に達してしまうと、様々な不具合が発生し、生活が困難になります。不具合は居住者のストレスを溜めこむことでしょう。

 

快適であるはずのマンションが不快なマンションとなって耐え難くなって行きます。そうなると脱出者が次第に増えて行きます。売却という道を選択する人、賃貸に付す人に分かれるにしても、オーナーは老朽化マンションから去っていくのです。

 

売却によって新オーナーとなった人はともかくも、賃貸したオーナーの愛着も薄らぐのか、メンテナンスが適切に行われないだけでなく、修繕積立金の増額も決議に至らず、やがてはメンテナンス放棄状態に陥ります。そうなると、売却額も二束三文です。

 

ところが、中には築50年に達していても、メンテナンスがきちんと行われているマンションは、「Vintage」の称号をもらうほどの、外形的にも状態は良く、住み心地も良いマンションとして定評がある例もあります。

 

オーナーは宝物でも愛でるように大切に扱い、売りに出す人も少ないのです。売り出せば、今も結構な高値で買い手がつくと言います。

 

Vintageと呼ばれるようなマンションは都心の一等地に立っていて、それだけでも価値ある物件なので、買い手も富裕層であるケースが多く、メンテナンス費用の支出や積立金の増額決議もスムーズに運ぶのでしょう。その結果、建物の劣化は進まず、大規模改修のたびに何度も若返って、今に至っているのです。

 

結局、マンションは新築であろうと既に30年を経過している中古マンションであろうと、余命はメンテナンス次第ということだと分かって来ます。

 

●築30年の中古を買った場合は何年住めるか?

築30年のマンションを買いましたが、それから5年も経たないうちに不具合が頻発し、とても居心地が悪いのです。ストレスも溜まる一方です――ある日、このようなお便りを頂きました。

 

ご依頼の内容は、買い替え先のマンションについてのものでしたが、今度は失敗しない買い物をしたいという祈りのような心情が伝わって来ました。

 

普通に考えると、築35年程度ではどんなに短くとも20年以上は住めるはずですが、管理組合の運営がうまく行っていないらしく、小さな修繕ですらスムーズに決議できないため、気持ちよく暮らせないというのです。

 

筆者の知る(かつて短期間住んでいた)マンションは、今年で築36年になるのですが、とても36年を経過しているとは信じられない美しさを保っています。メンテナンスがスムーズに行われているのでしょう。

 

メンテナンスが適切に行われるマンションの共通点は、資産価値の維持に関して、オーナー全員が理解と協力を惜しまないことにあるようです。

 

大規模な修繕は勿論のこと、美観を損ねる行為の禁止ルールを厳守すること、当初はなかった衛星放送受信設備の新設も組合として実施し、つまり、居住者が勝手きままにバルコニーの手すりにアンテナを据え付ける行為を禁じたことなどが代表的です。時代とともに新たな設備が登場するので、その更新や新設、つまり「改良」もしっかり実行しているのです。

 

また、年代を感じさせない大きな要因は「植栽」にもありそうです。築36年を超えて年を感じさせないのは敷地内の樹木が高く大きく生長して建物の古びた印象を消してしまうからではないかと思います。

 

●築50年のマンションにはあと何年住める?

カギは、手入れにかかる費用にあるのではないかと思うのです。老朽化が進むに連れて修繕費は嵩み、積立金不足に陥るのではないか? そうなれば、老朽化の進行を止めることができなくなって住みにくい状態になる。そうならないようにするには、財政的な裏付けが必須です。

 

マンションは寿命が近づくに従い、不具合があちらこちらで露呈してきます。排水不良や水勢の低下、壁面の劣化・タイルの剥離・崩落、サッシ周りに隙間が発生して風が入り込む、換気装置の機能不全などが目立ってきます。

 

とりわけ、コンクリートのひび割れが雨水の浸透を許し、鉄筋の錆び、そして膨張、爆裂といった症状は、耐震性の劣化にも重なります。そして、雨漏り、結露、ジメジメ感といった住み心地を悪化させる現象が増えて来ます。何十年も経つと、それまで応急措置を繰り返して来たものの、たび重なる修繕に根本的な対策の必要度が増して行きます。

 

しかし、根本的な解決策が講じられないまま時が経ち、不具合があまりにも頻繁になると、修繕の意欲も薄れ、劣化した箇所を放置したまま、すなわちメンテナンス放棄という事態が起こります。管理費の滞納や修繕積立金の枯渇などが、これに拍車をかけます。

 

日常管理もおろそかになり、共用部分にゴミが溜まり、自転車置き場が雑然としたまま、壊れた機械式駐車場は使用不能、メールボックスの投函扉は半分開いたまま。エレベーター内部は傷だらけで汚れもひどい。

 

入居者の中には、あまりにも住み心地が悪いので、やがて賃貸するか売却して住み替える道を選ぶ人が増えます。その結果、賃貸戸数が増えますが、賃料が高くないため、入居者の質が問題になったりします。それが更に住み心地を悪くさせます。

 

すべてのマンションがそうなるわけではありませんが、入居者が足並みを揃えて維持管理に関心を持ち、お金(修繕費)をかけて改修を適切に行ないながら、また管理規約をしっかり守って共同生活を営み、共用部分も我が家の一部としてみんなで慈しんで行けば、50年先も快適な住まいであり続けることでしょう。

 

しかし、現実はそうならず、50年も経ったマンションは見かけ上「まだ住める」ものであっても内実はスラム一歩手前に陥っている懸念があるのです。そのため、50年マンションを買った場合、入居してから5年も経たないうちに様々な障害・問題が表面化して来るかもしれません。

 

チェックポイントを定めてしっかり調査しなければ、高経年マンションは危険なのです。

 

何をするにも管理組合としての財政に余裕がなければなりません。その意味で、第一のチェックポイントは積立金の残高が1軒当たりでいくらあるかです。

 

また、長期修繕計画書(収支計画表)を見せてもらい、赤字になる年がないか、積立金増額計画の実績と予定の両方を見ることです。そこから見えて来るものがあるからです。勿論、修繕履歴を辿って見ることも大事です。

 

マンションは人間の体と異なり、健康診断を行いながら手入れをし、ときに手術をするなどのメンテナンスを適切に行って行けば、必ず長生きできるものです。

 

●これまでの50年マンションとこれからの50年マンション

昔のマンションは後々のメンテナンスや給排水管の交換を想定していなかったものが多いのです。仕方なく、外壁を這わす格好で新しい配管を設置している例も見られます。

 

ご存知の読者も多いと思いますが、給排水管の横引き管は専有分に当たるので、リフォームの際に自分の意思で交換することができます。しかし、コンクリートの中に埋め込まれてあれば、交換は不可能です。

 

また、上下を貫通する竪管(たてかん)は個人ではどうにもなりません。管理組合全体として工事をするかしないかを決めることになります。

 

古いマンションは水流が弱いとか、排水管が詰まり気味であるといった不具合が出て来ます。また、昔の水道管は鉄製である場合が多くこれが赤水発生の原因になっているマンションもあります。これらを直すために交換が必要となったとき、その工事のための余裕のスペースがない場合もあるようです。

 

最近のマンションの多くは長期的なメンテナンスに配慮した設計になっているものも多いので、見かけ上も美麗で、長く快適に住んで行くことが可能かもしれません。とはいえ、技術的に可能ではあっても、財政の裏付けがなければ適切なメンテナンスはできません。

 

また、オーナーの大半が理解と協力を惜しまない管理組合でなければ、これまた実現は困難です。

 

●修繕積立金を最初に沢山集金してしまおう!

これは最近のデベロッパー各社の合言葉のようです。修繕積立金は分譲時から多額に徴求する例が増えていることから推察できます。

 

専有面積1㎡当たりで、初期に100円(70㎡なら7000円)程度とし、5年後には1.5倍に上げる、引き渡し時に一時金として毎月の設定額の80倍~100倍(50~70万円)といったケースですが、少し前までは毎月80円/㎡ 以下、一時金は60倍というのが標準的でした。

 

かつて、マンション分譲という商売は手離れの良いビジネスだと語ったデベロッパーの社長がいました。売ったら後は管理会社に任せておけばいい、悪く言えば「売り放し」でよい商売でした。建築上の問題でクレームが来たら施工会社が処理してくれる、という思いもあったようです。

 

一面これは今も真理ですから、修繕積立金を多額に取るというのは、販売の足かせになる恐れもあるだけに、デベロッパー(売主)としては積極的に取り組みたい方策ではないはずです。にも拘わらず、増額策は何によるものでしょうか?

 

管理会社の要請でしょうか?値上げを提案しても、管理組合が賛成しないと財政が欠乏して維持管理がやりにくいので、最初から資金的な余裕を作っておきたいとでも売主に要望しているのでしょうか?

 

それとも、建て替えが殆んど不可能な分譲マンションは将来、社会的なストックとして残るだけに、老朽化したマンションが増えて街までがスラム化するようなことがあってはならない、分譲した当事者としても「我関せず」というわけにも行かない。こんな企業の良識がそうさせているのでしょうか?

 

あるいは、国の指導によるものでしょうか?

 

おそらく、要因はいくつかが交じり合っているのでしょう。都区内には築40年を超えるマンションが既に2000棟以上もあるのです。あと10年すると50年マンションが2000棟となります。

 

老朽化マンションは、放置すれば社会問題として無視できないものになる。官民ともに、解決案を見い出そうと日々考えているのです。そんな中、メンテナンスをしっかりやって行こう。そのための財政的な裏付けをしっかり作って行こう。こんな空気が生まれていると見るべきでしょう。

 

こうした動きは、20年くらい前から始まっていたと思います。時代の潮流として目立ってきたのがこの5年くらいでしょうか?

 

高経年の中古マンションを検討するときは、耐震性能とともに「修繕積立金の残高(総額ではなく1戸当たり)」を聞く、修繕履歴を見る、長期修繕計画書を見るといったチェックポイントを持ちましょう。

 

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新築マンションの供給戸数が激減しています。需要に見合うだけの建設ができなくなっているのです。理由・背景は「用地不足」と「建築費の急騰」にあります。

 

新築志向の強い日本国民ですが、最近は積極的に中古を検討する人が増えています。「新築がないなら仕方ない」という志向変化です。そのせいで、中古価格も急上昇しています。今後マンションはどこへ向かうのか、筆者も注視して行こうと思っています。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com)

 

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ちなみに、10月10日の第695回は「40年間も倒壊しなかったのだから大丈夫とは言い切れない」」です。

 

 

 

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