第62回  リセールバリューを考えるときの「稀少価値」という概念

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

 

 

マンション購入に当たり、その応援をするのが筆者の生業ですが、ズバリの批判や冷徹な意見を述べることも少なくはありません。その結果、ときにご相談者を憤慨させ、落胆もさせます。しかしながら、いつか感謝されることもあると信じて信条を変えずに実践して来ました。

 

さて、マンションに理想のものは存在しません。どこか(枝葉末節の部分)を妥協して選択することになるものです。問題は、どの部分を条件から外してはならないかという点です。その視点から見れば、ある物件は合格であり、将来も高い価値の維持が期待されます。しかし、別の物件は満たすべき条件を満たしていないということがあります。

 

将来価値を意識したとき、外してはならない条件というものがありますが、個人の価値観から、あるいは家庭の事情から将来価値に期待できない物件を選んでしまう人があります。

 

「それでも構わない、この土地・街が好きだからここに住みたい」という人もあるでしょうし、駅から遠いのが難点だが、予算を抑えたい事情から敢えて不便な物件を買うと決めている人もあるのです。

 

品質はさほど悪くないが値段は驚異的な安さのユニクロ製品を買わず、1着何十万円もするブランド服しか目に入らない人も日本人には少なくありません。カローラよりBMWを選択する人もたくさんいます。

 

これらと同じで、好きな物は高くても高いとは思わないのが「価値観」ではないでしょうか? 人間は経済合理性だけでは行動を決めないものです。

 

結局、何を基準にして選ぶかは人それぞれなのです。買い手にとってふさわしいマンションかどうかは、メール相談の場合は進言することは困難なので、一般的な範囲に留まることになります。そこで、筆者は個人の価値観や事情に直接関係のない「将来のリセールバリュー」の視点を意識してコメントすることにしています。

 

さて、将来価値を意識したとき、筆者はどんなキーワードによって対象物件を考察、あるいは分析しているのでしょうか? 今日は、キーワードのひとつ「稀少価値」のお話をしようと思います。

 

●稀少価値という視点

マンションは建物が完成した瞬間から劣化の時計が回り出します。半年でも人が住めば中古となり、新築に較べられて価格は安くなります。しかし、10年経っても、周辺の新築より高く評価される(取引が成立する)マンションが存在します。

 

中古であること以外は、全て新築を上回る価値を持ち、建物の劣化を補って余りある価値を市場が認めた結果の価格なのです。

 

一方、一定の地域において10年前後の中古マンションは、同地区の新築マンションに対して80%以下の取引額となっているケースに遭遇します。80%以下と言っても幅がありますが、下は70%程度です。この10%の差は、駅からの距離(利便性)、環境(緑・騒音)、階(眺望・日当たり)、間取り、グレードといった要素によります。

 

この10%程度の差に収まってしまうのは、「どれも似たり寄ったり」の物件ばかりであることを意味しています。

 

しかし、20年以上の物件になると、この差は広がる傾向があります。リフォームによってバリューアップした中古が登場してくるからです。しかし、新築を上回ることは滅多になく、新築対比で80%くらいが上限、下は50%といった幅になるケース(地区)が多いのです。

 

こうした市場分析を作業として行っているとき、飛び抜けた価値を持つ事例に遭遇することがあります。そのような価値あるマンションは例外なく高い「希少性」を持っています

 

稀少性は、場所が稀少、全体規模が稀少、間取りが稀少、広さが稀少、などと分解して考えられます。これらの稀少性とはどのようなもので、どう資産価値につながるのでしょうか? 次で、その話をしましょう。

 

1. 場所の稀少価値

場所の希少価値とは、例えば地下鉄の駅にマンションの地階から傘なしで行けるなどというのがあります。

 

駅まで徒歩3分と近い商業地にありながら、目の前に公園があるという例も稀少です。

 

敷地が広い一戸建て住宅が整然と立ち並ぶ住宅街は、世田谷区や杉並区などの私鉄沿線に見られます。公園も多数配置され、一帯は緑濃い環境となっています。このような街は駅から5分も要しない距離にありながら、駅前の喧騒がウソのように閑静な街です。

 

大抵、「第1種低層住居専用地域」に指定されており、高いマンションは建てられませんから、採算が合わないことも多く、新築マンションの供給は困難です。たまに、お屋敷と呼べる区画の大きな家が売り出されて計画されることがあります。3階建ての低層マンションで、価格も安くないものですが、その希少性は群を抜き人気を集めます。

 

 

2. 規模の稀少価値

マンションの価値を判定する要素のひとつに「大規模であること」があります。規模が大きいマンションは、大抵の場合、共用施設がいくつも設けられていたり、豪華なエントランスホールが造られていたりと付加価値が高いからです。規模そのものが存在感という価値を生んでいる場合もあります。

 

ところで、東京圏では大規模マンションなど少しも珍しいことはありませんが、どのくらい大きければ希少価値が高いと言えるのでしょうか?

 

これに答えはありません。相対的なものだからです。

 

タワーマンションが林立する中では30階では目立たなく、50階くらいの高さがなければ存在感をアピールするには足りないでしょうし、200戸の大規模マンションも、そばに500戸のマンションがあれば見劣りしてしまうかもしれません。

 

反対に、100戸未満のマンションばかりの街にあっては、200戸のマンションは目立つ存在になるに違いありません。

 

昔ながらの商業地は小規模な商店や小型のビルが密集しているものですが、そのような場所のマンションもまた小規模です。駅から近くて便利という点では価値があっても、周囲のビルの列に埋没しているマンションが多いものです。

 

倉庫や工場などの広い敷地がなく、売地として出て来るのは駐車場にしていた土地や、古い個人所有の小型ビル、少し大きいもので廃業した旅館跡地などで、そこに建てるマンションと言うと、大抵ワンフロアに3戸か4戸しかない10~14階建てのペンシルマンションなのです。

 

そのような小規模な建物が多い街にあって、複数の地主からまとめて土地を入手するデベロッパーがあります。いわゆる地上げという形で広い敷地がもたらされます。また、多数の地主同士が組合を結成して区画の大きな再開発を行うこともあります。

 

敷地が広ければ立派なマンションを計画することができます。しかし、これらはレアケースです。ゆえに高い稀少価値を持つマンションとなるのです。

 

 

3. 間取り・広さの稀少価値

単身者向きのコンパクトなマンションが多いという都心の地域において、70~80㎡台のファミリータイプが稀少価値を持つというケースがあります。

 

コンパクトマンションが多いということは、その需要が多いことを教えてくれていますが、ファミリータイプの需要がないわけではありません。

少ないながら存在します。問題は、その需要量に見合う供給がなされているかにあります。

 

マンションメーカーは、数の多い層、すなわちボリュームターゲット向けの商品を中心に開発しますから、少数の需要に対する供給はなおざりになるものです。多数を設定する企画はリスクが高いので、無難なタイプを中心にしてしまうのです。

 

若者に人気のある「住んでみたい街ランキング」の上位に常に挙がる街は、駅周辺におしゃれなブティックや雑貨店、レストランの有名店、手作りのケーキの店、ベーカリーなどが多数集積していて飽きが来ない街を、どちらかと言えば雑多な街を形成しています。

 

しかし、小規模ビルの多い街並みになっていて、マンション適地は少なく、それでいて地価は高いのです。

 

このため、付加価値の高い高級マンションは中々企画が難しく、価格だけが飛び抜けた平凡なマンションになりがちです。そこで、分譲価格を抑えるために面積を圧縮する計画となるのです。

 

結局、その地域の中古マンションに占めるファミリータイプの累積戸数は非常に少ないままで推移することになります。

 

このような地域でファミリータイプ中心のマンションが計画されるのは稀で、たまに発売されても駅から徒歩10分以上を要する場所になることが多いのです。

 

 

●希少性が高い価値を維持する

マンションに限らないことですが、物の値段は需要と供給のバランスで決まるところがあります。品物が少なく、欲しい人がたくさんあれば値段は高くなります。希少価値とは、将にこのことです。

 

希少価値を、場所、規模、広さの3種に分けて説明しましたが、これらのいずれかに該当する物件を購入できたら、おそらく中古になっても高い価値を維持することとなりましょう。

 

中古マンションには、新築並みの価格で取引されるケースがあります。

一般的には、港区や千代田区、渋谷区などにある高級住宅街のマンションで、価格も1億円を超えるもののことです。

 

新築並みと言いましたが、正確にはこうです。

建物は平凡で、場所も高級住宅街と同じアドレスではあっても、そのはずれにあって高速道路に面していたりするため、あまり良いとは言えない新築物件。それとのと比較によって、新築並みというわけです。

 

くどいようですが、言い換えます。例えば築20年以上を経過していても、中古マンションの方がはるかに良い立地条件を備えており、それが同エリアではあってもピンスポット的に良くない立地の新築価格と同じ。若しくは逆転しているということです。

 

実は、新築並みの中古相場が形成されている場所は、上記の高級住宅街に留まりません。東京都内には、そんな場所が多数あります。築10~15年くらいまでなら、新築相場と比べても大差なく、何故こんなに高いのかと驚かされることがあるのです。

 

その理由を調べて行くと見えて来るのが、場所、規模、広さの3要素における希少性なのです。

 

購入マンションの将来価値を測るには、「希少価値」をキーワードに検討してみることが必要です。マンション探しのチェックポイントに加えておきたいものですね。

 

・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございます

◆三井健太のマンション相談室

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