第52回 気を付けたいリノベーション中古

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このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています

 

中古マンションを探している人の中に、あえて築30年以上の古いマンションに限定している人があります。

 

狙いは、安いからというだけでなく、大胆なリフォームをして好みの間取りにしたいという願望があるからです。大胆なリフォームという表現は適切ではありません。リノベーションと言い換えます。

 

また、不動産業者やリフォーム業者が個人所有の中古マンションを買い取ってフルリフォームしてから売り出した室内だけが新築並みのマンション、すなわち「リノベーション」と表示のある中古を探している人もあります。

 

今日は、リノベーション中古について触れたいと思います。

 

 

●リノベーションとは?

初めての方のために、念のために用語解説をしておきたいと思います。

 

リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」。壁紙や床の材料を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更を伴う住宅改修のことを意味します。

 

元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。

 

例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、30年以前にはなかった機器を装備し、さらに間仕切りを大きくを変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。

 

この工事は、一旦スケルトン(コンクリートむき出しの)状態にしてから作りあげる大掛かりなものです。

 

●満足度が高いリノベーション

洋服に例えると、マンションは言うまでもなく既製服です。間取りが個性的なマンションもありますが、どこを見ても同じような間取りが多いのが実態です。好みの間取りを見つけても場所が気に入らないとか、場所もいいが、今度は建物全体が貧相で好きになれないなど、なかなか思い通りにはならないものです。

 

そんな葛藤から辿りついた選択こそが、大胆なスケルトンからのリノベーションであるわけです。

 

マンションですから、排水管(竪管=上下階を貫く配管)の位置によってトイレの位置は変えられないといった制約はあるものの、ある種、注文建築の住宅を待つような楽しみを味わうのがリノべ―ションです。

 

制約が様々あってパズルを解くような計画ですが、それも楽しみと言えるようで、その結果でき上がった自宅マンションは満足度100%といったところでしょうか?

 

また、業者が工事を完了させた「リノベーション物件」も満足度は高いようです。筆者に届く「物件評価」のご依頼には、次のような感想が付記されています。

 

「マンション全体は古いので、それなりのレトロ感もあるのですが、管理状態は良さそうでした。室内は凄くお洒落で、色使いも自分の趣味にぴったり。設備も最新のものがついていて、とても気に入りました」

 

しかし、どこかに落とし穴はないかと思ったのでしょう。「この物件は買ってもだいじょうぶでしょうか?価格は高くありませんか?」などと相談メールを寄せて来ます。慎重なご性格の方なのかもしれませんね。

 

●満足度100%の住まいも資産価値のプラスにはならない

こうして手に入れた満足度100%のマンションには、それなりの費用がかかっています。スケルトンからのリノベーションとなると、最低でも500万円は必要で、1000万円を超える例も少なくないと聞きます。

 

何年かして売却するとなったとき、見学者に対し、「リフォームに〇〇〇万円かけたのです。だから、本当はもっと高く売りたいのだ」という主張、いや恨み節を聞きます。

 

リノベーションでのこだわりは、他人にとって意味のないことであったりします。人間には個人的な好みというものがあります。好き嫌いと言ってもいいでしょうか?

 

それゆえに、あまり個性的な間取りにしたり、奇抜なカラーやインテリアで飾ったりした住まいも、別の人からは嫌われてしまうことがあるのです。

 

たまたま同じ趣味の人が見学に来てくれたら幸運ですが、そうでないことの方が確率的には髙いのです。

 

従って、こだわりもほどほどにしておかないと、仇となりかねません。

 

費用の掛け過ぎは、他人の知ったことではありません。マンションの価値は、間取りや設備も大事ですが、もっと大事なことは立地条件ですし、マンション全体の価値、例えば規模(スケール感)や共用空間なども含めて総合的に判断するべきです。室内にかけた費用がそのまま価値(売り値)の上昇とは行かないのです。

 

●リノベーション済み中古は髙い

一方、リノベーション中古を購入した人も、次に売却するときに、同様の落胆を味わうことになる場合があるでしょう。

 

理由は、そもそも購入額が高いからです。自分でリフォーム会社を探し、何度も打ち合わせを重ねて発注するリノベーションより、業者が行ったリノベーション中古の方が高いからです。

 

中古マンションは、築40年近いものになると、レトロな印象の中に味のある建物もないことはないですが、多くは見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。

 

無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安があるからです。

 

そこで、販売促進のために専有部分だけでも新品同様にしようという策が自然に登場して来ます。つまり「リフォーム」です。

 

所有者が居住したままでリフォームするのは難しいですが、移転してからなら思い切った工事が可能になります。

 

思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」です。

 

リノベーションは、玄関ドアや窓のサッシなどを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションを誕生させることも可能です。

 

その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに威力を発揮します。

 

「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまう人もあるのは想像に難くないのです。

 

しかし、築40年になろうかという古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。

 

筆者が提供する「マンションの評価サービス」では、ときどきリノベーション物件が登場します。評価サービスのレポートには、当然ながら価格が適正かどうかという項目がありますが、リノベーション物件は例外なく割高と出ます。

 

表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性)は大いに疑問の老朽化マンションと言うべきリノベーション物件は、価値と価格が一致しないのです。

 

誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンション1棟をリノベーションしたものは別格です。 ここで注意を喚起したいのは、あくまで1戸単位で販売されるリノベーション物件のことです。1棟リノベーションは、耐震補強工事も実施してあり、共用部も大幅に改修してあることが多いからです。

 

話を元に戻します。

リノベーション物件は、ほぼ例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手仲介業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者です。

 

築40年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人売主は業者に買い取ってもらう道を選択する場合があります。

 

買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えたと見られる例にたびたび遭遇します。

 

売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せる手法で販売に当たっているものも見かけます。

 

ご承知のようにマンションの仲介をしても、手数料が最大で6%余しか受け取ることができません。実際は3%になることが多いのです。

 

これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%以上を取ることも可能です。

 

仕入れ価格3000万円+リフォーム工事代300万円、販売価格4000万円、利益700万円というのが東京都内の平均的な利益構成と見られます。

 

新築マンションと同等、もしくはそれ以上にお洒落で快適そうなリノベーション物件を見てしまうと、中古相場がよく分からない一般の人は、高いと思わずに買ってしまいがちです。 その点に十分な注意を払うべきなのです。

 

●高くても値打ちあるリノベーション

耐震補強工事が完了しているマンションにお目にかかることが1年に1件くらいあります。

 

補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心も得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に大きく購買意欲を上げることでしょう。

 

そのようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。

 

リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。

 

それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、「世話無しで良い・すぐ入居可能」は、価値があるのかもしれません。

 

●見落してはならない耐震性

耐震性は、1981年6月から施行の「現行・耐震基準」によって建てられたマンションは基本的に安全とされます。それ以前のマンションは「旧・耐震基準」のマンションなので安全性に不安が残ります。

 

旧・耐震基準のマンションでも専門機関に診断してもらうと、安全性に問題ないと回答のあるものも存在しますから、旧・耐震基準のマンションは全部が危険というわけではないのですが、「耐震診断」をしてみなければ安心は得られません。

 

マンションの耐震診断は管理組合(居住者全体)から発注されるもので、個人ではできないため、耐震診断を実施したかどうかと、結果はどうだったかを調べることが必要です。現実は、耐震診断を行っていない管理組合が旧耐震のマンションの70%もあるといわれています(国土交通省調)。

 

つまり、1981年以前の古いマンションでは圧倒的に耐震性に疑問を残したまま売り出しているものが多いのです。仲介業者、もしくはリノベーション業者に「耐震診断はどうなっていますか?」と尋ねることが重要です。

 

ところで、1982年竣工と記載ある中古物件の場合、あなたは「新耐震マンション」と思いますか? 答えは「どちらとも言えない」です。

 

マンションの工事期間は概ね「階数+3か月」の目安とされていますから(最近のタワーマンションははるかに短期)、仮に9階建てマンションなら竣工の1年前に着工していたはずです。1982年の7月竣工のマンションなら1年前の1981年6月か7月に着工したと推測できます。しかし、14階建てだったら1981年2月か3月の着工だったはずです。

 

建築確認が下りる(許可と同義)と同時に着工するわけではないのですが、筆者の記憶の中に、旧耐震基準の建築確認通知書を1981年1月に受け取ったものの、近隣住民との協定に時間がかかっていた案件がありました。

着工を同年5月中にしないと建築確認が無効になってしまい、構造計算のやり直しと建築確認の取り直しがる必要になりそうでした。

 

やむを得ず、大金を建設反対の住民にばらまいて合意に持ち込み、5月中に旧・耐震基準のまま着工しました。1982年3月の竣工でした。

 

そのマンションは今も大阪市内に現存しています。1995年の阪神淡路大地震でも大破しなかったことだけは確かです。

 

1982年竣工のマンションは「旧耐震構造」の可能性が高いと思った方がいいのです。少し前に、営業マンから「1982年は、基準の変わった1981年の翌年なので大丈夫」と説明を受けたというメールが筆者に届きました。

 

建築確認通知の日付を見るのが一番確かですが、通知書そのものが残っていないことも多いので、筆者は上記の逆算方式で推定して「旧耐震マンションではないかと思います」と回答しました。

 

―――――リノベーションマンションで気を付けたいことは、➀価格が適正か(高過ぎないか)と、②旧耐震か新耐震か、旧耐震の場合は「耐震診断」を受けているか並びに「耐震補強工事の要否」を確認することです。

 

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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