マンションの組合活動ってDX化できるの?

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築33年ほどで500戸ほどのマンションにお住まいの”2世”理事さんからの管理ネタでのご相談です。DX化とIT化は目的と手段でかなり違うけど、DXのほうのつもりで。

今みなあまりパソコンは使わなくなってきています。子供と老人は非常に高い割合でスマホはもってない。これはマンション管理でも意識しないといけなくて、そもそもマンションでは、100%の人が”知ることができた”を保証できる仕組みは必須です。紙をなくそうとしてもここが妨げになります。

質問は?

差出人: バブル第2世代 さん

メッセージ本文:
高齢化マンション管理のDX化について

はじめまして。マンション管理を調べていたところ本サイトに辿り着きました。ご意見いただけますと幸いです。

私は40歳で1989年に建てられた500戸規模のマンションに住んでます。マンションは親が購入したので2世になり、理事をしています。

とてもキレイに管理されており、30年経っても修繕・管理費が3万程度でうまく回っています。一方で高齢化対応や世代交代がテーマとなります。
これに伴い、利便性を高めつつ、コストを圧縮するためにはマンションもDX化が必要だと思っています。

メインの居住者が70代と高齢化してますが、マンションの寿命はまだ30年以上もあります。
以下、DXの対象かと思いますが、厳しいのでしょうか?1年程度じっくり話すべきことなのでしょうか?対応への時間軸や課題が分からずご意見いただけますと幸いです。

1) ペーパレス&オンライン 理事会・総会資料・その他案内が紙ベースだが、メールや電子掲示板の活用し、理事会もオンライン開催
2) 月次経理や住民・施設登録など管理会社にお任せだが、Kurasel等のSaaS利用
3) 防犯カメラが10年前のリース契約で年400万で動いてるが、NTTテレポケット等のクラウド監視サービス
4) マンション内のケーブルテレビを廃止し、You Tube、Instagram、ツィッターにシフ
5) 駐車場や共有施設の貸出をSTORES予約などのクラウド管理
6) 年100万円のフルタイムロッカーから、PUDOステーション等のスマホ連携型への移管

管理組合がDX化で狙う”目的”は何?

DX化は、お上(経済産業省)の定義によると、
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
です。

とにかく掲示板や、総会・理事会を電子化したいみたいな”手段”としてのIT化とは異なり、デジタル化することで何かを得る明確な”目的”ってのが必要です。

「二世」さんは入植時代のオーナーのお子さんですからまだまだお若いですが、お住まいのマンションは33年を経過していて、新築時からお住まいの住民には後期高齢者も多い。となると、デジタルデバイドの問題は意識しないといけなくて、DX化の対象とする人の多くが、理事会役員として、あるいは住民として対応困難であるなら、無理してデジタル化を導入しても、”アナログ”な部分をなくすとこまでいけないと、”紙も配って、電子掲示板にも掲載する”といった2度手間が派生しやすくなって、理事会側からみると、手間が増えるだけに繋がりがちです。

これ70のお爺さんが使いこなせるかな?はまだ15年ほどの私のマンションでも問題になります。なにか新しいデジタル技を覚えないと管理に実施側・サービスを受ける側でも参画できないのだと、受け入れられませんから、多額を追加投資して誰も登録しない住民用掲示板が更新されずに無駄金になるとか起こりがちなわけです。

何十年も継続してきた管理組合には、長年の歴史に伴う”クセ”がついているので、なにかを急に変えるというのは困難です。拙速に、ペーパーレス化したりすると、一気に高齢の「初期入植者」の支持を失って、理事としての自分のクビを飛ばすことにもなりかねません。取り組むなら何年もかけて効果の大きなものからじわじわが鉄則で、もしも「二世」さんが1年程度でV字回復達成!で理事会を抜けるつもりだったらなら、無理はお薦めしません。

DX化で目指す目的とは?

なんのためにデジタル移行するのかには理由はいくつかあるでしょう。なにかをデジタル化するのはお金と、手間がかかるわけですので、それを”超える”メリットが期待できないとやってはいけないのですが、そもそもマンション管理そのものがあんまりDX化には向いてない気もする:
  1. ペーパーレス化などのコスト削減
    紙なら必ず投函されますが、デジタル化して電子掲示板において紙はなくしなしたとやると、誰もみてませんとかなりがち。以外に若い世代のパソコン離れってのも進んでいて、小さな子持ちの母親は、パソコンを立ち上げて、マンションの掲示板の情報を見にきたりはしません。デジタル化するなら”プッシュ”できないと意味ないわけです。
  2. 理事の手間を減らして楽に管理するため
    理事会の運営コストのアップには、理事でない住民は批判的です。逆にアナログ(紙)+デジタルで手間が二重化しても住民は気にしないけど、理事の手間は2倍になるかもしれない。なにかのデジタルツールを入れる同じお金で、誰か管理士でも顧問に雇ったほうが有利かもしれないわけです
  3. 住民の手間を減らすため
    例えば共用施設の予約などが完全に電子掲示板上でできれば住民からは便利ですが、おそらく2世さんのマンションは(管理費等の負担額からみて)自主管理とかではなく、管理会社をいれた全部委託方式ではないかと。管理会社が”証拠の予約票”を紙で貰わないと対応できませんといえば、もうネット予約は使えませんし、そもそも後期高齢者のどれだけの割合が、ネットで予約が可能かを考えると、デジタルデバイド対策での”紙での予約”も残ることになり、手間は2重化するだけ、なら官吏事務室まで来てねと一元化したほうが有利です。
以下はご質問の件への各論です。

ペーパーレス・オンライン化

総会のオンライン実施などは、コロナ以来話題になっているものですが、実施できている組合は殆どありません。皆賛否は提出しているが誰も実際には顔をださない総会を目指したほうが手っ取り早い

ペーパーレス化は、総会の議案書で効果が大きいでしょう。最も先進的なマンションではQRコードから議案書のPDFはダウンろーそして読んでねとする1枚ぺらの紙を配っていて(紙は必ず配っている:紙でこないと招集できたとは言えない)そこに、議案書が紙でもらえないと対応不可能な方は管理事務室までとりにきてねといった方法が考えられます。
(オーナーの”若い”マンションだとかなり劇的に効くかも)

一方で、理事会のペーパーレス化には私自身は消極的です。私のマンションでは、2-3時間の理事会を1回やるだけで役員報酬が毎月10万円を超えて飛んでいくことになるので、紙をなくすことでのコスト削減効果よりも、リンクを示して予め読んできてねとして(あんまり誰もみてない)理事会の議論が低調になる効果の方が大きいためです。もともとペーパーレスでしたが、わざわざ理事会の3日前に理事会の全議案の紙を投函で届けておくかたちに逆戻りさせています。

ZOOMなど電子会議システムで理事会をやるのはあまりお薦めしません。結構熱い議論になりがちな会では、”相手の目を直に見ながら”、”その場の空気を読みながら議論ができる”ことのメリットが大きいためです。議場なしで無人会議で、理事長を解任決議したなんて事例を訊くこともあり、これはやっぱり避けたいかなと。

なおコロナでいろいろあって今年の管理士試験とかで嵐のようにたくさんでたけど、理事会をフルリモートとか、資料のペーパーレス化とか達成してる組合はいくらもないんですよね



 

管理会社の”クラセル”利用

自主管理のマンションであればありかなと思いますが、全部管理を管理会社に委託しているなら、どうかな?(とりたててメリットを感じない)と思います。管理会社ごとに会計システムなどは異なるので、会計関係の書面作成は、委託しているなら管理会社の作成しかないからです。

電子化という意味では、理事長の銀行支払い決済の電子化などはありかなと。三井住友銀行のシステムをうちは管理会社のすすめで導入していて、”副”理事長の私がぽちぽちスマホから決済していつので、理事長の押印は半減しています。導入でコストが上がらず、理事会も管理会社も手間が減っているからこういうのはありかなと。

防犯カメラのリース契約

防犯カメラは下手にマンションの外まで繋がるネットワーク化すると、地球の裏側から覗かれましたとかなりがちで、通常は、ギガビットなどのネットワークカメラの情報を管理事務室に集めてレコーダーに録画し、ローカル(外からはつながらない)のアドレスでシステムを組みます。

そんなに故障を起こすものでもないので、今のリース契約料(台数は不明ですが)は過大ですから、修繕計画での更新時期に買取りでデジタルシステムで更新するのが一番お得な気もします。

ケーブルテレビの廃止?

DX化とはちょっと違うかも。 ネット視聴するものと、TV配信されるものは異なり、代わりにはなりません。皆が皆 Youtube や Netflix/U-NEXT/Abema TVばかり見ているわけではないので。

駐車場や共有施設の貸出をSTORES予約などのクラウド管理

デジタル利用できない人への対応を残すと必ず手間が二重化して、アナログな紙の情報をデジタル環境で入力する人が必要になり、コストアップです。また管理会社が協力してくれないとそもそも移行は困難でしょう。

私のマンションでは、住民用のポータルサイト「コラボ」(ディグアウト社)を導入しています。本来的な目的は、紙で総会の賛否をだされると500枚の紙に10とか賛否が書いてあるものをExcelに書きうつすのがあまりに大変だからで、目的はもともとは総会の電磁投票の実施です。ただそれを全面にうちだしても、集計が大変なのは理事だけですから、誰も登録してくれません。

そこで、ネットで予約そものもはできない一方で、全ての共用施設・ゲストルームなどの今の予約状況は確認できるようにしました。5人いる管理員さんが交互にしこしこうちこんでいるわけですが、それはそれなりに便利ですから、全戸の9割近くがポータルサイトに参加、結果として7-8割の住戸が電子掲示板からぽちっとやって総会に参加していますから維持費だけの効果は上がっています。

予約そのものを完全にネット移行するというのは、「二世」さんの環境では不可能だと考えます。私のマンション13期で、現金の扱いを廃止しました(今カウンターでは電子マネーか、クレジットカードしか使えない)が、20期だったらもう無理だった気がするのです。実際には10期め程度から検討を開始して3年かかりでした。年輩の方がわざわざ新しい方法を覚えてまで、管理をDX化することを歓迎するかどうか?や、管理会社に過大な負担を強いることにならないかまで、相手のキモチで考えないと理事会の施策として支持が得られません。

宅配ロッカーのスマホ連動

下の図はスマホの年齢別の普及率です、70以上の人はスマホをあんまり使っていません。質問者の環境には向いていないと考えます。 ”スマホ”を持っていない人への対応を残したうえで、新規に必要になる、お金や人的なコストの分以上に、デジタル対応できる人が便利になったといえるかどうか。カードで取り出せる宅配ボックスで十分に便利な気も。



特に理事自身も高年齢化が進む組合で、理事の仕事が増える施策には慎重なほうがよいかなと。 後で書いたLINEでの広報実施の導入にあたって、私のマンションではスマホでLINEをインストールして、マンションの公式アカウントとお友達になる企画を、”お孫さんとお話できますよ”を売りに実施しましたが、講習に来た1人のご老人に、張り付けて指導した自治会や防災委員会の役員数は1人。マンツーマンでやったわけです。そこまでの覚悟がないなら後期高齢者もDXに参加とかには乗り出さないほうが吉かと。

ネットワーク化の目指すもの

掲示板に紙1枚貼っても誰もみないから、電子掲示板を入れても、”予約状況の確認”といった目的がなければわざわざ見になんて来てはくれません。うちのポータルサイトの全戸加入率は90%近くあり多分最高レベルですが、そこに載せてもそもそも”見られない”人が1割、1週間以内に見るだろうという人は2-3割しかいないわけです。(メール同報を指定している人にはただちに通知はされます)

広報案件の多くは”全戸に確実に知らせたよね”が保証されないといけないので、紙1枚の投函というのは絶対なくせません。それをカラーにして手にとって貰いやすくするといった方向性で、カラーの広報物はネットでラクスルに発注して安くあげるといった努力はしていますが、全戸への告知機能が必要なものには全て紙の投函でしています。

それと平行して ”チラシ”を電子的に、”プッシュ”するしか方法がないよねで、私のマンションではここ2-3年LINEでの配信に広報を進めてきました。確実にオーナー^だけが相手とはいえないので秘匿性の高い(住民以外みてはいけない)ものや、告知案件いは利用しにくいですが、60歳台でも80%近い加入率のあるSNS(うちのマンションは築年から70歳代は少ないです)ですので、今だったらLINEでプッシュ配信するのが、住民への連絡用にはベストかもしれません。

以下はうちのマンションの例:





私のマンションは500戸ほどですが、750人が登録、配信を拒否している割合は数パーセントにすぎません。ちょっと大きな地震があれば、数分で今エレベーターの何号機が停止中とか、復帰しましたとか届くわけで、自分にとって必要な情報がプッシュされてくるならプッシュ配信をうち切ることはないからです(LINEでミュート1割未満は例外的です)。ネットワーク化は、常に”サービスを受ける”住民側からみてうまみのあるものでなければ、お金の無駄とかいわれて総会でどかっと反対を受けるなど受け入れてはもらえません。

下に貼ってあるサンプルは今月の配信もの。500戸で、月1.5万円で延べ4.5万回まで絵を合わせ3連での配信ができるので、1戸1日1円だといって導入しました。デジタル化としてはこれほど効果が大きく安くで済んだ事例は他にはありませんが、代わりに2人の代表理事+広報チームなどがひっきりなしに原稿作成なんですけどね。

よいお年を!!

ー協力金制度のその2と
ータワマンが電気代高騰で管理費の改定ラッシュだという話
ー滞納者への理事会の対応のお話
などをシリーズ化含めて来年もぼちぼち
(予告すると大抵その通りにはならないのですが)

!! 重要 !!
 本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。

 

ABOUTこの記事をかいた人

マンションのモデルルームがあるとたとえ外国でもふらふら入ってしまったり、管理組合の理事会には思わず立候補する人って多いですよね。多いはず!! それなのにあんまり管理組合の苦労とかのブログって見ないので立ち上げてみました。世の中に多い管理士系ブログとは一味違う、理事会側から見たマンションの運営を中心テーマに書いていこうと思ってます。

3 件のコメント

  • コトウ宏之 より:

    新米理事です
    大規模修繕、輪番理事等問題山積
    情報収集させていただければ幸いです

  • バブル第2世代 より:

    ご回答いただいていたのですね。長い間気づかず失礼しました。
    本当にありがとうございます。
    そして、アドバイスありがとうございます!!

    目的はランニングコストを下げ、高齢化したマンションを維持改善させることでした。
    色々とテーマがありますよね。
    – みまもり機能
    – スキップフロアー
    – 共用施設改修

    「誰も置いていかない」、日本のデジタル国家構想に記載されている通り、
    高齢の方のデジタル化への反感はありますので、時間をかけて対応していく必要はありますよね。

    最後のネットワーク化本当にためになります。
    確実に通知していることを担保するために紙は外せないのですね。

    一方で、読まなければ意味がないのも事実で、
    Line 60代でも結構利用されているは意外でした!!
    Line@の15,000円/月 45,000通 これ活用を検討してみます!!

    • はるぶー より:

      LINE意向は案外高齢でも使える(プッシュ配信の受け取りのみ)ほかに、小さな子供もちの母親とかのパソコン離れも進んでいる対応もあります。
      パネルをクリックして情報をとりだす、携帯・タブレット対応のサービスでないと、パソコンからは殆どポータルサイトにもログインされないので。

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