第258回 「お尋ねに答えて・・・新築マンションの価格について」

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(読者からのメッセージ)

新築マンションの価格決定方法について質問させて下さい。

 

マンション用地の取得価格と人件費が、高騰しているので、新築マンション価格は今後も下がることはない、と書かれた記事をよく見かけます。

 

一方で、シティタワーズ東京ベイや晴海フラッグなどはかなり安く用地取得できたはずなのに、価格は高く設定されています。

 

個人的に考えるに、特に都心の新築マンションの価格設定は、周辺の中古マンション相場から新築プレミアムを乗せているだけ、のように思えてなりません。

 

そのように考えると、新築マンションが高いのは用地や人件費の高騰のためという理由は、ただのデベ側の方弁にしか聞こえません。

 

実際のところはどうなのでしょうか?

 

新築マンションの価格が、中古マンション相場+新築プレミアムで決定しているのであれば、今後中古マンション相場が落ち着いてくれば、新築マンション価格もリーズナブルになってくるのでは?と淡い期待をしているところです。

 

(以上、原文のまま)

 

(三井健太のお答え)

中古マンションの価格推移によって新築価格が左右されるということはありません。中古が新築価格によって変動するというのが市場の動きと見る方が正しいのです。

一部の業者に、長期の販売期間の途中で値上げしている事例があるのは事実ですが、これは例外と見るべきです。

新築が高騰すると、それを嫌って中古マンションにシフトする買い手が増えます。その結果、中古マンションも人気が高まって、価格が高くなって行きます。

 

一方、新築マンションの価格は「用地費」+「建築費」+「販売経費」+「売主利益」で決まります。 用地費と建築費で価格の80%を占めています。売り値を調整するには利益を圧縮するしかないのですが、利益は10%程度しかないので、圧縮幅は高々3%と言われます。

 

高値が続いていることで、大半のデベロッパーは2017年頃から販売に苦戦を強いられています。高値の要因・背景について解説しましょう。

 

地価(用地費)の高騰

・・・マンションに向く土地が少ないため、用地争奪戦が続いています。このため、1年前に付近で取引された地価の2割高だったなどという例が増えていきます。

新聞に発表される地価統計は全般的な傾向を示すもので、東京都心の商業地は前年比でプラス2%であったが、郊外の住宅地はマイナス3%だったなどという僅かな変化にしか見えません。

 

2019年3月発表の「公示地価」でも、地域格差はあるものの全国的な上昇傾向が明らかになりました。しかし、東京の商業地でも4.7%、住宅地で1.3%の上昇でした。2020年3月発表のデータも上昇傾向が続いています。

これらの数値と比較すると、マンション用地の取得額は地価調査の数値とは大きな隔たりがあるのが実態です。付近の前例と比較して、20%も30%も高くなった土地取引の実態を一般の人は殆んど知りません

 

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。

工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

 

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになるのです。その結果、新聞発表の地価上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまいます。

 

先に述べたように、マンション市況が悪化しているため、今後は少し様子が変わってくるかもしれません。しかし、業界が一斉に土地取得を手控える状況に転じる様子は見られません。

一方、土地の需要はマンションデベロッパーだけではなく、例えば都心の商業地などはホテル用地と直接競合し、ホテル業者に競り負けることが多いと聞きます。東京オリンピック後もホテル建設ラッシュは続くと見られるので、今後も用地難に業界は悩まされることでしょう。

 

こうした動向を注視していると、安価なマンション用地を容易に取得できる状況にはならないと見るほかありません。

尚、コロナ禍による地価下落の期待を語る人がありますが、筆者は同意しません

 

建築費の高騰

・・・マンションの建築費が大幅に上昇しました。

工事はマンションメーカー(デベロッパー)から施工するゼネコンへ発注されますが、マンションメーカーには当然ながら予算があり、その範囲で受注してくれるゼネコンを探します。

 

普通は「指名入札」方式で、複数のゼネコンを指名して見積もりを依頼します。過去数年間の傾向は、予算内に納まるゼネコンがいなくて当たり前、予算を2割、3割上回る見積もりが普通。そのような状況にあると聞きます。

 

背景には、東日本大震災の復興需要から始まり、各地で続いた事前災害の復旧工事によって専門職・建設労働者の人手不足が深刻な状態になったためと言われています。建築費の50%余は労務費と言われるので、建築資材が少し下がったくらいで値下がりに転じることはないのでしょう。

 

今後はどう推移して行くのでしょうか。

政府は今後どのような策を繰り出すでしょうか?民間の自助努力にゆだねるだけで、静観しているというわけには行かないはずです。具体的な対策は別として、リニア新幹線関連工事が続きますし、大阪万博関連工事や日本橋の地下化工事なども出て来ます。今のところ、ゼネコン各社に仕事がなくなって過当競争が生まれ、建築費が下がりそうだという情報はありません。

 

コロナ問題が世界的な景況の悪化を招いていることは先刻ご承知の通りです。我が国も例外ではありません。政府は足元の景気対策を急がなければなりません。きっと、ゼネコンが喜ぶような策が発表されるに違いありません。

 

着眼点(1)・・・用地費は2年も前に決まっている

マンション開発は、建物の基本計画を立案するところから始まります。土地を買ってから政庁の許認可を得て着工するまで、早くて半年、長いものでは3年以上を要するものもあります。

 

時間がかかるのは大規模開発と言われる大型マンションです。土地の買収が決まってからも長い時間がかかるのが普通ですが、土地を買収するにも時間がかかるのです。マンション開発に向く土地は、50坪や100坪ではなく300坪、できたら500坪以上をデベロッパーは望みます。

 

しかも、最寄り駅から10分を超えない条件の土地を買いたいと考えます。しかしながら、そのような売地は少なく、デベロッパー同士が互いに競争して取得することになるのが大半です。

条件の良い土地ほど高値で売買されるのが普通です。安く買うことができる土地があったとしても、それは条件が良くない土地で、ライバル社も現れないためです。

 

大型の土地は総額が高いので買える業者が少ないと考えるかもしれませんが、大手デベロッパーにとっては造作ないものです。よしんば1000戸を超えるような大型の土地でも、駅から近いような好条件の土地なら、引く手あまたなのです。用地費が下がる見通しも今はないと見るほかありません。

 

着眼点(2)・・・建築費は着工直前に決まるとはいうものの

建築費は既述の通り、東日本大震災の復旧・復興工事が大量に発生して以来、異常なほど高くなってしまいました。

 

今後の見通しについても、悲観的な見方が圧倒的です。つまり、まだ熊本地震をはじめ、各地で発生した大型台風被害など、災害復興需要は残っていますし、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資が急増しているからです。

東京オリンピック関連需要の国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事などは、大半が完工していますが、建設会社が抱えている受注残は少なくないと聞きます。そこに足元の景気対策として何らかの公共工事が発生する可能性も高いのです。

 

マンション業者から発注される工事が安値で請け負うゼネコンが続出するという気配はなそうです。

 

・・・・・マンション用地が安くなる見通しはなく、建築費も下がる期待は持てない。従って、新築マンションの価格下落という見通しは立たない・・・・・以上が筆者の見解です。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です。

 

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