第201回 23区だけが価格の上昇に歯止めがかからない

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

2018年の新築マンションの価格を前年比で見ると、首都圏全体としては、ようやく横ばい(前年比で+1%)になったのですが、23区は前年比で5%も上がりました。

首都圏全体の数字を新聞で見たときは、ようやく頭打ちになったと安堵したのですが、ブロック別のデータを調べてみて暗澹たる気分になりました。

 

価格の上昇は買い手にとって喜ばしくないことです。高くなり過ぎたので、今マンションを買うのは手控えようと考える人が再び増え出した、そんな気がします。

というのも、筆者に直接届くご相談メール、正確には物件の評価レポートのご依頼の中に「そもそも今はやめておいた方がいいのでしょうか」や「しばらく賃貸で我慢しようかとも思う」などの文言が多くなったからです。

 

●高くなったことで警戒感が・・・

マンションを買う人の階層を購買力別(買った金額別)に区分したら、ピラミッドの形になります。

最上部(頂点)には2億円以上の購買層、その下に1億円から2億円未満の購買層、さらに下に7000~1億円未満といった購買層が大きなボリュームを占めるということになります。

もちろん、その下には7000万円未満の層が一段と大きなボリュームで存在します。金額が下がるほどに底辺部は広くなっていきます。

 

こうした階層別の購買層の中で、価格の影響を受けやすいのは上位2区分を除く全階層です。買えないことはないけど、背伸びはしない方がいいと思うし、上がり方が急ピッチのような気がするので、しばらく様子を見た方がいいのではないか、そんな風に意欲が後退した人もあります。Wインカム世帯の、あるご相談者は「何かの事情で2馬力から1馬力になったときのことを考えて予算を低くしています」と胸の内を明かしてくれました。

 

価格が高くなる過程では、必ず起こる悩ましい買い手の心理変化ですが、購入を諦めてはいないものの、お目当ての物件が見つからず、結局は購買層として浮上しない、すなわち水面下の活動を続けているだけの状態の人も増えます。

 

簡単に言えば、価格高騰は水面上の買い手(顕在需要)が減ることに等しいのです。買い手が減れば、新築マンションについては、完売までに長い時間がかかることになります。建物竣工の時期を完売目標時期とするなら、販売の遅れは既に顕著です。どこも完成在庫を多数抱えている実態にあるからです。

 

「売り物がないので、いっぺんには売り出さないのです。完成後1年くらいかけてゆっくりと売り出します」などと説明する分譲業者も増えていますが、それは詭弁であり、言い訳に過ぎないと筆者は思っています。

その説明は、「売れ残りマンション」の烙印を押されたくないからの布石に過ぎません。売り出さなければ、調査会社の「在庫」にはカウントされませんし、分譲主も売出しのときは「第〇期〇次・新発売」を謳うことができます。

業者は「売れ残り品」のイメージは避けたいのです。売れ残りは、品質(物件価値)を疑われ、価格交渉のターゲットにされかねないからです。

 

話を戻しましょう。価格が急上昇すれば売れ行きは悪化します。2016年初頭から新築マンションの売れ行きが悪くなったのはデータでも明らかですが、それでも価格が下がる兆しはありません。

冒頭で述べたように、23区に限っては依然として値上がりが続いています。価格の推移をグラフで示します。さっと眺めてみてください。23区が上の線、下が首都圏全体です。一番下の首都圏指数というのは、2003年を100としたものです。


 

●価格の見通し

高くなれば買えない人がふえます。すなわち、需要は後退するのが常識です。実際にも、理屈通りになっていますが、高額需要層に限れば、この程度なら痛くもかゆくもないのかもしれません。

 

高くなった価格も、そう感じるのは最初だけで次第に慣れて来ます。実際に手が届かないほど、はるかかなたの価格でなければ、買いたい事情のある人は買うのです。売り手から見れば、売れゆきのスピードは遅くなってもやがて完売するだろうと確信を持ちます。

 

しかし、上位2区分を除く購買層にとって価格上昇の影響は強く、下がるのを待ちたいという心理に陥りがちです。その一方で、下がる見通しも持てないと悩んでいます。

 

今後、新築マンションの価格はどのようになるのでしょうか?首都圏全体としては横ばいのトレンドが続くことでしょう。何度も書いてきたので理由は繰り返しませんが、売れ行きが悪化しても値下がりはしないのです。下げたくても下げようがない事情が供給側にあるからです。早い話が、用地費も建築費も下がりそうにないからです。

 

23区のデータは相変わらず上昇トレンドにあることがグラフからも一目瞭然です。いったい、いつになったら歯止めがかかるのか、職住近接志向の強いWインカム層はサラリーマンにして1億円の予算が組めるというものの、そんなに借金していいものかと心の中でブレーキをかける自分がいて葛藤をしている。そんな人も増えています。

 

2006~07年頃も同じような状況がありました。価格が急騰して売れ行きが悪化し、値引き販売が横行した時期でした。定価で買った人が「不公平だ。俺たちも安くしろ」と大騒ぎしたのです。その後にリーマンショックが起きて、世界同時不況に見舞われ、新築マンションの価格は下がりました。しかし、値下がり率は23区だけが6%で、首都圏全体では1%下がっただけでした。

 

どうやって下げたのでしょうか?実は、建物品質を落としたのです。詳細は割愛しますが、同レベルの建物を建てるコストは変わっていなかったので、建物形状のシンプル化や共用スペースの縮減、設備・仕様のグレードダウンなどで見かけ上の価格を下げたのです。

 

今回は同じ方法はもう採用できません。なぜなら今回の値上がり局面(2013年以降)で既に採用済みなので、コストカットの余地は残っていないのです。一部の物件で、トイレの手洗いカウンターなし、ミストサウナなし、ディスポーザーなし、食器洗浄乾燥機なし、スロップシンクなし、床暖房なしという「ないない尽くし」も見ましたが、徹底的なコストカット策で「安値」を売りにしている郊外マンションですが、同じ手を7000万円もする23区のマンションでは採用されないはずです。

 

建設会社の仕事が減って、安値でも請け負いたいという状況がやってくれば別ですが、そんな状況は今のところ全く予想できません。

 

地価も下がりそうにないので、新築マンションは価格高騰が続くと見なければなりません。筆者の予想でも、東京オリンピック後にゼネコンの仕事が減るので幾分かは下がるという弱気なシナリオもないわけではないのですが、強気なシナリオでは全く下がらない「価格は強含み」に推移します。弱気なシナリオでも、下げ幅は前回と同じ6%程度が限界と考えています。

 

●購入術1:高くても価値ある物件を買う

こんな予想の下で、これから買い手はどのような姿勢で臨めばいいのでしょうか?

高くなったものだと感想を述べても仕方ないことで、現実は受け入れるほかありません。模様眺めをしていても、下がる可能性は低いのです。無理しない程度に、高い価格でも買うしかないのです。

しばらく賃貸マンション住まいを続けるという選択が間違っているとは言いませんが、買いたい気持ちがあるなら今買うという選択に賛同します。

ただし、安物を追ってはいけません。可能な限り高いものを買った方がいいのです。

※参考記事はこちら https://www.sumu-log.com/archives/9766/第125回「根本的な誤り。それは安さの追求だ!」

 

価値以上の高値に騙されてはいけませんが、高いなと感じるくらいの物件に良いもの、価値あるものが多いのは確かです。

 

特に立地条件での妥協は避けなければなりません。高くても立地の良い物件は値崩れしないものと覚えておくといいでしょう。

 

●購入術2:売れ残り物件に目を付ける

新築マンションで割にいいなと思うが売れ残っているのは、大抵価格が高過ぎるからです。そのような物件は、建物が完成していたら間違いなく値引きをします。狙いをつけて検討しましょう。立地の良い物件なら買ってもいいのです。価格交渉を念頭に置きながら検討することをお勧めします。

 

その種の物件のご相談もよくあります。「多少のネックはありますが、価格次第でGOして良い物件です。価格交渉の仕方はこうです」と回答します。

売れ残りの中から隠れた宝を見つけられるかもしれません。新築の売れ残りに福がある。そう言えることも少なくないのです。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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