中古マンション選びで、検討中の物件が新耐震基準か否かを気にする人は多いだろう。
でも、長周期地震動対策済みのマンションか否かに関心を寄せる人は多くないのではないか。
※読者に注目してもらえるよう、記事タイトルを「タワマン」としたが、実際にはタワマンだけでなく板マンも含むため、本文では「超高層マンション」とした。
長周期地震動の影響がある地域はどこか(首都圏)
2011年3月に発生した東日本大震災では、首都圏や震源から遠く離れた大阪湾岸の超高層建物において、大きな揺れが観測された。この長周期で長時間継続する地震動は長周期地震動として注目されることとなった。国交省は2016年6月24日、「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策」を発表したのだが、一般の人にはあまり知られていないのではないか。
長周期地震動対策の対象地域内(次図の緑色で示す範囲)において、2000年5月以前に建築された超高層建築物等(高さが60mを超える建築物及び地上4階建て以上の免震建築物)は、南海トラフの巨大地震による長周期地震動の影響を受ける恐れがあるとされている。
東京都「長周期地震動対策を進めるために|リーフレット」2018年3月、P3より
※上図で緑色示された具体的な町丁目は、「関東地域|国交省(PDF:1.2MB)」で確認できる。
※国交省の長周期地震動対策の対象地域内(上図の緑色で示す範囲)に建つ超高層建築物等のうち、2017年度以降に申請された新築建物は、長周期地震動対策が施されている。一方、同地域内に建つ2016年度以前の既存の超高層建築物等については、大きな揺れによる家具の転倒、内外装材や設備の損傷等による危害が発生するおそれがあることから、自主的な検証や必要に応じた補強等の措置を講じることが望ましいとされている(義務ではない)。
長周期地震動対策が必要な中古の超高層マンションの棟数(試算)
首都圏において、長周期地震動対策が必要な地域(上図緑色で示す範囲)に建つ超高層マンションは、どのくらいあるのか?以下、試算してみよう。
不動産経済研究所が24年5月8日に発表した「全国超高層マンション市場動向(2024年3月末現在)」には、超高層マンションに係る5区分(都区部、都下、神奈川、埼玉、千葉)の棟数・戸数データが掲載されているのだが、2014~2023年のデータに限られている(次表)。
不動産経済研究所「全国超高層マンション市場動向(2024年3月末現在)」24年5月8日
同発表資料には、1976年以降の古いデータもグラフ中に記載されているのだが、こちらは首都圏全体のデータだ(次図)。
(同上)
さて、どうしたものか。
超高層マンションの多くは都市部に建っていて、概ね長周期地震動対策の対象地域内に含まれている。そこで、長周期地震動対策が必要な超高層マンションの棟数をザックリ試算するために、「長周期地震動対策の対象地域内に建つ超高層マンションの棟数≒首都圏の超高層マンションの棟数」とすることにした。
上のグラフに記載されたデータを元に、1976~2023年の超高層マンションの棟数の推移を可視化した(次図)。
1976~2023年までに建てられた超高層マンションの累計棟数は966棟。2000年5月以前(≒1976~1999年)に建てられた超高層マンションの累計棟数は117棟で、全体の12%(=117棟÷966棟)。
首都圏で長周期地震動対策が必要な中古の超高層マンションは約100棟という試算結果になった。
長周期地震動の対策をするためには、耐震性能の検証に着手する必要があるのだが、お金の問題、人材確保の問題、合意形成のハードルなど解決すべき課題は多い。更に詳しく知りたい方は、下記記事参照。
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