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洗濯女 グルーズ画(1761年・ポール・ゲティ美術館収蔵)


出遅れましたが2022年初記事です、本年もよろしくお願いします。

しょっぱなのタイトルからダジャレっぽいですが、スムログ初期に書いていた、マンション水回り設備のお悩みシリーズの続編です。

1620にすべきか1418か、それが問題だ

食洗機って本当に役に立つの?と悩んでしまう理由の考察

マンクラの皆さん(とくにオッサン)はなぜか水回り設備が好物ですね。マンションという限られたスペースにおいて、とくにあとから変えにくい水回りにはこだわるということでしょうか。とくに風呂サイズの記事なんて、“1620 1418″でGoogle先生に聞くとトップに出るほどで、いまだに毎月数百PVあります。

欧州の洗濯事情

冒頭の洗濯女(The Laundress)ですが、素晴らしいことにゲティ美術館はVirtuula Libraryで美術関連書を無料公開しており、解説を見ることができます。

Colin B. Bailey,”Jean-Baptiste Greuze: The Laundress”(2000) p.38より引用

On a small wooden table at lower left in The Laundress Greuze has placed a pear-shaped pewter jug(or lidded kettle) that contemporaries would have recognized as a marabout [FIGURE 34]. Turkish in origin, the marabout was one of many receptacles in which water could be boiled in the hearth for cooking, buthere it is the source of the hot water in which the laundress is rinsing her linen.

左側に見える洋梨型のピューター製ポット(pear-shaped pewter jug)を使い、お湯で洗い流しているようですね。The Laundressが描かれたのは1761年ですが、昔の洗濯といえば洗濯板のイメージではないでしょうか。

洗濯板

洗濯板(いらすとや)


Wikipedia等によれば当時としては画期的だったギザギザのついた洗濯板が発明されたのは1797年らしく、The Laundressの時代にはまだ存在しなかったことになります。いっぽう、ヨーロッパではペストなどの影響で、はやくから殺菌目的で煮沸洗濯する習慣があったようです。また、ヨーロッパは硬水がほとんどのため、水では泡も立ちにくいのでますますお湯になったと。道理でミーレ社が温水の洗濯機、食洗機を得意とするわけです。

【ドイツ ミーレ社】洗濯は「衣類ケア」のため 高級白モノ家電メーカーの骨太な洗濯思想

出羽の守主義ではないので「ヨーロッパでは」の話はこれくらいにしますが、日米欧の洗濯機の違いに興味がある方はこちらの記事も参考になります。

日本は洗濯機もガラパゴス? 日米欧で方式なぜ違う

日本の洗濯事情

こちらの記事でも「ガラパゴス」として一部触れられていますが、日本は欧州と対極的な次のような理由でなかなか温水洗濯が普及しなかったようです。後半は日本のお家芸だった家電産業が衰退した理由にもつながりますね。
  • 夏の高温多湿、清潔好きで毎日入浴・毎日洗濯
  • 軟水のため、水でもじゅうぶん泡立つ
  • 200Vを使用する家電が普及しておらず、100Vでは家電単体でお湯をつくりにくい
  • 品質にこだわる人が多く、洗濯による色あせなどを極端に嫌う
温水で洗うことの効用自体は、「洗濯王子」こと中村祐一さんもあちこちで語っています。

洗濯の悩みは“お湯”で全て解決する? プロに洗濯のコツを聞いてきた

中村さん自身は、ミーレのファンでもあるようですね。

洗濯のプロとMiele

食洗機でも卓上はいまや独占市場、ビルトインも一部で一択と言われるパナソニック(宗教戦争になりそうですが、ここでもミーレに言及が)。


洗濯機でも、パナソニックは以前から温水洗浄に力を入れています。PerfumeとのコラボCMも

Perfumeがあなたの“手の中で踊る”!“温水泡洗浄”がテーマのタテ型 新MV「Everyday」-AWA DANCE Ver.2.0- をYoutubeとパナソニックWEBサイトで本日公開!

上記リンクの公式動画は残念ながら現在見られませんが、2017年バージョンはこちら。



他社も温水洗浄機能は出していますが、気のせいかあまり活用しているお話は聞きません。かくいう私も、「まわるものは日立」ということで冷蔵庫、掃除機に加え洗濯機も1年半前に日立製となりました。洗剤自動投入は最初いらないと思ったものの、一度使い始めると不可欠な機能です。


いっぽう、温水について日立の場合は「温水ナイアガラ洗浄」「温水ナイアガラビート洗浄」という温水ミストを吹き付ける疑似的な温水洗浄う機能がありますが、実は一度も使ったことがありませんでした。理由は単純で、時間がかかるから。洗濯開始するのが設定時間によるのですが最低30分は余分にかかります。すべての洗濯ものを乾燥までまわすならアリかもしれませんが、風邪アイロン機能があるとはいえ制服のシャツとかまではなかなか… 疑似ですらこれなので、パナソニックのようにお湯をわかすと上述のように電気代も気になってきますね。

カタログ値や口コミ以外で実際に比べるのは難しいので、少し古いですがパナソニックと日立の温水洗濯機の比較記事を見つけました。

Joshin Web 洗濯機頂上対決

もう一つの理由が根本的ですが、ウチは洗濯機置き場に混合水栓が標準装備されているので、温水給湯で洗っています。お湯を洗濯機でわかすよりは(ミストとか細かい話をさておけば)効率的ですね。今回、記事執筆のために温水ナイアガラ洗浄機能をはじめて使ってみたのですが、汚れ落ちはさておき(おくんかい)洗い終わって洗濯物が冷たいのが違和感でした。そう、温水給湯だとすすぎも温水ですが、洗濯機の温水洗浄機能は洗いのみなんですね。

マンションの洗濯機混合水栓事情

そこで、Twitterで混合水栓事情をアンケートしてみました(100票以上のご協力ありがとうございます)。


なんと標準設置済みの方は19.3%、オプションで設置した方を加えても25.7%。はなからオプション選択肢なしが69.7%にも驚きました。ニーズがないからなのか、デベも含め温水にはメリットを感じていないのでしょうか。

オプションの選択肢があるマンションは11%ですね。玄関カメラがないことが話題になり、その後オプションで設定されたブランズタワー芝浦(今月引き渡し開始されたようで、購入者の方はおめでとうございます!)はオプション選択肢に洗濯機混合水栓もありました。確か10万円弱だったと思うのですが、この金額だと洗濯機にも機能あるし…と消極的になりそうです。

その給湯の温度ですが、熱湯もOKな欧米と異なり、日本の洗濯機では温水とはいえ40度~50℃未満が推奨されているようです。この点、国産ですら「高温洗浄で清潔」をウリにしている食洗機とは事情が異なりますね。パナソニックのFAQより:

【洗濯機全般】給湯は、何度までできますか?(洗濯機に入れてもいいお湯の温度は?)

給湯接続される場合は、50未満(49以下)に温度調整できる給湯器での接続をお願いします。
洗濯機へ給水される水温が50℃を超えると、給水経路のプラスチック部品の変形や、傷みが発生することがあります。
変形や、傷みが発生すると漏水や漏電・感電のおそれがありますのでお控えください。
また、温度調節ができない給湯器への接続は、お控えください。
機種によっては、 「60℃除菌コース」 のように、運転時に60℃を越える水温で運転する機種もあります。
洗濯槽内で水から徐々にヒーターで60℃に近づけていきますので、問題ありません。

こういう場合は規格にあたるべしということで、JISを確認してみました。

日本工業規格 JIS C9606-1993 電気洗濯機  Electric washing machines


6.構造-6.1 構造一般 構造は,次の各項に適合しなければならない。
(中略)

(10) 洗濯槽は,常温及び50℃の水を入れた場合,水漏れがない構造であること。
また,脱水装置の付いているものは,脱水操作中,水が機外に飛び散らないこと。

どうやら、JISの規定上、50℃未満しか保証しないようです。日本の洗濯機はプラスチック主体でつくられており、排水も塩ビパイプなのでこれ以上の温度は想定していなかったのでしょうね。

これをふまえ、日本の洗濯機で一般的なのは風呂の残り湯ポンプ機能ですね。お風呂にほぼ毎日つかり、お風呂の温度は40度強なので、洗濯機の推奨給湯温度も含め日本人の習慣に非常にマッチしているためでしょうか。が、お風呂ポンプって皆さん使います? お風呂のあとすぐ使えば衛生上は問題ないのでしょうが、その衛生上ホース中のお湯を抜いたりするのも面倒で、私はトンと使っていません。

洗濯機全般について書くと長くなると思い温水洗濯に絞ったのですが、結局長くなってしまいました。個人的な経験からはQoL向上につながると思うのでマンション購入時やリノベーション時は温水給湯も検討されてはいかがでしょう。

中受ネタ事情

最後に、ちょうど中学受験が佳境を迎えています。執筆時点(1/18)で埼玉はほぼ終了し今週から千葉、2月1日はいよいよ東京/神奈川が解禁です。麻布中や海城中など社会で多くの資料を読んで考えさせる学校では、今回記事のような歴史にまたがった問題がよく出ます(麻布中の例)。今回の洗濯板/2層式洗濯機/全自動洗濯機について考えさせる問題は海城中2020年(2)社会でそのものが出題されました。また、以前から記事中で述べたペストに加え、スペイン風邪など過去のパンデミックに学ぶ問題が出題されており、コロナ禍になり頻出化しています。ウチは一年前を振り返っている時期ですが、受験生をお持ちのご家庭の皆さん、あと一息ですので力を出し切ってください!

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ABOUTこの記事をかいた人

港区湾岸タワーマンションに在住の計算機技術者(でありたい)。 23区では同エリアしか居住経験がなく、いまも湾岸エリアで評判のMRは見に行っています。 自分の新築リノベーション経験を振り返りつつ、主に湾岸を中心に常に変化し続ける街の情報などを追うことで、次のリノベーションへのヒントを得ようという目論みです。

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