マン点流!(回答)マンション広告の芸能人起用

スポンサードリンク

マンション広告の芸能人起用が気になる海老フライさんからの質問。

質問:マンション広告における芸能人起用の費用対効果?


誰に答えて欲しいですか?
  • マン点
いつもスムログを拝見させていただいております。

様々な市場データを解析しエビデンスに基づくご意見をされているマン点さんに質問させていただきます。

マンションの広告において芸能人を起用しているケースを見かけます。芸能人は広告塔としてのキャッチの役割なのは理解しております。実際の芸能人の起用の費用はどの程度なのか、その費用分をマンションの設備に回したほうが消費者は喜ぶのではないかと感じております

マンション広告における芸能人起用の費用対効果は実際のところどうなのでしょうか?

お手すきの際にお答えいただければ幸いです。

回答:かつては広告効果があったかもしれないが

多くのマンションの折り込みチラシを観測してきた筆者として(11年間で5千枚超)、マンション広告に芸能人が盛んに起用された時期は06年から09年頃だと言える。

ハリウッドスターが起用されたこともあった。
  • マドンナ:総戸数1,081戸、33階建て、09年3月竣工
  • 渡辺謙:総戸数733戸、19階建て、08年1月竣工
  • ディカプリオ:総戸数300戸、10階建て、06年1月竣工
なかでも衝撃的だったのは、臨海部に建つ大規模な超高層マンション(総戸数1,081戸)にマドンナを起用した広告。新聞全紙大の広告オモテ面の下半分に、目元を拡大したマドンナの白黒写真が掲載されていた(写真)。

マドンナ物件チラシ
(マンションチラシ・データベースより)

ディカプリオの広告費用を総戸数300戸で負担するのは重かったかもしれないが、マドンナの広告費用を総戸数1,081戸で負担するならそうでもなかったかもしれない。

マドンナ物件は当時、億単位のギャラではないのかと噂されていた。

例えば平均価格約6千万円、総事業費に対する広告宣伝費の割合1%として広告宣伝費を推定すると――
    6千万円×1,081戸×1%⇒6.5億円
だから、マドンナに億単位のギャラが支払われていたとしてもおかしくないのかもしれない。

マドンナ物件の販促に係ったE氏は、マドンナを広告に起用したワケを次のように語っている。

1000戸を売るために1万人集客しないといけません。しかも当時、有明はまだ街が出来ていない状態なので、先駆者精神を持つ方々を集めないと売れない。非日常的な生活をどういうアイコンを使って伝えるか、当時のチームで話し合った中でマドンナさんが浮上しました。

好感度抜群の芸能人やハリウッドの大物スターが起用されたマンション広告を見て、マンションの品質や周辺環境などを実態以上に素晴らしいものと誤認させてしまう効果が期待されていたのであろう。当時、そのような広告が少なからず観測されたのは、現在よりも広告効果があったからではないか。

いまではスムログを始め、消費者寄りのマンション情報が流布していることもあり、広告に起用された芸能人の好感度とマンションの品質・周辺環境の良さとは、まったく関係がないことを賢い消費者は理解するようになっているし、芸能人に高額なギャラを支払うくらいなら、マンションの中身(建物性能や好条件の用地確保)にお金をかけてほしいと考えている。

このように、かつてはマンション広告に芸能人を起用する効果はあったが、現在ではそのような効果はほとんどないし、むしろ逆効果ではないか、というのが筆者の回答

「以上、おしまい」だと少々もの足りないかもしれないので、大手不動産会社の広告宣伝費の実態を分析してみよう。

不動産会社、広告にどの程度お金をかけているのか

過去12年間(09~20年度)の大手不動産5社(野村、三井、住友、東急、三菱)の広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)の推移を可視化したのが次図。

野村不動産HDがダントツだが(3~4%)、15年度をピークに減少傾向が見られる。

広告宣伝費率の推移
不動産会社、広告にどの程度お金をかけているのか」より

※上図は有価証券報告書に公開されているデータを元に作成(以下同じ)。広告宣伝費には、マンション分譲に限らず、戸建て分譲や賃貸のほか、オフィスビル・商業施設なども含まれている。

野村不動産HDだけが広告宣伝費をたくさん掛けているのかというと、必ずしもそうではない。三井不動産や住友不動産、三菱地所などは、広告宣伝費があまり掛からないオフィス賃貸事業なども展開しているからだ。

5社の事業セグメントをザックリとBtoBとBtoCに仕分けして、過去6年間(15~20年度)の「BtoC率(全売上高に占めるBtoCの割合)」と「広告宣伝費率(全売上高に占める広告宣伝費の割合)」の変化を可視化したのが次図。両者の相関は結構高い(相関係数0.75)。

「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化
(同上)

上図から以下が言えるのではないか。
  • 大手不動産会社の広告宣伝費は、売上高の1~4%程度。
  • BtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる(顧客に近いビジネスほど広告宣伝費を投下する割合が高くなる)。
  • 野村不動産HD
    「BtoC率」「広告宣伝費率」ともに減少傾向にある(住宅事業から都市開発事業などに軸足を移しつつある)。
  • 住友不動産・三井不動産
    他の3社と比べて広告宣伝費を多く使っている(ピンクの破線よりも上に分布している)。
  • 三菱地所
    5社の中で広告宣伝費の割合が最も小さい(ピンクの破線よりも下に分布している)。広告宣伝費にムダにお金をかけるより中身で勝負している!?
もしあなたが気になっている物件の売主が上場しているのであれば、有価証券報告書に掲載されているセグメント別売上高と広告宣伝費からBtoC率と広告宣伝費率を計算し、上図にプロットしてみるといいだろう。売主が事業費をムダ遣いしているのか、それとも物件の資産価値向上に投下しているのかが見えてくるかもしれない。

あわせて読みたい

ABOUTこの記事をかいた人

一級建築士/マンションアナリスト/マンション・チラシ研究家/長寿ブロガー(16年超)

不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」
twitter.com/1manken

コメントを残す

「コメント」と「名前」は必須項目となります。


※個別物件への質問コメントは他の読者様の参考のためマンションコミュニティの「スムログ出張所」に転載させて頂く場合があります。
※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)