第260回 「古いマンションが高いのは何故ですか?」に答えて

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このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

タイトルのようなご質問を何度かいただきました。「新築と変わらない高値の中古マンション。僕は絶対に手を出さない」とまで語る人もありました。「中古なのに」という見下げる心理があるようでした。

今日は、中古マンションの価格の成り立ちについて新築と対比しながら解説してみようと思います。

 

新築マンションの価格の成り立ちと今後の見通し

ご存知のことと思いますが、新築マンションは、①土地代(用地取得費)、②建築費、③販売経費、④売主利益」で価格が構成されています。

 

構成比をご紹介しましょう。利益率は10%、販売経費(広告費・販売手数料など)が10%、80%が原価となっています。筆者の知る限り、デベロッパーによる差は殆どないと言って過言ではないようです。

 

2大原価の土地代と建築費は、どのように変動するのでしょうか?

先ず土地代ですが、地価調査の数値と比べて、どのような関係にあるのでしょうか?地価調査、具体的には「国土交通省の公示地価」、「都道府県の基準地価格」、「国税庁の路線価」の3種が公的調査として知られます。それぞれが年1回発表しています。

 

新聞で発表されるので、どなたも目にされたことがあるはずです。ちなみに、2020年3月18日、国土交通省が発表した、高額地点ランキング第一位は、昨年も銀座の「山野楽器銀座本店」でした。その価格は、1平米あたり5,770万円でした。

 

路線価は、その土地が面している道路に設定されています。路線価が設定されていない道路もあります。路線価には2種類あって、「相続税路線価」は相続税や贈与税の算定の基礎になります。「固定資産税路線価」は、土地に課税される固定資産税の算定の基礎になります。

 

マンション用地に限りませんが、土地取引は売り手と買い手の合意によって成立します。上記の地価調査データは参考指標に過ぎません。引く手あまたの土地は高値になるものです。

 

マンション用地も、バブル崩壊後の一時期を除くと、競争率の高い土地ゆえに高値取引が常態化しています。競争率が高い理由を簡単に言えば、ある程度大きな土地であること、通勤に便利であること、環境が良いことなどの必要条件を満たす売地は多くないからです。

 

駅に近いが、線路沿いで騒音の問題があるとか、駅に近いうえに環境も悪くはないが面積が300㎡程度と小さいとか、環境も悪くないし、面積も2000㎡あるが、最寄り駅から徒歩10分以上かかるといったふうに何かしらの弱点をかかえていたりするのです。

 

それでも、マンション用地は嫁一人に婿10人といったふうに競争率は高く、そのせいもあって売買価格は高くなりがちです。マンションメーカー各社は市況にもよりますが、2年先・3年先の商品のために用地を仕入れなければなりませんから、土地取得には常に積極的です。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになります。その結果、新聞発表の地価上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまうのです。

 

次に建築費ですが、民間工事と公共工事と分けて説明した方がよいでしょう。

先ず民間工事ですが、マンションやオフィスビルなどの新築工事が主たるもので、景況の悪いときは工事の発注量が減ります。マンションの売れ行きが悪ければ、土地を手当て済みで建築許可も下りていたとしても着工を待つときがありますし、オフィスビルもテナント募集に苦労しそうだとなれば、少し様子を見ようとするに違いありません。

 

公共工事は、橋や道路、官公庁のビル、博物館などの官公庁から発注されるものです。近年、税収の不足から国や地方自治体からの工事は大幅に減りました。小泉政権時代には、大胆な経費節減策が打ち出され、公共工事は激減したと言われます。

 

安倍政権が誕生してからは、「成長戦略・3本の矢」の内の2本の矢(異次元の金融緩和と公共工事へ財政出動)を打ち出し、過去6年財政バランスのために6兆円に抑制してきた規律を破り、2019年度から3年間にわたり、公共工事費を毎年1兆円増やして7兆円に増やすとしたのです。

 

民間工事・公共工事の境界があいまいで、仕分けはできませんが、忘れてならないのは、東日本大震災の復興需要から始まり、各地で続いた自然災害の復旧工事です。これらが、専門職・建設労働者の人手不足を深刻な状態にしてしまったのです。マンションの建築費の半分は労務費と言われるので、建築資材が少し下がったくらいでは焼け石に水と言わざるを得ないのです。

 

今後の見通しについても、建築費に関しては悲観的な見方が圧倒的です。つまり、まだ熊本地震等の復興需要は残っていますし、リニア新幹線関連工事も続きます。浜松町駅周辺再開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台開発、首都高日本橋地下化工事、渋谷駅周辺再開発工事など、都心の再開発も目白押しです。

 

こうした動向を俯瞰してみると、マンションの建築費が低下する見込みは持てないのです。

 

マンションの用地費も建築費も下がりそうにないというのが筆者の見立てです。従って、新築マンションの価格も下がる可能性は低いというほかないのです。

 

中古マンションの価格は誰が決めるの?

他方、中古マンションの価格は、どのように決まるのでしょうか? 先に述べた新築マンションとは全く異なります。新築マンションは、原価を積み上げ、さらに分譲業者の利益と販売経費を乗せて決まるものです。言い換えれば、価格の決定権は分譲業者側だけにあるのです。

 

これに対し、中古マンションの価格は市場が決めていると言えます。持ち主の意向(売りたい価格)が入り込むスキは狭いのです。5000万円で買ったマンションだが、6000万円で売れるといいなと希望しても、市場はそれを許さないということがあります。

 

「市場が決めている」を、もっと平易に言い換えれば「買い手が決めている」のです。30年前に買った5000万円の中古マンションが、今の市場では1億円の値が付いている一方、20年前に3000万円で買ったマンションが2000万円でも買い手が付かないなどということがあるのです。

 

中古市場では、売りたいマンションの中に、先行事例があって、仲介業者はそれを指標に「売れそうな価格」を提案し、売り手はそれを拠り所に「売りたい価格」を決めて市場に並べます。

少しは高く売れないものかと、5%程度の高値を設定して売り出すのですが、それで買い手がたちまち現れて成約することもあれば、反対に高いと見なされ買い手が中々決まらないということもあって、仕方なく価格を下げて再度の売出し。数か月後にやっと10%下げて成約に至るといった例は普通のことです。

 

つまり、高ければ買い手は現れず、下げて買い手が決まったら、その価格が市場価格になるというわけです。そのマンション以外にも、近隣の中古マンションの成約事例が市場に証拠として残るので、それらを基礎資料にしつつ、その後の売りマンションの価格が自然に定まって行きます。

 

市況の良いとき、言い換えれば買いたい人が多いときは、価格は上方に修正され、買いたい人が少ないときは下方修正されることになります。同様に、人気マンションは高値が続き、不人気マンションは安値が続くというわけです。

 

不人気マンションは、買い手から見ると安く買えることになりますが、将来それを売る立場に変わったとき、想像や期待をはるかに超える安値になってしまいます。反対の、高値のマンションの場合は、将来も強含みの値で転売可能となるのです。

 

価値ある中古は新築を超える

価値ある中古マンションは、新築並みの高値になることがあります。都心の一等地のマンションが大半ですが、購入額から安くなることもなく、中には築後30年を超えて近隣の新築並みという例さえあります。

 

そこまでの価値あるマンションは別格の物件ですが、築10年程度で新築を上回る例は少なくありません。

 

中古なのに、どうしてこんなに高いのですかと問われることがあります。不当に値を吊り上げているのではないかなどと訝る(いぶかる)向きもありますが、そんなことはないのです。前述のように、中古マンションの価格は市場、つまり買い手が決めているようなものですから。

 

たとえ、築20年、30年を経過しても、建物の余命はたっぷりあるのです。維持管理も適正に行われていれば問題なく、長く住むことができますし、何より立地条件が周辺の新築物件に比べて優れているものは、古くなっても高い人気を保ち続けます。

 

駅からの距離では負けていないという程度であっても、見事な環境、整然とした街並みが群を抜いているとか、敷地にゆとりがあって、敷地内公園が美しい、眺望が素晴らしいといった物件は、何年経っても価値の下落はないと言って過言ではないのです。

 

高値の新築マンションの売れ行き

新築志向が強い日本人、市場では新築マンションを先ず狙う買い手が多いとはいえ、高ければ売れないものです。ひとつのマンションが完売まで1年どころか2年もの時間を要する例は少なくありません。100戸、中には500戸などと販売戸数が多いためです。

仕入れ代金(建築費)の支払いに充てるために竣工時点で完売したい、それが売り手の本音ですが、その期待(目標)を裏切っているのが最近の傾向です。

 

新築マンションの場合、売れないから値下げするという策は採れないものです。値下げ前の価格で買った契約者からの苦情が殺到し、不公平感を騒ぎ立てることを売主デベロッパーは恐れるためです。

 

長くマンション販売を経験して来たデベロッパーは、過去にその苦い体験をしており、値引き・値下げ販売には慎重です。無論、値下げすれば利益も減ってしまいます。完売を急ぐための、何らかのサービス策も金銭に換算すれば僅かです。

 

昔は、借入金利も高く、売れ残りは経営上の悪影響が大きかったようで、値引き販売も仕方なかったのですが、今は金利が低く負担は軽いので、値引きはしないで完売を狙うのが常道のようです。

 

新築マンションの売れ行きは、2016年頃から低調で、売れ残りも多いのですが、新たな供給数の少ない現在、市場に出ている新築マンションは高値の物件ばかりという実態にあります。

 

都心に比べると「割高な郊外の新築マンション」

新築マンションの価格を地域別に区分して比較してみると、当然、都心より郊外立地の方がまぎれもなく安いのですが、買い手の予算と対比してみると、価格と予算のギャップは大差ないようです

 

都心マンションは高いものの、買い手の予算は潤沢で、購買力と価格のギャップは小さいと言って過言ではありませんが、郊外マンションの場合は予算とのギャップが大きいと見ています。そのことを表わす統計データは発見できませんが、間違いはないと筆者は考えています。

 

都心・準都心のマンションはとても高いけれども、ダブルインカムの会社員の予算は多く、手が届いてしまうのです。会社役員や弁護士などの高額所得者などだけでなく、高値のマンションに手が届く普通の会社員さんは少なくない現況にあるのです。

 

一方の郊外マンションは、共稼ぎでない世帯が多いようで、筆者にご相談くださる人のうち、安い郊外マンションを検討する人は、予算的に厳しいと語ります。都心・準都心に比べて安いとはいえ、郊外マンションの価格と購買予算とのギャップは小さくないためです。

 

「郊外マンション(新築)は意外に高い」という人がありました。筆者は言いました。地価の安い郊外といえども、建築費は郊外も同じです。ゆえに、地価だけが安くても安いマンション価格にはなりにくいのです・・・と。

従って、郊外マンションも売れない事情は同じ、むしろ都心・準都心に比べると割高で、予算とのギャップは大きいと言えるのかもしれません。

 

売れない中古は「家族の会話で値下げできる」

都心にせよ郊外にせよ、中古マンションの売主は新築と異なり、殆どが個人です。新築は、値引き・値下げが困難ですが、中古は夫婦二人だけの決断だけで売り値を変えることが可能です。新築と違い、誰からも文句は出ません。

 

個人が持ち家を売り出すのは、転勤や買い替えなどの事情があるからです。余裕を見て早めに売り出していたとしても、時が経つのは早いものです。中々買い手が決まらないと、価格を下げようということになります。その決断は難しいことではありません。

 

下げ余地があるケースが多いからです。言い換えましょう。買ったときに組んだ住宅ローンの残債が時の経過で思ったより減ってしまうからです。頭金ゼロの100%、35年ローンで買ったとしても、10年経過で債務が25%も減っているので、仮に購入額から25%下の売り値になっても手元の預貯金を足してローンの清算をしなければならない事態にはならないというわけです。

 

買った金額より40%も下げないと売れないようなマンションを買ってしまった人は別ですが、そうでない限り、低金利の住宅ローンを利用している人は、残債務が大幅に減っている現代、個人所有のマイホームを売却する人の下げ余地はたっぷりあると言えるかもしれません。

 

「郊外マンションの人気回復」の報道は曲解?

コロナ禍が住宅市場に変化を起こしているという報道があります。在宅勤務が増えて、郊外マンションでも問題ないという論調にも聞こえて来ますが、それを鵜呑みにするのは危険です。

 

住宅を購入する人の数は、消費財に比べれば僅かです。最近10年間だけを捉えてみると、首都圏のマンション購入者は、新築と中古を合計しても1年間に高々6万人です。首都圏の世帯数は1000万ほどなので、シェアは僅か0.6%に過ぎません。

 

そのうちの半数・3万人が東京都内に買っていますが、今後、その10%が都内から周辺の3県へ移住するとしても、3000世帯に過ぎません。これが大きな潮流と言えるでしょうか?

 

東京都内の新築・中古マンション需要、年間3万の10%が都外に移っても都区内に残る需要は2.7万もあります。一方の都外マンション3万は3.3万に増えますから、局所的に見て行ったとき、郊外マンションも売れ出したとか、よく売れているという表現(マスコミ報道など)が登場するでしょうが、それをもって郊外マンションの時代が再来する(バブル期以来)といった見方にはならないのです。

 

本題に戻ると、郊外マンションの人気が高くなるという見方は危険です。従って、将来の売却価格に大きな期待は持てないのです。郊外マンションを選ぶときは、その地域一番と言えるくらいの価値ある物件を厳選するという姿勢が重要になります。間違っても、「安いから」でバス便マンションを買ったりしてはならないと筆者は言います。

 

都心のマンションが買える人なら、郊外マンションに鞍替えすれば想像以上に広い部屋を買うことができるでしょう。その場合でも、街一番のマンション、街一番の好立地を選ぶよう願わざるを得ません。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です

 

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