第7回対談「のらえもんとDJあかいが震災後からの湾岸エリアと今後を語る」
Twitter湾岸エリア界隈の一部からはもはや神格化されつつある月島の魚菜はざま。1ブロック先では再開発のお知らせ看板と再開発反対のポスターが貼ってある街であります。まずは、再開発がこれからも虫食い状に進むであろう、月島エリア事情から話がスタートします。
「他のスムログブロガーとは違う話がしたい」と張り切っていたDJあかいが、のらえもん相手に湾岸エリア住民の意識改革を迫る異色の回になりました。
目次
この対談 に参加したメンバーは?
マンションアナリスト、ブロガー、インフルエンサー。マンション購入ということに真正面から真剣に考えたブログを足掛け10年も運営しました。忙しくなりすぎて更新が滞りがちですが、スムログも引き続きがんばります、よろしくお願いします!
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マンションコミュニティの皆々様方、ごきげんよう。不動産業界に身を置くDJあかいと申します。 この度、スムログという多くの人の目に触れる晴れの舞台をいただきましたので、普段のブログと一味違った学びのある記事を発信していきたいと思います。
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対談
本日は月島「魚菜はざま」よりお届けします
(※編集部注釈)
2項道路:建築基準法第42条2項の規定により、幅員4m未満でも建築基準法上の道路としてみなされた道路のこと。建て替えの際は道路中心線から2mの後退(セットバック)が必要。
3項道路:建築基準法第42条第3項の規定により、道路拡幅が困難な場所について、特定行政庁が建築審査会の同意を得て、幅員2.7mから4m未満で指定された道路のこと。この場合、セットバックは道路中心線から1.35m以上2m未満の指定された範囲に緩和される。
(※編集部注釈)
下駄履き:建物を商業・住居複合型にした際、低層階の商業施設を指す。
結局「グランドデザインから作っていく街」には余白がないんだけど、余白がある街だと余白部分に「おいしい店」とか「勧めたい店」とか「通いたい飲み屋」とかそういうのが出来ていく。
まぁ東京湾の歴史は産業立国や高度経済成長と不可分です。それがバブル後は東京から工場が無くなっていって今後も戻ってくることはないのだから漂白しても構わないのかも知れないけど、月島でそれが進むのはちょい寂しい気がしますね。
「(工業地区ではない)月島とかの町の文化も同じように漂白しちゃうべきなのか?」ってのは議論としてはあるのかなと思います。まあ「その文化や雰囲気を保存したい」っていう人のできる行動が【再開発反対】しかないというのはなかなか難しいと思いますが。
震災後の地獄を乗り越えた東京湾岸エリアを振り返って
そんな厳しい時期に「湾岸の本当の姿を伝えていこう、言われなき批判には立ち向かおう」とのらえもんブログ「マンション購入を真剣に考えるブログ」が出てきて、「湾岸に特化して個別のマンションや市況を取り上げるサイト」として、今では湾岸を検討するうえで避けては通れない、「湾岸民の視聴率100%みたいな大メディア」になったわけですよね。
震災後、本当に厳しい流れの中で「潮目が変わったな」と感じたのが、おっしゃるとおり「プラウドタワー東雲の分譲開始」だったと思いますね。あの時は野村不動産だけじゃなくて全デベロッパーが「ほんとに売れるのか?」って固唾を呑んで見ていました。
その時に、たまたまなんだけど僕が既に湾岸にいて、親族や会社の同僚やマスコミから「あんなところに住んでいるの」的なことを言われて悔しいからブログ始めた、その時と重なりますね。
東雲以降の新築物件はだんだんと価格も右肩上がりになっていって、あとは作る側も売る側もすごく自信持ってお客さんに勧められるような雰囲気になったなとは思います。
震災前のデベロッパーは「しこたま未発表プロジェクト抱えた状態」で、アベノミクスで株価は上がり始めたけど「これだけの戸数が本当に売れるのか半信半疑」だった気も今から思えばします。まぁ東京オリンピック決定で在庫は瞬間蒸発しましたね。
「地方行政が旗振ってどこの臨海部で大規模まちづくりプロジェクトを立ち上げたいか」といえば、やっぱり権利関係がシンプルな「フロンティアなところ」で、新しいことやりたくなると思うんですよ。
東京の湾岸タワーマンションがメディアから叩かれるのはなぜ?
「湾岸単体の復活劇・物語として見る考え方」とか「湾岸の価格が上がってきたのは自分たちの目利きの力だ!儲かったのも当然!」みたいな論調っていうのはもちろんあると思うんですけれども、「公的な資源の集中投入」や「都政の影響」を抜きにしてはしゃいでるみたいなのは他のエリアの人からしたら正直おもしろくないという部分はあると思います。
でも未だに、湾岸エリアには他のエリアから嫉妬されるほどには価値はついてないと思うんですよね。だってアベノミクス前で比較すると、「湾岸は2012から2020の間に1.5倍になった」かもしれないけど、「都心エリアは同時期に2倍になっている」もの。「都心と比較しての相対的な割安感」というのはいまでもあるんですよ。
それに武蔵小杉だって湾岸と同じかそれ以上に上がりました。震災前後安かったけど今はめちゃくちゃ高いエリア。例えば北千住、赤羽王子、上野御徒町鶯谷、浅草、西新宿とか都内各地はわかりやすく上がってます。
マンション評論家だかなんだか知らないが、「湾岸をとにかく悪く書き立てる悪玉がいるから湾岸のイメージが悪くなる」んじゃなくて、そういう「湾岸に対するもやもやっとした感情があるから、例の評論家に『そういう記事を書いてくれというオファー』がいく」わけですよ。たとえ彼を倒しても、湾岸の人のマインドセットや有り方が変わらない限り、「第二第三の彼」が出てくる。
あとは湾岸の人はすごく自分をアピールしたがりな所があるのかなとは思いますね。「高収入のサラリーマン」とか「共働きのパワーカップルで頭も良くてすごく貪欲」とかで「もっと得したいというマインド」が強くて、「税制」とか「ポイントやキャンペーンの最適化」、いわば「裏技」を見つけるのが得意で、そのあたりを誇示しがちだから、「大人しくしてる人からは目についちゃう」ってところはありますよね。
他のエリアを”そんなに”disらない。「世田谷区、素晴らしい。練馬区、素晴らしい。でも、我が東京湾岸エリアも素晴らしい。」みたいな感じで運営してはいます。まぁTwitter上でたまにプロレスはしますけどね。
湾岸のマンション価格も震災から一貫して上昇傾向で、最後買った時より高く売れるから「湾岸は資産価値がある!住んで資産形成!」みたいな論調がすごく説得力を持って語られて、実際そうやって売れてきたわけです。ただ「いっときの土地神話」じゃないですけど、未来永劫上がり続けることもないわけで、「だんだん椅子が少なくなってきた椅子取りゲーム、だけど音楽は鳴り続ける」みたいな状況になってきてるのかなと。
田端某太郎みたいにあれだけ湾岸自画自賛してたと思ったらいつの間にか引っ越していなくなってるとか。
街の新陳代謝はどうやって保たれる?
じゃあ「ブランズタワー豊洲やパークタワー勝どきに一次取得で入ってくる人」ってほぼほぼいないんじゃないか、そうすると街全体の高齢化が進むんじゃないか。結局「湾岸エリアは人の入れ替わりがあるから平均年齢が1年で1歳上がらない、街に活力がある」っていうのがいいところだったけど、それが「1年に1つ歳をとっていく」って話になってくると、「多摩ニュータウンとか高島平と条件が似通ってくる」わけですよ。
湾岸の評価が上がって価格が高くなった、高くなるのはいいことなんですけれども、それだと新しい人が入ってこない、解決策は何か。「ハードランディングさせて坪単価が下がってみんなが損をする」のか、あるいは「坪単価500とか600にふさわしい街へと変貌を遂げる」のか。
結局不動産は独歩高なんてありえないわけで、隣接エリア同士が吊られて高くなるものだから、さらにもう一段高くなるかもしれないし、景気がポシャって住み替えられなくなるかもしれない。さて、DJあかいさんの話に1つ反論したいんですけどいいですか。
二次取得者が移り住んでくるということは、今まで住んでいたエリア内のマンションの部屋が空く。売却もしくは賃貸、どちらでも引っ越しが発生します。この部屋に一次取得層が移り住んでくるし、その時は引っ越した人より若い人が入ってくるんですよ。
つまり、「新築を中心に中古含めて雁行型の価格形成」が出来上がってて、住民層の入れ替わりが発生している、という事象が見られますね。
後は大規模再開発される時に、HARUMI FLAGとかSKYZ&BAYZ(東京ワンダフルプロジェクト)の時もそうでしたけど、賃貸棟ができるので、今後の購入者候補を育成することができますよね。地縁が生まれるので。
「築年数の経過による分譲マンションの値下がり率」と「賃貸マンションの賃料の値下がり具合」、どっちが低いですかね?「賃料」の方が低いですよね?そうなると、年月が経って分譲マンションの値下がりが一定以上を超えると、付近の賃貸に住んでいる人達は、他所に行っちゃうんじゃないかなぁって思うんですよね。
そうすると「キャナルコートの賃貸から築年の経過したキャナルコートの分譲」ではなくて、「新築とか築浅の東雲で言えばプラウドシティ東雲キャナルマークス」だとかに逃げてっちゃうということになるんですかね。
「高齢者にやさしい街」と言う意味では、とても良い街だと思います。しかし、街の新陳代謝という点では、素晴らしい街であるがゆえに1年毎に住民平均年齢が約1歳上がってしまうんだなぁと。晴海フラッグも「完成度が高い街」を目指しているがゆえに、リバーシティ21と同じ道を辿らないかな、と今から心配をしています。
ま、大丈夫かな。晴海フラッグはリバーシティ21ほど利便性が良いわけじゃないから。
だんだん住民が年を取って、高齢者は変化を嫌うから、「自分たちの住み心地の良いようにしよう」って若い人や変化を受け入れなくなっていく。その極端な例が、エリアは違いますが、秀和幡ヶ谷レジデンスですよね。
湾岸に足りないもの、それは〇〇力だ!
東京内陸部、池袋を根城にしている当選まもない小池さんがまぁ「新興エリアである豊洲をdisることが自分の政治ポイントにつながる」と思って、マスコミ巻き込んでひどいキャンペーンをやらかしましたね。あれをちょっと振り返りたくて。
海風とかの影響で窓とかすごく汚れるんですよね。売れないから長期空室だし。わちゃまるさんと一緒にお掃除に行ったりとかして。あのマンションは「駐車場の空きがない上に、来客用駐車場は朝からずっと占領してる人がいたり」と、車遠くに置かなきゃいけなくて苦労したりというところがありましたね。
ただ、豊洲市場の問題ってそれこそ先に話題に出た「漂白しなきゃいけない土地の記憶」というところはありますよね。重金属扱ってた工場跡地で「食べ物扱う」とか「住まいを建てる」とか、「いくら土壌改良してると言っても抵抗があるという庶民感覚」に都知事が乗っかったんでしょうね。いわゆる「ケガレ」の思想というか。
さて、2016年のあの瞬間は豊洲市場だけでなく、「豊洲全体が汚染されている」という感じになっちゃって、マスコミが一時期豊洲の交差点に張り付いて、住民にインタビューするわ、周りのタワーマンションまでなんとなく巻き添えくらってましたね。あの空気感ってやっぱり「高みから見下ろしやがって」という一種の嫉妬の眼差しなのかなぁって思いました。
だから豊洲の件を踏まえて考えていくと、湾岸はエリートサラリーマンみたいな人が大半を占めるわけですが、「湾岸の人は周りからどう思われているか?」とか、「自分が得する損するという話ばかりでなくて※ノブリスオブリージュをどう考えていくか?」とか、「今まで公共的資源を集中投資されてきて政治の恩恵を受けてきたわけだけれども、逆風になって政治的に損失を押し付けられるとなったら『それは要りません』という話が通るかどうか?」、「いやそれでも戦うとなった時に今足りないものは何か?」とかいろいろ繋がっていく話ですよね。
(※編集部注釈)
ノブリスオブリージュ:貴族の義務、転じて富裕層や高学歴者の社会的責任を指す。
マキァヴェッリが君主論で言うところの、「気まぐれに恩恵が施されはするものの、気まぐれに殺されてしまう」というやつです。自分の運命を人の気まぐれに委ねないためには「力」しかない、この場合の力は「湾岸の利益代表を区議会なり都議会なり政治の場に送り出すこと」だと思います。
これは極端な話かもしれませんが、豊洲市場の問題は「湾岸と政治の立ち位置」だとかいろいろ考えるきっかけになったんじゃないかと思います。
湾岸エリアは広い工業地帯からの用地転換である以上、どうしてもデベ主導がまだ強いけど、「今住んでいる住民たちが歴史と文化を作っていかないといけない」んだろうな、と。
湾岸に来てる人たちって自分の代で湾岸生活が始まるいわゆる「初代」の方がほとんどだと思いますが、「二世代三世代とこのエリアででやってくんだ」ってことになっていくと「その子や孫の世代がちゃんと好きになってくれる街」になるかどうかってのは大きなポイントだと思うんですよね。「価格が高すぎて子世代が家を構えられない」というのも困るし、「魅力がなさ過ぎて若い世代がみんな出て行く」というのも厳しい。
「エリアの利益を代表する人」がいない、すなわち「議会なり都政なりにエリアからの意見を伝える人」がいないと、結局江東区でも「内陸の方ばかり優先されてる」とかあるいは「湾岸ロープウェイみたいな構想」が出てくるんですよね。湾岸のその意見を代表する人が「人口の比率を考えてもちょっと少なすぎる」んじゃないかというところはあるんでしょうね。「代表されてない意見っていうのは考慮されない」という話です。
湾岸タワマンの今後、のらえもんの今後。
のらえもんはあくまでもブログ執筆やTwitterのためにある仮想キャラクターで、「中の人である僕」は自分の中では分離してるんですよ。しかしこの「のらえもんという仮想匿名アカウント」が大きくなるにつれて、さて今後どうすればいいのかなぁというのは最近の悩みですね。
湾岸タワーマンションを維持可能なものにして、次の世代にどうつなげていくのか。有識者アカウントと水面下では議論しています。
次回の対談 は・・・
(のらえもん)思った以上に深い話になりました。思い出したくもないあの震災直後の3/15に私はお台場に行ってみたのを思い出します。人はだれもおらず、街はショック死状態でした。今はオリンピックが決まり(コロナで延期したけど)、東京湾岸エリアはいま最高潮を迎えています。行政・デベロッパーが作った「余白の無い街」がこれからどうやって歴史を作っていくのか。のらえもんも少し考えなくてはなりません。のせられてちょっと余計なことをしゃべってしまったかも。それではスムログ次回対談をお楽しみに!
対談に出てきた物件の情報はこちら
- プラウドタワー東雲
- パークタワー東雲
- クロノレジデンス
- ティアロレジデンス
- スカイズ
- ブランズタワー豊洲
- パークタワー勝どき
- パークタワー晴海
- シティタワーズ東京ベイ
- HARUMI FLAG
- プラウドシティ東雲キャナルマークス
対談に出てきた物件の掲示板
- プラウドタワー東雲(検討スレ)|(住民スレ)
- シティタワー有明(検討スレ)|(住民スレ)
- パークタワー勝どき(検討スレ)
- パークタワー晴海(検討スレ)|(住民スレ)
- シティタワーズ東京ベイ(検討スレ)|(住民スレ)
- HARUMI FLAG(検討スレ)|(住民スレ)
- SKYZ&BAYZ(東京ワンダフルプロジェクト)(検討スレ)|(住民スレ)
- プラウドシティ東雲キャナルマークス(検討スレ)|(住民スレ)
最後に
スムログでは、今後取り上げて欲しい座談会・対談のネタを随時募集していますので、「スムログメンバーへの質問やお便り」からお願いいたします。
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