第225回 「マンションの資産価値は管理組合の力で決まる?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

筆者の日常の仕事は新築・中古を問わず、どこかのマンションの価値を客観的に評価し、将来価格を予測するレポートの作成をすることです。

 

「マンション評価レポート」をお届けする仕事を始めてから約10年になろうかという現在、並行して始めていた「将来価格の予測サービス」も随分さくさんの答えを筆者なりに提供して来ました。

 

さて、その将来価格の予測レポートを作成する中で、いつも惑うのが「管理」です。今日は、マンション管理についての話です。このログの固定メンバーには「管理に関する専門家」もいらっしゃるので、領分を侵さないように気を付けながら書いていこうと思います。

 

 

●中古マンションはなぜ値上がりするの?

マンションの価値が管理によって大きく変わるという話を聞いたことがあると思います。概念としての「マンションは管理を買え」という言葉もよくご存知のことでしょう。

この10年、マンションの価格は、一時期(2008年=2010年頃)を除けば「ほぼ一貫して右肩上がり」でした。、2012年頃までに買った人の多くが、その後の急激な上がり相場の恩恵を受け、値上がり益を享受することになったのではないかと推察します。

 

古くなって行くマンションが値上がりするのは何故でしょうか?

答えは簡単です。新築マンションの価格が上昇することによって、古いマンションも値上がり相場の恩恵を受けるだけのことです。分かりやすく表すと、3500万円で買ったマンションが、10年経って例えば7000万円になっているとしたら、新築価格が高騰して例えば8000万円にもなっていたりするためです。

 

買ったマンションが10年も経って、購入価格から20%も30%高値で売れたなどという話は枚挙にいとまがありません。

 

安値のときに買った幸運な人、他方で最近買った人、若しくは、ただいま物色中の人は高値で買う羽目になるのです。このまま右肩上がりが永続するならいつ買ってもいいのですが、そうは問屋が卸しません。今買う人は「高値つかみ」になる危険を感じながら品定めをしています。

 

中古マンションの価格が上がるのは、新築マンションの価格が上がるためです。新築マンションの価格が上がるのは、地価(マンション用地の価格)が上がるからです。もしくは建築費が高騰するからです。地価と建築費のどちらか、もしくは両方が高騰するからです。

 

建築費は、大雑把に言えばどこで建ててもほぼ変わりませんが、用地費は立地条件によって大きく変わります。

 

2019年現在、新築マンションの用地費は大きく値上がりしました。建築費も2011年の東日本大震災の復興需要を契機に高騰し、最近は都心の再開発などで用地費は一段と高騰したと言われます。建築費ではオリンピック関連工事も影響しているのかもしれません。

 

新築価格が高騰すると、中古マンションの価格も連動して上昇します。簡単に言えば、「新築価格の高騰に嫌気した人が多数中古に向かうので、中古人気も上がって価格は上昇傾向を示すのです。

 

データは割愛しますが、中古価格の推移を見ていると、新築価格の上昇カーブと連動していることが分かります。

 

●マンションの将来価格を左右する要素は?

マンションの将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制などです。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。

 

また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。そして最も大事な要素は「価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、将来価格は期待外れになるからです。

 

上記の⑥にあげた「管理」は、奥が深く、管理業務の先達や管理組合の役員などをなさっている人たちから見れば、筆者などは素人ということになってしまうのですが、「管理の良いマンション」がマンションの資産価値に影響を与えるものであることは論を待ちません。

 

しかし、立地条件や建物のスケール。グレード、住戸の広さ、設備の良し悪しなどに比べると「管理」は資産価値をダイレクトに左右するものではないのかもしれません。

 

 

●マンションは管理が命

そのせいだけでもないのですが、管理がどれだけ重要なものかを実感している人は少ないのだろうと思います。

 

また、管理は管理組合(所有者)から管理会社へ委託する形式が圧倒的に多いこともあって、管理が他人任せになってしまい、結果として管理に関心の薄い所有者が多くなってしまうことにも影響を受けてしまうのかもしれません。

 

居住して行くうちに、これではいけないと感じる所有者も増え、管理に関心を持つ人が次第に増えているとも聞きますが、その割合は非常に少ないように感じます。

 

●良い管理をすれば我が家の価値も上がる

マンションの資産価値を維持する、若しくは高めるのが管理ですが、もっと簡潔に言えば、「管理とは綺麗に保つこと」に尽きます。

綺麗を保つために、整理・整頓・清掃・点検・手入れ(補修)といった作業が行われます。

 

ゴミが落ちていないこと、自転車が乱雑に置かれていないこと、郵便受けからチラシがはみ出していないこと、エレベーターに落書きがないこと、植栽が枯れていないこと、洗濯物がバルコニーの手すりにかけて干されていないこと、こうしたことは最低キープすべき日常の管理項目です。

 

これに、耐用年数の近づいた設備の修理や交換、壁のクラック(亀裂)の補修、壁の汚れの除去といった項目が加わります。植栽の手入れや、花壇の追加設置、ロビーの床材の交換、集合郵便受けの交換、名札のプレート材の統一なども必要になります。

 

これらの管理項目は、新築時の状態をいかに維持するかということがテーマであるわけです。

 

的確な管理が行われると、「中古マンションとは思えない」や「そんなに年数が経っていると聞いてびっくり」という感想になるわけです。加えて、樹木が高く大きく生育すれば、それが経年劣化の反対の「経年優化」し、新築時を上回る価値を生み出します。

 

中古マンションを売りに出したとき、見学にやって来た人が最初に目にするのは建物全体であり、玄関やロビー、エレベーター、共用廊下、そして敷地内の緑です。その状態が「綺麗」でなければ、購買意欲は盛り上がらないことでしょう。

 

反対に、綺麗であればあるほど、見学者は「価値あり」と判断するでしょう。

 

管理が行きとどいたマンションは、周辺相場の10%から20%も価格が違うという声もあります。清掃と補修とで、いつも新品同様に綺麗にしておくことが管理の理想像と言えるのかもしれません。。

 

●管理責任は自分にあると思うべし

資産価値が低下することを望む所有者はいないはずですから、管理の重要性を知れば無関心ではいられないと思います。

 

専有部分に関しては、自分の意識だけで綺麗にすることが可能です。見学者に好印象を持ってもらうようにクリーニングをしっかり行うのか、はたまたリフォームしてから見学者を迎え入れるのかなどは、すべて所有者単独の考えで実行することができます。

 

売却すると決めてから、リフォームするもしないも自分次第です。しかし、共用部分に関してはそうは行きません。日頃から綺麗にするための作業が適宜おこなわれる必要があるのです。管理を委託した先が、着実に実行してくれないと困ります。

 

では、管理会社に一任して大丈夫なのでしょうか? 実際は管理会社によって差が生まれると聞きます。

 

資産価値の維持のために積極的に提案して来る管理会社と、所有者から指摘あるまで何もしない管理会社があるそうです。新築時に策定した長期修繕計画に基づき、その実行を示唆しても管理組合の決議を得るまで長い時間のかかる例も多いと聞きます。

 

管理会社の立場は、あくまで管理組合からの一定の範囲で業務委託を受けているだけであって、勝手に何でもできるわけではありません。その意味では、管理会社を責めることはできません。

 

管理責任は管理組合側にあるのです。管理組合とは、ほかならぬオーナー自身のことです。言い換えれば、管理会社をいかにうまく使うかがオーナー1人1人に課せられているのです。

 

しかし、一人では何もできません。日頃から他のオーナーに働きかけて「綺麗」を保つ努力を管理組合全体で行うことが必要です。

 

●価値あるマンションを見学すべし

購入マンションに到達するまでの間、中古マンションを検討した人であれば、綺麗なマンションとそうでもないマンションを見ることになるはずです。しかし、新築マンションしか見ていない人は、古いマンションのなれの果てを知らないでしょうし、反対に、「築30年を超えているのに綺麗なマンション」も見ていないのです。

 

管理の良いマンションと管理が良くないマンションの差は、どこに現われるのでしょうか?そこを知るには、築30年を超えて「綺麗」を保っているマンションの見学が有効です。それをお手本にして、自己の管理意識を高めることに役立てたいものです。

 

築30年以上のマンションを二つ選択しましょう。片方は価格が極端に安いもの、もうひとつは新築並みの価格で売り出されている高級マンションです。インターネットで簡単に検索できますから、仲介業者を頼って共用部分だけでも見学するのです。物色中の段階で実行するといいですね。

 

 

●組合役員は積極的に受けるべし

管理組合の問題点のひとつに、「役員のなり手がいない」「役員の高齢化」があるようです。この全体的な傾向はさておき、貴方のマンションの価値を高めたいなら、定期的に開催される理事会に出て意見を言い、提案を行うことが先決になるでしょう。

 

理事会に出るためには、理事になることが必須です。是非とも理事になりましょう。共用部分の管理に熱心に取り組むことは、資産価値の向上に役立ち、やがて自分に跳ね返って来ます。

 

「どうせ売るんだから」と管理を人任せにしておけば、結局ツケが自分に回って来るということでもあるのです。

 

貴方の購入したマンションが、将来も高い資産価値を維持することができるかどうかは、ひとえに「管理組合の力」にかかるということかもしれません。「管理組合の力」といっても抽象的ですが、その意味を考えてみることを提案したいと思います。

 

●管理の行き届いたマンションは高値で売れる

築20年超のマンションが、新築価格の半値くらいが相場の地域で7割前後の価格を維持しているといった例があります。

 

その理由を一口で言えば、20年も経ったとは思えない「綺麗さ」が備わっているからです。「綺麗」は「管理が良い」と同義語と言って過言ではありません。

 

綺麗さを具体的に表わすと、「マンション敷地内をガーデニングし、植栽がよく手入れされている」、「ロビーの床がよく磨かれ、壁に印象的な絵画が架けられている」、「集合郵便受けが真新しい」、「郵便受け室名札のプレート材が統一されている」、「チラシの投げ込みを極力させない、また、はみ出したチラシは直ぐに始末される」、「自転車置き場が常に整理整頓され、外に面した部分はツタで覆われ見えないとうに工夫してある」、「エレベーターの内装が高級感あるものに変更された」といったことです。

 

そのマンションでは、見学者が例外なく「綺麗ですね。本当に20年も経っているのですか」と感想を漏らすのだとか。当然ながら、高値でも買い手がつき、仲介業者も売り物が出るのを心待ちにしているはずです。

 

●資産価値の高い中古マンションの共通点は住民の管理意識が高い

管理が良いのは、管理会社が優れているからでしょうか?それも理由のひとつかもしれませんが、管理会社はあくまで管理組合からの業務委託を受けているだけの立場であり、主役ではありません。

 

秘密は、管理組合活動の活発さにあるようです。

 

そのマンションの管理組合は、綺麗さを保とうと手入れに努力して来たのです。

植栽の手入れや床磨きなどの日常管理を管理会社に怠りなく実施してもらうことをはじめ、新しい設備の導入も図ってきたはずです。

 

たとえば、監視カメラの設置やインターホンを最新のTVモニター付きに変更したり、メールボックスの交換をしたりなど。また、最近は玄関ドアを上下2ロック、電子錠、プッシュプル方式の最新式に交換し、玄関ポーチにプランターボックスを取り付けて季節の花で飾る運動を始めたりもしているのだそうです。

 

エントランスロビーの壁を絵画などで飾りつけたのは10年前のことだったとか。

近々、防災倉庫の設置や電気自動車用の電源を増設し、カーシェアリング制度の導入も図るのだそうです。

 

これらの活動は、管理会社に任せきりにしない、「我が家意識」によって生まれるものです。言い換えれば、管理会社に対して先導的に動く意識こそが綺麗な我が家、綺麗なマンションであり続ける秘訣なのでしょう。

 

「建物が100年もつかどうかは、良い材料を使うかどうかではなく、住む人が長持ちさせようとする意志を持っているかどうかにかかっています」と語ったのは、東京大学教授でもある著名な建築家の隈研吾氏でした。

 

そのマンションでは、住人同士の交流にも力を入れており、毎月の理事会では、様々なイベントの企画や防災訓練、お互いの意識を高めることに役立てているようです。

お互いの顔が見えないと何を決めるにも合意形成がしにくいので、日頃からイベント(納涼花火大会、お祭り、クリスマス会、不用品交換会など)や防災訓練などを通じて交流を図って来た様子が想像できます。

 

このようなマンションなら、万一の災害の時にも、互いに助け合う関係が直ちに生まれることでしょう。こうした活動を通じ、また、綺麗さを保つことでマンションに対する愛着が生まれるのでしょう。やむを得ない事情のある人を除くと、売りに出す人も少ないようです。

 

結局、管理組合の力とは、資産価値を維持しようという当事者意識が高いこと、その意識を実現するための意思決定ができること、すなわち、マンション住人が管理組合としてまとまっていることで表わされるのだと聞きます。

 

そのマンションは分譲当時から地域の相場を上回る高額な住戸が多かったため、購入者の平均所得も高かったとか。そのことが、維持管理に必要な費用の支出に関する抵抗も低く、修繕積立金の増額決議も迅速に行なわれたと聞きました。

そこから、管理組合の力のひとつに、「管理組合、すなわち居住者の経済力」も挙げることができそうです。

 

逆説的ですが、分譲時「価格の安さを売りにしている」マンション、更には「管理費と修繕積立金が低く抑えられた」マンションでない方が、資産価値の維持にもプラスと言えるかもしれません。

 

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ちなみに、10月30日は「第697回 高過ぎる新築マンション。売るとき何%下落まで許せるの?」です。

 

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