第188回 一戸建ては値上がりしていない。そのわけは?

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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

 

最近、よく聞く「一戸建ても検討してみようと思う」の声。その背景には、一戸建てがマンションに比べて価格が上がっていないので買いやすい、安い感じがするということがあります。

筆者の運営するブログはすべてマンションに係るものばかりなので、一戸建てのご相談はほとんどないのですが、最近マンションを検討しつつ一戸建ても頭の片隅に置いているというご相談者が増えているという実感を持っています。

 

●マンション価格と建売価格の推移

マンション価格は、新築だけで言えば、値上がり前夜の2012年比で2017年までに33%も高くなってしまいました。(首都圏平均で、2012年:坪単価213万円、2017年:同284万円)

 

これに対し、建売住宅は不動産経済研究所の調査によると、確かに上昇率はマンションに比べると僅かです。

2018年1~6月・・・5048万円(前年同期比4.2%アップ

2017年1~6月・・・4845万円

 

2017年(年間):4833万円(前年比▲2.7)(2012年比5.8%

2016年(年間):4970万円

2012年(年間):4568万円

 

東京カンテイ社の調査では、東京都の場合で、2018年の1~6月の6か月が6100万円~6800万円台のレンジでしたが、2016年の同期は5700~6100万円台のレンジです。約前年同期比9%の値上がりです。

横浜市の場合も、2018年1~6月が4700~4800万円、2016年1~6月が4300~4500万円台で、上昇率は約8%となっています。

 

同社のニュースリリースによれば、「11月の首都圏新築一戸建て住宅の平均価格は前月比+6.6%の4,201万円と4ヵ月連続で上昇した」とあります。

一方、敷地面積50㎡以上100㎡未満の小規模建売に限定すると、11月の首都圏新築小規模一戸建て住宅の平均価格は、前月比+1.4%の4,606万円と続伸した。

都県別に見ると東京都は-0.1%の5,419万円と僅かに反転下落。神奈川県は+2.6%の4,136万円と2ヵ月連続上昇。千葉県は-0.2%の3,912万円と反転下落となった。埼玉県では+2.0%の3,767万円と4ヵ月連続上昇。首都圏の小規模戸建て価格は、10月は1都3県すべてで上昇したが、11月は東京都と千葉県が僅かながら下落に振れた・・・とあります。

 

 

以上の調査データを眺めてみると、マンション同様に一戸建ても値上がりしているものの、その比率はマンションより小さいことが明らかです。

 

●建売住宅の価格安定の理由

建売住宅は何故マンションのように大きな値上がりになっていないのでしょうか?

建築費がマンションほど上がっていないためという分析を読んだことがありますが、それが正しいとするなら用地費が上がっていないことに要因があると考えられます。

 

新聞に発表される地価統計は全般的な傾向を示すもので、東京都心の商業地は前年比でプラス2%であったが、郊外の住宅地はマイナス3%だったなどという僅かな変化にしか見えません。

2018年3月発表の「公示地価」でも、地域格差はあるものの全国的な上昇傾向が明らかになりました。2017年の公示地価では、東京圏の商業地で前年比3.7%上昇、住宅地ではで同1.0%上昇となっています。


これらの数値と比較すると、マンション用地の取得額は地価調査の数値とは大きな隔たりがあるのです。地域相場の20%も30%も高い土地取引の実態を一般の人は殆んど知りません。

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いこと、環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。

工場や倉庫、社宅、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになります。その結果、新聞発表の地価上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまうのです。

 

また、土地の需要はマンションデベロッパーだけではなく、例えば都心の商業地などはホテル用地と直接競合し、ホテル業者に競り負けることが多いと聞きます。

広い土地は立地条件によってオフィスビル、各種店舗、ホテル、マンションなど様々な用途があります。

 

これに対して、建売用地は住宅街に限定され、駅から遠くても構わない、道路も4メートル幅あればいい、面積も広いに越したことはないが、狭くてもOKといったふうに、取得条件がマンション用地に比べればかなり緩いのです。このため、用地取得競争もマンションほど激しいものにならないのです。

 

売り地が多数あって、その割に買い手業者が少ない状態にあれば、売り値も弱含みになります。ここに建売住宅の値上がり率が低い要因があるのです。

 

●一戸建ては買いやすいが・・・

新築マンションの一戸あたりの単価は、首都圏平均で6000万円もしますが、建売住宅は1千万円も安い5,000万円です。明らかに建売住宅が安いのです。

マンションと違い、管理費も修繕積立金もないので、月々の負担に置き換えると建売住宅の買いやすさは明らかです。

 

それでもマンションを選ぶ人が多いのはなぜでしょうか?言うまでもないことですが、立地条件の差にあります。

 

筆者は常々「マンションの資産価値は立地にある」と主張していますが、マンション購入者の中には、駅から遠い物件を買ってしまう人があるのも事実です。そのような人に言いたい。駅から遠い、都心から遠いといった一戸建てを買うくらいなら、建売を買った方が得かもしれませんよと。

 

家には「生活の基盤であるとともに、資産価値という側面もある」のです。駅から遠くても構わない。歩くことも厭わない。だから、立地条件をさほど気にせず選ぶのです。こう語る人がありますが、永住する気なのでしょうか?だとしても、歳を取ったら考えも変わるのではないですか?家族の都合で住み替えたいというときがくるとは考えないのでしょうか?

長い目で見たとき、高齢化や人口減少が自分に影響をもたらすかもしれないとは考えないのでしょうか?

 

筆者が力説するまでもなく、後々のことを考えてマンションの方が良いと思っている人が増え、少なくとも大都市はマンション派が多くなったのです。一時の気の迷いで一戸建てに走るのはどうかと思います・・・ご相談者にはこう話します。

 

もともと郊外に暮らし、郊外都市に職場を持つ人や、都区内でも豪邸が買える富裕層はともかく、いえ、富裕層ですらもマンションを選ぶ人が多いことに鑑みると、マンションの方が、いざ売却のときに大きな需要、大きな市場で勝負できることになります。・・・このことをお伝えして本日の締めくくりとします。

 

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