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第1回対談「マンションオタクから見たマンション管理」その3

マンションオタクでありながら大型マンションの理事会メンバー(理事長も経験済)でもある「はるぶー」さんにマンション管理について語ってい ただきました。聞き手は同じくマンションオタク界の重鎮「のらえもん」さん。「目から鱗」情報が満載の対談をお楽しみ下さい。

目次

  1. この座談会に参加したメンバーは?
  2. 座談会
  3. 次回の座談会

この座談会に参加したメンバーは?

のらえもん
のらえもんさん

湾岸タワーマンション購入&居住中のネット妖精です。湾岸総合情報ブログ「マンション購入を真剣に考えるブログ」運営中。いつの間にか本座談会の司会者ポジションに。 廣済堂新書より【本当に役に立つマンション購入術】9/30発売!⇒ 購入はこちらマンション購入を真剣に考えるブログ

はるぶー
はるぶーさん

都内の大規模マンションに住んでいます。 モデルルームや中古マンションのオープンルーム訪問が趣味化してしまって300箇所くらい訪問しました。 住んでいるマンションの理事会役員ももう7年目です。都内を中心としたマンションの探訪とマンションの管理組合の苦労をかなり濃い目のブログで書いています。はるぶーのマンションヲタクな日々

座談会


管理費をケチると失敗する理由

「ここは管理費が高いから割に合わないんじゃないか」って考える人は少なくありません。マンションをたくさん見ていないと分からないかも知れないけど、それは正しくない(笑)経費をとにかく削減、結果管理レベルを落とすと住民からめちゃくちゃ非難されます。実は適切な管理費ってマンションの値段にほぼ比例するんです。私の実感値として「坪200万のマンション管理費はひと月1平米あたり200円で、坪300万なら300円」。桁違いだけど不思議と数字は同じになる。

マンションの値段はだいたい年収の5倍程度です。4000万のマンションだったら年収800万円、5000万なら年収1000万円のユーザーが持つ感覚にマッチしてるように作ります。湾岸の6000万だと平均的な世帯年収は1200万くらいになりますね。郊外の3000万円くらいのマンションに住んでいる年収600万円の人が満足するレベルと、年収1200万円の人が満足するレベルはぜんぜん違うわけです。

私が理事長さんの会に出席して感じるのは、6000~7000万円級でプレミアム的価値のあるマンションだと、管理費は1平米あたり250円から300円。このくらいの価格帯のマンションの理事会には凄いやり手の理事の出現確率が高い。決してお金を無駄遣いしてるわけではなくて、要求される管理仕様のレベルが非常に高いのでギリギリで査定してもそういう値段になっちゃうんです。「サービスレベルへの要求」も、例えば坪300万円から上の層になると全然違う。

高年収層が相手だと、きめ細やかな対応が必要になりますね。

例えば、坪150~200万だと普通のファミリーマンション、うちなんかそうですが、そのクラスのマンションだと、管理人さんはお年寄りの方中心になるんです。だって時給1000円では、リタイアした年金生活者しか雇えません。でもそれ以上払えない。

一方、坪300万オーバーは世帯年収が1200-1500万以上とかの層になるわけです。旦那ひとりでそれだけ稼ぐ人は、外国とかにもしょっちゅう飛んでるような、いわゆる上場企業の部長さんクラス。そういう人たちって飛行機もビジネスクラス以上なんですよ。空港ではラウンジサービス使うし、飛行機で座席に座れば客室添乗員が名前を呼んでオーダーを取ってくれる。

日頃ビジネスクラスに乗ってるような人たちは、自分がマンションのカウンターに行ってベル鳴らしたら作業服を着たおじいさん管理人さんが出てきて「はい、なんですか?」っていうんじゃ納得してくれません。ちょっと英語喋れそうない若いお姉さんが、カウンターに綺麗な制服着て常時待ち構えていて、帰ってきたら「お帰りなさいませ」とか言ってくれて、そこで声をかけたら「はい、何の御用でしょうか?」とかにっこり聞いてくれるのを求めてるんです。そんなお姉さんの人件費はおじいさんよりずっと高い。

そういう顧客層の差を無視して、単に「こっちのマンションでは管理費がいくらでやれてるからウチのマンションもいくらでやれる筈」っていうのは、私は乱暴だと思ってます。「管理費の単価が高いからダメ」じゃなくて「高さに見合うサービス水準がないからダメ」って視点が大事なんじゃないかなと。

平米100万=坪330万=70平米7000万円に近いような値段のマンションの管理費を「高いからダメ」っていう節約視点のみで考えるとたぶん失敗します。100人中70人ぐらいから「うちはそんな安っぽくやってもらうつもりはない」とか言われちゃう。

意外にその間違いをしてる人が多いです。「東京都の管理費水準より、千葉とか埼玉のほうが平米単価にすると安い」って統計が記事になると「おかしいじゃないか?うち高くない?」って。

それは当たり前ですよね。雇ってる人も期待する人も違うんだから。

マンションの値段も住んでいる層も違いますから当たり前なんです。特に23区真ん中のマンション平均価格はずっと6000万円を超えてます。その差を無視して「同じ管理費単価にしよう」みたいなことで安っぽく管理仕様を考えると、きっと失敗するんじゃないかなと。

つまりコストを下げようとして頑張る行為が、むしろ資産価値に対してマイナスなことが多いってことでしょうか?

無理に管理費を削減することによって「サービスいいな」とか「やっぱこのマンションに住んでると違うよね」っていった部分が削ぎ落とされてしまうと、自分自身のマンションの価値が落ちることになります。不動産って「ちょっとだけ良いものを“ありがたいですよ”と宣伝して高く売る」のが本質でしょう? それを忘れて「ちょっと良い部分」を無くしてしまうと凄く安くなる。

何もしなくてもマンションの値段は大体1年に坪4万円下がります。マンションの“売り”を無くしてしまえばこの流れは簡単に加速されます。

いわゆる主婦感覚と経営感覚の違いみたいなことですかね。

【サービスレベルに合った管理】

主婦感覚の罠ですね。新築のマンションが「ここが違うぜ!」ってホームページで売りにしてるようなところを研究しなきゃダメなんですよ。繰り返しますが「ちょっと良いものをイメージで騙してめちゃくちゃ高く売りつけるのが不動産」、それと同じことを管理組合がやればいいんですよ。こんな露骨に言っちゃっていいのかな。でも私は本当にそう思ってます。

まとめると「コスト削減一本槍じゃなくて、無駄なコストを抑えつつも住民レベルを考えてたサービス維持をしたほうが良い」ということですね。

「管理費の高い安いを平米単価で比較する」ってこと自体がおかしい。だってホテルと同じサービス業なんですよ。

あと、自分のマンションに住んでる人の層を考えたほうが良いですね。まずは駐車場を見てください。ベンツやBMWが半分以上停まってるようなマンションでケチケチやるのはやめたほうがいい。絶対総すかん食らうから。全部国産車だったらケチケチやるのは有り。

そうなのかも知れませんね。

駐車場見ると大体わかります。モデルルーム来場者と同じで外車比率って観察ポイントですから。

外車比率は重要と(メモメモ)。

重要ですね。湾岸タワーあたりでいま約半分です。うちのあたりで2~3割。東京都を出ちゃうと2割もないです。逆に広尾の某マンションとか行ったときは8割でした。



小規模億ションの世界

30戸~50戸といった小規模マンションで比較しても、郊外と都心のマンションでは付帯サービスはかなり違いますね。

違いますね。数十戸のマンションでも億ションであれば、普通じゃあり得ないディスポーザーが付いてます。ディスポーザーって施工に数千万かかっちゃうんで小規模だと1戸あたりの単価がもの凄く高くなる。

ディスポーザーってそんなに高いんですね。

浄化槽とかを専用に用意しないといけないから戸数によらず一定のコストはかかります。500戸以上のマンションだとペイするけど、数十戸クラスのこじんまりしたマンションにディスポーザー付けちゃうと1戸当たり売り値で100万ぐらいコストアップしちゃうわけです。それでもディスポーザーは億ションなら付けるしかない。不動産屋も馬鹿じゃないから、やっぱりその辺りは絶妙に作りこんできますよね。

のらえもんさんは、いろんなマンションをたくさん見てるから詳しいと思うけど「こんな少ない戸数なのにディスポーザーを付けるのは馬鹿げてる」とか、そういう主張は全部はずれ。買う人の懐具合に合わせたサービスを用意しないと相手は納得しない。

「デベロッパーは想定ターゲットにしっかり合わせてこんな設備を入れてるんだよ」っていう話ですね。

莫大な金を動かしてますから、彼らは当然真剣に考えてます。

ディスポーザーが付いてないマンションって、僕の守備地域の湾岸マンションでほとんど有りません。

無いね。



はるぶー流・新築マンション最初の理事会お仕事とは

視線を変えていいですか?「新築マンションに入居して一番最初の理事に手を挙げました。最初の1年2年くらいでやる仕事ってなんでしょう?」詳しく教えてくれると凄くありがたいです。これから入居して、理事に手を挙げるマンションコミュニティ読者にとっても、ためになります。

10年目ぐらいまでは「この年次はこれをやったほうが良い」っていう基本パターンが有るんですよ。

10年まで!

10年ぐらいまであります。いきなり管理会社を替えようとか頑張っちゃう人もいますが、1年目と2年目で本当に重要なのは「マンションが法律的に間違って建っている」とか「外壁のタイルがちょっと剥がれてる」とかを見つけることです。「剥がれかけてますよね」と指摘するだけで無料で直してもらえる期限が法的に2年なんです。

なるほど。

タイルの剥がれ保障は2年で終わり?そんなに簡単に剥がれているもんでしょうか?

タイルの剥がれは2年です。「天井の防水が悪くて雨漏りしてます」とか、昔あったヒューザーみたいに「柱の鉄筋抜いてました」とか、そのレベルは10年ですけど、ほとんどの瑕疵担保責任って2年で終わるんです。だからまず1期目の理事長になったらあちこち見てまわる。「ここもここも壊れてる」って指摘して売主に認めてもらえば、全部無料で直るんですよ。素人じゃなかなか見れない部分もあるから、住民の中で専門家がいなかったら、お金払ってプロに見てもらうぐらいまでやったほうがいい。

さっさとプロを雇って、瑕疵で直せる箇所があるかを見てもらったほうがいいってことですね。

その通りです。規模に関係なくプロを雇った費用の10倍くらいの補修工事をデベから無償対応でやってもらえる。

1年目からプロ雇ったほうがいいの。

プロを雇うということ自体が総会案件になるんです。だから1期目の理事長が誰だったかが重要になります。実は私はそこまでうまく出来なかったんだけど、もし私が1期目に戻るとしたら1年目の終わりの総会で「2年目の終わりまでにどことどことどこがおかしいから見てもらいます」っていうのを何百万円かけてもいいから徹底的に調べる。間違いなく10倍になって戻る。

徹底的に調べて、いっぱい直してもらいましょうと。

だって2年間はどこでも無料で直してもらえるんですよ。ずっと長期のお金のかかる計画を考えるよりまず直してもらった方が早い。

「プロにお金払って調べてもらったけど直すべきところが無かったね」っていうことはほぼ無いんですか?

どんなマンションでも修繕が必要な箇所は必ず有ります。プロが見るレベルってきついですよ。地下ピットにもぐるとたいてい何か有るんです。そこまでやって「ここがダメ」って指摘しますからね、プロは。地下ピットとか屋上とか、普段あんまり人が行かないとこは手を抜かれやすいですしね。

「2年以内にプロを雇って何百万円使うとそれは何千万になって戻って来る」っていうのは大きいですね。

プロの依頼は、最低数百万。理事会独自では決められないはずだから「最初の総会で提案しないとダメ」ということですね。

瑕疵担保責任は2年までに直し終わる必要はないんですが、入居してから2年後までに「指摘を終了」しなきゃいけないんです。これは専有部も同じですよね。

2年目終わりの総会で指摘するためのプロを雇っても、実は間に合わない。

間に合いません。

1期目の理事長がそれをやらないと…

「お金払って管理会社を雇っているんだから管理会社にやらせればいい」と言う人が多いんだけど、管理会社って大抵売主と同系列なんですよ。「利益相反」って言い方になりますが、売主と管理会社は上のほうでは繋がってるんです。「この管理会社は私の味方なのか?それろも売り主の味方なのか?」ってのが常に問題になるんです。全然違う第三者の会社を頼んで雇ったほうがいい。

握りつぶされるかも知れないから管理会社にはやらせないほうがいいと。

管理会社と建設会社(ゼネコン)と売主(ディベロッパー)、いろいろ交渉相手があって、誰が管理組合の味方なんだろうとか思いませんか。

それは思いますね。

初期設定がデベロッパー系の管理会社になっているとどうしても利益相反になります。親会社の意向には逆らえないから、管理会社経由で瑕疵を指摘しても、のれんに腕押し状態。瑕疵担保責任って最終的には売主が負うから、下手な伝言ゲームをするよりさっさと売主を呼びつけて直談判したほうが早い。相手はプロですから「これは初期不良ではなくて経年劣化です」とかわけわからん屁理屈をこねてきます。そこで素人が闘うには「やっぱりプロを雇うべきだ」と、私は思います。凄い人がいっぱい世の中にはいますから。



次の3年目以降は何をすればいいの?

2年目までは「不具合対象を指摘するためのプロを雇うことに全力を注ぐ」として。3年目以降は?

5年目ぐらいまでに、やはり管理費で無駄のある部分については削減を終了しなければいけないです。ほとんどのマンションが12年目でやっと気付くんだけど、1回目の大規模修繕工事をしてみるとお財布がすっからかんになって、24年、30年、36年とコンボで来るその後の工事が出来ないってことが分かるんですよ。

最初の初期設定だと、修繕積立金が安すぎる。だからどんどん値上げする予定になってますね。

そうです。その後貯めていっても、もう24年目からは本格的な工事になります。車と一緒なんです。初回の車検ってあんまお金かかんないじゃないですか。でも2度目、3度目になるといろいろあちこち壊れてきてお金かかるでしょ。マンションも一緒です。大規模修繕の1回目って実は安いんです。そこをギリギリで超えるような修繕費しか集めていないと、そのあと、24、30、36年とコンボで来るんで組合が破産しかねない。

修繕積立金が足りないから管理費を削減するというのはどういうことでしょう?

なぜ管理費の見直しをまず先に終了しないといけないかっていうと、修繕費はいずれ激しく値上げしなければならないから。世の中の95%のマンションがそうなんですよね。それを理事会が主張して、総会でオーナーみんなに、値上げの議案で賛成してもらう必要がある。その時に必ず出る意見が「いやいや、管理費とかぼられてんじゃない?“管理費は半分に出来る”とかいうホームページ見たよ」的な発言。要するに「管理費をしっかり削減すれば、値上げしなくてもマンションの工事できるんじゃないの?理事会サボってんじゃないの?」と言う人がでてくる。
修繕積立金の不足金額は、削減可能な管理費支出より桁違いに大きいので、管理費削減で修繕費値上げが阻止できるなんてことは実際にはまず起こり得ないんですが、そう主張する人は必ず総会には現れるわけです。それを防ぐためには、3~5年目くらいの数年間で財政を立て直して、悪いけど管理会社にもちょっと泣いてもらって、管理費支出もサービスを保ったままで可能なとこまでは削減して「もう管理費削減ではどうにもなりません」っていう状態にしておかないと次に進めない。

管理費ってのは日々の生活費みたいなもんです。無駄を全部削ぎ落とした状態で初めて「貯金としての修繕費が足りません」っていうことを議論できるようになるわけです。「修繕費の早期値上げ」はその次のステップになります。

みんなの納得感のために、まずはサービスを保ったまま管理費を絞る!戦略的ですね。



6年目以降の戦略的マンション管理

1~2年目は瑕疵の指摘。3~5年目が管理費の削減。ではそれ以降は?

6期目からね。残念ながら初期設定がギリギリだったんで、黒字っていうのはほとんど出なかったんですけど、管理費をどんどん削減した結果「もしも管理費会計が黒字になったらどうするか?」。私はマンションの値段を上げるほうに使いたかったんです。

安いファミリーマンションだと良くあるんですけども、エレベーターの内装が竣工時のままで、引っ越しの時に傷を付けないためのパンチカーペットが貼りっぱなし。うちのマンションもそうだったんですけど結構多いですよね。オフィスビルとかですら見ることある。5年ぐらいそのままだから、養生目的のまま竣工時から貼ったままのパンチカーペットが壁面にあって、さらに床がゴム。なんか臭かったりする。それは避けたほうがいい。1階に住んでいない人を案内すると、必ず何十秒かエレベーターに乗るわけでしょ。うちのマンションは無駄に金かけてエントランス部分があっちこっちが石貼りなんです。専有部もそれなりなのにその間のエレベーターだけみすぼらしかったら、がっかりしちゃうじゃないですか。

エントランスから自分の玄関までの動線は全部プレゼンテーションということですね。

そうそう。だからきれいにしなきゃダメなんです。

そこをきれいにするとマンションの値段が上げる?

うちはエレベーターが8台有るんだけど、きれいな木目調のシートに張り替えて床にマンションのロゴマーク入りのしっかりした絨毯を入れると150万円ぐらいかかります。でも、それって500戸あるから1戸あたり3000円じゃないですか。

管理費削減系の人が「じゃあ浮いたお金はどうするの?」って良く言うんだけど、単に還元しても対した金額にはならないし、なんか志が低い気がするんです。「このエレベーターを美しく替えるのに150万円かかります。1戸あたり3000円です。でもきれいになったら絶対1戸3000円より高く売れるようになります」って言いたい。買いを検討している人が実際に来てがっかりするっていう要素は避けなきゃいけないんではないかと。

だからうまくいって組合財政が恒常的に黒字になったら、次は「100万円使って200~300万円くらいマンションの価値を上げる」ことを目指したいです。そうじゃなかったら、わざわざ時間かけて理事会やっている意味ないと思います。戦略的な管理を目指して欲しいなと。

そういった戦略のおかげで全戸の時価があがっていくとなると…はるぶーさんのマンションは500戸ですけど、もの凄く価値があがる仕事ですね。「200~300万の投資が全体の価値を1億円上げる」というような。

すべての部屋を200万上げられたら10億円です。

凄い!

500戸だったら2万円ずつ上げるだけで1000万です。20万上げて1億円ですから。だからそういう投資効率を考えて攻めの管理をやって欲しいなと思うわけです。

同じ時期に同じような条件のマンションを買っても、管理の戦略によって結果が変わってくるということですよね。

そうですね。でも普通管理の重要性に気が付くのって、たぶん10年ぐらい超えたところから先です。ぼろぼろの初期設定のまんまで、なんにもいじんなくても10年は破産しない、12年目の1回目の大規模修繕はなんとか実施できます。管理の良し悪しは2回目以降がちゃんとできるかどうかの勝負です。10年超えて住んでることも有り得ると思う人は、買う時には是非チェックして欲しい。



マンションデベロッパーが考える初期の管理費と修繕費の関係

デベロッパーは修繕費を最初は安く設定しておきたいんですよね。

そして管理費を高くしたいんです。修繕積立金は貯金みたく組合が積み上げていくだけで、修繕工事を管理会社が請負できなければ1円ももらえません。一方管理費のほうは殆ど委託経費で受け取れますから。

経費を足しあげた数字より委託経費が高ければその分全部管理会社の儲けでしょ。管理会社ってのはデベロッパーの系列会社なことが9割ですから、管理費を大目に頂いていればそのマンションから追い出されない限りはおいしく利益が定常的にもらえるわけです。さっき言った立候補禁止なら追い出される心配もない。

ですから初期設定の管理費はたいてい高いです。一方で修繕費ってのは管理組合の貯金なんで、発注を取れなければ管理会社には来ないお金です。それは美味しくないから安く設定する。マンション買う人は、ローン返済+管理費+修繕積立金の総額を今の家賃と比較して判断しますから、管理費が高くて修繕費が安いほうが販売には都合がいいわけです。

管理費は子会社のために高くしたい、でも新築で売るときに維持費を下げておかないと売りにくいから修繕費は安くしたい、と。

僕らからすると、管理費って言われたら修繕費も管理費も全部一緒くたじゃないですか。マンション買うときに物件がいくら、月々のローン払いがいくら、維持費がいくらっていうのまでしか見ない。

合計が例えば3万円だとしても、管理費が2万円で修繕費が1万円なのと、管理費が1万円で修繕費が2万円なのとでは全然違います。税金みたいにどうにもならないものだと錯覚されがちですが、管理組合の蓄えは2倍も違っているわけですから。

そうですね。修繕費は結局は「自分の貯金」なんだから。

個人では好きに扱えないけど、地震がきてあちこち壊れたってなったら、直せるのは修繕費からであって管理費からじゃない。繰り返しますが「管理費は生活費」なんです。一方で「修繕費は貯金」なんです。だから合計金額だけを気にするのは変です。

私がショックだったのは「管理費を削ってその分だけ修繕費に回しましょう」って私の提案に「合計が同じだから一緒でしょ」って同じ理事会の理事に言われたこと。思いっきりムッとした。「あなたは生活費を削って貯金を増やしたら“同じでしょ”って奥さんに言えるのか?」と。それ「奥さんに殴られても文句は言えないぞ」と、私は思うんですよね。奥さん方は「大根が10円安い」とかやりながら一生懸命子どもの学資保険とか貯めてるわけでしょ。いずれ必ず必要になる学資をせっせと貯金するのと全く同じなんです。

管理費は無論安いほうが良い。一方修繕費は貯金なんだから、いっぱい貯めたほうが良いんです。何が起こるか分かんないわけですから。でもこの部分は意外とみんな分かってない。特にマンションを買う人には「修繕費が安いのはやばいからやめたほうがいいかな」ということを認識して欲しいかなあと。

一部のデベロッパーでいまだに修繕費の初期設定がとても安いマンションがあります。大手じゃ三井とか、とんでもなく立派なマンションなのに、ひと月当たり1平米で100円切ってたりする。これは将来必ずべらぼうな値上げになるから、それを覚悟して買うか、そうでなければ「これなんでこんな安いんですか?」ってモデルルームで聞いて欲しいですね。

管理費、つまり生活費は安いほうがいいけれど、修繕費は貯金なんだから高いほうがいい、ということですね。



デベロッパーが作った歪みは修繕費均等割で解決できる、できるマンションは少ないはず。うちはしたけどね(はるぶー談)

そうそう。まあいくら高くてもとは言い切れないけど、今は30~35年くらいの長期修繕計画は当然販売時にも検討するし、管理組合でも検討するわけじゃないですか。これから35年で総額いくらかかるかは大体分かってるはずなんです。積立金を途中から激しく上げるっていうのは、現実的には結構難しい。これまた車と全く同じ話で、新車すぐはぶつけてバンパー凹んだら直しますよね。ところが10年、20年経った車のバンパーが凹んでも放置じゃないですか。

「マンション新築時は値段が高いから修繕にお金を使う」っていうのは拠出の妥当性が納得されやすいんです。一方でマンションでよく初期設定されている修繕費の段階値上げの方式「新築のときはすごく安く始めて、あと何倍にも上がります。30年後には3倍、4倍に上がります」って設定は無理があります。なぜなら35歳で買った時に月1万円なのはいいんですけど、35年後に70歳になったら月4万円ですって、じゃあ払えるのかって話です。もう年金生活者ですよ。私自分も無理だと思うし、何十年も経ったマンションにそんなにお金をつぎ込むってもうできない。そういう設定のマンションを何万戸、何十万戸、何百万戸って売ってしまったら、20-30年後にはもうマンションは全部スラムになるしかない。それを防ぐ義務があるのは管理組合の理事会のはず。

デベロッパーが初期設定からどんどん値上げしていく予定を理事会の意思でひっくり返すってことですか?

そうです。そうしないといけないと思うんです。

はるぶーさんのとこはそうしてるんですか?

うちは5年かかりましたけども35年の均等割りに移行してます。回りのどのマンションよりも修繕費は高いです。その代わり35年間同じ金額でいきますと言ってます。だっていま1万円だけど老後に年金生活者から3万円取るのと、ずっと2万円で行くのどっちが楽ですか?

んー、2万円ですね。でも今の生活も大事。

働き盛りなら1万円が2万円になっても払えますよ。でも年金生活者は1万円が3万円になったら払えないですよ。マンションって住人の年齢の老化はどんどん進んでいきます。のらえもんさんが得意な湾岸マンションはどんどん人が入れ替わるから違うかもしれないけど、うちみたいにちょっと田舎行ったらもう全然違います。ずっと同じ人が住んでいる割合が高いんです。

でも人の入れ替わりが激しい湾岸マンションだって、修繕し続けないといけないのは同じです。初期設定の修繕費が足りないならどんどん値上げは必要ですね。「20年後、30年後に人の出入りが多い湾岸マンションの修繕はどうなってくのか」という漠然とした不安は僕にも有ります。

値上げするとこ、多分ほとんど無いでしょ。湾岸マンションで早期に修繕費を均等割りにして「ずっと同じ金額で行きます」っていうのを実現できたマンションってまず無いんです。やっぱり人の入れ替わりが激しいから。最初からいずれ売ることを想定してるし、値段上がっていたら出て行くし。湾岸はよっぽどひどいマンションじゃない限り、全部値段が上がってるんです。いま売ったら必ず買った値段より高い。ここ5~6年、特にリーマン後のマンションって販売価格より安いマンションってたぶんひとつも無いですよね?

無いですね。

今ものすごい上げ相場ですもんね。で、その分の値上がりを現金化するには、売って他に移るしかないわけです。住んでる限りは、値段が上がっても現金は手に入らない。非常に失礼な言い方かも知れないけど、そういう発想の人はやっぱり多数出てきちゃうから湾岸マンションの修繕費均等割りへの移行は難しい。ただ、それを認識してやれたマンションとやれなかったマンションとでは、20年後、値段が全然違うっていうことは起こり得る。

僕のブログのテーマは「損をしないマンション購入」なんですけど、それは「もし売った時に損をしない」っていうだけであって「5年後、10年後に必ず売るから損をしたくない」という発想ではありません。もし転居するほどのイベントがなかったらずっと住み続けますから、老後のこと考えれば、はるぶーさんの言う「値上げをガツンとするけど一回だけ」の方がいいですね。

値上げの提案って、よっぽど理事会の運営に自信がないと出来ないです。「いままで修繕積立金が月1万円だったのが来月から2万円です」っていうのを通せる人ってめったにいない。

つぶされちゃいますよね。

でもうち全戸の90%以上が賛成でしたよ。「どうしてこうなるのか」ってことを、丁寧に説明するんです。「あなたほんと年金生活者になって、へろへろのじいさんになった時に月3~4万修繕のために払えますか?」ってやったんです。

うちのマンションは「永住仕様でちょっと広め」なので、買い換え前提の人は少ない。人気地区でもないし値段が上がるわけでもないから。そういうマンションでは均等割いけると思います。そうじゃなくっても理事会にパワーが有って「うちはスラムにはしねえぜ!」という強い意志を語れば、みんな馬鹿じゃないから、値上げでも賛成してくれますよ。

次回の座談会

次回はいよいよ最終回。メガマンションの理事長はどうあるべきなのか?正しい中古マンションの見極め方についてもお送りします。

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ABOUTこの記事をかいた人

「スムログ」「マンションコミュニティ」の運営担当者です。その昔、某マンションデベロッパーで新築営業をしていました。
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