第147回 問題あるマンションと分かっていても価値ある選択とは?

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★マンション購入で後悔したくない方へこのブログは、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線でハウツ―をご紹介するものです★

居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

理想的ではないものの、自分にとって優先条件を満たす物件だから決めたという人がいます。これは個人の自由ですから、他人がとやかく言うべき問題ではありません。しかし、優先条件それ自体が、どれほど重要なものなのか、ここをよく考えてみる必要があるように思います。

 

筆者は、ご相談者の個人的な事情や動機などに忖度せず、資産価値の観点、言い換えるとリセール価格の観点のみでマンション選びのハウツー記事を投稿して来ましたが、今日はこの姿勢と矛盾するような話をします。

 

●資産価値の観点

まず、日ごろ主張している資産価値(リセール価格)の観点を整理しておきます。

マンションは売らない限り、損も得もありません。しかし、現実問題として資産価値が重要なのは、永住するつもりでも、いつなんどき売却の必要が出て来るか分からないからです。

そのとき、できるだけ有利に売りたいと考えるのは自然な欲望です。その想いを達成するために大事なことは何でしょうか?筆者は、次のようなことを主張して来ました。

①マンションの価値を左右するのは「立地条件」が一番

②立地条件が同じもの同士の比較では「建物価値」が次に来る

③マンション選びは「街を選ぶ」、次に「マンション全体」、最後に「住戸」という順番である

④安さを追うと失敗する

⑤今は新築限定で探すと物がないので、中古も視野に入れるべき

⑥その他の留意点:多数

 

●経済合理性に優先する条件もある

「建築には人を変え、人を豊かにする力がある」―この言葉は、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組の中で、ある建築家が語った名言です。

注文建築で家を建てる注文者と設計者との交換から紡ぎ出された「こだわりの家」は、住まう家族を幸せにする。番組から、親子関係、嫁姑の関係、祖父母と孫の関係、子供の教育の関係などを「豊かに変化させる」とでも表現すればいいでしょうか、そんな建築の役割を改めて感じたものでした。

 

マンションの購入でも、同じようなことが言えるように思います。例えば、「スープの冷めない距離にあるから」、「親が今は元気だけれど、もうかなりの高齢なので側にいてあげたい」――このような動機から選択する人があります。

これらは、他のどんな条件より優先すると言ってよいかもしれません。

 

一般に、選択条件には下記のようなものがありますが、こうした動機で選択した物件は、経済合理性に反する場合もあることでしょう。

◆子供に転校させなくて良いから

◆通学距離が長くて可哀相だから

◆住み慣れた好きな場所だから

◆友達と離れたくないから

◆小規模マンションが好きだから

◆人気の駅だから

◆ステイタスを感じる場所だから

◆住んでみたい憧れの場所だから

◆売主や施工会社が信頼できるから

◆維持管理が期待できるから

◆自然環境が素晴らしいから

◆部屋が広いから

◆購入予算が少なくて済むから

◆管理費等が安いから

◆どうせ長く住むつもりがないから

 

これらの選択条件がひとつだけでないことは確かです。複数の条件が絡み合って選択されるはずです。しかし、その優先順位には「ちょっと待って」と言いたくなるケースが見られます。

 

しかし、他人の私がそう思っても、買い手にとっては優先する条件なのでしょう。「その選択が間違い」とは誰も言いきれないのかもしれません。

 

●人生観や価値観には個人差がある

マンションに理想のものは存在しません。どこかを妥協して選択することになるものです。問題は、どの部分を条件から外してはならないかという点です。その視点から見れば、疑問に感じる選択をしてしまう人が少なくありません。

 

「それでも構わない、この土地・街が好きだからここに住みたい」という人もあるでしょうし、管理費と修繕費の高さも、その人の金銭感覚や価値観によっては高くないという場合もあるのです。

品質はさほど悪くないが値段は驚異的な安さのユニクロ製品を買わず、1着何十万円もするブランド服しか目に入らない人も少なくありません。カローラよりBMWを選択する人もたくさんいます。

 

これらと同じで、好きな物は高くても高いとは思わないのが「価値観」ではないでしょうか? 人間は経済合理性だけでは行動を決めないものです。

結局、何を基準にして選ぶかは人それぞれなのです。

 

●好き嫌いの問題もある

満点のマンションは存在しないので、部分的に妥協するというスタンスは必須となるものです。ただ、他人が何と言おうと嫌なものは嫌という「好き嫌い」は、妥協できない問題でもあります。

 

建物の外観が「何となく昔の公団住宅みたい」と言って、1億円もする最上階の角部屋を買わなかった人があります。

設備・仕様もハイグレードの大型マンション、環境も良く利便性も高い立地条件で、文句なしの物件と言えなくもないのですが、外観デザインにセンスがないなという判断だったのです。

 

要するに、その人にとって「恰好の良い」マンションであることは重要な問題で、機能や利便性、品質レベルは高くても、デザインが好みでないから「欲しい」という気になれなかったということなのです。

販売員は、設備や仕上げ材の高級感を、また場所の稀少性を懸命に訴えたかもしれません。

しかし、現住居が築10年未満の分譲マンションであったことや、モデルルームを何件も見ていたということから推測すると、おそらく目の肥えた人なのでしょう。また、住まいはステイタスシンボルという考えが前提にあったのかもしれません。販売員の説得に耳を貸さなかったのです。

 

生い立ちや交友関係、育った環境などが影響している可能性もあり、他人には分からない世界です。

適当な言葉が浮かんで来ないのですが、「蓼(たで)食う虫も好き好き」という格言があるように、他人では量れないのが好き嫌いの問題です。

 

駅近にあり将来のリセールバリューが高い物件になりそうと分かっていても、商店街の一角に立つようなマンションは嫌いだという人がいます。小規模で管理費が高い、駅からも近いとは言えない、けれども区画の大きい一戸建てが並ぶ住宅地の一角に建っているから好きという人もいます。300戸を超えるメガマンションやタワーは絶対いやだ、買うなら30戸くらいのこじんまりした低層マンションが好きという人もいます。

また、三菱や三井の物件しか検討しないという、盲心的なファンも少なくありません。

 

●予算との兼ね合いは確かに悩ましいが・・・

個人の価値観には差がある。好き嫌いの問題もある。だから、「あなたが好きなものを選べばいい」と言ったら、身も蓋もありません。

 

少なくとも、筆者のブログに興味を持ってくださる読者は「資産性」の観点を軽視していないはずです。これまで、「評価レポート」や「将来価格の予測レポート」をオーダー下さった方は、強い関心がある方ばかりです。

「気になる点・心配な点」として明記したお便りの80%は、リセールに影響するかどうかという懸念を指しています。

 

筆者はいつも「資産価値の観点からコメントしました」とお断りしてレポートのまとめとしています。

「マンションには経済的価値使用(利用)価値の二つの側面があると考えられます。後者は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがあります。仮に経済的な損失を被ったとしても、使用価値が高いことで大きな精神的利益を得て余りあると考えられるなら、その選択は間違いではありません」と。

 

このバランスを取ることが難しいのかもしれませんが、あるご依頼者は感想文にこう記していました。「売却するときのことも大事だけれど、その手前の暮らしの方が大事と気付かせていただきました」と。別の方は、「資産価値の視点が大事と知りました」と仰いました。

 

資産価値を念頭に置きながら探すことの難しさ。しかし、「ここに住みたい」という気分が決め手になるのではないかと思います

ともあれ、悩むのは「予算」との兼ね合いがあるからです。予算を無視してマンション探しをする人はありませんから、「理想と現実のはざま」に苦悩するのです。

 

駅に徒歩5分以内が良いのは分かっているが、広さが足りないので徒歩12分の物件にしようと思う。

駅の周りが賑やかで、急行も止まるのでA駅が良いとは思うが、予算的に無理があるので、各駅停車だけのB駅の物件にしようと思う。

予算的に厳しいので、最も安い1階住戸を選ぼうと思う。

気に入ったマンションがある。予算的に厳しいので、安い部屋がないかと探したが、ついに見つけた。それは2階〇〇タイプ〇〇〇号室だ。これはお買い得だと思う。

 

迷った挙句、上記のような結論に至りつつある人が「質問と物件評価」を依頼して来られます。「・・・・と考えているが正しいか?」「どこか見落としていることはないか」という動機からのご相談です。

 

お便りを読むと、適切なものもありますが、間違いと感じる選択もあります。また、間違いではないが、第三の選択肢を勧めたいケースもあります。そこで、筆者はレポートの結論として再考を促すこともあります。ときに、第三の選択肢を提示することもあります。

 

「立地条件は妥協しない」ことを前提として、次のように提案しています。

①中古物件も探してはどうか

②3LDKにこだわらず、2LDKを検討しては?

③中古を検討している場合では「築浅」にこだわらずに探しては

 

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その選択の仕方は問題だなあ、そのマンションだけは止めた方がいいなどと感じるケースは、ご相談・評価依頼の中に多数あります。それらに対し、筆者は率直に所見を述べて来ましたが、回答(マンション評価レポート)を送ったあとで、いつもこれで良かったのだろうかと自問自答しています。

 

人それぞれの考え方を、何も知らない他人が左右しようなんて、何と傲岸な所作であろうか。そんな疑問も感じます。しかし、その所見が役に立つこともあるだろう。そう信じて頑固に基本姿勢を続けようと何度も思い直して来ました。

 

●サービスを一歩進めて

筆者は「マンション選びのアドバイザー」を自任しています。これまでにお届けして来たレポートは有料・無料を問わず3200件を超えました。しかし、傲慢な態度と感じつつ物足りなさも感じます。

もっとお役に立つ方法はないだろうか?もっと価値あるサービスはできないものか?

 

このような疑問の中から始めた「マンション探しのサポート」も軌道に乗りつつあります。時間的に数多く対応することはできませんが、一人でも二人でもゴールに達する人が増えたら、そう思って、年中無休のアドバイス稼業に今日も精を出しています。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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