第88回 修繕積立金の上昇率が高いマンションは売りにくいのでは?

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タイトルのような質問をよくいただきます。今日はこの問題にスポットを当てつつ、修繕積立金について整理してみました。

 

●修繕積立金の「逓増方式」

マンション住まいには不可欠な管理費と修繕積立金ですが、最近はマンション業者の意識改革なのかどうか、長期に渡って資産価値を維持するための財政基盤作りを販売時に構築しようとしています。

 

言い換えると、長期修繕計画に基づき必要な財源としての修繕費の積立計画も策定して分譲時に購入者に提示し、一定の承諾を得て販売するようにしています。国土交通省の指導も働いているのでしょう。業界の慣習としてすっかり定着しました。

 

大昔と言うべきかもしれませんが、30年くらい前は修繕積立金は管理費の10%とか20%といった極めて曖昧で不十分な額を設定して販売していたので、現在の姿は隔世の感があると言っても大仰ではありません。

 

いつごろからか、積立金は管理費の30%程度でスタートし、5年ごとに50%アップ、10%アップ(すなわち2倍に)なったりしています。また、最初に基金として積立金月額の60倍、80倍といった一時金を取るという方式も定着しています。100倍の例も少なくありません。

 

10年おきに一時金を取る変形例もあります。

 

どのような形であるにせよ、積立金は将来予定される修繕費に充てるために、初回もしくは毎月に振り分けて積み立てるだけのことです。ただし大金がかかるのは大規模な修繕工事を行うときで、当面30年計画の中では、12年目、24年目なので(国土交通省のガイドライン)、その時に不足しないように積立計画を立案するのです。

 

初回の基金をたくさん取っておけば、その後の値上げは緩やかになるわけです。毎月の積立額も初期を高めに設定すれば、10年間は値上げしなくても済むでしょう。反対に低めに設定すれば、6年目には早くも50%アップなどという計画を組むことが必要になります。

 

現実にも様々な値上がりカーブがあって、20年目には5倍に跳ね上がるケースも少なくありません。一時金徴収を節目に入れると毎月の増額カーブが緩やかになるのは当然のことですが、管理会社の知人に尋ねると、後年の一時金徴収はうまく行かないのだとか。

 

●長期修繕計画の立案時の考え方

いずれにしても、積立計画の根拠は修繕費用の見積もりにあります。

 

30年先まで工事費が現状のままということはないはずです。そうかといって、値上がりを何%に見込むべきかは難しい問題です。あまり低く見積もってしまうと、いざ実行という段階で詳細な見積もりを取ってみたら、積立金残高が足りないなどとなりかねません。従って、計画上は余裕を持たせることが必須です。もし計画を下回る支出で済めば、財政は潤沢になるでしょうから結構なことです。

 

管理会社が立案する修繕計画は、将来の管理会社の業績にも関係して来ます。管理会社は工事を請け負いたいのです。直接工事をしなくても建設業の許可を取れば事業は可能なので、大半の管理会社は「修繕工事」を事業の柱に育てようとしています。

 

立てた計画が余裕のないものであったために、将来の見積もりが計画数字を上回ってしまい、工事が受注できないことになりかねないので、あまりタイトな計画は立てないのだと聞いたことがあります。

 

●共用部分の面積・共有設備の割合などで変わる修繕費用

修繕積立金を考察するときの、もうひとつの着目点は、修繕の対象となる共用部分の面積や修繕対象設備が多いか少ないかです。ここでいう面積は1戸あたりのことです。その計算が大事です。

 

大規模マンションは共用部分の面積も大きいので、その分だけ修繕費用もかさみます。しかし、1軒あたりにすれば小型マンションと変わらないということもあります。エレベーターが2基ある100戸のマンションと1基しかないが30戸のマンションでは計算するまでもなく、30戸のマンションの方が1軒当たりは高いわけです。

 

駐車場が沢山あっても平置きなら安く済む、若しくは殆どかからないはずですが、機械式駐車場なら修繕費は当然高くつきます。内廊下式のマンションと外廊下式のマンションでは、内廊下の方が絨毯の張り替えは高くなることでしょう。

 

バルコニーの広いマンションは魅力ですが、防水工事代はそれだけ多くなります。

外壁の塗装やタイルの補修工事は、タワー型か中低層かで費用は大きく変わると言われています。

 

例を挙げればキリはないのですが、マンションそれぞれの形や大きさ、設備の有無などによって修繕費は変わって来るわけです。マンション全体の規模が同程度でも工事費用には幅があるのです。

 

●国のガイドラインはこうなっている

国土交通省のガイドラインによれば、マンションの規模ごとに積立金の必要額を以下のように示しています。

 

国土交通省のガイドラインで示された専有床面積当たりの修繕積立金の額
階数/建築延床面積 平均値 事例の3分の2が包含される幅
【15階未満】5,000㎡未満 218円/㎡ 165円~250円/㎡・月
【15階未満】5,000~10,000㎡ 202円/㎡ 140円~265円/㎡・月
【15階未満】10,000㎡以上 178円/㎡ 135円~220円/㎡・月
【20階以上】超高層マンション 206円/㎡ 170円~245円/㎡・月
 

【注 1】上表は積立方式に関わらず比較がしやすいよう、30年間の月割均等にした数字です。

【注 2】16~19階未満は建築事例が少ないので除外しています。

超高層マンション(一般に20階以上)は、外壁等の修繕のための特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高くなる等のため、修繕工事費が増大する傾向にあることから【15階未満】と区別し、【20階以上】として示しています。

 

※大規模修繕は築12~15年に1回目が行われるのが普通です。2回目は、1回目から12~15年後となります。 財政難のマンションは、大規模修繕が適切に実施されない可能性が高くなります。

 

大規模修繕の内容は次のようになりますが、屋上とバルコニーの防水工事や外壁塗装工事など、重要な部分だけしか、できないということになると、資産価値は時間の経過とともに加速度的に低下することでしょう。従って、積立はしっかり実施しておかないといけません。

 

外壁補修

タイルであれば張り替えたり、塗装であれば塗り替えたりと、足場を組んで工事をするのが一般的。

タイルを全面的に張り替えることはなくても、点検をしたうえで、剥離箇所を補修して防水処理を行います。

②屋上防水

雨漏りを防ぐため、屋上は防水処理がされていますが、長い年月で劣化するので、10数年おきに新たに防水工事を行います。

③廊下・バルコニーの床防水

共用廊下が外廊下の場合は防水処理がされているので、10数年ごとに防水シートの張り替え工事を行います。

④給排水管

給排水管も長く使えば詰まりや破損などの恐れがあります。そこで10数年~20年おきに交換します。材質によっては錆や腐食が起きやすいものがあり、期間は短くなります。

⑤エレベーター

定期点検とは別に、10数年ごとに補修工事を行い、30~35年ごとに交換工事が必要になります。

⑥機械式駐車場

エレベーター同様に25~35年くらいで交換工事を行います。

⑦鉄部の塗装

鉄はさびやすいので、5年前後おきに補修と塗装を行います。

 

●販売のしやすさとの関係

販売とは新築時の分譲販売という意味です。

 

最近の広告で野村不動産の郊外型マンションブランド「オハナシリーズ」は、逓増方式ではなく「30年間の均等積立方式」を導入しているので将来も安心ですと広告で訴求していました。

 

どうしてそんなことが可能になるのでしょうか?途中で値上げしないということは、最初から高く設定してあるのでしょうか?それとも、初回の基金が多額なのでしょうか?

 

「オハナ北習志野241戸」を見てみました。専有面積は71.39㎡ ~ 75.00㎡、修繕積立金(月額)11,900円~12,500円、修繕積立基金(/引渡時一括払)520,600円~547,000円となっています。

 

毎月の設定額は、11,900円÷71.39㎡なので@167円/㎡となり、他社マンションの初期に比べれば2倍程度と高いのです。基金は他社並みです。

 

30年のトータルではどうなのでしょうか?計算してみました。

 

30年分の合計は71.39㎡の場合で、11,900×360か月+520,600円=4,804,600円なので平均月額は13,346円となります。1㎡当たり@187円です。先のガイドラインに、照らすと【15階未満】10,000㎡以上・平均178円/㎡ に該当します。つまり、特別なものではないようです。

 

別のオハナも見てみましょう。

 

「オハナ町田310戸」は、68.52㎡~ 72.86㎡で月額が10,310円~10,960円、基金が411,200円~437,200円です。同じように計算すると、(10,310×360か月+411,200円)÷360=11,452円  これを68.53㎡で割ると@167円/㎡となります。こちらもガイドラインに沿ったレベルのようです。

 

他社の例も引いて比較すべきですが、割愛して結論を急ぐことにします。

 

要するにオハナシリーズは、毎月の設定は他社の2倍でスタートするものの、後年の値上げはなく、30年間の平均も高くない、70㎡程度なら毎月はずっと12,000円前後で、ということになっています。

 

他社が初期はオハナの半分程度ではあっても、10年後にはオハナに並ぶレベルに上がり、その先では3倍、5倍と上がる例が普通です。基金を合わせた合計を月割りにすると、@250円とか@300円、70㎡換算では18,000円~20,000円などとなる例が多いのです。もっと高い例もあります。

 

オハナシリーズは安いのです。規模的にも、プラン的にも管理費と修繕積立金が安くなる設計の物件だからです。

 

100戸以上300戸くらいまでのマンションが平均的には安くなると言われていますが、オハナシリーズはその典型的なマンションなのです。

 

30年間平均で高くなる物件を「オハナシリーズ」のようにしたら販売がしにくいので、スタート時は安く設定し、逓増方式で高さを感じさせないようにしていると考えられます。

 

 

●修繕積立金の高いマンションは敬遠されるようになるかも

しかし、最近は賢明な買い手がそこに着眼し、売却時に修繕積立金が高過ぎると

買い手はつきにくいのではないか。そんな心配をするようになっています。

 

もっともな心配点です。しかし、毎月のランニングコスト(管理費と修繕積立金)に抵抗あるかどうかは物件次第なのではないでしょうか?

 

将来の修繕積立金を心配するなら、オハナのような設計のマンションを探すほかありません。しかし、希望するエリアに都合よく修繕費の安い物件があるとは限りません。

 

億ションになると、毎月5万円、6万円といった例は普通にあって、それを抵抗なく購入している買い手もあるわけですし、郊外の低額マンションでは「オハナシリーズ」のように3万円以下も多数あります。

 

億ションでなくとも、高級マンションと思われる物件では、4万円前後が普通となっています。中古マンションではよく見られます。その額が日常管理の必要額であり、かつ資産価値を維持するために不可欠であるなら、理解されるはずです。

 

その負担に抵抗感がある人は買わないだけのことです。負担がいやな人は新築に向かうでしょう。反対に、負担が大きくても魅力がたっぷりの中古マンションなら買い手はつくでしょう。ランニングコストが高いという弱点と、その他の面での美点・長所とのバランスによって選択されるはずです。

 

その負担感は個人差があるのです。負担が大きくなっても、この立地なら負担に思わない階層が買ってくれる。そう思えるマンションで居続けてくれるかどうか。その見極めがカギになるのではないでしょうか?

 

・・・・・・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。

 

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