建設工事中の死亡事故がマンションの将来の資産価値に影響を及ぼす可能性の有無につき、区内の某物件を調べてみた。
読者からの質問
そばさんからの質問。
こんにちは。
不幸にも新築マンションの工事中に不慮の事故が発生し建設業者の方が亡くなってしまうニュースをたまに耳にします。
こういった事故が発生してしまったマンションは、将来的な資産価値に影響するものでしょうか?
マンションの資産価値は、建物性能のほか、周辺環境や駅距離、公共施設へのアクセスといった立地など、複数の要因が影響する。
したがって、建設工事中の死亡事故はよほどインパクトのあるものでなければ、多くの人が知ることもないし、将来にわたって記憶に残ることもないので、将来の資産価値へ影響を心配する必要はない。
以上。
これだけでは質問者さんも納得されないかもしれないので、ここはマン点流、定量的にお示ししよう。
区内某物件の場合
23区の某地点で建設中に死亡事故を起こした総戸数300戸を超える駅徒歩数分の大規模マンション(以下、「死亡物件」)を対象に、その後の価格の推移を調べてみた。たまたま「死亡物件」に隣接して、竣工時期が近い総戸数400戸を超える大規模マンション(以下、「隣接物件」があったので、比較対象とした。
なお、事案の性格上、「死亡物件」「隣接物件」を匿名化していること、詳細をぼかしている点につき、ご理解いただきたい。
両物件の過去約6年間のm2単価の推移を次図に示す。
両物件が建つ区でも中古マンションの平均成約単価の高騰は観測されているが、両物件のm2単価は過去6年間、高騰せずに約10万円の範囲内での上下動に収まっている。「死亡物件」のほうに特に顕著な下落傾向が見られるわけではない。
つまり、工事中の死亡事故は将来的な資産価値にはほとんど影響が見られないということなのだ。
※両物件の過去の価格データについては、中古マンションの売却・購入・価格相場サイト「マンションマーケット」に掲載されているデータを利用した。同サイトには、物件ごとに最長過去6年間の「月別m2単価」が掲載されている。
人のうわさも75日
「死亡物件」について、口コミ掲示板「マンションコミュニティ」をひも解いてみると、興味深い状況が見えてくる。スレッド開設以来、約2,500件が投稿されている(23年3月5日現在)。その2,500件を月別に集計し、可視化したのが次図。
投稿数が増えたのは、第1期販売前後と死亡事故が発生した時期。特に、死亡時期が発生した月は1千件近くまで急増したが、その3か月後には100件を下回っている。
人のうわさも75日なのである。
あわせて読みたい
コメントを残す