第299回 「在宅勤務の常態化で住宅市場はどう変わるか?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

コロナ禍がもたらした会社員の在宅ワークは定着して行くのでしょうか?

大企業の中には、在宅勤務を常態化させているところも少なくないと聞きます。

しかし、問題も少なくないようですし、完全に定着しているわけでもないようです。

 

「在宅ワークの普及とマンションの価格」について考えてみました。

 

流れは変わる?

トレンドには必ず終わりが来るものです。インターネット上の情報を検索しながら進められる仕事ばかりではありません。筆者のような仕事でも、すべて在宅ワークで済むとは言えないのです。

 

ご相談者の顔色から当方のレポートの趣旨が理解されていないこともあって、その懸念を払拭するには面談が必須と感じることがあります。無論、テレビ会議方式なら問題ないのかもしれませんが、それとて万能ではありません。

 

言うまでもなく、身体に直接触れる必要がある医師などは対面が絶対なのでしょう。会社員でも営業職などは自宅でできる範囲はごく限られます。

 

マンション販売も、昨今はネット上で顧客に情報提供するだけでなく、対話もインターネット上で行えるようになっていますが、これも限界があるはずです。買い手から見れば、モデルルームの見学も必要ですし、環境・交通便の確認のためには、現地に行く必要があります。

 

経理業務などは、資料さえ手元にあれば自宅で仕事はできるのかもしれません。それでも、1週間に最低1度はオフィスへ出向き、報告や指示を受けるといった作業があるはずです。

 

すべてを自宅で完結できる仕事は少ないはずです。それでも、週の4日か5日を在宅ワークにしても問題ないという職種は少なくないのかもしれません。

 

そして、それが常態化し、コロナ後も定着することになったら、通勤便を重視してマンションを選ぶ必要はなくなるとも考えられます。

 

コロナ禍で郊外マンション需要は伸びる?

としたら、勤務先に近い「都心・準都心」にこだわる必要がないのかもしれません。しかし、実際にそうなるかというと、誰も確信しているとは思えません

 

職種、勤務先の業種や規模などによっても違うはずです。企業がサテライトオフィスと称する郊外拠点(出張所など)を設ければ、それも郊外居住を後押しするでしょうが、大半の会社員がその恩恵に浴するわけでもないはずです。

 

また、共働き世帯が増えた現代は、夫の仕事が在宅ワークになっても妻の仕事は在宅ワークが困難ということがあるはずです。

 

都心・準都心のマンションは高値が続いています。しかしながら、都心・準都心に住むことを選択する会社員は少なくないのです。高値と知っても、都心・準都心物件を選択したがる人は今も変わらない。筆者の目にはそう映っています。

 

都心・準都心居住者が郊外へ移住するだろうか?

都心から都心、都心から準都心という行動が大きく変わることはないと言い換えられますが、それでも希望地域に適当な物件が存在しない、もしくは数はあれども気にいる物件が見当たらないという状況は続くでしょう。

 

結局、都心のマンションが高過ぎて手が出ない、探し始めて2年も経つが「これはという物件が見当たらない」ことから、やむを得ず郊外移住を決断するという人があるかもしれませんが、その数は僅か、筆者はそう考えています。

 

その考えを変えることがあるとしたら、都心・準都心のマンションが高過ぎて全く手が出ないといった状況になったときです。

 

マンション価格の動向(以下のグラフデータ)を見ていると、その動きは近づいているかもしれないと思いつつ、他方で否定する自分がいます。確信を抱くに至っていないのです。

 


 

建築費は下がるか?

新築マンションの価格は、①用地費+②建築費+③販売経費+④分譲業者の利益で構成されています。原価の大半(80%)は、用地費と建築費です。用地費と建築費の割合ですが、高値の用地が多い都心・準都心に限れば50:50という割合になります。

(建築費は都心も郊外も差がないものの、郊外は用地費が安いので30%、建築費が70%といった割合になります)

 

大きな割合を占める建築費ですから、これが下れば新築マンションの価格も下がるはずです。しかし、その動向を注視していると、下がりそうな気配はないのです。

 

コロナ不況で大きな影響を受けている業種があるかたわら、全く影響を受けない企業、業種もあるようですし、建築需要が大きく減少しているという声は聞こえて来ません。

 

景気対策のために政府と自治体が発注する公共工事の水準は依然として高いと聞きますし、民間工事も順調らしく、建設会社は受注が好調を維持していると聞きます。

 

用地費はどうなる?

用地費も高い状況が続いているようです。最近10年の新築マンション発売戸数の推移を継続的に見ていると、供給戸数の水準はずっと低いままで、増える兆候は見られません。用地が取得できないためでしょう。

 

新規発売戸数の推移を見ていると、コロナのせいで大きく落ち込んだ2020年でしたが、2021年は反動的に増加しました。とはいえ、戸数の水準は低いのです。

 

ちなみに、2021年1月~11月の首都圏の累計発売戸数は26,997戸でした。12月の戸数は発表前なので推計ですが、約7000戸と見られます。とすれば、年間合計は34,000戸程度です。2020年は27,228戸、2019年も31,238戸だったので、2,019年比で10%以上も増えることになりそうです。

それでも、10年前は年間44,000戸ほどだったので、それに比べると30%も少ない水準です。

 

少なくなった要因は、ひとえにマンション建設にふさわしい土地の売り物がなくなってしまったからです。湾岸エリアを除くと、都心に空地はなく、利用をやめた土地が売り出されると、マンション業者は競い合いながら購入し、マンションを開発することになります。

 

規模が大きく、駅に近い、そんな土地は希少なのでデベロッパー同士が競争し合い、結局高値を提示した企業によって落札されて行きます。

* * * * * * * * *

マンション用地が安く買えるのは郊外ですが、郊外は販売が難しいのが実情です。地価(用地費)は安くても、建築費は都心と変わらないため、価格を理想水準に抑えることができず、むしろ割高な分譲価格になるのです。このため、販売は好調とはいかず売れ残ってしまうのです。

 

都心部のマンションは例外なく高値ですが、購買力の高い買い手が多いので、高くても売りやすく、多少の時間がかかっても売れて行きます。そのためもあって、大手マンション業者を中心に、都心・準都心を中心に供給を続けたいという声が多いようです。

 

歴史は繰り返すというけれど・・・

かつて、都心の用地取得がほぼ不可能になってしまった時代がありました。マンション業者は押し出されるように郊外でマンション開発を推し進めざるを得なかったのです。バブル期のことでした。

 

バブル崩壊後はUターンして都心での開発が可能となり、今日に至っていますが、昨今の新築マンションの開発は東京23区が中心で、2020年の内訳を見ると、23区の比率は40%、東京都全体で55%でした。

 

これが、大きく変動するかどうか、もう少し経過を注視したいと思いますが、好郊外化の波が再び来るかは疑問――筆者はそう考えます。

 

バス便マンションでもいいのか?

ご承知のように、東京23区は交通網が発達し、世田谷区や江戸川区などにバス便の街が僅かにあるものの、大半が鉄道の駅から徒歩10分程度でアクセスできるエリアにマンションは開発されています。

 

都下と言われる郊外にバス便立地のマンションが建設されることがあるものの、デベロッパーは積極的に取り組むことは少ないのです。なぜなら、バス便マンションで失敗を繰り返して来た経験があったからです。

 

駅近の土地が仕入れられれば、郊外の開発に手を出すデベロッパーもあるでしょうが、先述の通り、建築費はどこでも同じなので、郊外マンションは用地を格安で仕入れることが必須なのです。

 

そんな用地はありそうでなく、事業機会は少ないのが実態です。結局、安いけれども販売が順調に進むかに疑念を感じるようで、手を出さないデベロッパーが多いと言わざるを得ません。

 

買い手の側から考えてみると、価格の安さからバス便マンションに手を出す人もあるようですが、それが大きな潮流にはならないと言わざるを得ません。コロナ禍がバス便マンションでもいい、広くて安いのが魅力だと手を出す人もあるようですが、買った人たちは将来の売却価値というものを考えないのだろうかという疑問を禁じえません。

 

バス便立地のマンション、バス便に限らず交通便の良くないマンションが人気を博すことは考えにくく、従って、将来の転売価格も期待できないのです。

 

時間管理が壁になっているという声もある在宅勤務

在宅勤務がありがたいと語る子育て世帯があると聞きます。その一方で、労働時間の管理が難しいという声も届きます。仕事の成果が計測しやすい業務と、そうでない業務があるためなのでしょう。

 

対面が必須という業務もありますし、在宅勤務が社会の主たる形態になるとは思えないのです。言い換えると、在宅勤務中心の社会になることは考えにくく、マンション市場が在宅ワーク中心の姿になるとは思えないのです。

 

都心居住の魅力は変わらない?

都心に住んでしまった人が、家族とともに郊外に移住するだろうかと考えてみると、そうなるという答えは導けないのです。可能であれば、このまま都心居住の利便を享受したい、そう考える人が多いのではないかと思うのです。

 

具体の説明はご容赦いただきますが、都心・準都心に住んでしまうと、外に移住することには抵抗があるはずだと、考えます。筆者の場合、社宅は世田谷区、マンション購入のスタートは大田区、そのあとの買い替え先が世田谷区でした。

(今の自宅は神奈川県です)

 

単身時代と新婚当初は横浜に住みましたが、勤務時間が長かったこともあって、その後は上述の通り都区内です。地方都市への転勤もあって、様々な街を転々として来ましたが、東京都心へ至近の立地は何かと便利で魅力があることを知る一人です。

 

すべてのサイクルには終わりがある

新聞で、ある識者が語った言葉です。短期に終わるか、想像以上に長引くかは別つとして、都心居住を望む人・家族は依然として多いのです。コロナが招いた在宅ワーク中心の勤務者が増えているといっても、それは限られた企業、限られた職種のなど限定的です。

 

小さくない潮流ではあるものの、価格が安く広い住まいが手に入るからと言って郊外に大量移動することにはならないのではないか、筆者にはそうとしか思えないのです。

 

言い換えると、一時の流行であって、都心住まいの魅力を捨てて郊外に移住する大移動は起こらない、そう考えてしまいます。

 

単身者の場合

本日、最後の話題です。今、筆者は単身暮らしをしていますが、仕事は先述のように在宅のままでも80%以上はこなせるので、郊外の自宅へ戻ってもいいかなと思いつつも、決心がつかず今に至っています。

 

郊外居住は、ある事情があって決めたことですが、結局は不便さを克服することができず、再び東京区内の暮らしに戻ったのです。

 

クッキングなどはできない筆者ですが、食事の不便のない場所を選んで暮らしています。在宅ワークが大半の暮らしとはいえ、利便性は住まい選びの重要条件なのです。

 

最近ご相談でお会いした独身女性も、通勤の便は二の次としていましたが、買う以上は将来の売却価値を重視したいとも語っておられました。みずからクッキングもするとことで、スーパーマーケットでなくてもいいが買い物の便利さを優先したいということも付け加えていました。

 

筆者はこのご相談者にこう言いました。 「差別感を重視なさるなら、駅に近いことは当然で、殆どのコンパクトマンションが駅近なので、駅から5分でなく2分・3分といったインパクトが必須です。建物もできるだけ大型、威風堂々の外観を選びましょう」と。

 

単身者は年々増えています。結婚しない男女が驚くほど多く、購入に踏み切る人も増えました。彼らの買い物はファミリータイプを狙う階層と違って、コンパクト物件であり、従って予算にも余裕があります。

 

それだけに、多少の高値なら購入の壁は高くないので「より価値ある物件」を選ぼうとします。将来、買ったマンションを売るときのことまで考えているので、価値あるシングルマンションとは何かを研究してもいるのです。

 

郊外にシングル対象のマンションは少ないこともあって、都心・準都心の物件を選ぶことになるでしょうが、都心にはライバル物件も多いので、より厳しい条件で選ぶよう肝に銘じたいところです。

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました・・・・・次は10日後の予定です。

 

 

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