高浜橋北詰に見るタワー文明の勃興(2)北西サイド編part1.芝浦小学校

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すっかり間があきましたが、シリーズ2回目です。

前回ご紹介した東京ベイシティタワーは、なんと書いた直後に完売してしまいました。港南エリアで触れようと思っていたベイクレストタワーも完売しましたね。

今回は向かいの北西サイド、ラスベガス(LV)で言うとシーザーズ・パレス側ですね。LVでもこの北側はミラージュ・TI(トレジャーアイランド)から先は、お得ホテルサーカス・サーカスまでホテルがありません。

わかりにくいたとえで恐縮ですが、こちらサイドにタワーマンションはあまりなく、隣のブロックのキャピタルマークタワー(CMT)くらいです。ちょうどのらえもんさんも取り上げていますがCMTは別稿に譲り、今回は交差点に面し東京ベイシティタワー真向かいの芝浦小学校をとりあげます。小学校事情は、マンション購入を考える際に気になるポイントですが、考古学シリーズなので湾岸エリア10年の歴史として振り返ってみます。

高浜橋北詰からの芝浦小学校

高浜橋北詰からの芝浦小学校、右端がCMT

移転決定までの経緯

芝浦小学校の歴史は、湾岸エリアにしては意外に古く戦時中の1942年(昭和17年)創立ですから、来年75周年を迎えます(芝浦小学校の分校としてスタートした隣接学区の港南小学校が開校52周年)。開校からずっと交通至便な田町駅芝浦口の目の前(現在の芝浦TGMMプロジェクト敷地の一部)にありましたが、2006年に345人だった児童数は、芝浦のタワー群入居開始により急増することが事前にわかっていました。

当初は、場所の連続性からもすぐ北にあった東京ガス研究所跡地に移転する計画でしたが、この計画は取りやめになりました。理由は高濃度の土壌汚染が発見されたためです。そう、”TG”は東京ガスなのです。

2007/3/4の朝日新聞記事のアーカイブより:

http://news.a902.net/a1/2007/0304-53.html

 港区は、人口急増から教室不足が懸念される区立芝浦小の建て替え用地として、近くの工場跡地をあてこみ交渉を進めていたが、そこから国の環境基準を上回る有害物質が検出され購入を断念したことが分かった。いまの敷地にプレハブ校舎を建てるなどして当座はしのぐという。
(上林格)

港区によると、芝浦小の建て替え用地として、近くの東京ガス製造工場跡地(約3万2千平方メートル)と同小敷地を交換するなどの交渉を進めていた。

ところが1月下旬、同工場跡地の土壌と地下水から、国の環境基準を最大で1900倍上回るシアンなどの有害物質が検出されたことが公表さ れた。土壌改良後も最低2年間は地下水をモニタリングする必要がある。結果次第では追加調査の必要もあるという。区は安全性を確かめるまで時間がかかるた め、購入を断念した。

芝浦小があるのはJR田町駅のすぐ近くで、JR山手線の海側。「芝浦・港南」地区と呼ばれる。

もともとは倉庫や工場が集まっていたが、その跡地などにマンションの建設ラッシュが続いている。このため、地区の今年1月の人口は3万 943人と、前年に比べ2割近く増えた。区は09年に4万人、16年には4万3千人と爆発的な伸びを予測。マンション購買層の中心は30歳代の共稼ぎ夫婦 だといい、小学校の教室不足が深刻化しつつある。

現在はちょうど2016年ですが、実際の芝浦港南地区の人口は予想を5万4千人以上で、当時の「爆発的」という予測からさらに25%以上増えています。

では、芝浦小はどうなったか。港区は上述のとおり納期を優先し代替地を探し、元は東電の資材置き場、この時点ではヤマト運輸が倉庫として利用していた現在の場所(13800平米)に決定しました。高浜橋は港南地区と芝浦地区の境でもあるので、芝浦小学校の学区のもっとも西に位置することになり、駅より東の方にとっては遠くなりますが当時としてはやむを得ない判断だったのでしょう。

ヤマト運輸時代の貴重な写真が、「運河のほとりに住む男」さんのブログにありました(左奥にソニー本社ビルが見えます)。

ヤマト運輸倉庫跡地

ヤマト運輸倉庫跡地

豊洲新市場との対比

当時それなりにセンセーショナルに取り上げられたと記憶しており、専門家の方もコメントされています。

土壌汚染対策法の問題点が露呈 東京ガス工場跡地(港区)の小学校建設計画 (鷹取敦氏)

このあたりの議論は、2007年4月の港区の教育委員会臨時会会議録(p.10 5.芝浦小学校移転について)に詳しく述べられています。3/4の新聞報道に対し、4/24の会合時点では移転の詳細がほぼ固まっているので、従前に相当な検討がなされていたと思われます。次の記述など、豊洲の話題とみまごうほどですね。

(略)表層で大体2.5メートル全て土壌を入れかえておりますので、同じような形をやっていただければ、比較論ですけれども、東京ガスの跡地に比べると、操業由来は限りなくゼロに近い。ただ、隅田川の浸出土を持ってきて、芝浦港南地域は埋め立てていますので、自然由来という意味においては鉛はどこを掘っても出てしまう。今の芝浦小学校の下を掘っても多分鉛は同じ量出ると思いますが、ちゃんとした手当てをすれば大丈夫だと思っておりますので、土壌汚染につきましては十分配慮していきたいと思っております。


ん? 上述の鷹取氏は豊洲新市場にも言及されていますね。

豊洲でさらなる汚染検出 本来議論すべきは市場移転の是非

工場跡地、人口急増エリア、移転先が限られる都市事情、そこで「発見」される土壌汚染にマスコミが飛びつく…個別には豊洲で起きていることと同じ事象は、10年近く前にあり、今回は区→都の規模に応じて大きくなっているようです(もちろん両方税金)。

以降の詳細な経緯については、ご興味のある方は港区湾岸系老舗ブログ「ITエンジニアだって湾岸ライフ」を参照ください(いきなり手抜き)。

芝浦小の現在と今後

幼稚園・温水プール併設とはいえ総工費60億円以上と当時としてはおそらく(現在も小学校単独では)最高額の建設費を投じた芝浦小は、卒業生を新校舎で送り出すため2011年2月に移転開校しました。
さらに芝浦ホール(エントランス)の吹き抜け階段には、高さ15m、幅7.5m、厚さ3cmの土壁も(税金です)。

土壁

土壁 (http://www.kusuminaoki.com/ より)


そして6年弱を経て現在、なんと現在は児童数992人に達しており、いまだ増加中で来年千人を超えるのは確実とのこと。ご近所情報によれば、運動会は立ち見、学芸会は今年からなくなったそうで、昭和のマンモス校(死語)の様相で少子高齢化はどこに行ったのでしょう?
ふたたびやなざわ亜紀区議のWeb引用ですが、港区の合計特殊出生率はトップの江戸川区に並ぶ1.39で、芝浦地区もさらに子どもが増えています(しかしこのURL…)。
はい、すでに教室が足りなくなることが確定的になり、新設校ができるとのことです。こちらについては、長くなったのであらためて別稿で。

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ABOUTこの記事をかいた人

港区湾岸タワーマンションに在住の計算機技術者(でありたい)。 23区では同エリアしか居住経験がなく、いまも湾岸エリアで評判のMRは見に行っています。 自分の新築リノベーション経験を振り返りつつ、主に湾岸を中心に常に変化し続ける街の情報などを追うことで、次のリノベーションへのヒントを得ようという目論みです。

2 件のコメント

  • 匿名 より:

    あの美人過ぎる港区議さんでしたか。確かに…。

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