国交省が、修繕積立金の金額の目途の”ガイドライン”てのを公表していたのが昨日10年ぶりくらいに改定されました。
結果を見ると、特にタワーで爆上げになっていて上げ幅がかなり衝撃的です。
これはタワー暴落・廃墟化系の評論家両巨頭が、もはや廃墟化待ったなし!って記事をぶっこむべく素振りを開始してもおかしくない。
国交省 『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』改定版はこちらです
(PDFファイル)https://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf
理事の人は全部じっくり読みましょう。朝から10万回(ほぼ全国のマンション数)くらいTweetをみた人を送り込んだし、図も数千回拡大でクリックされていて、ちょっと国交省に感謝してもらってもいい回数。
ここでは、一般の方?向けに、変更点についてざっくり。
『〇〇の衝撃』ってのは、ダイヤモンド誌が管理編とかで多用していたから思わず・・・
ガイドライン数値爆上げって本当?
改訂後の、積立金の目途は、専有面積1㎡あたりでこんな感じ。これは、”機械式の駐車場”のメンテコストを含まない数字で、実際には都内のマンションで機械式なしってのは滅多にない(うちは全区画自走式ですが)ので別勘定です。改訂前は、ずっと10年ほど改訂されてなくてこんな感じでした
比較してみると、小戸数のマンションと、20階以上のタワーマンションで、目途をなる積立金の額は爆増しているように見えます。
これにその部屋の専有面積をかけるほかに、駐車場の1区画あたりこの程度の金額を積立金会計に回せていれば足りるでしょうというもの。 駐車場があることで”積立金が余計に必要になる”金額の目途がこんな感じ。
タワー理事長はなぜに狂喜??
20階以上のタワーでみると、もともと中心値206円で 170-245円の範囲だったのが、
改訂で 中心値338円で 240-410円/㎡/月への
ガイドライン金額の”爆上げ”で『数字の変化だけみると衝撃的』です。
なのに、タワーの理事長を中心に、なぜか発表に狂喜?している人が朝から沢山。これはもとの10年前のガイドラインの”数字”が独り歩きしているのに長年悩まされてきたせい。
タワーはゴンドラやリフトクライマーなど、足場が特殊で仮設にお金がかかることのほかに、超高層の建てものに入っている施設(例として超高速のエレベータ)や防災関連の設備などが特殊・特注もので高額であるなどの理由で高額になります。60年程度の計画で1戸あたり2千万近くになることも珍しくありませんから、大規模の普通の板マンに比較して+30%程度かなが概算の大まかな目途になります。
一方で、小規模マンションは低層なら1戸あたりの屋上面積が大きくなるなど、スケールメリットが利かないから、これも1戸あたりの単価は高くなるのが自然。
なにに”元の”ガイドラインでは特に高くなっていなかったのが、理事会目線からみると解せないものでした。今はきちんと差がでているので、”個別の数字”ではなく、どんなケースで高くなるかという”傾向”は理事会の直感に近くなったと言えます。
湾岸のタワーなどでそこそこ築浅で長期修繕計画を精査すると1㎡300円くらいにどこも横並びでなっています。そのごく普通の均等化移行案を総会で提案すると、必ずこの”10年もの”のガイドラインをだしてきて、
『国交省は206円でたりるぞと言っている(実は言ってないのですが、全部読んでいる筈はない)!!』
『理事長は管理会社のいいなりでぼったくり価格の工事計上をしているのではないか?』
とか多数質問を被弾して、理事長が辞めてやる!っとか暗黒面に堕ちていたりしがち。
個別に精査すべきものではあるのですが、目途となるガイドラインが数字をだしていてこれでは、あんまり積立金徴収の適性化の後押しになるとは言えないわけです。
でまぁ、いままで206円じゃと言われた相手に、今日から338円になりましたぁ!とか反撃?に使いたくなる気持ちも分からないでもない。
超長期的には、湾岸タワーの管理費+修繕積立金の総額は1㎡600-700円に収斂していくのではないかといった、湾岸の理事長の”予言”もあり、自分で数字を積算してみたことのある理事長にとっては、結果はあんまりサプライズがなくて、国交省の基準が普通になったって印象しかないわけです。
国交省の積立金ガイドライン改定見直しにより、20階以上(いわゆるタワマン)の月額あたりの積立金平均額が338円/㎡と記載されたことを受けて、改めてこの10年以内に管積合わせて月額700円/㎡の世界が来ることを予言しておきたいと思います。
— がすたま💫 (@gasu_tama) September 28, 2021
おはようございます。 https://t.co/bmxTeBG1Ys
もともとの”基準”策定の問題
もともとのガイドラインの基準金額を決めるのに使ったマンションの事例数は80ほどでした。しかも10年前の策定で、その時点でも何年かは前の文献を利用しています。その後、足場などの修繕単価はあがったし、消費税だって5%とか上がっています。
15年近く前に、”もう大規模修繕”を済ませていたタワマンというのは殆どなかったわけですから、事例の平均値で作ってもうまく反映できないわけです。川口のエルザタワーや、佃のセンチュリーパークタワーなど50階級の修繕事例は最近までなかったですからね。
改訂された今回のでも、事例がないものはうまく計上されていないのは傾向としてはでていて超高層の建物にめり込んでいるタワー式の駐車場が一番メンテが安いというのは理事長目線でみると???な感じです。多分更新事例がないから計上されてないんだろうと。
今回事例として集められたマンション数は400近くで、そのうち40近くが超高層(20階以上)ということで、タワマンについてもかなりの事例を収拾していることで、まだ統計制度は十分とはいえないながらも、かなり現実的になったのでは?と考えられます。10年ぶり近い改訂ですが改訂されたことは素直に歓迎したいと思います。
重要なこととして、マンションの独自性などを反映して、積立金の単価には非常に大きな幅のある分布になっていることで、図で示された”上限””下限”の線の間に入るマンションは全体の2/3に過ぎないことに留意しないといけません。(これは改訂の前後で線引きの仕方は同じです)
全体の1/3のマンションは、上の線より高いか、下の線より安い積立金なわけですが、平均側(真ん中)の数字だけが独り歩きしがちというのが過去10年の傾向でした。
・・・マンションといってもいろいろ個性があるわけで、全部一つの数字になるわけはないのが自明だと思いますが、なぜか御託宣の数字とされやすいので。
普通の板マンも上がっているけど?
今回の改訂で通常の板型のマンションのガイドラインもかなり上がっていて1㎡250円程度が新規に目途になっています。これは修繕コストが急に上がったというよりは、”積立金”の必要額の勘定の仕方の差が大きい。これは、もともとのガイドラインでは”積立金”徴収だけを見ていたのに対して、今は”積立金会計”に計画期間中に入ってくることがほぼ確実な金額も加えて”実質的な積立金の徴収額”として見るように変わったせいです。
具体的には、
① 新築時にたっぷり一時金で徴収したなど今手持ちのお金(下のA)に加えて
② 駐車場などの組合の収入のうち積立金会計への繰り入れ額(下のC)と
③ 期間中に徴収する修繕積立金(下のB)
を全て、”積立金の相当額”とみなして、それをマンション全専有面積(X)と計画期間の月数(Y)で割り算して数字を出すことになったせいです。
①と②が加わる分、積立金の徴収額が同じでも、実質的な積立金”会計”へいく金額が大きくなりますが、駐車場代は徴収していても、駐車場自身の修繕や更新のための積立に回していなかったマンション(うちのマンションも各種過去の経緯からそうです)にとってはより厳しくなることになります。
#”積立金徴収”から ”積立金会計に入ってくる総額”に数え方が移行しているだけど、板マンのほうは決して爆上げになっているわけでもない。
駐車場の収入を別建ての会計として管理費・積立金の会計からきりはなしているマンションはまず滅多にありません。大抵割り振って、一般会計(日々の管理に使うお金)と、積立金(将来に向けた貯え)に振り分けているために、あるマンションの収益構造を見るためには、駐車場収入も、”1㎡・1月あたりいくら”という単位に換算するとともに、そのうちどれだけが積立金会計に来ているかとみないと、例えば他のマンションと財政の健全性を比較することができません。
これについては Twitterの”がりべん”さんがノートに書いていて詳しいので、この先はそちらを見てくださいで、リンクを貼ってすませておきます。
がりべんさんの ”実質管理費” ”実質修繕積立金”の解説はこちら
https://note.com/garibenz/n/nb4bd7ed36358
マンション管理適性評価制度との関連(追記)
このガイドラインと同時に国交省から発表されている管理計画認定制度(合格不合格のもの)についても概要が詳しくなって発表されています。マンション管理業協会の管理適性評価制度(点数をつけてSABCDなど五段階で星をつけて格付けする)に、さらに日新の保険で有名になった先行する管理士会の制度と併せて3つの評価をワンストップで可能にすることが発表に。管理業協会の評価のほうも、実際に保険料が安くなるとか仲介や評価のサイトに評価結果が掲載されるなどの”ご褒美”も検討中なので、よい評点をとらないといけない。
最近雑誌エコノミストの記事になって1ページ寄稿しましたが、全マンションの2/3が秘密裡に採点された仮採点の結果では最高評価Sをとれるマンションは1割しかないという厳しいものでざっくりいえば10点落としたらもうSランクじゃなくなります。
評価基準のページは管理業協会のホームページ(ほぼ全ての管理会社が加入する業界団体です)で9/15に一旦落されて、ごく最近更新されてUPされています。
こちら→ http://www.kanrikyo.or.jp/evaluation
評価基準のPDFをみると・・・
http://www.kanrikyo.or.jp/evaluation/file/evaluation_sheet_vol.1.pdf
同時期に発表されているのには意味があって、項目3-6の積立金の額のところで評点をつけているのが実にこの”ガイドライン”ベースのものです。ガイドドラインの基準に満たないと+5=>-5点ですから10点の大減点になることに。つまり他がほぼ満点でも(結構難しいです)これ一発で、管理評価はS→Aに落ちて星が一つ減ることになります。
評価制度は来年4月開始です。特にガイドラインの変化の大きかったタワマンと小規模マンションの理事会は確認を急ぎたいところです。
!! 重要 !!
本ブログの内容は、著者の個人的見解であり、著者の所属するマンション管理組合、勤務先、RJC48も含めその他所属する一切の団体の意見、方針を示すものではありません。
はるぶーさんの記事、いつも拝読して勉強させて頂いています。貴重なご教示、本当に有り難うございます。
追記された管理評価制度ですが、国・管理業協会・管理士会連合会の3つの制度が一体となる?のでしょうか。雑誌の記事も拝読しましたが、それぞれの制度がバラバラに動いていており違和感があります。
特に管理業協会の財閥系やゼネコン系の会社にとっては、分譲時に親会社が設定した資金計画の変更を迫られることになりませんか?管理組合が設立されるや修繕計画の評価の審査を申請→2期から修繕積立金の値上げとなると、新築の販売に影響が出ると思います。それが望ましいのは理解しますが、利益相反の立場にある一部の管理会社にできるか疑問です。
マンション管理業協会の役員は財閥系・ゼネコン系が多く、そんな一般社団法人が公益性の高い社会責務を果たすとは思えないのが私の印象です。そういう意味では管理士会連合会の制度に期待すべきなのかと思っていました。
如何でしょうか。
3つの評価制度は各々目的が違うもので、検査項目や配点な趣旨も異なります。ただ、3つ全部を受けるのはあまりにも手間やコストがかかるので、認定可能な資格のもちぬしに頼めばどこからでも3つの評価制度(のうち望むもの)をワンストップで取得できるとするものです。
国のものは合格・不合格ベース。スラム化のリスクの高いマンションを検出するのが目的なので、殆どのマンションにとっては合格して当たり前といえるものです。
管理業協会のものは、もっと細かく点数化されているもので、いわば”合格”の中を優・良・可と分類するものです。理事会の差もそうですが、お世話している管理会社の差がでやすいように作られていて、仲介のポータルサイト・保険(日新以外の大手も想定されると思います)の保険料割引や、仲介での中古購入時のフラット35などの利率優遇などとの連携が考えられます。
最後の管理士会のものは、”日新ーHOMES-管理士会”という、特定の会社間でしか使えませんから、最も汎用性が現状では乏しいもので、もともとが経年したマンションの保険査定での差別化で点をつけているもので、例えば管理業協会のものと比較して、ごく一部の項目を極端に偏重しているなどで、これだけで全部にのっかれというのはちょっと難しいなというのが私の印象です。上の三者の連携色が強く出すぎていて、例えば”日新以外”の保険会社を契約している殆どのマンションにとっては、受けるメリットに乏しいものだと思います。
管理業協会のものは、無論管理会社側の団体の作成ですが、国交省の認定制度をもとにつくられていて、規約の整備状況なども妥当ですし、財務状況の確認に全体の4割近い配点を割くなど、これをクリアできていれば30年以上という長期間に渡って、持続可能性が保証される内容になっています。
また私自身は、急速な高齢化の流れや、新築マンションの高騰から、近い将来マンションから理事会は消えていくと考えています。高額のマンションに住む人は時給単価の高い仕事をしていて、理事などはやりません:お金は余分に払うから理事会はなくしてくれって方向にどんどん進むと考えています。その場合、無論委託経費は高くなりますが、黙っていても何十年に渡って”マンションが住める”状況にキープできる点からは、”管理業協会”の評価制度にのっかってみたいなと私は思うものです。
「理事会は消えていく」というお考え、一理あるかもしれません。管理に無関心でやる気の無い組合員に、理事としての権限を与えても、誰も得しませんよね。
私の中のモヤモヤがスッキリしました。有り難うございました。
三井がかなり郊外のものまで含めて新築の初期設定を理事会なしにしていますよね。
評価ポイントを見ればわかる通り、管理会社に全部任せている場合には、クリアすることが得意なものばかりです。そのコストは無論全戸で負担しなければなりませんが、たまたま覚醒した理事がいれば頑張ってなんとかするけど完全ただ働きで頑張って残り全員がその結果にただのり(フリーライド)するが、誰もでてこなけば、不足したままの積立が放置されていくというのはあんまり楽しい未来図でもありませんので。
理事会が消えてゆき管理会社に任せるって、永年勤続理事長が知り合いの業者に発注していると言う構図と変わらない世界みたいな気がします。管理会社の第三者管理が利益相反であろうとそんなことは構わないよって言う裕福な人が多数派であれば何をかいわんやですネ。韓国のマンションは第三者制度だけれど不祥事が多いと聞いたことが有ります。であれば、監査制度の設計も必要かも‥と思う次第ですが、如何でしょうか?
監査をして見つけられるのは、
法や、規約に違反していたり、
会計処理などが不適切である
場合で、
ほとんどの人が気にする、
高すぎる利益の乗った自己契約ってのは
どうでしょう。