第281回「損しないための究極のマンション選び」第4部

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

マンション選びで失敗しないために勉強するのは大切なことですが、勉強すれば勉強するほど理想が高くなってしまい、現実に買えるマンションとの距離が遠くなってしまうという人があります。

どんなマンションを選んだらいいのか、迷う人も少なくありません。

 

今日の第4部は、中古取引の分析を通じて、購入価格から大きく値下がりしてしまったマンションの共通点を探して紹介します。

 

(1)格安マンションは値下がりする

支線・枝線にある物件の中に、本線・幹線の物件に比べて20~30%も安い印象があって、人気になる例があります。新築マンションの話です。

本線・幹線の物件が5000万円というとき、同じ面積で当該物件は4000万円前後、1階住戸などは3000万円といった低価格です。

 

このような価格はどのようにして実現したのでしょうか?

 

土地の取得費がとても安いだけでなく、表面的な建物品質(モデルルーム)は普通レベル、見えないところでは低品質にしてコストを抑えています。

土地代が安いのは、規模が大きいため買い手がつきにくいこと、環境的に難のある場所にあること、この二つが理由です。あえて追加すれば「立地条件に難がある」ものもあります。

 

広い土地であれば、スケールメリットが生まれて建築費も抑えやすいのです。駐車場も金のかかる機械式にせずにすみます。しかし、このような格安マンションの、売却時は期待外れの値段でないと買い手が付かないことが多いのです。

 

格安マンションは売却価格も安いと覚悟しなければならない

首都圏の新築、中古の両方をウォッチングしていると、大雑把に言って、高額マンションほど値上がりし、安値のマンションほど値上がりしていないことに気付きます。

郊外の、立地条件に問題ありそうなマンションを安値に釣られて買ってしまうと、のちのち後悔することが多いものです。

 

銀座の土地は売りもの自体が滅多にないものですが、売り地があれば1坪当たり1億円出しても買いたい人(法人)が常にいます。そんなに高い価格で購入して採算が合うかと疑問を持つ向きもありますが、採算だけではないのです。

 

マンションも同じようなもので、換え難い価値の場所があり、30年以上前の物件であっても、周辺の新築マンションと変わらない価格で買い手が付く人気マンション、今やヴィンテージと呼ばれる物件が都内にはいくつかあります。

 

坪単価で言えば500万円以上、分譲時の価格を超える中古の億ションです。それでも、「そのマンションに住みたい、価格はいくらでもいい」といった需要があるのです。

 

この反対の位置付けにあるのが、格安マンション・交通便の悪いマンションです。いくら安くても結構だ、というわけです。

 

高いマンションは、ますます高値になり、安いマンションは買い手を見つけることすら難しい。このように考えるほかないのです。

 

高い物件は立地が良いからだ。買うなら高い物件を!!

マンションは立地条件が全てと言っても過言ではないのです。

都心は高い。駅近は高い。人気のある街は高いーーーみんな場所の値段です。

 

大手デベロッパ―の手になる優良な物件だから建物コストもかかっている、だから高いということもありますが、ここからは立地以外の要素を排除して説明します。

 

人気のある場所では、なかなか売り地が出て来ません。たまに出たら、競争入札で高値の取引が成立し、取得したデベロッパ―はそれでも強気に企画し、高額マンションを売り出します。すると、滅多に出ない新築物件ということから、短期間に完売してしまいます。

 

こうした立地の物件は、需要に比べて供給が少ないため、当然の結果でもあるのです。人気の街では、新築がないなら中古でもというわけで、中古マンションも高値取引が当たり前に成立します。

 

また、そのような街では中古の売り物も実はあまり出ないのです。高く売れることを知った所有者は、売ってしまうと次にここで買いたいというとき買えなくなる恐れがありそうだと考えます。または、価値ある物件だから手放すのは惜しいと思うようです。かくして、売らずに転居する人も多いのです。

 

これらの現象から、「場所が良ければ高いけれど、それを買っておけば将来の資産価値は高まる。だから安い物件を探すのではなく、高い物件を探すスタンスが望ましい」ということが分かります。

 

勿論、人気エリアというだけで建物プランがよろしくないものもありますし、価格も妥当とは言えない物件もあります。また、人気の街とはいえ、ピンポイント的に良いとは言えない場所もあります。そうした基本のチェックは必要なのですが・・・

 

マンションの価値を大きく左右するのは、何と言っても立地条件です。立地条件を分解すると、都心へのアクセスの良さであるとか、駅からの距離であるとか、商業施設等の充実度、自然環境の良さとかということですが、その中で、最寄駅からバス便というのは大きなマイナス要素となります。

 

駅から遠いが徒歩物件に優るマンションというのは、見た記憶がありません。

 

一般に百点満点のマンションはなく、短所を長所で補う形になるものです。バス便の短所を補うものが何かと言えば、普通は抜群の自然環境が挙げられます。開発地を含む周辺地域一体が自然環境に恵まれているという条件です。

大きな森や河川、広大な公園などに隣接する立地とも言えます。

 

加えて、マンションの敷地内に公園や散策路や遊びの広場といった空間を用意し、建物内にもキッズルームやパーティールームなどの複数の共用施設を設けたりもします。もちろん、大型マンションにしか実現できないものです。バス便の弱点を補える決定版というわけではありませんが、何割かは補ってくれます。

 

しかし、利便性の不足を補ってお釣りが来ることはありません。霞を食べて生きることができないのと同じで、働き盛りの買い手にとって、通勤の便を犠牲にすることをヨシとできる人は多くないのです。

 

※コロナ禍による市場変化

2020年以降の市場変化で特筆できるのは、コロナ禍が通勤の便を最優先としなくてもヨシとする需要を増大させたことですが、それでも郊外マンションやバス便マンションが市場を牽引するボリュームになったわけではないので、郊外マンションに目を向ける際は注意しなければなりません

 

価格が安ければ大丈夫か?

交通便の悪いマンションを開発・分譲する企業は、更なる魅力アップを付加することに知恵を絞りますが、避けられないのが価格抑制です。

 

徒歩物件では得られない広さのマンションが安く買えるというとき、または徒歩物件では手の届かないものばかりという地域において、それまで見たことがない安値で分譲されると知った人は、交通便を我慢する決心をします。

 

多くのバス便マンションが、価格抑制のためにコスト削減を徹底して企画されます。その結果、あるマンションは室内の設備・仕様がB級C級になり、あるマンションは建物全体がシンプル過ぎる造りになったりします。

 

しかし、どんなに安くても売れ残りを抱える事態になることがよくあります。バス便物件の多くは大型だからです。つまり、数が多過ぎて売れ残るのです。言い換えると、不便を我慢してでも買いたい人の数が底を着くのです。

 

仕方なく、最後の手段で価格をさらにダウンするという策を採ります。建物竣工から2年近く経過しているようなケースでは、15%くらいの値引き販売は珍しくありません。

そのくらい安かったらメリットがあるのではないかと安値に釣られて動く人もあります。しかし、あまりお勧めできません。

 

何故か、その理由を以下で説明します。

 

(2)バス便マンションの場合

バス便マンションは、格安にしたつもりでも売主の期待を裏切る結果となってしまうようです。分譲主は大幅な値引きを余儀なくされるというのがお定まりのコースです。

 

これに対し、最寄り駅から近い、概ね徒歩10分以内であるのに割安という物件をときどき見かけます。例外もありますが、首都圏郊外の駅近・格安マンションは人気を集めて短期完売という、売主にとっては笑いを堪えられない良好な成果を得る例が僅かにあります。

 

同じ格安マンションでも、駅から徒歩圏の物件とバス便の物件の差はこれほど違うのかと、事業者に改めて教訓を残す比較事例となっています。

 

さて、販売に成功した「郊外の駅近マンション」という、その駅はどのような駅なのでしょうか? 格安で分譲できるということは、言うまでもなく、郊外の、かつ都心へのアクセスは良くない、そんな駅なのです。

 

各駅停車しか止まらない駅、始発駅でもない、幹線鉄道でなく支線・枝線の駅、乗り換えの不便な路線etc.

それだけではありません。郊外だから環境は良いだろうと想像しがちですが、実際に現地を確認すると、あまり好ましいロケーションでないのです。

 

畑と雑木林、住宅地と工場や倉庫・資材置き場等が雑然と混在する未整備な街、ローカル色の濃い、また寂れた駅前商店街といった光景が代表的で、いわく言い難い風景・環境なのです。このような場所では、一見格安のように見えるマンションも割安とは言えないのです。

 

バス便マンションの将来価値の下落率は大きい

マンション購入にあたっては、将来リセールするときの価値を購入時に想定する、若しくは考慮しておくということが大事です。いつなんどき、売却の必要が生じるか分からないからです。

そのとき、できるだけスムーズに、少しでも高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり人情というものです。その際の大きな弱点になるのが、利便性の悪さです。

 

将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、⑤ブランド、⑥管理体制ですーーーこの中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。

 

立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の弱点を補うことはできません。

 

購入価格が安ければ将来の売却価格が低くても、損失は大きくないのではと考えがちです。バス便でも新築時に売れたのだから、中古になったとき安ければ売れるのではということですねーーーこれは、とても危険な考えです。

 

詳細は割愛しますが、100円で買った商品は20年先に50円になり、1000円の商品は逆に1500円になるといったことが不動産の市場では起こるのです。バス便マンションがどちらかは言うまでもありません。

 

バス便マンションは何故値下がりしてしまうのか?

駅近マンションより安く分譲されたバス便マンションは、中古になったときも安いのは当然として、購入時が安いのだから売却時の価格も極端に下がらないのではないかと、つまり、同じ経過年数なら同じ率で値下がりするのではないのかと考える人がいます。

 

ところが、そう単純ではないわけです。 価格維持率で比較すれば、駅近マンションが100%であるとき、バス便マンションは80%とか85%とかと低いのが実態です。

 

駅近マンションは何故100、すなわち値下がりがないでしょうか? それは経過期間中に新築相場が上がってしまい、例えば分譲時の100から10年後の現在は120とかになっているからです。

 

バス便マンションでも10年前の100から、10年後の新築は110とか120とかになっているはずです。建築費や地価は無縁というわけではないのですから。

 

そうであれば、バス便の中古も悪くて90くらいには留まるのではないのでしょうか?なぜ、80とか85まで下がってしまうのでしょうか?

 

答は簡単です。そもそも新築時の価格が高かったからです。 駅近マンションが100であるとき、バス便マンションは70以下が妥当なところ、80で買ったから、言い換えれば「高値掴み」したからです。

 

バス便マンションは割高

筆者の研究では、バス便マンションは駅近マンションの70~75%くらいの価格が妥当と思われる物件が多いのです。新築マンションに限ると、10%も高い80、85で売り出されるのが現実です。。

 

新築マンションの原価構成は、土地代+建築費ですが、建築費はどこで建てても大体同じなので、違いは土地代です。簡単に言えば土地代の差が100対80の差となるわけで、70までは下がらないのです。

 

バス便マンションで70まで下げて分譲している例もないわけではありません。ただ、建物品質は標準以下、付加価値は何もなし、おまけにバス停から徒歩10分も歩くような場所で、かつ自然環境も良いとは言えない、そんな物件なのです。

 

結局、付加価値もあって品質も標準以上といった優良なマンションでも、バス便マンションは2割安の価格は「割高」と見なされ、販売も苦労するというわけです。

 

苦戦マンションは、最終的には大幅な値下げ販売を断行します。そのときの価格が実は妥当であったという場合が多いようです。

しかし、中には値下げ幅が十分でないものもあります。バス便マンションは値引き割合に釣られることなく、下げ後の価格に十分に気を付けなければなりません。

 

中古のバス便マンションは適正価格?

新築のバス便マンションは、その多くが割高と判定されます。しかし、中古マンションは別です。駅近マンションと比べて適正な価格まで下がって取引されているからです。

 

新築マンションは、大々的なキャンペーンを展開し、圧倒的な展示法・販売ツール等によって販売を行いますから、その販売・広告戦略によって買い手は一定期間に集中的、かつ大量に動員されます。

 

その方法によって売り手は買い手の購買意欲を高め、一気に売買契約へと誘導されます。当然ながら、初期の段階では定価販売です。ただ、それで一気に全戸が完売することはないのです。初期の売出し分の戸数が売れるだけなのです。

 

これに対し、中古マンションはネット検索による反響を待つ、つまりは成り行き任せといった消極的・受動的な販売(仲介)活動になっていますし、価格交渉によって売り出し価格から5~10%は下げられます。

 

その結果、中古のバス便マンションは妥当な価格で購入できることになります。購入価格が妥当であれば、価格維持率も標準的なレベルとなるはずです。

 

妥当な価格で購入しておけば、何年先か後に売却するときの価格は、「バス便だから安い」とは言えても、「値下り率はバス便だから低い」とはなりません。

 

筆者がバス便を論外とするのは、新築マンションを購入する人向けの警句です。 適正価格まで十分に下がった中古マンションには当てはまりません

 

とはいえ、価格維持率が駅近マンションと変わらないということではありません。何故なら、需要量において元々大きな差があるからです。利便性を求める人の方が、「バス便でもいいから広くて安い」を希望する人を凌駕しているのです。

 

従って、駅近マンションには下方圧力がかかりにくく、新築購入時は少し高いかなと感じても、価格維持率はバス便マンションより高い嬉しい結果となるのです。

 

(3)鉄道支線の場合

マンションの価値について、幹線と枝線の差について考えてみます。

マンションの価値に占める立地条件、この比重が大きいことは既に述べた通りですが、具体的な条件のひとつは「駅近」であることです。 駅近といっても、駅がどのような駅なのか、またどの沿線なのかによって随分差があるものです。

 

鉄道には、幹線と支線または枝線と区分できます。幹線とは主要な鉄道のことで、支線・枝線とは主要鉄道から枝分するしている鉄道のことです。

 

枝線には、ふたつの種類があります。主要鉄道の駅で乗り換える必要があるものと、二股に分かれる駅で乗り換えなしの直通電車も運行するものがあります。ご存知の通りです。

 

幹線鉄道を補足すると、東京都心とダイレクトにつながる鉄道ということです。

 

いずれにしても、ここでの話は東京都区部のことではなく、首都圏の郊外都市を念頭においての記述であることをお断りしておきます。

 

枝線マンションの価格は本当に安いか?

マンションの価値を考察していると、枝線は概して価値が低く、当然ながら分譲価格も安いものです。従って、安いマンションを探したい人は乗り換えを要する駅の周辺を探せばいいということになります。

 

なぜ安いかを分析すると、地価(土地の取得費)が安いからです。建築費は幹線鉄道側でも枝線側でも変わらないのですから。

 

問題は安さの度合いです。マンション価格に占める土地割合は、郊外では30%程度ですから、ここがゼロになれば分譲価格も30%低いレベルになりますが、実際には幹線側の土地代に対して半値で用地を取得できたとしても、分譲価格は85%相当額に下がるに過ぎません。

 

でも15%の差は大きいと言えます。郊外の幹線鉄道駅で5000万円のマンションに対し、乗り換えて1駅でも枝線に入ると、4,300万円以下なら随分安いという感じがしますから。

逆に言えば、このくらい安くできた物件は販売も順調に進みますが、そこまで安いという印象がなければ苦戦してしまうのです。

 

枝線で、乗換駅から5つも先に行った先の駅では違った印象になることでしょう。

価格の高い・低いの差は、買い手の心理的な要素が大きく、客観的に判定する公式のような物は存在しません。

不動産価値の判定方法には、「取引事例比較法」や「収益還元法」などといったものがあるのは確かですが、マンション事業者が価格を考えるとき、あるいは土地を買うときの参考指標は、先発マンションの価格と売れ行きなのです。

 

先発マンションより高い試算になる案件であっても、建物のプランニング次第では好調に売れてしまうものであり、つまらないプランニングであれば反対に他社並み価格でも売れ残るという事実を経験から学んでいる事業者は多いのです。

 

 

バス便マンションよりはましか?

枝線のマンションは割高な物が多いと言いましたが、バス便マンションよりはマシということは言えそうです。運行時間が正確であること、終電がバスほど早くないことなどが、その理由です。

 

疲れて帰って来たお父さん、途中の乗り換えもなく最寄り駅に着いたけれども、そこからバスに乗り換えるなんて。これには大いに抵抗があるはずで、それに比べれば、電車の乗り換えはあっても最寄り駅に着いたら、我が家はもう目の前だという方がマシだからかもしれません。

 

枝線の駅で買うなら駅前が理想

駅近マンションは、高くても人気があるものです。首都圏住民は利便性を優先する多忙な人が多いからです。

しかし、幹線鉄道の駅前は既に建物が密集していて、マンションが新しく建てられそうな空地はなかなかないものです。待っても探しても、なかなか良い物件に当りません。

 

そこで駅から徒歩10分歩く物件を選択したりします。それさえも幹線鉄道は高くて買えない、または面積の妥協を強いられるものです。仕方なく、1回乗り替えを覚悟し枝線の物件に目を向けるという選択になるわけですが、その場合に大事なことは駅からの距離は妥協しないことです。

 

乗り換えて到達する枝線の駅、そこからさらに遠くへ行くようなマンションの値打ちは、大きく値下がりして当然なのです。枝線の物件は、駅から歩5分が限界点と考えましょう。できたら駅前マンションに限定するくらいの方針で臨みたいものです。

 

(4)住んでみたい街ランキングの下位の街の場合

人気の街と不人気の街があります。東京都下なら「吉祥寺」が有名ですし、横浜駅もトップグループの人気の駅に挙がります。都心では「恵比寿」が常に上位にランクされています。

 

対照的にランキング下位の駅は、多くが郊外にありますし、都心・準都心でも稀に不人気の駅があります。ここでいう駅は「街」に読み替えてもらって差し支えありません。

 

不人気の街の共通点は「急行電車が止まらない」ので不便であるとか、駅周辺のショッピング施設が不足している、言い換えると「賑わいのない街」ということになります。

筆者はかつて世田谷区に住んでいました。区単位で見れば人気の上位に挙がる世田谷ですが、駅単位に見て行くと、大きな差異があることを知りました。

 

不人気の街のマンションは、隣接の人気の街より価格は当然に安いものです。用地費が安いためです。しかし、その安さは価値に見合っているかとなると疑問です。既述の通り、用地費は安くても建築費は差がないからです。

 

用地を隣の人気駅付近の土地より3割安で取得できたとしても、分譲価格を3割安にはできないので、分譲時の売れ行きもはかばかしいものではなく、最後は値引き販売を強いられることが多いのです。

そのような物件の将来、すなわち中古市場での評価は厳しく、安く買えたから得になるかと言えば、期待を裏切られることが多いと考えておかなければなりません。既述のバス便マンションなどと同じ理由です。

 

(5)タワーマンションの下層階の場合

「タワーマンションは眺めの良い上層階を買わないと価値はない」という意見を聞きます。そう考える人が多いのでしょう。確かに、上層階に人気は集まります。売主のデベロッパーは人気薄の低層階も売らなければならないので、価格を安くします。高層階はもちろん高くします。

 

ちなみに、少し前に分譲された郊外の駅前にある某タワーマンションの価格を見てみると、同じタイプ・広さでも34階が5120万円ですが、19階では4640万円となっていました。その差480万円で階数差は15層。480万円を15で割ると、平均32万円ですから、1階上ることに32万円ずつ高くなる計算です。

 

このマンションの5階は4100万円で、34階とは1000万円ほどの差があるのです。それほど実質的価値に差があるものでしょうか? 5階と34階なら、このくらいの価値の差が実際にあるような気がしますが、実際の部屋を見ていないので不確かです。

 

プレミアム住戸の眺望と値段

今度は、都心の高級なタワーマンションを見てみましょう。

下層階と上層階ではプラン・広さそのものが大きく異なるため比較しにくいのですが、千代田区のある物件は、最上階(40階)のプレミアム住戸の坪単価が約@700万円、20階の一般タイプで約@550万円と、その差@150万円、仮に80㎡同士なら総額3600万円と大きな価格差があるのです。20階と40階で、それほどの差があるものでしょうか? 疑問を禁じえないところです。

 

上下階の格差がこれほど付いていない物件もありますが、上記の物件の場合、プレミアム住戸と一般住戸の室内の設備と仕様の違いだけでは説明がつきません。やはり、眺望価値の差なのでしょうか?

 

眺望の良い住戸が欲しくても、予算が足らない人は否応なく低層階の住戸に目を向けます。そんな買い手の中には、自嘲気味に「もっと上の方を欲しいが、そこまでの予算を持っていないのでねえ」や「眺望もいいけど、こんな広い家はいらない」などと感想を述べる人もいます。

 

そんなとき、眺望は上階に設けられたビューラウンジやパーティールームなどへ行って景色を楽しむことにしたらよろしいのです――このような担当営業マンの説得(慰め?)トークがあるようです。

 

確かに、上層階を購入しても1日中、外を眺めて暮らすわけではないし、景色などというものは5分も見たら飽きるのです。そこに1000万円も2000万円も予算をつぎ込むというのはいかがなものかと言われると、妙に納得してしまいそうです。

 

それでも上階を求める人があり、人気はそこに集まるもので、そんなお金持ちのために、「プレミアムフロアー」という名の特別仕様の住戸を用意し、その階は全てプレミアム住戸としたりしています。

このような超高層物件は数多く見られます。プレミアム住戸とは、他の階とは違う仕様になっているだけでなく、広さも大きく異なるタイプのことです。

単価が高く、広さもあるので、価格は中間階の住戸に比べて5000万円も1億円も高いのです。都心の一等地に建つ30階以上のタワーマンションでは、最上階が数億円、20階あたりで2億円といった価格が普通です。

 

プレミアム住戸の買い手になると、下の方の狭い住戸には最初から目をくれず、高い住戸同士の比較でどれにするかと思案する格好になるため、いかに割高な価格が設定されていても、下層階との価格差は気にならないということなのでしょう。

 

眺望の値段

眺望という要素だけを切り離して、その価値を測るのは中々難しいのが現実です。建設場所によっても異なりますし、同じ場所でも方角によって見える景色も異なりますから、価値が違って当然です。また、平均-5000万円のマンションと、平均1億円のマンションでも上下階の差によって価値観は違うはずです。

 

新築マンションの場合、価格設定の際にマンションメーカーはいつも悩むようです。この場所、この眺望で1階あたりいくらの差が妥当かを、住戸の方位でも変わる景色をイメージしながら、A案B案・・・と価格案を作成します。

数字は経験から導かれます。超高層物件が初めての業者でも、他社の実例を参考に草案を作成します。

 

それを、プレセールス段階で「第1期・予定価格表」という名の、部分的に数字を覗かせた形にして顧客に提示し、その反応を観察します。その結果から、上げ下げの調整をして決定するのです。

 

つまり、眺望価値の妥当性は売り手も手探りなのです。値段は買い手が決めるという法則に従うということかもしれません。

 

有名マンションなら下層階でも秘かな自慢になる?

ところで、階数に関わらず超高層(タワー)マンションに住んでいるというだけでステイタス(地位・身分)が実感できるという意見があります。正確には「ありました」という過去形です。超高層マンション自体が珍しかった時代の意見だからです。

 

周知のように、首都圏ではもはや超高層マンションは珍しいものではなくなりました。郊外に行けば、駅前再開発によって建てられたランドマーク的なタワーマンションも依然として見られますが、都心ではステイタスシンボルとは言えない時代になったのです。

 

タワーだらけの街も珍しくありません。タワーに住んでいることが誇らしいと思えるのは、周辺の物件が30階程度である中に50階クラスの飛び抜けた高さで差をつけているような物件だけかもしれません。

 

また、似たようなデザインが多い超高層マンションにあって、自分のところだけが際立つ外観を誇るというようなケースなら、そこにも誇りを感じることでしょう。

 

超高層マンションは、多くの場合、300戸、500戸、ときには1000戸にもなる大型であることから、共用部分は広く豪華な造りになっています。エントランスと、それに続くロビーやラウンジは「ちょっとしたシティホテル並み」の威容を誇ります。・・・このような建物が完成したとき、購入者の殆んど全員が驚嘆し、感動して喜びに浸ることになるのです。

 

どのような分野につけ、誇りとは周囲の賞賛(他人が羨ましいと感じること)があってこそのことです。マンションの場合では、通俗的な言い方を許していただけるならば、「どうだ!俺の家は」と周囲に対して胸を張れる建物だからこそ、ステイタスシンボルたりえるのではないでしょうか?

 

そのような、顕著に差別化された超高層マンションなら、低層階に住んでいても秘かな自慢の種になるのかもしれません。だからこそ、比較的少ない金額で下層階を購入し、価値あるマンションの住人になるのも悪くないと思う人が多いのでしょう。

 

眺望は上階に設けられた共用施設(ビューラウンジなど)が、住戸の上下の差別なく利用できるのですから、ときどき足を運んで景色を楽しめばいいのです。

このような合理的価値観には賛成してあげたい気がします。

 

ただ、「何階?」と聞かれて困る人や下層階の住まいに劣等感を覚えるかもしれないと想像してしまう人は止めた方がいいのかもしれません。

 

個人的価値観では

30階超のタワーマンションに何度か足を運んだとき、エレベーターで上階から降りて来る家族があり、その家族は何階に住む人だろうかと想像したりしました。身なりが良く、とても上品そうな子供2人と若い両親の4人家族でした。

 

最上階のプレミアム住戸の住人だろうか? 広く高額の住まいに住んでいることだけは間違いないと感じましたが、羨ましいと感じる瞬間でもありました。

 

筆者の経験を振り返ってみると、あまり低層ではいかがなものか、せいぜい中間階までが超高層マンション購入の妥協点なのではないかという気がします。

 

とはいえ、ものの考え方や価値観は百人百様です。合理的な価値観がある一方、情緒的な価値観があるでしょうし、虚栄心の強い人・自己顕示欲の強い人、他人の目を気にしない人でも価値観は変わるはずです。

ゆえに、超高層マンションの2階や3階でも買い手は現われるのです。つまり、将来の売却も低層階だから売れないなどの心配は、きっと杞憂に終わるはずです。

 

問題は価格です。安ければ買い手が現われます。従って、購入価格も安い方が安全ということになります。お買い得感のある価格であれば、低層階を購入するのも間違いではないということになりそうです。

 

無論、その価格が「十分過ぎるレベル」かどうかの判断はケースバイケースになり、ここで一定の法則のようなものはお伝えできませんが、割り切って下層階を購入するのも悪くないと思うのです。

 

(6)北向きマンションの場合

東京だけの特異な現象とお断りしたうえで言うならば、東西南北どれが良いかというテーマで語るのは困難です。昔は「南向きが良い」とする意見が主力でした。今でも日当たりの良い南向きマンションの人気は高いのですが、昔に比べれば圧倒的な人気ではなくなったと言えます。

 

日本の「高温多湿気候」に合わせた住まい造りという概念は、近年の技術発展によって後退してしまったからです。

以前は、住まいと言えば一戸建てでしたが、今日の東京圏では「マンション(集合住宅)」が中心の住まい形態に変化してきたためでしょうか、人工的な室温・湿度調節の機能も加わって、南向きにこだわる人は大きく減っていると感じます。

 

洗濯物を干すニーズも減っています。乾燥機付き浴室もありますし、何より在宅時間の短い家庭が多い現代、洗濯物をベランダに干したいと考える人も減ったのです。

以上のような事情や背景から、北向きだから値下がり率が大きいとは言えない時代になっています。

 

(7)コンパクトマンションの場合

いわゆる単身者向けのコンパクトマンションには2つの種類があります。ひとつは全戸がコンパクトタイプで構成された「純コンパクトマンション」です。もうひとつは、ファミリータイプとの「混在型コンパクトマンション」です。

 

前者は敷地300㎡前後の小型マンションで、後者は主に超高層の大型マンションに多く見られ、下層階に配置されています。

 

筆者のおススメは後者で、前者の物件購入に関するご相談には否定的な所見しか出せないのです。そのことに、いつも心の痛みを覚えます。

改めて、その根拠をお話ししましょう。

 

小型マンションは①付加価値が設けにくいこと、建築費が割高になること、大手ゼネコンは請け負わないこと、②管理費が高くつくこと、規模が小さいため③外観も見映えしないといったデメリットばかりが目立ちます。

また、コンパクトマンションには、自己居住用に求めた人の中からも賃貸に出される住戸も加わるため④賃貸比率が高いという特徴がありますが、これも懸念点です。

 

コンパクトマンションの問題点を詳しく見ていきましょう。

 

純コンパクトマンションは小型ゆえに付加価値がない

大型マンションは、その規模自体が差別化に役立っています。大きいだけで存在感があるからです。

反対に、純コンパクトマンションは駅前通りなどの便利な場所に建つことが多いものの、小型であるゆえに目立たない、いわば周囲の建物に圧倒され埋没してしまうのです。

 

存在感の有無は資産価値にも影響します。

 

また、玄関ホールやロビーといった共用部分の規模も、全体スケールに比例して小さくなる純コンパクトマンションは、その面でも「立派・豪華」から遠いものとなります。それが資産価値にマイナスであることは言うまでもないはずです。

 

純コンパクトマンションは居住者層が偏りがちだ

純コンパクトマンションを志向する検討者は、例外なく所有者が自分と同じ境遇にあることを無意識に望んでいると感じます。同じ仲間がひとつ屋根の下に住んでいる安心感とでも言えば良いでしょうか。

 

ファミリ―層がたくさん居住する中に独身の自分が住むのは肩身が狭いはずという心理があり、その裏返しでしょうか?

 

何となく解かるような気もします。しかし、単身者ばかり肩を寄せ合って住むということではないはずです。同じような境遇の人が多いとしても、ふだん交流があるわけでもないからです。

 

交流を後押しするスペースとして「ラウンジ」や「スタディルーム」などを設けている物件もありますが、無用の長物化していると聞きます。

 

それはさておき、様々なタイプの世代・世帯が同じ屋根の下に居住していた方が、災害があったときなどに大助かりだったという例はよく聞くところでもあります。大型マンションだからという意味でもあるのですが。

 

また、様々なタイプの階層が集まるコミュニティ社会こそ普通の人間社会でもあるとも思うのです。

大型マンションなら、コンパクト住戸も絶対数としては数が多いはずですから、同じ単身者のお仲間を探すこともでき、一石二鳥なのではないでしょうか?

 

純コンパクトマンションは管理費が高くなる

純コンパクトマンションで100戸もある大型というのは殆んど見られません。大きくてもせいぜい50戸程度です。50戸と言っても、コンパクトばかりですから、ファミリーマンションの30戸以下の規模です。

 

規模が小さいと管理費が割高になるものです。管理費が高いと売れないと見る売主は、管理人を置かない管理体制にして販売を行います。

管理人がいないマンションは将来どうなって行くのでしょうか?そこに思いを馳せる買い手は少ない気がします。数十年後を想像できる人もいないのでしょう。不安に感じながらも、最後は「まっ、いいか」と念頭から外してしまいがちです。

 

純コンパクトマンションは賃貸比率が高くなる

コンパクトマンションを賃貸目的で購入する人は少なくありません。どのようなマンションでも、何年か経てば賃貸住戸ができてしまうものですが、純コンパクトマンションの場合は、最初から賃貸住戸が混在するのです。

 

数年すると、その比率が一段と高まります。自己居住だった人が結婚その他の事由で転居し、売却せずに賃貸するからです。

 

分譲マンションでありながら賃貸マンションのようなものになったら、自己居住中のオーナーはどんな感覚や気分になるのでしょうか?

 

賃貸比率が高いマンションは管理意識が低くなりがち

賃貸マンション化に伴い、管理状態は徐々に悪化する可能性が高まります。

オーナーにとって関心が高いのは、賃料が遅延せずに入るかどうかです。管理組合が総会を開いても白紙委任状を出すだけで、管理に関する意識が次第に薄らいで行きます。

 

転売が繰り返されてオーナーが変わり、現住所も分からなくなっている例があると聞きます。そのようなマンションでは、管理費や修繕費を滞納する人も増えます。大規模修繕に必要な金額に足らないときの臨時徴収など不可能で、修繕は先送りされてしまいます。

 

タイムリーに修繕が行われないマンションは、あちこちで不具合が生じ、快適性も見栄えも悪化して行きます。管理人が常駐(日勤)していないことに加え、もともと日常管理に厳しさが足りないため、モラルも低下し、荒れ放題になって行きます。

 

住み心地が悪いマンションに嫌気して転居するオーナーが増え、賃貸比率がますます高くなって行きます。このような状態が改善されなければ、スラム化の道をまっしぐらに進むことでしょう。

 

管理人がいない、オーナーが居住していない、このようなマンションは資産価値が維持できないのです。その懸念・危惧が純コンパクトマンションには潜んでいます。

 

マンション購入にあたっては、将来リセールするときの価値を購入時に想定する、若しくは考慮しておくということが大事です。いつなんどき、売却の必要が生じるか分からないからです。

 

そのとき、できるだけスムーズに、少しでも高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり人情というものです。古くなったマンションが値上がりするなど、初めから考えていないとの反論もあるかもしれませんが、少しでも価値の保存ができる物件を望まない人はいません。

将来価値(リセールバリュー:RV)を決定する要素は、繰り返しますが、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。

 

この中で一番比重が高いのは①の立地条件なのです。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを補うことはできないのです。また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。

 

しかし、購入したマンションが購入時の価格より高く売れるに越したことはありませんが、そのような物件を購入できるかは分かりません。個人の事情や背景によっても異なります。

通勤の関係で値上がりしそうにない地方都市や郊外都市のマンションを選択せざるを得ない人もあるでしょうし、予算の関係で良い立地条件の高級なマンションを購入することが難しい人もあるはずです。

 

そこで、本稿では値下がり必至と予想できる物件である場合、どこまでが許容範囲なのかをまとめてみました。以下の例は、東京23区の標準的な駅を選んでシミュレーションしたものです。

 

検討STEP(1)自分の家を賃借したと仮定します

XX駅徒歩圏で60㎡前後の新築マンションを5000万円で購入したとします。そして、これを10年後に売却する計画を前提とします。

 

この購入マンションと同等のグレードと広さを持つ賃貸マンションは、管理費込みで20万円が相場とします。

購入したマンションを自分で賃借したと仮定すると、10年間の合計では2400万円の負担(費消)となります。購入せずに同等の賃貸マンションを借りて住んだ場合の支出額ということです。

以下、賃借した場合より購入した方が得になるかどうかのシミュレーションをしていきます。

 

検討STEP(2)賃貸VS購入

上記の支出を前提にすると、単純に考えて購入マンションが2400万円値下がりしても損はないことになります。購入時の諸経費や固定資産税、修繕積立金などを計算に入れれば、約2000万円()までが許容範囲ということになるでしょう。

すなわち、損益分岐点は、2000万円です。値下がり限度は、2000÷5000=40%ということになります。

 

ただし、これは現金で購入した場合のことで、ローンを利用する場合は10年分の金利を見ておくことが必要です。

ローン利用額を価格の90%、4500万円とします。これを35年返済にすると、毎月返済額は137,780円(固定金利1.5%の場合)となります。10年間の金利の合計は、約590万円です。

 

 尚、この場合の10年後の残債は3440万円となります。この清算をするには売却代金がこれを超えてくれなければなりません

 

仮に3000万円でしかか買い手がつかなかったとしたら、値下がり率は40%もの大きな値となりますが、東京都区内でこれほど値下がりする物件は少ないのが現況(=最近10年)です。駅別に見た実績データでは、0%~20くらいの幅です

 

90%ローンを利用した場合は、現金購入による損益分岐点2000万円()から金利負担590万円を差し引いた1410万円が値下がりの許容範囲となります。

 

つまり、5000万円の物件が3590万円まで下がっても損はないということになります。値下がり率は28%です。現金購入の場合の40%と比べると、当然ながら余裕度はかなり狭まりました。このように、金銭的な損得だけを考えた場合、購入は得策でないという結論になってしまう物件も少なくないのです。

 

検討STEP(3)相場の上昇を読む

ところで、中古マンションの価格は、どのようにして決まるものでしょうか? 次に、そのことに触れておくことにします。

 

新築マンションの価格は土地代、建築費、諸経費・利益から成り立っているのに対し、中古マンションは少し事情が違います。

物件の個別条件 周辺の市場動向 売主の事情= 中古価格と考えられます。それぞれを詳しく見て行きましょう。

 

①中古価格の変動変動要因・・・物件の個別条件

殆んどの中古住宅は個人が売主ですから、事業として売買を行なっている業者のように、諸経費・利益を最初から見込んでいるわけではありません。また、建物も既に建っていますから、良い点もアラも見えてしまいます。

 

基本的には、立地条件と広さなどによる土地評価額と、築年数や建物グレード、広さなどによる建物評価額の合計、更に管理状態が加味されて中古住宅の価格になります。

但し、マンションの場合には、土地と建物を別々に評価することはしません。

 

②中古価格の変動変動要因・・・市場動向

周辺の新築マンションの発売が多いと、マンションを探している購入希望者が新築に流れるため、中古マンションは値下りしやすくなります。

 

市場動向という視点で付け加えると、周辺だけでなく、首都圏全体、あるいは23区全体の広域で需要が後退しているときも、中古住宅の価格は弱含みとなります。

一方、新築・中古ともに売り物が少ないときは、価格は強含みになります。マンションブームなどで、売り出す新築マンションが次々に完売してしまうといった状況のときは、中古マンションも足が早く、思い切った強気の売り出し価格でも、あっと言う間に買い手が決まってしまいます。

 

③中古価格の変動変動要因・・・売主の事情

新築住宅は予め販売価格が設定されていますが、中古では売り出したあと、購入希望者との交渉で最終的な価格が決まる場合が多くなっています。

そのため、売主が何らかの事情で早く売りたいと考えている場合には、かなり安く買えるケースもあります。

買い替えのための売却のケースでは、引っ越し(移転)時期の関係で売主が急いでいる事例がよく見られます。

 

東京都では、10年前に分譲されたマンションが10年後の2020年の今日、平均して20%以上の値上がりという結果でした。

 

しかし、物件格差は大きく、値下がりしたものも少なくありません。その中には、大手デベロッパーの物件も少なからず含まれています。価格を決めるのはブランドだけでない証拠です。

 

一方、地方都市は首都圏と同じように見ることはできません。それぞれの都市で事情が異なりますが、一般的な地方都市の事情を当てはめると、厳しいものがあります。

そもそも市場規模が小さく、そこへ新築の物件が安く販売され続けると、中古の価格が上がる余地は極めて小さいということになるのです。

 

平均と個別の違いに留意

以上に述べたことは、あくまでエリアごとの概論・総論に過ぎません。マンションという商品は、二つとして同じものがなく、個別の条件や内容がみな異なります。

 

同じ最寄り駅のマンション同士を比較しても、駅までの距離、道路付け、騒音、自然環境、建物の構造、グレード、共用施設・設備の内容、植栽、ブランド、管理サービスなどが異なりますし、同じマンションでも、住戸によって日当たりと眺望、広さ、間取りなどが違ってきます。

 

このような違いを個別要素とすれば、同一エリアであっても価格(価値)が微妙に、また大きく異なるのは当然と言えば当然です。

 

売主・デベロッパーは、エリア相場を考慮して、そこからあまり乖離しない価格で建設しようとはするものの、良いものは高くて当然と考えますし、条件の悪い物件であれば安く建設するように企図します。

 

ライバル物件が駅から徒歩10分にあって5000万円であるとき、我が社の計画は徒歩3分の近さにあるのだから、5500万円でも価値があるだろう(売れるだろう)などと目論むものです。

 

実際には、近い、遠いという距離の要素だけではなく、他の要素も絡んでの比較になり、同じ駅が最寄りであっても、一方は5000万円で、他方が6000万円といった価格差が生まれたりします。

 

建物のグレードやブランドによる価格差も生じるものです。

 

ライバル物件を意識して、通常よりグレードを上げることもありますし、反対に価格の安さで差をつけたいという意図から、ライバル物件より影響の小さい部分や見えない部分でグレードを落とす例もあります。

 

設備・仕様のグレードを落とさない代わりに、構造や装飾をシンプルにして個性も面白味も何もない外観デザインになっている例も多く見られます。

 

ブランドも軽視できません。

ブランドが価格差を生むのは、大手有名業者が利益を多く取っているということではなく、ブランドにふさわしい建物にしようと、隠れた部分でも厳しい社内基準に沿って建設していることや、見える部分でのグレードの高さなどが反映されるためです。

 

もっとも、ブランドにふさわしくない物件も少なからず存在します。それは、それなりの理由や背景があったと推察できるのですが、具体例は割愛します。

 

さて、このようにして企画されたマンションは、価格は差がないような物件同士でも価値の違いが現われます。また、価値が明らかに高いとしても価格が高過ぎると思われる物件、その反対に割安な物件といったふうに、同じエリア内でもバラつきができるのです。

 

住まいは売らない限り損も得もない

30年以上も前(1988年以前)にマンションを買った人の多くは、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。

 

しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。

 

一方、売却した人は、驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったはずです。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかにありませんでした。

 

売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。

 

反対に、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の極端な値下がりを体験することとなりました。

何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかりました。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知ったからです。いわゆる追い銭が必須でした。

その金額の大きいこと。結局、売却を断念した人も多かったはずです。

これは含み損を抱えてしまったものの、損失を確定しないで済んだというケースです。

 

つまり、値下がりしても、売却しなければ損は表面化しないことを意味します

 

大きく値下がりしたとしても“賃貸”より遥かに価値があるのが“購入”

「資産価値」に注目し、できるだけ損しないマンション選びについて述べても、それを「儚い(はかない)言葉」としか受け取れない人も少なくないと想像します。なかんずく、地方都市に居住する人はその感が強いことでしょう。

地方都市では、そもそも東京のような高いリセールバリュー(売却価格)は期待できないからです。無論、首都圏でも郊外では地方都市並みの売却価格しか期待できない所もあるのです。

 

そこで、高いリセールバリューが期待できない場所で選択する場合の「覚悟」とも言うべき考え方をお伝えしようと思います。

 

10数年経過し、いざ自宅を売ろうかというとき、調べてみたら売るに売れないという事実を突きつけられる場合があります。理由は、売却見込み額の低さもさることながら、残った借金(住宅ローン)が売却額より多いため、銀行との清算にあたっては預貯金を崩して追銭(おいせん)しなければならないからです。

 

住宅ローンは35年の最長で組む人が多いですが、その場合、例えば15年経過すると、仮に1.5%の固定金利なら、元金はおよそ38%減ります。そのような場合、自宅が50%もダウンしたら売却代金だけでは清算ができないのです。

もし、値下がりが35%程度で済めば追い銭は無用ですが、物件によっては微妙なところです。金利が高い場合も、同様に残高が多いので、清算が厳しくなります。

 

10年しか経過していない段階で売却する人も少なくありません。様々な家庭の事情がそうさせるのですが、そのときの住宅ローンの減り方は25%程度(金利が1.5%程度の場合)です。

従って、そのときの価格ダウンが20%ほどであれば頭金部分を取り戻すことができますが、売却見込み額が25%ダウンだったら、手元には1銭も残らないということになります。

 

まさか、そこまで下がることはないだろうと高を括っている人は結構多いようで、惚れて買ったというだけでなく、何年か住んで愛着のある我が家ゆえに自己評価を高く見積もりがちなのです。

 

具体的な物件名は控えますが、某調査会社のデータ(リスト)によれば、10年後価格(2019年時点)の騰落率ワースト50位のトップは、何と50.1%ダウン、50位でも38.7%なのです。これは、地方マンションではなく、東京都23区内の中古マンションリストなのです。その中には有名ブランド物件も散見されます。

 

売ったとき手元に1銭も残らない状態を想像すると、悲しくてやりきれない――そんな所有者の姿が浮かびます。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10

日後の予定です。

 

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