第257回 「安値に釣られてはならない」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

ときどき、好ましくない部屋を選んで購入候補にしている人から「マンション評価」のご依頼が届きます。瞬間的に、「別の部屋を選んだ方がいいのになあ」と思いながら、作業を始めます。

 

新築マンションの検討の際に

マンション選びの際、立地条件が気に入り、モデルルームを見て内装や設備を気に入ったとき、あとは住戸選びとなったとしましょう。おおよその予算が分かったとき、その予算で買える住戸は何処か、何㎡の間取りが買えそうかと考えるに違いありません。

 

毎月返済の金額を示す例を見せてもらったりしながら、買えそうな価格を把握して、その金額に近い住戸を選択するのが普通の例です。希望の間取りを見つけてから、「この部屋だったら月々いくらの返済になりますか?」と担当営業マンに尋ね、答えを聞いて「それは無理だなあ」とか「少しきついかも」などという感想を経て、買えそうな住戸選定をして行くことになります。

 

「本当は10階あたりがいいのだが、予算オーバーなので、2階になりました」などと語る買い手があります。予算が足りないために、下層階を選択しなければならないのです。

 

価格の安い下層階住戸には、安い理由があります。1階になると、さらに安く設定されている場合があります。

問題は安い理由です。高層階は、眺望が良いので、その付加価値を価格に反映させるのが売り手の考え方です。1階上がるごとに20万円の差をつけて、10階上は200万円高くするといったことです。

14階の高層マンションでは、同面積・同仕様の部屋の最上階は4階の同タイプの部屋より少なくとも200万円とか300万円の高値にするのが普通なのです。物件によっては500万円もの差があったりします。

 

マンション業者の値付けの基本を教えましょう

閑話休題、マンション業者は値付けの際にどんなことを考えているのでしょうか?それを少し披露しましょう。知っておくことは、マイナスではありません。

業者向けの教本から抜粋

1.稀少住戸は思い切って高く、条件の悪い住戸は極端に下げておくくらいが丁度良い。

2.上下格差を広い過ぎると下層部だけが売れて上層部がそっくり残ることも。地域ごとの「価格の壁」があることに留意。

3.最上階は特別。稀少住戸の一種なので、思い切って高値に。その分で条件の悪い住戸の値下げ原資に回そう。

4.角部屋は好まれる。思い切って高値にしてよい。

5.バルコニー面に空地があると、将来何が建つか分からないという不安にかられてしまうもの。そんな場合の値付け、特に下層部は要注意。

6.専用庭付きでも購買層によっては付加価値にならないことがある。広さによっては魅力のないものもある。庭付きをプラスに見ない方が良いケースもあることに留意する

7.東(西)向きの住戸と南向きの専有面積の差が大きいときは、南向きの単価はあまり高くしない方が良いこともある。

8.価格の差には合理的な説明が必要だ。買い手から聞かれて困らぬような配慮を。

9.差を設けると欠点が露呈するからあえて知らんぷり―は買手には通用しない。買い手とは実に細かな部分まで気づくものだ。

10.目玉住戸は客引きに効果的だが、売れてしまえば後は使えない。それを狙うなら複数戸を用意するべきだ。

11.モノの値段は物理的な価値と心理的な価値によって決まるものだということを念頭において値付けせよ。

12.高級高額マンションでは、欠点のある部屋は少々安くしたくらいでは売れないと認識せよ。

 

・・・・・いかがでしたか。マンション業者の戦術の一端がお分かりになるはずです。安値の部屋には、それなりの理由と売り手の意図が隠されているのです。

 

価格設定の業者心理を知る

「安値に釣られてはならない」というのが本日のタイトルですが、「安い」と「割安」では、意味が異なります。その点をここで、確認しておきましょう。

 

一般に、条件の良くない住戸は売れないので思い切った安値にするのがマンション業者の常套手段です。条件の悪い住戸は価格で惹きつけるほかないのです。その際に、中途半端な安値にして売れ残ったら、買い手には「条件が悪いから残っているのだ」と気付かれ、不人気住戸は避けようと警戒し、ますます売れない状況が続くことになります。

それを避けるために、条件の悪い住戸は早めに買い手が付くことを狙って「思いきった安値」にするものです。

 

買い手の立場では、お得感がある買い物となる場合があります。ところが、それはしばしば「錯覚」に過ぎないことも多いのです。

また、比較した2階から上の価格が、そもそも割高であれば、安いと感じた1階住戸は安いとは言えません。

 

新築マンションを検討する際、ある程度の購買意欲が高まっていると、買い手は他のマンションは見えなくなってしまいます。気に入ったマンションを目の前にすると、そのマンションの中だけで、右がいいか左がいいかと考えてしまうのです。

言い換えましょう。AがいいかBがいいかと問われると、Cという第3の選択肢があるにも関わらず、AとBのどちらかから選びたがるのが購入者心理というものです。

 

1階住戸は安い。専用庭も付いているし、子育て世帯の我が家にはお得な部屋だ。こんなふうに考えて迷わずに1階を買ってしまうという人を随分たくさん見て来ました。

 

マンション業者は、そこを狙っています。子育て世帯以外には売れない1階住戸は、売れ残るといけないから早めに売出し、早めに買い手を確保しておこうと考え、2階以上の住戸との価格差を大きめに定め、「お得感」を出そうとしているのです。

 

安値の住戸は何かしら問題がある

1階住戸に限りませんが、新築マンションの販売現場では、売り出し住戸を複数用意し、比較検討する買い手の心理をついて、「売りにくい住戸は早めに買い手を決めてしまおう」とします。

 

売りにくい住戸とは、前方に眺望や日照を阻害するマンション・ビル等が建っているとか、前面道路の交通量が多く、騒音・排気ガスの問題がありそうな部屋のことです。売りにくい・売りやすいはマンション販売の実務経験者なら誰でも知っています。売主業者には、その点の人材にはこと欠きません。

 

売れ残りそうな部屋は、販売に苦労するので早めに売ってしまいたい。そのためには、思い切った安値にしておくことだと考えます。少し安いだけでは、「・・・の問題があるから安いのね」と当該住戸の欠点・弱点を受け入れまいとする購入者心理が勝ります。

 

ところが、大きな価格差(思い切った安値)にしておくと、安い理由に気付いても「これだけ安いならお得かも」という心理を抱く人が必ず現れます。売り手は「目玉商品です」などといってアピールします。

 

買い手は、「眺望・日当たりは気になるけど、これだけ安ければ損はあるまい」と自分に言い聞かせながら、当該住戸を買うと決めるのです。売主は「しめしめ」といわんばかりに値付け作戦を自画自賛します。

 

問題は将来の買い替えのときに露呈します。

買い手候補が見学にやって来ました。見学者は必ず窓を開けて外を眺めます。隣地のビルや家が迫っているので、室内が丸見えになっているらしいことに気付きます。言うまでもなく、眺望価値はゼロ、中には日当たりが心配な住戸であったりします。

 

しばらく見ていると、前に広い道があって自動車騒音が懸念される住戸であることに気付きます。幹線道路でなくても、バス通りだったりすると、2階住戸でも社内の乗客から室内が丸見えという例もあります。

 

このような1階・2階住戸を安値に釣られて買った人は、お得と感じて選んだとしても、売却の際、すなわち10年先に売りづらいことを思い知らされます。安く買ったお得な部屋だから、売却時も安く売っても損はないかもしれませんが、実はその思惑さえも失望に変わることがあるのです。

 

高値の好条件のマンションは、将来の転売時に思いがけない高値になり、条件の良くない安値の部屋は転売時に一段と安値になってしまう」ことを知っておく必要があります。言い換えましょう。「安いマンション・住戸はお得とは言えない」のです。

 

中古マンションの場合も基本は同じだが・・・

中古市場では、新築のような売り手がマンション業者でなく、個人が大半です。高値で売りたいと考えても価格を容認する買い手の存在が現れて初めて価格は決まるものです。

 

いわば、中古マンションの価格は買い手が決めているようなものです。売り手の中には、高値をつけて売出し、お人好しか無知な買い手が現れることを期待している人もあると聞きますが、消費者は賢いものです。ほどなく高値であることに気付きます。ネット社会の今日は売主の意図などたちまち見抜かれてしまいます。

 

ところが、仲介業者の甘言に乗せられて高値で売り出す売り手があるのも真理ですが、結局、終わってしまうと「思ったほど高くは売れなかったなあ」という結果になることが多いのです。

 

安く買ったのだから、売却時に安値であったとしても大きな損にはならないかもしれません。とはいえ、新築時は現物を確認していなかったので安いと感じて飛びついたものの、中古物件としてさらけだすと、欠点丸出しになって買い手が付きにくいという現実を思い知らされるのです。

 

元々安値の物件だから損はあるまいと思ったが、結果は期待外れだったと落胆する破目になることも少なくないのです。

 

筆者は、ご相談者を前にこう言います。「高値の好物件は、将来価格も高値で取引されるものです。一方、安値の物件は何かしら問題・弱点があるからこそ安いのです。転売時に、その問題・弱点が解消されていない限り高値では売れないものだと思いましょう

 

こうも言います。「安値の住戸を探そうとしない方が良い。その新築マンションの中で、最も高値の部屋が一番価値ある部屋です。そこに予算が届かないなら2番目に高い部屋を、それも無理があるなら3番目の部屋を選択しましょう」と。

 

物事には何でも例外という存在があるものですが、マンションの値段で例外はないと言っても過言ではありません。良い物は高値に、悪いものは安値になるのです。

 

もし、新築マンションでとびきり安値の部屋に惹かれて買いたいと思ったときは、一度立ち止まって冷静に、かつ客観的に見直してみましょう。今日お伝えしたように、何かしら問題が潜んでいると疑ってみましょう。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。次は10日後の予定です

 

ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

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