マン点流!不都合な真実(羽田新ルートの分散化)

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公明党の都議、区議からの緊急要望書を受けて尻に火が付いた赤羽国交大臣は6月3日、新経路の固定化を回避するための専門家会議の設置を明言。
6月30日に開催された第1回目会議の「議事概要」をひも解くと、羽田新ルート見直し可能性が見え隠れしている。

実際に見直しが行われるのか、それともガス抜きに終わるのか……。

【もくじ】
羽田新ルート見直し可能性の背景
騒音負担の共有化、分散化
これまで無関係だった区にも見直しルート

羽田新ルート見直し可能性の背景

羽田新ルートは3月29日から本格運用が開始されたもの、新型コロナ感染拡大の影響で国内線、国際線ともに大幅に減便のなかで運用が続けられている(次図)。

羽田新ルート見直し可能性の背景
羽田新ルート|運用実績を可視化(6月)」より
※6月6日と6月21日のC滑走路到着ルートの通過頻度が跳ね上がっているのは、当日同ルートの運用時間が短かったことによる。

新ルート周辺の住民から中止や延期を求める声が上がっているなか、国交省はフル運用までの助走期間と位置付けて運用を強行。

そうこうしているうちに、3区(品川・目黒・港)の公明党の都議、区議からの緊急要望書を受けて尻に火が付いた赤羽国交大臣は6月3日、新経路の固定化を回避するための方策を早急に検討するための有識者・専門家検討会を立ち上げることを明言。「考えられる技術的選択肢について多角的な検討を行っていただき、今年度中にその様々な選択肢のメリット、デメリットを整理」することとなった(検討するとは言っているが、ルートを変更するとは言っていない

※詳しくは、「羽田新ルート|衆院「国土交通委員会」赤羽大臣が折れた!? 」参照。

騒音負担の共有化、分散化

赤羽国交大臣の意を受けて6月30日に開催された第1回の「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」(以下、「技術検討会」)の「議事概要」は専門用語が多いので理解しにくいのだが、素人なりに超訳すると、現在の進入ルートに曲線を持たせることで柔軟なルート設定の可能性を見出そうとしているらしい。

具体的にはどういうことなのか?

今回の技術検討会のメンバのひとりである平田輝満氏(茨城大学 准教授)は、現在の羽田新ルートの運用の根拠となっている「中間取りまとめ」を策定した「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」の委員でもあった。

その平田氏は、「航空需要に対応した空港運用研究会」の主査としてとりまとめた「2016年度 航空需要に対応した空港運用研究会報告書」のなかで「非直線進入方式」を提案しているのである(次図の右)。

非直線進入方式
「2016年度 航空需要に対応した空港運用研究会報告書」資料編「 第1、2、3回」(P57)

平田氏がかつて提案していたこの「非直線進入方式」を今回の技術検討会でも見直し方策の一つとして検討されていくのではないのかといのが筆者の見立てだ。

平田氏が当時提案していた「非直線進入方式」(上図の右)を「見直しルート(推定)」として現在の羽田新ルートに重ねたのが次図である。

見直しルート(推定)
実機飛行確認経路(新飛行経路)|国交省」に筆者がピンクを加筆

※「見直しルート(推定)」のうち平田氏資料で描かれていなかった部分(破線部分)は、筆者が適当に描いた。

なお、この見直しルート(推定)は、現在運用されている新ルートに置き換わるのではなく、追加的に運用することで、飛行騒音を「なるべく皆でシェアする」という考え方に基づいている良い言い方をすれば、騒音負担の共有化、悪い言い方をすれば、騒音の分散化

※詳しくは、「羽田新ルート見直し検討、現在の進入ルートに曲線を持たせる!?」参照。

これまで無関係だった区にも見直しルート

平田氏が当時提案していた「非直線進入方式」(上図の右)には次の注釈がある。「主要な物件高さは考慮してあるものの、全ての地上物件の高さを詳細に考慮したものではない」としている点に注意が必要だ。

現在の滑走路22・23へのLDA進入と同様な方式だが滑走路の間隔はより狭い。図はRNP進入(RNP0.3)を想定して描いたイメージ図的なものであり、主要な物件高さは考慮してあるものの、全ての地上物件の高さを詳細に考慮したものではない

進入経路の配置(進入経路延長線と滑走路延長線との交点の位置と交差角)、進入復行開始点の位置、最低降下高度など、今後検討が必要な事項は多い。(P57)

最終的にどのような決着を迎えるのか、現時点で見通すことは困難であるが(いろいろ検討したけど、最終的にはほとんど変更がなかったという可能性のほうが高いかもしれない)、平田氏が当時提案していた「非直線進入方式」がどのようなルートになるのか知っておいて損はないだろう。

たとえば、これまで羽田新ルートとは無関係だった中央区。見直しルート(推定)が実現するとその影響は半端ない(次図)。

中央区見直しルート(推定)
拡大図(PDF:260KB)

  • C滑走路見直しルート(推定)
    日本橋本石町4丁目、八重洲1丁目、八重洲2丁目、京橋2丁目、京橋3丁目、銀座1丁目、銀座2丁目、銀座3丁目、築地1丁目、築地4丁目、築地5丁目、浜離宮庭園、豊海町

本調査には慎重を期しているが、その内容について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。

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一級建築士/マンションアナリスト/長寿ブロガー(19年超)

2 件のコメント

  • 匿名 より:

    見直しルートだと、高さ390mで建設予定の東京駅前常盤橋プロジェクト
    の上付近を通過することになるので
    かなり困難ではないでしょうか?

    • マン点 より:

      コメントありがとうございます。

      結論を言えば、「東京駅前常盤橋プロジェクト」の存在以前の問題として、見直しルートの実現はかなり困難だというのがマン点の私見です。

      主な理由は2つ。
      (1)そもそも国交省は見直す気がない。検討会を立ち上げてお茶を濁しておしまい。
      ⇒これが最もあり得るケース。

      (2)見直しルートをさらにオフセットさせることで390mビルを避ける、あるいは「制限表面の設定」(≒飛行ルートに係る建物等の高さ制限の設定)に手を加えることで見直しルートを可能とする。
      ⇒これは住民説明会を含め、時間と労力を要するので、国交大臣が本気にならないと実現困難。

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