常日頃私とは意見の食い違いが多い、”不動産ジャーナリスト”榊淳司さんの新刊です。早速買ってきました。
タイトルは「すべてのマンションは廃墟になる」。刺激的なタイトルですが、「形あるものはいつかは壊れる、終わりの時が来る。100年後かそれ以降か」と書いてあって、いやもちろんそりゃそうですよね。その前に中の人間がそこまで持ちませんけど、って心の中でつぶやいてしまいました。
曰く、【マンションは新しく作って入居したらそこがピーク。あとは廃墟化というハードランディングへまっしぐら」。建て替えは基本不可能(この意見には賛成)だから、管理組合活動を適正化&みんなで厳しく監視して腐敗を防ぎ、ダメなマンションからは逃げ出しましょうね】とのご主張です。
本書をもうちょい詳しく箇条書きでまとめてみると、このような感じです。
- 分譲マンションは出口がない
- 今後多くのマンションが廃墟化する
- そのために、区分所有法や(標準)管理規約は性悪説で見直すべきである
- 管理組合の理事会は利権を持っており、多選は腐敗する。規制すべき
- 腐敗した理事長を辞めさせることは困難
- 監事役はしっかり役割を果たすべきで、馴れ合わず外部から呼ぶべき
- 廃墟化まっしぐらのマンションは売却して抜け出そう
例えば「理事会の監事制度はまともに機能していない。外部から監事を招聘して厳しく見てもらうべき」とか「管理組合は即刻法人化すべき。法人化することにより区分所有ができる」などのご主張。うん確かに、と頷けるところや、もう値段がつかないリゾートマンションの悲惨な事例などはあまり他では聞かない情報です。
ですが、なんていうんでしょうかね。
本書の根底に流れる論調、というよりも考え方は、やっぱり私とは意見が合わないかな、と。
読後は「管理組合運営について、まぁ〜底意地の悪い悪意を持ってみれば、そういう解釈もできますね」とか「数少ない極端な事例を、あたかもほとんどのマンションで起こることと不安を煽っているように見えてしますね」という感想を持ちました。
本書はやたらと語尾が「わからないものだ」「〇〇なはずだ」「○○が多い」「可能性が高い」「と考える人もいる」・・・こんな調子で終わることが多いんですよね。ロジックの積み上げが甘いところが多い。
理事が多選だと腐敗を生むから、多選は禁止、だけど管理組合の運営(つまり理事会活動)は意識高く、マンションコンサルタントを雇い管理会社と緊張を持って接し、監事を外部招聘して理事会を厳しく監視。
えっそんなこと普通の人たちが運営する理事会で可能なんですか?自分たちの運営を監視することになる外部監査をお金を払って導入している事例なんて、そもそも理事会はきっと多選で超絶意識が高いところですよね?と私は思うのです。理想論とソリューションがまったく合ってないというかそんな感じ。
また本書の後半のご提案、エレベーターなし老朽化マンションにおいて4階5階を競売で入手して1〜3階に移り住んで4階5階はそのまま人が住まないようにするとか、、、ぱっと聞こえはいいんだけど、そうなると管理費も修繕費も3/5になっちゃうよ!とか、そのアイデアわかるけど、実現可能なのかなぁとか。
まぁいろいろ???な箇所はありましたが、一部には学びもあるのは事実です。本書の中で、論旨が被ったりぶれているところもあるなと思うのは、彼の連載から使えるところをつまんだからでしょうか。このあたりは編集者の腕の見せ所だとも思うのですが。
僕からは以上です。
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なんでこんなゴミをわざわざ買うのですか…?