第193回 地下室マンション誕生の裏話

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このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

昨年末から年明けにかけて、なぜか立て続けに3回も地下マンションのご相談を受けました。

 

それぞれご相談の内容は異なるのですが、いずれも「どうして地下住戸を買ったのか」と首をかしげることとなりました。地下住戸にはどんな魅力があったのでしょうか?

ともあれ、作り手の事情に鑑みながら、地下住戸について語ろうと思います。

 

●商売上手の企業が地下住戸を作る

マンションデベロッパーにとって用地取得は生命線です。

土地がなければ仕事にならないのです。いかに良い土地を手に入れるかに各社日々しのぎを削っています。

 

しかし、用地情報は業者に平等に回って来るわけではありません。中小業者は、財閥系業者に比べて条件の良い土地情報を得る機会は少ないのです。

 

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません。

 

工場や倉庫、社宅、学校跡地などが移転、統合、廃校といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

 

売主は、常に入札方式で買い手を決めわけではありません。希望額に近い買い手が現れれば、早い者勝ちで決めることも少なくありません。

 

どちらにしても、適地と思われる土地は争奪戦が激しく、最後は高値で買う業者に買収されて行くのが普通ですが、高値で競り落とすのはたいてい大手です。大手業者の場合、土地を高く買っても、商品企画に一日の長があり、ブランド力の差もあって販売には自信があるのです。

 

中小業者は、大手に伍して戦う自信もなく、大手が興味を示さなかった土地、もしくは嫌った土地を拾うしかない場合が多いのです。

 

例えば、変形の土地、間口の狭い土地、ビルの谷間の土地、谷底の土地、高速道路沿いの土地など、条件の悪い土地です。条件が悪くても、何か取柄があれば商品価値はあると考えます。

 

条件の悪い土地は買収額が安いので販売価格を安くすることができます。ただし、条件の悪い土地のマンションは「少し安い」では売れないので「はっきり安い」と言える価格に抑える必要があります。

 

そんな意図から、法的制限いっぱいの建物を作ろうとします。10億円の土地を買って50戸作れば1戸平均の土地代は2千万円になりますが、仮に60戸に増やすことができたら、1666万円に下がります。10億円の土地がそもそも安いのであれば、マンション価格は相場より10%、20%も安くできるかもしれません。

 

法的制限のひとつは容積率です。容積率とは1千坪の土地が200%指定の場所なら建物は2倍の2千坪まで建てることができるというものですが、その計算に入れなくてよいのはバルコニーやエレベーターなどの共用部の面積ですが、地下室も一定の面積までは除外されます。

ここに目をつけるのが中小業者です。容積不算入の地下住戸を作れば、実質的に土地代を安くできます。

 

地下住戸は、住まいとしての最低条件である採光を確保しつつ魅力的な形にしなければ商品にはなりません。空堀(からぼり・英語でドライエリア)を設けて上部から日が入るように工夫します。空堀が大きいほど窓先に大きなテラスが生まれ、外の世界から隔離された秘密めいた部屋になったりします。

 

こうした商品企画は、設計士の腕もありますが、どちらかと言えば事業主の考え方によります。いわば、商売上手な企業が地下住戸を生み出すのです。大手でも、地下住戸を作れば価格を下げられることを知ってはいますが、広いテラスを生み出せる場合以外は取りやめるものです。

 

大手がやめた小規模な土地を取得するほかない中小デベロッパーは、テラスも狭く、魅力に乏しい地下住戸でも「安ければ売れる」と信じ、事業化に踏み切ります。

 

こうして生まれたマンションは、地域相場より「はっきりと安い」価格が特色になります。住戸別に価格を決めて行く作業のさい、条件の悪い地下住戸は同じマンションの中でも目玉商品的に特に安い住戸にします。

 

●買ってしまう人の心理

商売上手な中小業者は、がけ地や谷地を取得して商品化します。平坦な土地でも、変形の土地を好んで買って商品化します。地下住戸を作ることにも慣れています。「安い・面白い」と構想を練ります。

 

地下住戸でも、窓先のテラスが住戸専有面積と同じくらいの広さがあればまだしも、狭い敷地では、法的な採光基準をクリアする程度の狭いドライエリアしか設けられません。そのようなケースでは、斜め前方から反射光が部屋に届く、ぎりぎりの明るさしかありません。

そんなマンションでも価格が安いので最後は買う人が現れます。場所だけは良いので、そのアドレスに住みたい人が買ってしまうのかもしれません。筆者が関与した例(ご相談物件)は、麻布、広尾、高輪、南青山、赤坂などでした。

 

高級住宅街ばかりです。多くのデベロッパーが喉から手が出るほど欲しがるブランド地ですが、形状が悪い、面積が足りない、良いプランができそうにないなどの理由で大手がパスした土地を拾った中小業者は、地下を含めて無理やり詰め込んで数(住戸面積)を増やし、室内設備だけは大手に引けを取らない高級マンションもどきを建設します。

 

これを買う人は、分譲賃貸でなく普通の賃貸マンションに住んでいるためか「高級マンションの何たるか」を知らないのです。モデルルームを見て一目ぼれし、ふらふらと営業マンの誘導に乗せられてしまいます。

冷静であれば、「ちょっと待てよ。外との関係や日当たりはどうなのかな。安いと思ったが本当のところはどうなのか」などと考えるに違いありません。

そんな冷静になれる時間を与えず、「予約の客が列をなしているから」とか、「今日中に決断してくれれば上司に諮ってモデルルームの家具一式をお付けします」などと購買意欲を一気にピークへと誘導していきます。

 

不動産営業のトークに不慣れな若い人は、ついペースに引き込まれてしまいます。そうして、買ってはいけない地下住戸を買ってしまうのです。

 

●買ってはいけない地下住戸

買ってはいけないと言いましたが、地下住戸のどこが良くないのでしょうか?

これは程度問題であり、ほかの要素、例えば駅からの距離や環境、マンション全体の風格やデザイン性などに見るべきところもあるので、そのプラスで地下住戸のマイナスを何割か消してくれるのですが、「短所を補って余りある」までにはいかないのです。

 

まあ、それでも価格が極端に安ければ別です。とはいえ、そんなに安くならないのも現実です。これだけ安ければ買っても損はないのではと考える人もいますが、「これだけ安ければ」の基準があいまいであり、多くは錯覚です。

 

購入時に安い物件は、将来の転売時にも安くなってしまうということを認識しておく必要があります。100のところを80で買えば損はないどころか、70、60になるのが現実です。反対に、価値あるマンションなら、120で買ってもリセールでは130なり140になるのです。

 

地下住戸には、「安物買いの銭失い」になる危険をはらんでいることを記憶しておかなければなりません。

 

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