これからの国立の話をしようその2(グランドメゾン国立富士見通り)

前回のあらすじ:事業中止となったグランドメゾンの土地は個人から業者⇒川口土木⇒積水と売買され、土地の用途地域は近隣商業地域と第1種低層住居地域にまたがっていた。
これからの国立の話をしようその1(グランドメゾン国立富士見通り)

2.調整会およびまちづくり審議会での議論
近隣住民による開催請求に基づき、第1回調整会が令和4年3月25日に、第2回調整会が令和4年4月27日に開かれます。
a-1 第1回調整会(議事録

・住民の主張

(ア) 周囲の建物から突出した高さにならないようにしてもらいたい
具体的な高さとしては4階としてほしい。
① 敷地の北側における1,2階建ての住宅の日影や通風など、環境
面で大きな被害が出る。
② 高さ36メートルのマンションが建設されると、富士見通りのま
ちなみ景観が毀損される。
③ 近隣住民の方に丁寧な説明を行い、理解してもらえるような事業
の進め方をしていただきたい。

(議事録より引用)

・事業者(積水ハウス)の見解

(ア) 周囲の建物から突出した高さにならないようにしてもらいたい
① 圧迫感低減のため、建物の階数を当初計画の11階建てから、1
0階建てとした。今の規模を維持しながら高さを下げることは
出来ないため、これ以上の対応は難しい。
② 北側の住民への配慮として、バルコニーの一部中止、窓の縮小を
行っている。要望に対して出来るだけの配慮はしているが、これ
以上の対応は難しい。
③ まちづくり条例による説明会を行うと共に、計画内容変更の周
知及び任意説明会を開催した。

(議事録より引用)

次回10階を前提とした検討案が請求者(住民)から出ればそれについて調整会を行う。

a-2 第2回調整会(議事録
・請求者(住民側)の要望

(ア) 建築面積及び延べ床面積を現計画の半分程度に抑えることを要望
します。
(イ) 北側、及び西側の窓は底辺が成人男性の平均的な目線の高さより
高い位置に設置するよう要望します。
(ウ) 不特定の居住者が使用する屋外避難階段に落下防止措置を講じる
よう要望します。
(エ) 日照被害や圧迫感について受忍限度を超えていると感じているた
め、被害防止措置を要望します。
(オ) 風害の程度について事前調査、調査結果の公表を要望します。
(カ) 機械式駐車場を取り止め、緑地への代替えを希望します。
(キ) 隣地境界線と建物との間隔を不安や不快感が生じない程度にあけ
ることを要望します。
(ク) 近隣住民と十分な協議の上、合意に達し工事協定書が締結された
後に着工することを要望します。
(ケ) 工事開始前に希望する住民には家屋調査を実施することを要望し
ます。

(議事録より引用)

・事業者(積水ハウス)の見解

(ア) について
既に11階から10階に変更し、住戸数も20戸から18戸となっ
ている。これ以上の戸数の減少は、さらなる事業性の圧迫につなが
るため、当該要望を受け入れることはできない。
(イ) について
開口部について、成人男性の平均的な目線の高さ程度の高い位置に
するというのは難しい。ただ、プライバシーの点に関しては、以前
から変更案として示しているように開口部を小さくしてきた経緯
がある。加えて、今回さらなる配慮ができないかということで、北
側から見て西側に飛び出している上層階3個の窓を取り止め、壁に
変更した。
(ウ) について
屋外避難階段は避難時に居室から外へ出るためのものであり、居住
者がフロア間の移動の際に使用するなど日常用途としての使用は
想定していないため、落下防止措置を講じる予定は今のところな
い。
(エ) について
計画敷地の北側は第一種低層住居専用地域であり、一連の用途地域
の中でも一番厳しい日影の規制の中で計画をしているということ
でこれ以上の配慮は難しいということをご理解いただきたい。
(オ) について
事業者としては計画建物が建つことによって、計画地周辺の風が強
くなったり、今まではなかった風が年中吹くようになるといった風
害が起きることは想定していないが、調査は実施する。そして対策
が必要な場合には工事を実施する。
(カ) について
当該計画はファミリータイプの住宅であり、駐車場の需要がある程
度見込まれる中で6台程度は必要であると考えている。敷地内で必
要台数を確保しつつ騒音の低減や見栄えを考慮し、単純昇降式の機
械式駐車場としているため、取り止めはできかねる。
(キ) について
現時点で建物の配置は敷地南側に寄った計画となっており、これ以
上の離隔を北側に対してとることは法規制上難しく、西側について
もこれ以上の離隔をとることはできない。
(ク) について
工事の内容については具体的なところは施工者が決まってからに
なるが、工事協定書として明文化したものでお互いに確認できたら
良いと考えている。しかしながら、協定書を締結してからでないと
工事に着手できないということには応じられない。
(ケ) について
隣接の家屋に関しては家屋調査を実施する予定である。そのうえ
で、さらに外側の方々から家屋調査の要望が出た場合は協議をしな
がら進めていきたいと考えている。

(議事録より引用)
つまり、
積水ハウスは36m・11階建てのマンションを計画。

近隣住民は富士見通り沿い北側と同等の高さ(4階相当)を希望。

積水ハウスは住民の意見を受けて11階建てから10階建てに計画変更。

住民側はその変更後の計画に対して建築面積・延べ床面積を半分程度にすることを要望。

積水ハウスは事業性の観点からこれ以上の削減の要求を拒否。

右手側が富士見通り北側。2階建~4階建の建物が立ち並ぶ中10階建てのグランドメゾンは突出している。


この議論を受けて調整委員による以下5項目の調整案が提案された。

① 事業者は、各請求者に対しこれまでの変更内容を図面等にまと
め、当該計画図通りの実施を約束すること
② 事業者は、各請求者に対し建物の風害の程度に関する調査を可
及的速やかに実施し、結果の報告を約束すること
③ 事業者は、各請求者に対し工事協定書を可能な限り速やかに締
結するよう努力すること
④ 事業者は、各請求者に対し本計画建物の周辺の家屋について、
合理的な範囲で家屋調査の実施を約束すること
⑤ 本建築計画について、事業者と請求者が上記①とは別の案につ
いて合意するに至った場合はそれを優先すること

(議事録より引用)

この調整案に対して請求者(住民)は②③④については合意だが現状の建物規模を前提とする①⑤については合意できず、事業者(積水ハウス)は合意の有無にかかわらず②③④は実施するとのことで物別れとなり、調整会は終了しました。
容積率400%の土地で4階建てと言われてしまうとかなり厳しいなという話ですが、高さ規制や高さを規制する条例のない中でこの要望はかなり強いなと思う一方で、積水ハウスの方も国立の気風に関する理解が不十分で折り合えないまま割とパワープレイでほぼほぼ当初の要望でGOしちゃうんだなという印象です。
あとは2つの用途地域にまたがる建物なので住居系エリア住民からの抵抗が強いなというところですね。住居系エリアは静かに暮らしたい人が多いので大規模な建物が立つことに反対するケースは多いです。
近隣住民の反対意見が数件とかのレベルであればまあなんとかぶっちぎってもいけるのかもしれませんが、後で数については触れますが、近隣住民全員一体になっているんじゃないかというレベルなので、国立で事業をやるなら相当の覚悟がいるなと思いました。

上記と前後するのですが、国立市都市景観条例施行規則の第14条第3項の規定に基づき、本建物の高さが31mを超えるのでまちづくり審議会の諮問を受けることになりました。令和3年6月23日(第19回国立市まちづくり審議会)と令和4年5月30日(第23回国立市まちづくり審議会)の二度開かれています。

b-1 第19回国立市まちづくり審議会(議事録
審議会での議論は四方八方から殴られる感じで読んでてタオルを投げたくなりました。国立市の議論はレベルが高く、他の自治体なら70点くらいでも通しちゃうけど100点をちゃんと狙っていけ、そのためにやれることは何か?全部やってるか?という営業部長のような指導をしてる感じですね。
ところで、まず気になるポイントはここ。設計の現代綜合設計担当者のコメントです。

1枚めくっていただきまして、次のページなんですけれども、こちらが計画地におい
て建物を計画した場合の富士山眺望への見え方についての検討資料になります。景観づ
くりの基本計画の主な眺望位置図より、視点場、眺望ポイントと駅前の視点の、また中
間点で3、4の位置なんですけれども、3ポイント、各2か所、計6か所の検討を行っ
ております。
写真のほうに赤で塗り潰している部分が計画建物になっております。写真でちょっと
富士山の形状が分かりづらい部分がありましたので、代引きで富士山の形を追記させて
いただいております。
1枚めくっていただきまして、次の資料のほうです。こちらのほうが、計画地におい
て建物を計画した場合の、計画地周辺からの見え方についての検討になります。こちら
も、先ほどの資料と同様に赤色で計画建物を記載させていただいております。約150
メーターの範囲、右下の地図に記載させていただいているんですけれども、19か所で
検討を行っておりますので、特に計画地と近い50メーターの範囲については、重点的
に箇所を増やして検討をしております。

(議事録17ページより引用)

それに対する大木一委員(建築家)のコメント。

資料の4ページで、どこからどの程度のボリュームが見えるのかという資料を提出し
ていただいていますが、北側の一番近い5番と6番の写真が、ボリュームが見切れてし
まっています。この表現は、ボリュームを感じないようにしているんじゃないかと勘違
いされてしまうので、写真のモンタージュを作る意味がないんです。どの程度のボリュ
ームが見えるのかというのをチェックするためのものなのに、それが目標達成されてい
ないので、これは資料としては情報が足りていないのかなと思います。
それから、8番のように、壁一面だけなぜかボリュームが出ていますが、本来であれ
ば、三次元のボリュームとして見えてくるはずですので、その辺もしっかりと精度をも
って検証する必要があると思います。

(議事録21-22ページより引用)

これ現代綜合設計が持ってきた富士山眺望の資料が大きく間違っているとかボリュームが見切れているせいで影響が小さく見えてる可能性はないですか?建ててから明らかになったように富士山がグランドメゾンで半分隠れるような眺望イメージになっていたとしたら委員の誰かが「こんなに隠れるんですか?」とか「富士山半分隠れとるやんけ!」とツッコミ入れてるはずなのに、そういったコメントが一つもないのはかなり不思議に思えます。

あ、よく見たら福井会長の以下のコメントがあります。

今日の資料でも、
富士山の眺めは大丈夫ですよという資料にはなってはいるんですけども、これがどんど
ん増えてくると、結局富士見通りの空間が、今は幅に対して高さが同じぐらいと。どん
どん高さが高くなってきて、すごく狭い空間が見えて、ほんの少しだけ富士山が見える
という、そういうことになってしまう。

(議事録28ページより引用)

富士山の眺めは大丈夫という資料……。現代綜合設計と積水ハウス、これマジでやってない?マジで?

思い出すのは防衛省のイージスアショア配備の説明会の際に山の角度を変えていた事件。(航空新聞の記事が残っていました)
もしこの審議会に出した眺望資料が間違っていたことが事業中止の原因だとしたら、積水ハウスの奥歯にものが挟まったような物言いも、市長の突き放したような言い方も説明が付きます。
なぜなら、積水ハウスは建築基準法等の法令には違反していないからです。ただ議論の前提が間違っていた、そしてそれをベースに建物を建ててしまった。そのことに気づいた国立市民が積水に連絡を入れるわけです。自分で取り壊すなら黙っておくけどそうでないなら文春行くと。会社のイメージを守るために積水苦渋の決断。しかしなぜ中止かは言えません。市長としては何度も高さ下げろ言うたやんけ、お前のミスはお前で説明せえよという話になってくるわけです。
これは全部憶測・推理の一つではありますが。

さて、議論の内容に戻ります。いろいろ踏み込んだやり取りや国立市民論・国立市民観が出ています。
田邊委員のコメント。

接地性、地面の低いところが割と大きくて、上の
ほうに行くに従ってスリムになるというような形状であれば安定するんですけれども、
今回の場合は、大きくなって、すぼんで、また大きくなるというような、やはり形態的
にもかなり異様な計画であるように思います。

(議事録21ページより引用)
それに対するコメント。

現代綜合設計(●●): その件につきましては、今回、北側のほう、用途地域が切り替わった部分
で日影制限がかかっておりまして、そこの日影制限の絡みで中間がえぐれた形状となっ
ております。
福井会長 : コメントございますか。
大木委員 : 富士見通り側も少しくぼんだ形になっていますけれども、それも日影の関係でそうい
う形状になっているという理解でよろしいですか。
現代綜合設計(●●): これもそうです。

(議事録22ページより引用)

グランドメゾン国立富士見通りファザード


この中央がへこんでいるデザインですね。異なる用途地域が絡むと最大限建てようとすると日影の関係でこうなるようです。
それに対する大木委員のコメント。

先ほど事業者さんから建築の意匠的なところを少しお伺いしましたが、日影規制のた
めということで、それは景観的に配慮しているとは思えないような御回答だったので、
それだと周りの方も納得は決してしないと思いますし、本当の意味での景観的な配慮を
した上で対応していただきたいと思います。

(議事録25ページより引用)
まあダメ出しと改善要望出されても結局こういう建物が建っているということはゼロ回答なわけですよね。割と積水ハウスストロングスタイルでは?

話は変わって松本委員の国立市民論。

国立市に引っ越してこられる方って、なぜか景観に非常
に敏感になられます。私の家もそうなんですけれども、建て替えるときには、非常に周
囲の景観に合わせたような形で建て替えを、家族全員が意識を持ってやっておりました
し、あの周辺の住民の方も同じようなことをやっていました。
なぜか意識が景観のほうに非常にシフトする土地柄なんでございますが、今回の計画
地からは我が家はちょっと離れてはいるんですけれども、私もあそこの計画地の敷地面
積に11階が建つというふうに想像した場合に、やっぱりちょっと高いなというふうな
感覚は持ちました。

(議事録24ページより引用)

田中(賢)委員の国立市民観。

近隣の方の説明会の御意見を見ますと、ほとんどの方が高さは下げろという御
意見が多いんです。もう少し何か工夫して、もちろん、値段が高ければ売れないのかも
しれませんけれども、ここ国立に住んでくる方というのは、結構いろいろ環境とか、地
域の自然とかにうるさいという言い方はちょっと失礼なんですけども、それを求めて来
る方がいらっしゃるので、その辺を考えて分譲のほうを。
部屋の広さももちろんですけども、それで収益が上がるような計画をちょっと練り直
したほうがいいのではないかと思います。

(議事録25ページより引用)

景観に敏感、環境とか地域の自然にうるさい。イメージ通りの国立市民の姿。これからデベロッパーの皆さんは国立市で事業をする場合近隣商業容積率400%でも4階だとか5階で終始はじかないと大変なことになります。リムテラス作ってればよかったのにね。
他には風害の問題、荷捌きの問題(富士見通りが16mに拡幅したらスペースがなくなるなど)、北側の住居系地域への日当たりの影響などなど問題点が議論されて福井会長の意見に入ります。

まず、
現状なんですけれども、富士見通り沿いの近隣商業に指定されている用地の指定容積率
が400%と。感覚的にはちょっと大き過ぎるんじゃないかなというふうに感じており
ました。経緯を伺うと、地元から要望があって上げたという経緯もあるようではありま
すけども、現状として、400%の近隣商業の北側に一種低層住宅専用地域が広がって
いるという状況自体が、法定都市計画としてもかなり問題があるんじゃないかなと感じ
ます。この事業は関係ありませんけど、状況としてです。
そうすると、今、これまではかなりいい環境で、表に2階とか3階の商業施設があっ
て、裏には戸建て住宅が広がっているということは非常に幸せだったわけですけれども、
今後、代替わりなんかが生じてくるときに、富士見通りの北側の建て替えが起こると、
かなりこれと同じような話がどんどん起こってくるんじゃないかということを想像して、
僕は非常に恐ろしくなりました。

(議事録28ページより引用)

ですから、意見としては、私も高さを下げる方向でという話と、まちづくり景観づく
り基本計画の中でも、きちんと書き込んではないんですけれども、これは、景観という
ときには、単に富士見通りから見た風景だけではなくて、その周辺にお住まいの方が日
常的にどういう風景を御覧になるかということも含めて考えないと、国立の景観を守れ
ないんじゃないかなと思います。
そういった意味で、一委員としての意見としては、やはり北側に対する配慮、それは
高さの話もありますし、素材の話もありますし、開口部の話もありますし、そういった
ものについては、より配慮をしないと、この景観づくり基本計画の中にある理念といい
ますか、そういったものがきちんと守れないんじゃないかなというふうに思っておりま
す。これは私の一委員としての意見です。

(議事録28-29ページより引用)

用途地域・建築基準法許される建築規模はあるがそれはそれとして、国立市民の理念(景観・環境など)を大事にするために高さ等調和していくものを建てていけよと。ハイコンテクストなコミュニケーション、暗黙の不文律、国立市民の核心的価値の共有ができないと近隣住民、行政が一体となって戦うことを辞さない街・それが国立。京都弁の真意が読み取れないといけずされまくる京都と似ているかもしれません。(なお、じゃあ都市計画変えろや!と思うのは自然です。なぜ富士見通りが近隣商業地域容積率400%で高さ制限がない状況になっているのかは次回触れたいと思います)

まず、富士見通りの富士山への眺望という話です。これについては、この建物によっ
て大きく阻害されるというものではないとは思いますけれども、基本的にはこれが将来
的にこの地域の富士見通りの景観をつくっていく要素になります。それから、単に富士
見通りだけではなく、富士見通り沿道から見たときのという論点があるものですから、
今回は富士見通りから見えて、富士見通り上を地点として設定していただきますけれど
も、その周辺からもどう富士山が見えるかということがとても大事になってまいります
ので、よりボリュームを低減するという案について御検討いただければというふうに、
皆様の御意見を踏まえて、私のほうで整理させていただきたいと思いました。
それから、景観づくり基本計画の中での周囲に比べて高さや大きさのある建築物の景
観的工夫、あるいは隣接する住宅地との連続性に配慮と、その点に関する指摘事項です
けれども、多くの委員の方から、高さについて、それからボリュームについてというこ
とで、これらは周辺の住宅地域と調和するものではないという方向の御意見をいただき
ました。
ですので、これにつきましては、より踏み込んだ形で、高さの低減、ボリュームの低
減、それから開口部についても含めますけれども、そうしたものについて検討していた
だくべきであるということは、合意できたと思っています。
それから、プライバシーの点が非常に多く御意見、御指摘がございまして、プライバ
シーにつきましても、開口の大きさですとか、位置ですとか、材料、それからバルコニ
ーの造り方などについてもかなり御意見がありましたので、これについても周辺にお住
まいの方のプライバシーを確保する方向で、より配慮する方向で検討していただくべき
だろうということになりました。
それから、近隣住民の方から大変多くの意見書が出ております。これは、この規模の
ものにしてはかなり多いと思っています。それは、先ほどお話し申し上げました、近隣
商業の裏、北側に第一種低層住居専用地域があるという、その特性に基づくものだと思
いますけれども、これについては、やはり事業者の方としては、きちんと丁寧な説明と、
それから、必要な対応によってしっかり話合いを進めていただいて、御理解いただける
ような事業の進め方をしていただきたいということでございます。
これは、御意見、出なかったんですけれども、基本的に事業者の方からは、しっかり
やっていきますということの回答をされているので、それに期待はしたいと思っている
んですけども、そのことについて、この場としても確認はしていきたいと会長としては
思いますので、できれば、その後の経過がどうなったのかということについては、改め
てまちづくり審議会の場で確認させていただくということを盛り込んではどうかと、こ
れは会長としてやりたいと思います。そのことですが、いかがですか。

(議事録29-30ページより引用)
これやっぱり眺望パースが間違ってるよね……。「この建物によって大きく阻害されるというものではない」というイメージ画像だったんでしょうね。
いろんな宿題出たけど積水ハウス頑張って!とエールを送る内容です。それを受けて11階建てが10階建てに変更されたことについては先ほども触れました。

b-2 第23回国立市まちづくり審議会(議事録

最初に触れた2回の調整会が不調に終わり、打ち切りをして、それに伴い又審議会の諮問を受けるという流れです。
まずは前回の審議会から調整会に至るまでのあらすじのおさらい。

本件は、令和3年6月23日の第19回まちづくり審議会の答申を受けて、令和3年8
月18日に指導書の交付を行いました。令和3年9月10日に、開発事業事前協議書が
提出され、近隣住民説明会や意見書、見解書を経まして、令和3年12月14日に、近隣
住民より主に建物の高さの調整項目を主とした調整会の開催請求が提出されました。調
整会開催請求の写しが資料5になっております。これは1枚だけのものです。
すいません。資料6、2ページ目に戻ってください。12月24日に調整会の開催決定
をしましたけれども、当時、当事者間で、事業者さんと近隣住民さんの間で話合いが行わ
れていたことから、推移を見守っておりました。その後、事業者から1フロアを下げた上
で、バルコニーや開口の見直しを含む提案がなされましたが、請求者のほうからは、更な
る高さの引下げについての要望が出ておりました。事業者は、高さについてこれ以上の
引下げは困難であるということで、当事者間でこれ以上の協議を行うことができないと
いうことが、申出がありましたので、これらを踏まえ、市のほうでは調整会を開催いたし
ました。

(議事録31ページより引用)
前回の宿題はほとんど解決されず、7月分の絵日記しか書いてない夏休みの友を持って新学期登校してきた積水ハウス君。
当然近隣住民は納得しないわけで、そのアツアツの争いを審議会に持ち込まれて委員さんたち大疲れ様です。
調整会にも委員として参加した大木委員。


私は調整委員として2回出席をさせていただいて、何かしらの合意点が図れないかと
いうことで、①から⑤を整理して、請求者の方が受けられるかどうかという判断をいた
だいたんですけれども、結果的には、建物規模がどうしても受け入れられないというこ
とで、調整会としては折り合いをつけるのが難しかったというところであります。
報告していただいたとおり、法令容積率、都市計画で認められている範囲内は認めら
れてしまうので、個人の見解はいろいろあるとは思うんですけれども、なかなかそこは、
個別の案件に対して駄目だよということは言えないというのが現状であって、それが現
状、都市計画としての限界が形になって出てしまったと思います。
請求者の方々もおっしゃっていましたけれども、時間はかかるかもしれませんが、地
区まちづくり制度なり地区計画なり、この通り沿いだからこそこういう町並みなんだと
いうものをつくっていかないと、第2、第3のこういう案件が出てくるだろうなという
のが想像がついてしまうので、我々として何ができるのか非常に難しい問題かもしれま
せんけれども、こういうことをやっていかないと調整会の役割が乏しいというのが正直
なところです。出てきた時点で、調整するのが難しいところになってしまっている。
事業者の方もいろいろ努力はされていて、11階が10階になり、バルコニーなども
プライバシーの観点で努力はされているんですけれども、住んでいる方にとっては、11
階が10階になったところで、ほとんど印象は変わらない。ただ、事業計画的には大分違
うというところもあるので、そこで合意点を見つけ出そうとしても、非常に難しいなと
いうのが私の感想というか、印象です。

(議事録33ページより引用)
法守っとるやんけ!と積水ハウスに強行突破されたら何もできないよなという話。クリオレミントンを阻止するために爆速で高さ条例を制定した国立市はどこへ行ったんでしょう?今はねじれ国会とかで法案が通らないのかもしれません。知りませんが。いやマジでまちづくり条例なり地区計画とか作るべき。そうしたら間違って買うデベもいなくなるから。クラッシィハウス(グランドメゾンの反対側の10階建てマンション)から10年以上何をしてたんですか。11階が10階になっても近隣住民にとっては消費税額サービスされたくらいで本質論としては何も変わりない状況ですよね。
西村委員のコメント。


そもそもの都市計画自体が、町に住んでいる方々の意向と合っていないと思うので、そこ
を変えていくのか、何か手だてを取らないと、今後、同じようことが次々起こるんじゃな
いかなと思いました。
特に近隣商業と第一種低層が隣接しているというのはなかなかないシチュエーション
なんです。あまりにもギャップにすごいものがあるので、僕らのできる範囲を全然超え
てしまっていて、何もできなくて悔しかったというのが正直なところです。

(議事録33ページより引用)
元々の用途指定がオワコン。近隣商業と一低が隣接するとか狂気の沙汰。じゃあ用途指定を60・200とか高さ規制20mにしようよ。
そして次々ダメ出しが続きます。



西村委員 : 調整委員として出ていて、住民の方の要望としては、もっと上席の方が出てほしいとい
うのは再三ずっと繰り返し、かなり強く訴えられていたんですけれども、それに関して
は最後までかなえらえなかった。
福井会長 : その点について、なぜそういった対応を、再三あったのに、それが対応していただけな
かった理由は何でしょうか。
積水ハウス株式会社(●●) : 私が一応この物件の責任者という形で出席させていただいています
が、通常、こういった対応で、事業部長のほうから責任者のほうで任命された人間が対応
するという形を取っておりますので、今回も同様の対応をさせていただいているという
ことでございます。

(議事録44-45ページより引用)
サラリーマンとしてはかなりつらいシーン。事業部長が「なんで18戸の物件のために俺がいかなきゃいけねえんだよ!」と怒るところが容易に想像できてしまいます。しかしそんな侮りを察知すると誇り高い国立市民は一歩も引かなくなってしまいます。担当者さん合掌。会長の反応もレポート出せないゼミ生に対する感じになってきてます。


当然、社内のほうで情報共有はして、私が独断でやっているわけでは決してございま
せんので、意見を集約してお持ちしているということでございます。
福井会長 : その辺のそういう社内での運用、あるいは、今、そこにいるメンバーで仕事をしている
ということの御理解が得られなかったからそういう話になっているんじゃないかと思う
んですけれども、その辺はどのような御説明をされたんですか。今のような説明をされ
たわけですか。
積水ハウス株式会社(●●) : はい。
福井会長 : それでも要望が出続けたということなんですね。分かりました。それは残念ですね。

(議事録45ページより引用)
それは残念ですね。の無感情さ。もう俺匙投げたよ感。


田中(友)委員 : この答申の内容について、回答に関しては非常に私自身も、この答申の文字をも
って私どもがこういうふうな対策をしましたというようなイメージしかなく、議事録に
載っているような言葉たちに対しても真摯に対応してほしいなというふうに僕自身は思
っております。

(議事録45ページより引用)
真摯に対応してくれ、って結構厳しくないですか。要するに今の対応はなめてるだろって話ですよね。


西村委員 : 出てきた回答が、ボリュームの低減とか検討してまいりますというふうに見解書には
書いてあるんですけれども、できませんでした、これでしたという、じゃあ何をやったの
というのが全く伝わってこないというか。だから、先ほど僕が申し上げた繰り返しにな
って、建ってしまうので、こんなきれいな形で風景の一部になるようなものを建てます
よとか、そういったことにはなっていなくて、もうなってしまいましたというものが目
の前に提示されているだけで、これをもってして、「はい、そうですか」と言うのはちょ
っとどうかと思います。

(議事録45-46ページより引用)
この国立にクソ物件建てるのやめろ!という主張。しかしながら違う意味でクソ物件になってしまったという悲劇。
大川委員のとどめをさすコメント。


このボリュームの話を審議会で出した時点で、多分、事業者の方と設計者の方はすぐに分
かったと思うんですけれども、この事業計画をそのままやろうとしたら、もう下げられ
ない、ボリュームをそんなに下げられないというのはすぐに分かったと思うんです。そ
れを分かった上で、我々がボリューム感についてもっと下げてくださいと、景観につい
ても考えてくださいと言う意味は、事業計画の根本から考え直してもらえませんかとい
う意味なんですよね。基本的には。
高いもの、容積率を全部使って事業計画をするんじゃなくて、もっと低減した内容で
の事業計画というものの再考をお願いしているというふうに受け取ってもらったほうが
よろしいんじゃないかなというふうに思います。

(議事録47ページより引用)
11階を10階とかそんなしょうもない変更で済むと思うな、前回審議会の意図をここまでかみ砕かないとわかりませんか?という事実上の死刑宣告。



福井会長 : ありがとうございました。これがなかなか難しいところで、本心としては、我々はそう
いうつもりで言っておりますけれども、それが都市計画法の中でどこまで認められてい
るかということとの間で、先ほど来議論しているように、実際、市民が考えている町の姿
と、都市計画法が想定している――想定してないかもしれませんね。都市計画法が許容
している都市の姿が離れている。そこに非常に大きな問題があるんじゃないかと思って
います。

(議事録47ページより引用)

会長も同意見。最後のまとめも厳し目のものに。


繰り返しになりますが、基本的に、まだ全体的に不十分であるという話が多いわけで
す。そういった方針というのをこれから申し上げますが、先ほど確認したとおりで、これ
に対して、もうこれ以上は難しいと言われたときに、この審議会として打つ手はござい
ません。やはり、事業者さんのこの地域に対する思いに対して、思いでどこまでやってい
ただけるかというところの善意に訴える。企業ですから、善意だけはやっていけません
けれども、どこまでやっていただけるかということに期待をして、それで答申案を作っ
ていきたいというふうに思っております。

(議事録47ページより引用)
「人の心とかあるんか?」という主旨。結局法的にストップはできないけど戦車の前に横たわって「轢くんですね?」みたいなまとめ。

この事業の実施について、事業
者として、実施について、住民の方の理解を得るんじゃないんだよな。信頼関係を築ける
ような形での説明の仕方というのを再考していただきたいというような形での答申とし
たいと思います。
残念ながら、何度も話合いを繰り返していらっしゃるんですけれども、そこでの相互
理解というのが進んでいないということが非常に大きいと思います。それは当事者だけ
の責任ではなくて、計画の責任もあるわけですけれども、そういったひずみは出ていま
すので、そこについては真摯に対応していただきたいということで、答申のほうをさせ
ていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(議事録48ページより引用)
審議会の意見に対する対応も近隣住民対応も0点。なぜなら事業性優先で意見を曲げず国立の理念や景観を損ねているから。でも法的には止められないからやるんでしょ?みたいな話です。つらいなー1年前の審議会はもっとハートフルだったのになぜこんなことに……。

というわけでこの審議会を踏まえて審議会が市長に出した答申がこちら
しかし積水ハウスは「そんなの関係ねえ!」とばかりに10階建てマンションの建設を強行するのだ。
今回はここまで!

続編
これからの国立の話をしようその3(グランドメゾン国立富士見通り)


























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マンションコミュニティの皆々様方、ごきげんよう。不動産業界に身を置くDJあかいと申します。 この度、スムログという多くの人の目に触れる晴れの舞台をいただきましたので、普段のブログと一味違った学びのある記事を発信していきたいと思います。

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9 件のコメント

  • より:

    あのマンション1つ建てるまでに、だいぶ議論の時間割いてるんですね

  • oka より:

    とても面白い。読み応えのある記事ですね。次回を期待しています。

  • ガウス より:

    議事録に富士見通りからの眺望パースはなかったのでしょうか。
    その眺望パースと現実がどのくらい一致しているかが、この一連の出来事の本質なのかなと思いました。

  • つき より:

    国立駅北口すぐの国分寺市民(=エセ国立市民)です。
    マンション問題をカフェで初めて耳にした(←他人の会話)数日後、全国ニュースになってて驚きました。
    冨士見通りの西友に行きがてら富士山を見てみると、噂のマンションがドーン!で「うわぁ...確かにひどい...」と思いました。夕日がキレイな日に富士山を見るのが好きだったので。
    ニュースだけでは不明だったことが、主様の記事で事情がよく分かりました。ほんとモメたのね....
    どうもありがとうございました!

  • 匿名さん より:

    そもそも、法律守って事業計画してるのに、土地柄を考えて規模縮小してくださいとか、11階建てを5階建てにしてくださいとか、そんな一方的な意見が通るわけないですよね。
    明らかにこれは国立が都市計画を蔑ろにしてきた結果でしょうよ。積水だから解体するけど他の業者なら売り切るでしょうし、圧倒的に行政が悪いですね。

  • 通りすがり より:

    素晴らしい。
    多くのニュースやマンクラが「国立市民のクレーマー体質で力技で解体させた」みたいな言い方をしている中できちんと根拠を確認したうえで記事を書いている。
    自分も結局のところは、
    「富士山は見えるのは大前提」という中でさらに無茶な要求を国立市民が出していたが、そもそも富士山すらまともに見えないじゃん!
    というところがまずかったと思います。
    「社内共有はしている」みたいなこと言ってても結局会社上層部が実際の建築物を見て「だめだこりゃ。解体しよ」ってなったわけだし(実際はもっと裏があったのかもしれませんが)。

  • 日没 より:

    “結局法的にストップはできないけど戦車の前に横たわって「轢くんですね?」みたいなまとめ。”
    めちゃくちゃ面白いw
    いや面白いというと語弊しかないけどまさにこれという例え、戦車乗ってる兵士も横たわるしかない市民も辛すぎィ…

    読みながら何度も「いや、都市計画!」「都市計画、何で!?」てなったので、次回なぜ富士見通りが近隣商業地域容積率400%で高さ制限がない状況になっているのかの解説をワクワクしながら待ちます。

  • anónimo より:

    私も、メディア報道後すぐに国立HPのまちづくり審議会の会議録を読みました。
     このブログは、委員や事業者の重要な発言を的確に抜粋されており、2021年の時点で、本質的な問題(景観阻害)が事業者に対して多くの委員から指摘されていたことが良くわかる記事となっていると思います。

    追記:
     この6/12の国立市議会一般質問において、「2021年の審議会時点で行政は富士山(の見通し)に影響があると思っていた」との発言がありました。審議会への提出資料の情報公開についても質疑されています。
    (小川宏美議員/動画40分30秒以降)

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