第26回 中古マンションの取引が引き続き活発

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このブログは、マンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介しようというものです・・・原則として毎月5と10の日に投稿しています

 

 

 新築マンション市場が停滞中になっているのと対照的に、首都圏の中古マンション市場が活発です。今日は、新築と中古の対比をしつつ、マンション市場を概括しようと思います。

 

●新築マンションは「価格高騰・供給戸数低迷・契約率の低下」

 読者の皆さんはよくご存知のことと思いますが、最近34年間の価格高騰はすさまじいものがあります。改めて数字でトレンドを見てみましょう。

◆首都圏の坪単価推移

  2012年・・・・・@213万円

  2013年・・・・・@230万円(2012年比で8UP

  2014年・・・・・@235万円(2012年比で10UP

  2015年・・・・・@257万円(2012年比で21UP

  2016年(上半期)@270万円(2012年比で27UP

 

2016年上半期だけで、4年前の27%も上昇してしまいました。

70㎡(21.2坪)換算で4500万円から5700万円と、1200万円も上がってしまったというわけです。

 

 ◆供給(発売)戸数の推移 

   2005年(約10年前)・・・84,118

   2006(約10年前)・・・74,463

    (2007年~2011年の平均:46,033戸)

   2012年・・・・・45,602戸(2006年比▲39%)

    2013年・・・・・56,478戸(2006年比▲25%)

    2014年・・・・・44,913戸(2006年比▲40%)

    2015年・・・・・40,449戸(2006年比▲46%)

    2016年(上半期)14,545戸(前年同期:18,018戸▲19%)

 

2008年以降、新規発売戸数は激減し、停滞が続いています。2016年は年末までに35,000戸を少し超える程度と低迷することでしょう。

 

 ◆発売初月契約率の推移

   2014年平均:75.1

   2015年平均:74.5

   20161月:58.6

   20162月:72.9

   20163月:67.6

    20164月:66.4

    20165月:70.9

    20166月:69.6

    20167月:63.3

    20168月:66.6

    20169月:72.0

 

 ※新築マンションの売れ行きのバロメーターとして業界で通説になっているのが「発売初月の契約率」で、好不調の分かれ目は70%とされています。

2014年、2015年は70%中位にありましたが、2016年に入ると、スタートから58.6%と低契約率になりました。50%台は20087月以来7年ぶりのことでした。

その後も、上記のように70%を割り込む月が何度も出ています。

 (以上、データは不動産経済研究所調べ)

 

 これらの数字が語ることは、「価格高騰が売れ行きの低迷を招き、売れ行きの悪化が発売戸数を増やせない。さらに、水面下では新規開発の停滞につながっている。購入者の立場で見ると、買いたいが買うものが見つからない」という悪循環になっているということです。

 

●新築マンション市場の停滞の背景と原因

 どうして、このような状態になってしまったのでしょうか?

 

 201212月に第2次安倍政権が誕生し、アベノミクスを打ち出して以降、景気回復と賃上げの期待が高まったり、株価の急回復などによる資産効果もあったり、また住宅ローン金利の更なる低下なども加わり、マンション販売をバックアップする環境は整っていたはずでした。

 

 ところが、その一方では2011311日に発生した東日本大震災の復旧・復興のための建設・土木工事がゼネコン業界に特需となって舞い込むこととなりました。

 これが建設職人・技能労働者の人件費高騰を招きました。マンションの工事費は45%が人件費と言われており、これがマンション価格に大きく響くこととなったのです。

 

 一方、マンションの原価に占める土地も取得が難しくなっていました。バブル経済崩壊後の10数年は、企業のリストラのおかげで、かつては考えられなかった適地が次々とデベロッパーの手に渡り、優良マンション建設の素地となって行ったのですが、それが一巡してしまったため、各社は土地の仕入れに窮してしまったのです。

  また、大手業者と棲み分けて存在していた中小デベロッパーの多くが2008年に起きたリーマンショック以降の金融危機によって防御に回った金融機関から見放され、破綻に追い込まれてしまいました。

 このことも新規供給が増えない原因のひとつとなっているのです。

 

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 新築マンションの停滞は、中古マンション市場を活性化させることとなりました。そのことを次に見て行くことにしましょう。

  ●中古マンションは「価格高騰・成約数増加」

 住宅ローンの金利が低下したことや、第2次安部政権誕生以降の景気回復期待、賃金引上げへの期待などもあってか、中古マンションの成約件数は着実に伸びて来ました。同時に、201210月以来、48か月連続して価格は上昇を続けています。

 

 ちなみに、2011年~2015年の成約件数を計算してみたところ、2011年が28,871戸、以後→31,397件→36,432件→33,798件→34,776件となっています。

 2016年も19月の累計で27,872件に「達しており、このペースで行けば年間トータルで37,000件に達すると見込まれます。

 

 価格もうなぎ上りで、月別データで2013年は前年比マイナスの月は一度もなく、坪単価は各月の単価は128~@136万円のレンジでした。2014年も同様で134~@148万円と上昇しました。2015年になると高値警戒からか、前年割れの月が6回も登場しましたが、それでも坪単価は144~@153万円のレンジで推移し、上昇傾向を見せたのです。

 

 2016年は9月までに前年割れが2回、坪単価は154~@162万円と上昇を続けています。2013年の最も高かった月が@136万円でしたが、それと比べると、13%~19%と上昇したことになります。

(別の調査データでは、2015年の価格が2012年比で20%アップと                なっていました)

  以上は、東日本不動産流通機構(REINS)が毎月発表する「月例マーケットウオッチ」によるのですが、引き続き同データを見ながら市場動向を見て行くことにします。

 

●中古マンションの1戸当たり成約金額

 筆者が注目したのは、中古マンションをお買いになる人は、どのくらいの価格を目安にしているのだろうという点です。言うまでもなく、新築より安いのは間違いないのですが、エリア別に比較してみようと、先ずは「中古の成約価格帯」を見て行くことにしました。

  データでは、~1000万円(1000万円以下)、~2000万円と、1000万円刻みで集計してあるのですが、5000万円超は筆者がひとつにまとめました。

 

1000万円:1287件(全体の14.8)、~2000万円:1834件(21.0)、~3000万円:1844件(同、21.1)、~4000万円:1599件(18.3)、~5000万円:962件(11.0)、5000万円超:1198件(13.7)、8724201679月の3か月分)。

  参考:この間の新築マンションの販売戸数は約8700で、ほぼ同数となっています

 

 このデータを見て驚くことは、1000万円以下の取引が15%弱もあることです。中央値は、2000万円以下と3000万円以下の取引で、合わせて42に達します。1000万円以下も含めた3000万円以下の成約件数は56.8となります。

 

 参考までに、成約価格帯の分布を都県別に見ると、埼玉県と千葉県は1000万円以下の取引が2728%のシェアとなっていること、東京都の中央値は~3000万円と~4000万円(2000万円台・3000万円台)がそれぞれ20%弱(19.819.9)となっていることが特筆できる点です。

 

●中古市場が引き続き活発。その背景と原因

 中古市場が、このように成約件数が増え、価格が上昇傾向にあるのは、新築市場が影響を与えているからです。

  「新築を探しても条件に合うものがないので、仕方なく中古も視野に入れています」このように考えている人が着実に増えているのです。その結果として、中古マンションの人気は高まり、価格上昇を招いているというわけです。

  中古は、売り出しても買い手が現れなければ、「売却を諦める」か「価格を下げる」しかないのですが、売り出してすぐに買いたいとする内覧者が多数現れれば、売主は強気になって価格交渉には一切応じないといった姿勢を見せます。そうして、価格は徐々に上方へ振れて行くのです。

 

●中古の在庫量は常に過大

 新築マンションの在庫は9月末で6,120戸となっています。異様に新築が少ないとお感じになるかもしれませんが、発売済みの売れ残り戸数であって、いわば氷山の一角みたいなものです。

 つまり、隠れ在庫が大量にあるのです。その数を把握したデータはありませんが、一定期間(例えば1年間)で見れば、市場に出る、つまり発売された数の中でしか購入することはできないので、隠れ在庫の数を知ったところで無意味です。

  今年も年間に売り出される新築戸数は40,000戸には達しない見込みです。

 

 他方、20169月末現在、市場に出ている中古マンションの戸数は首都圏全体で42,704もあります。これだけの数が毎月平均3,000戸前後の成約によって瞬間的に減るのですが、同時に新規の売り出し(REINSへの新規登録)が毎月3,000戸前後あるので、ほぼ常に40,000戸以上の在庫となります。

 

 新築マンションの発売戸数は毎月平均3,000戸以上ですが、物件数で見ると150件前後しかありません(ちなみに、20169月の発売戸数は3424戸ですが、1物件当たりの売り出し戸数は20戸もありません。従って、物件数は170戸強でした)

  中古も同じマンションの中から同時に複数売り出しというときもありますが、多くは1戸のみです。従って、中古は40,000物件、40,000戸以上の在庫の中から検討することができるのに対し、新築は170物件の中の数戸、仮に5戸としたら850戸の少数の中から選ぶしかないことになるとも言えるのです。

  こんな比較はナンセンスとご批判を受けるかもしれませんが、言いたいことは、中古の方が品数は多いということなのです。玉石混淆であって、玉は少ないという人もあるでしょうが、数が多いからこそ玉も隠れていると言えるのです。

 

●中短期市場の見通し

 さて、今後のマンション市場はどのようになって行くでしょうか? 中短期で考えてみることとします。

 <新築マンション>

 価格は、もうしばらく高水準を維持するでしょう。高値安定というマスコミ表現もチラチラ見えますが、筆者は緩やかながら数年は上昇を続けると見ています。建築費が下がる材料が見当たらないこと、地価が急落することはないことが根拠です。

  建築費が下がるには、工事量が大幅に減ることが必要になりますが、首都圏に限って、その予測はしにくいのです。大規模再開発、東京オリンピック関連工事、東日本大震災復興工事などが、まだまだ続くからです。

  地価に関しても、特にマンション開発に適した土地の争奪戦が激しいので、高値取得になりやすく、デベロッパー各社の事業意欲が健在である以上、用地費が安くなるという展望は持ちにくいのです。

  高値必至となれば、事業意欲があっても現実問題としてマンション供給が大きく伸びて来る可能性は低いと見るほかありません。

 

<中古>

 新築がないから中古でも、というわけで、中古市場は活発な現況にありますが、こちらも新築と連動する傾向から見て、価格は引き続き高値を維持、もしくは緩やかな上昇傾向を続けることでしょうし、新築の供給が伸び悩むほど、取引の活発な状態が継続するでしょう。

  在庫(売り出し戸数)も大きく減少するとは思えないので、中古は丹念に、かつ粘り強く探せば意中の物件に巡り会えるに違いありません。

 

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