第5回 なぜ作る?「中々売れない地下住戸」

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このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

「第1種低層住居専用地域」と指定されたエリアにおいて販売される低層マンション。タワーマンションをはじめとする高層マンションに抵抗がある人、あるいは静かな住宅街の立地が好みとする人が興味を示します。

また、低層マンションの戸数の少なさに「落ち着き」という魅力を感じる人も集まって来ます。

低層マンションは、土地の高度利用ができない地域にあるため、販売価格が割高になりがちです。

そこで、高級マンションを目指すことになるのですが、調べてみると、最寄りの駅を中心とする同一エリア内では突出した販売価格になったものが多いようです。

高級マンションは専有面積も広く確保するのが常識なので、総額が大きくなって億ションとなる例も少なくありません。

そんな低層マンションにも、共通の弱点が見られます。地下住戸の存在です。

地下住戸は、低層マンションに限らず、最近よく見かけるプランです。昔からあるアイディアですが、こんな高級マンションにも地下・半地下の部屋を作ってしまうなんて。しかも、これほど沢山あったかなあ。そんな感想を持ちます。

以下、半地下住戸も「地下住戸」として述べることとします。

●売れない地下住戸

地下住戸を抱えるマンションは、ほぼ例外なく完売まで長い時間を要しています。

売れ残るのは、人気がないことの何よりの証左です。かなり思い切った価格にしていますが、それでも中々売れません。

地下住戸はテラスが付き、その向こうに広い庭を設ける形で魅力アップを図ったりします。庭の先が公道である場合は、通行人からの視線を遮断するために密集した植栽を施すなどの工夫をしますが、それでも売れないケースが少なくありません。

人間心理は、隠されるとよけいに見ようとするものです。樹木の間には隙間があるので、ついつい先を見ようとしてしまうのです。

庭では夏なら子供がビニールプールで水遊びをしたりしているのでしょうし、大人はゴルフのスイングを練習したりするのかもしれませんが、視線を奥へと移せばリビングルームまで見えてしまわないかと他人事ながら心配になってしまいます。

まあ、立ち止まって中を覗く通行人はいないでしょうが、購入者心理としては抵抗が小さくないはずです。

(地下住戸に限らず、例えば1階住戸でもプライバシーを侵害されそうな位置の住戸は少なくありません)

本来、家は無防備にリラックスして過ごせるような造りが必要条件です。

そのほかにも、洪水に遭わないか、湿気対策はどうなっているのか、セキュリティは大丈夫かなどと買い手に去来する地下住戸への心配事は少なくありません。

地下住戸が価値を持たない(低い)の理由の一番は、人は低い所より高い所に住みたがるからです。

その分が価格の安さという特徴(魅力)を持つ住戸として販売されています。逆に見れば、安くしないと売れないのが地下・半地下住戸だということになるのです。

広い庭がありますよ。日当たりも問題ありませんよと売主は主張しますが、それでも価格が弱気なところに本音が透けて見えて来ます。

●なぜ地下住戸をつくってしまうのか?

ところで、なぜ地下住戸をつくるのでしょうか? これは容積率の関係です。

容積率は、床面積の各階合計が敷地面積の何倍かを表す用語で、建蔽率と並ぶ建築制限の基本をなしています。

例えば100坪の敷地に対し、2倍の床面積200坪までの建物を建ててよろしいと行政が指定した地域は「容積率200%」となり、都心の商業地では床面積の合計500坪までの建物を建ててよろしいという、容積率500%以上を指定しているのが普通です。

閑静な住宅街で、かつ、せいぜい3階建てまでの一戸建てが広がる地域は、「第1種低層住居専用地域」と指定され、容積率が100%しかないことが多く、本来は一戸建て住宅を建てるべき場所として都市計画の中で指定されています。

同時に建蔽率の制限も厳しく40%か50%なので、100㎡の敷地に40㎡で1階をつくると、2階に40㎡、3階に20㎡と積んで容積率の制限ギリギリ100㎡の家を建てることとなります。

一戸建てならこれでもいいですが、マンションがこれでは採算が取れないのです。

このような敷地は、マンション建設にはなじまないものです。なぜなら、マンション(集合住宅)は狭い敷地に建物を縦に多数重ねること(多重層)によって、高値となった土地費用を安くする手法でもあるからです。

中高層のマンションを建てられる場所は、普通200%の容積があります。1000㎡の土地に2000㎡のマンションを建てることが可能です。2000㎡のマンションを平均66.6㎡で区分したら、30戸のマンションができます。

この土地が1種低層住居専用地域にあった場合は、容積率が100%なので半分の15戸しかできません。ということは、1軒あたりの土地の取得費には2倍の差ができます。

容積率100%の1種低層住居専用地域といえども、200%地域の半値の土地代なら、1軒当たりは同額の原価になりますが、実際はそこまで安く手に入りません。

地価の高い東京では、マンションの建設原価に占める土地代の比重が大きいので、1住戸あたりの土地代が少しでも下がるように工夫をするのが常です。

容積率200%なら、199.9%まで建物面積を伸ばすのです。簡単に言えば、10億円の土地を50戸で割ると1住戸あたり2000万円になりますが、60戸造れば1666万円ですみます。

僅か340万円弱といえども軽視できないのです。説明が難しくなるので割愛しますが、最終価格に影響する金額は400万円くらいになる場合が多いのです。

同じ金額で買った二つの土地の容積率が、片方が100%で他方が200%としたら、分譲価格は大きな差となります。そこで何とか建物面積を増やそうとするのです。それが地下住戸の正体です。

実は、一定面積まで地下住戸は容積率のカウントから外してよいという特別な規定があるからです。

地下住戸は、防水や湿気対策など工事費が地上建物より高くつくのですが、それでも指定容積率を超える住戸をつくるメリットの方が上回るのです。

少なくとも、土地を買うか買わないかの裁断前の段階では、地下住戸を設けない損益計画(事業効率)と地下住戸を設けた損益計画では、明らかに後者が勝るのです。

●地下住戸に限らず価格の安さに釣られると・・・

地下住戸はいわば見下ろされる家です。プライバシーの問題のある場合が多いのです。顧客心理的には、「豪雨のとき大丈夫か」「湿気はないか」などのネガティブな要素もあるため、あまり高い人気を集めるものではありません。

新築マンションとして販売されるときは、全体の価格表を見せられるので、例えば3階が6000万円であるとき、地下住戸が同じ専有面積で5000万円とあると、つい手を出してしまいがちです。

「確かに条件は良いと言えないが、これだけ安ければ買ってもいいよな」などと夫婦で話し合って納得し、ついに買ってしまうということになるのかもしれません。

しかし、何年か経って売りたいとき、思ったほど高値では売れないと予想した方がいいのが地下住戸です。

中古マンションの場合、新築時のような「住戸別価格表」などというものはありません。上の例を使うと、「3階が中古で10%ダウンの5400万円、地下のこちらは同じ10%ダウンの4500万円、だから随分安いでしょ」という訴求の仕方は困難です。

まあ、仲介業者がたまたま同じで同じ頃に取引に関与していれば不可能な話ではありませんし、取引に直接関わらなくても、業者は、いつどの部屋がいくらで取引されたかというデータを入手することは可能です。

しかし、頻繁に取引が繰り返されている物件でないと、そんな都合の良いデータは存在しないことも事実です。

買い手は安さに魅力を感じて見に来たが、セキュリティや水害、湿気などの心配も尽きない、どうしようと逡巡することでしょう。「この条件だと、本当に安いのかどうか判断が難しい」ということになるのです。

同じ面積で同じような立地の中古マンションがたまたま同じ時期に売り出されたとして、他方は3階で5000万円、こちらの地下住戸が4000万円という場合、果たして4000万円が魅力的と思ってもらえるかどうかは分かりません。

そもそも予算が4000万円の検討客なら、全く異なる条件の4000万円の物件と比較するはずなのです。駅から徒歩10分で、閑静な住宅地の中の地下住戸で75㎡が4000万円という物件と、駅から5分で少し騒がしい場所にあり、7階で見晴らしは悪くなく、価格は4000万円だが面積は65㎡。地下住戸は築15年、7階の物件は築7年・・・といったふうに比較がしにくいのが現実です。

「あちら立てればこちらが立たず」で、どちらにも決め手に欠けると感じる客も多いので、地下住戸に迷いなく誘い込むには結局「価格」ということになってしまいます。

安さに釣られて買ったのだとしたら、将来これを売却するときも「安さ」を武器にしなければならないということなのです。

逆のケースを蛇足で紹介します。

「随分高いなと思いながら買ったが、結果は正解だった。これだけ駅に近くて、しかも眺望のいいマンションは、この辺では他にないからね。最近の新築マンションで、ここより条件の良い物件はないので、価格が新築より高くても当然かもね。このマンションの売りが出たら教えてという声がたくさんあるとも聞いていたが、値引き要求もなしに直ぐ買い手がついたよ」と、これは自慢する知人の話でした。

●売れる地下住戸は?

地下住戸に批判的なコメントを続けて来ましたが、魅力的な地下住戸ってないのかと聞かれることもあるので、補足しておきましょう。

マンションは、「あちら立てればこちらが立たぬ」です。言い換えると、一長一短があってパーフェクトな物件はないのです。どこか気に入らない所が必ずあり、それを無視することができるかどうか、または妥協できるかが決断のポイントになるわけです。

地下住戸と聞いただけで検討対象から外す人は別として、大きな抵抗のない買い手から見れば、欠点や心配な点がいくつかあったとしても、それを覆いつくしてしまうような強烈な魅力があればいいことになります。

筆者が見た一例を紹介しましょう。

確か、築後15年くらいは経過した物件だったと思います。世田谷区の中級以上の住宅地でした。急行が止まらない、やや不便な駅が最寄りで、商店街も大きくない方です。

しかし、高級住宅街と言ってもよいのかもしれません。大きなお屋敷も散見され、緑が多く、駅から近い割には閑静な場所に物件はありました。少し歩くと、畑が残っていて、「世田谷区」らしい景観も見られます。

そんな街の、5階建てくらいの中規模マンションの中の地下住戸でした。何故か、そのマンションには地下住戸は3戸しかなかったのですが、その中の1軒が売り出されました。

その家は、テラスがリビングルームと同じくらい広く(13畳か14畳か、そのくらいだったと思います)、しかもリビングと同じレベル、すなわちバリアフリーのウッドデッキだったのです。

売り出しのときは居住中だったので、テラスに大きめのテーブルとチェアが置いてありました。天気の良い日は、ここで食事を摂るのだろうと想像させてくれました。

その先が専用庭でしたが、そこは何もなく芝生の緑がかすかに記憶に残っているだけです。

鮮烈な記憶は、庭先が公道で通行人があるはずなのですが、びっしりとした生け垣があって、その視線を感じることはないことでした。

外へ回って分かったのは、公道との境界線から地下住戸の庭先まで2m以上もあって、そこが何列かの密集した植え込みになっていたのです。これでは中へ入っていけないし、下を覗こうにも覗けないなあと感じたものです。

南向きのお宅で、テラスと庭には陽光が注ぎ、プライバシーは完璧という印象でした。しかも、広いので閉塞感はなく、これなら住みたいと感じる人が沢山あってもおかしくはないと感じたものです。

しかし、こんな良い例は稀有なものです。広いテラス+庭があるとしても、その広さが十分ではありません。ほんの申し訳程度のレベルの物件が多いのです。

●買うときは「より安く」を目指すべき

もし、地下住戸を前向きに検討するときがあったら、今日ここに述べた点を念頭に置いて慎重に臨みたいものです。大事なことは価格です。売るとき安くなってしまうかもしれないと思うことです。

そこで最後に一言。

購入価格をできるだけ安くしてもらうことです。理屈抜きで、とにかく値切ることです。言いにくい人は、「予算を○○までしか考えていなかったので」と言えばいいのです。
継いで「まあ、そこまでお願いするのも失礼と思いますので、●●万円くらいにはなりませんか」などと言ってみましょう。

新築または中古のリノベーション物件など、売主が業者なら強気に、個人の場合なら少し遠慮気味に要求するのがコツです。

・・・・・・・・今日はここまでです。関連記事は、別のブログ(http://mituikenta.blog.so-net.ne.jp/)500本余の中に多数見つけることができるはずです。是非ご訪問ください。




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