第249回 「同じ年に竣工のマンション。中古市場で50対100の価格差。何故?」

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

今日はマンションの資産格差について書こうと思います

 

●高値のマンションは値崩れしない?

今日お目にかかったご相談者に言いました。

 

「価格の高いマンションは、立地が良く、かつ建物価値もあるから高いのです。そのような物件は、古くなっても高い評価を受け続け、従って価格も高く維持されます。ご検討物件は、大変価値あるマンションなので10年経っても変わらない高値で取引されることでしょう。ただし、購入価格(売り値)が、高過ぎれば買った価格と売れる価格の差は小さく、もっと高く売れると思ったのに残念ということもあるのです」

 

これは新築マンションの話で、中古は心配が少ないものです。中古市場では買い手の選別の目にさらされ、価値の低い物件が高値で売買される確率は極めて小さいのです。売主(たいてい個人)は高く買ってほしいと願いますが、買い手はそれを許さないものです。市場では、多数の中古マンションが常時紹介サイトに並んでいます。探している人から見れば、発見するのはいとも簡単で、棚の裏に隠れていたりはしないのです。

 

高値で売りたいとしても、買い手の目は厳しく、物件価値以上で売りたいと思っても市場はそれを許さないものです。

 

一方、人気物件は「出るのを待っている人」も多く、出るとすぐ決まることが多いせいもあって、売り出し価格が多少強気でも長い時間をかけずに買い手が決まります。

人気物件は、目を付けている買い手の価格に対する判断が甘くなるのかもしれません。

 

●新築価格の異常な高値に驚く

中古マンションの売主は大概、個人です。売りに出すのは事情があってのことです。売りたい時期は半年以内、早い人では3か月以内を希望しているものです。

 

売りに出してみて、反応が良くない。ときどき見学者はあるものの、中々決まらない。しばらくすると見学者の数も激減し、売主は希望価格を引き下げます。

 

そのせいもあって、ほどなく買い手が決まって売買は成立します。

 

他方、新築マンションは売れないとしても直ちに価格引き下げに走ることはないのです。

マンション分譲は、市場の分析データに基づいて計画され、多少高値でも、これなら戦略・戦術次第で売れると判断し、市場に出します。

 

100戸のマンションを20戸でも売ってしまえば、もはや価格改定(値下げ)はできません。多少の調整はできても、大幅な引き下げはできないのです。何故かと言えば、値下げ前に買った人から苦情が来るからです。同じ率で下げてくれとの要求です。

 

無論、法的な問題はどこにもありません。しかしながら、それを放置すれば購入者の反感を買い、売主のイメージや信用を落とすことでしょう。長年、培ってきた信用やブランドイメージを瓦解することも考えられます。

 

法律違反でないとしても、目立った値引き販売はしないのが新築マンション会社の姿勢です。

 

とはいえ、売って行かなければ経営の危機となりかねません。値引き・値下げはしないが、販売促進策としての「商品券・電化製品等のプレゼントキャンペーン」は許されそうです。昔のマンション不況期には、華々しく販促キャンペーンを行う事例があちらこちらで見られました。

 

この数年(2016年1月以降)、新築マンションの売れ行きは目立って悪化しましたが、華々しく販促キャンペーンをしていたというニュースは見聞きしません。売れ行きが悪いにも関わらず、派手なキャンペーンをしなくなったようです。地道にコツコツと時間をかけて完売に至らしめているのです。

 

マンション分譲というビジネスで商品仕入れに当たるのが土地と建築費ですが、売れなければその支払いに窮することになります。土地代は銀行から借りますが、建築が完工して買い手に引き渡す段になると、当然買い手から売り上げ代金が入って来るので、その分で銀行に一部を返済して抵当権を削除します。いっぺんに借入金を返済しするためには、マンションが半分以上売れていなければなりません。

 

一方、建築費も完成した瞬間には建設会社の所有なので、代金を払って品物を納めてもらう必要があります。半分しか売れていないような場合は、建築代金の支払いに窮します。その資金調達にデベロッパーは頭を悩ませることになるのです。約束手形で支払って時間を稼ぐ方法もありますが、マンション販売が順調に進まなければ、いずれ手形決済もできなくなって倒産などというシナリオもあり得るのです。

 

結局は、銀行から借りるなどしてゼネコンへの支払を済ませるのですが、マンションビジネスに限らず、品物が売れなければ経営は成り立ちません。売れ行きの悪化、停滞が続けばやむにやまれず値引き作戦などを展開せざるをえないはずです。

 

足元ではコロナ問題ですが、先述のとおり、2016年初頭から売れ行きあ既に目立って悪化していたのです。原因は価格の急騰にあります。高くなるに連れて買えない人が増えたからです。。

 

それでも買いたい人は多いので、遅れながらもなんとかかんとか完売にたどり着きます。分かりやすく言えば、1年で売りたいマンションが2年を要してしまうのです。昔なら、売主のマンションデベロッパーは資金繰りに窮し、安売りに走ったものですが、最近は銀行の理解もあって、また融資先の新規開拓が簡単でないこともあって、貸し続ける道を採っている銀行が多いのです。

 

結局、新築マンションは時間をかけて完売するのですが、売れ行きの悪化は「需要が急減したのではなく、高値のため、需要が後退してしまった」からです。模様眺めに転じたとも表現できますが、一時的に需要が減ってしまったということです。

 

新築マンションの価格は、既に述べたとおり硬直的ですが、今後の新規着工物件で安値のマンションが出て来るようになれば隠れていた需要が再び顔を出し、売れ行きは好転することでしょう。

 

しかし、それには長い時間がかかります。安値のマンションが出て来る可能性が低いからで、買い手の購買力の上昇を待たねばなりません。購買力の上昇は、買いたい人の所得が増えることや住宅ローン金利が低下して実質的に購買力が高くなることを意味しますが、所得の増加は、成長企業に在籍する人たちや、企業内の職階のアップで所得が増える人たち、既に高所得の医師・弁護士といった自由業者に限定されます。

 

住宅ローンの金利は、既に限界値まで下がっています。従って、下げ余地は僅かです。

 

安値のマンションが出て来る可能性は低いと言いましたが、その理由も補足しておかなければなりません。新築マンションの原価は、大半が土地代と建築費です。先ず土地代(用地費)ですが、何故下がらないのでしょうか?答えを簡単に言えば、近年は分譲マンション建設に向く土地が限られてしまい、取得競争が激化しているからです。

 

マンション用地は、少なくとも1000㎡クラスの大きさが必要で、かつ駅から近いことが必須です。しかも、都心への通勤がしやすいエリアといった条件に当てはめると、該当する売り土地は少ないのです。都心・準都心の駅から10分以内で広い土地は限られます。当然ながら、争奪戦は高値を呼びます。少なくとも値下がりする可能性は低いと思われます。

 

建築費も下がる可能性は低いはずです。コロナ問題で景気後退は間違いない状況ですから、これ以上の後退・悪化を避けたい政府は公共工事を予定通りに進めるはずです。公共工事には、無論「建築工事」も含まれます。

民間工事のアパート・ビル建築などは模様眺めになるかもしれませんが、都心の再開発などは予定通りに進められるに違いありません。

 

マンション分譲業者の立場では、建築コストを下げる努力・アイディアは限界に達しており、これ以上下げるためには、品質の低下・グレードダウンしかないのです。しかし、買手の要求レベルは高く、安物マンションは売れないことをデベロッパーは知っています。

 

こうしたことを多方面に渡って検証していくと、新築マンションが値下がりする可能性は低いという結論しか出て来ないのです。

 

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●同じ地域で同じ築年数で、価格が50対100の中古市場

中古マンションの場合、価格が高いか安いかは買い手の嗅覚によって判断されるようです。買手は、そこが分からないと言いながらも、中古市場には多数の売りマンションが並ぶので、ある種の勘が働くのでしょう。突拍子もなく高い物件を市場に出してみても買い手は付かず、結局はリーズナブルな価格に収斂(しゅうれん)していくのです。

 

結局、買い手の価値判断が相場観をつくり出し、良いものは良い物なりに、価値ある物はそれなりの高値で取引が成立して行くという市場原理が出来上がるのです。

 

このため、同一地域で同年代のマンション同士の価格比較をすると、70対100程度の差異が普通に、いつも存在しています。ところが、50対100という大きな差ができてしまうことも現実にあるのです。

 

同じ面積換算、すなわち坪単価を比較すると片方は50万円で、他方は100万円という価格差が、同じ地域の同じ広さで存在するというわけです。

 

この差ができてしまう要因はどこにあるのでしょうか?二つの物件を見比べれば素人目にも「さもありなん」と分かります。とはいえ、安さに惹かれて現地見学を実行する人がいます。

 

大抵の人が安い理由に得心します。そして購入を見送ります。もともと、予算が100ある人は、50の物件には目をくれないものです。100の物件は、予算が80以上はある階層の人が見学に行くのです。

 

何故、こんなに差が開いてしまうのでしょうか?同じ最寄り駅、同じ専有面積なのです。この差は、様々な要素が重なりあって出来上がるものですが、毎日どこかを調査・分析している筆者は驚きませんが、今の仕事を始めたばかりのころは、あまりの差に「本当か」と自分の目を疑ったことが一度や二度ではありません。

 

●マンションは立地の比重が大きいのですが・・・

同じ駅を最寄りとするエリアであるにも関わらず、50対100ほどの価格差がなぜできるのでしょうか?

築年数も無論、殆ど変わらないのです。

 

先ず、階数差を挙げることができます。1階住戸が高値になることはなく、小さな子供が室内を走り回るからという理由で1階限定の買い手さんがあるのは事実ですが、その割合はとても低いのです。1階住戸の価格が低いのは、買い手が付きづらい、言い換えれば中々売れないからです。

 

規模の差も価格に影響を与えます。威風堂々のマンションの方が、ビルの谷間に隠れているかのようなマンションと比べると大きな価格差をつけるものです。

 

眺望の差も大きいのです。遠くまで遮るものが何ひとつない超高層マンションの高層階の住戸は高値でも売れますが、隣地や道路向かいのビル・マンションが視界に入る、おまけに先方から覗かれているような気がする物件では、買い手は敬遠して帰ってしまうことが多いものです。このため、そうした開放感に問題のある物件は中々売れず、結局は希望価格を10%下げてやっと売れるといった事態になるものです。

 

ブランドの差もあるようです。ときどき話題になる欠陥マンション事件。そんなマンションをうっかり買って後悔したくない。そんな考えもよぎるのでしょう。テレビや新聞で欠陥マンションが取り上げられても、人のうわさも何とやらで、いつの日か忘れ去られて行くものですが、マンション購入者は別です。事前に調べようと動きます。

 

インターネットの時代になって、費用をかけず調べることが可能です。欠陥マンション、住み心地の悪そうなマンションなどは、たちまち分かってしまう時代です。

 

そんな心配もあって、「どこが建てたのか・分譲主は何という企業か」を例外なく気にします。聞いたことがない分譲主、倒産したかもしれない分譲主、小企業が分譲したマンション、同じく施工会社も気にします。

 

こうした要素が多数絡み合って、マンションの市場価格は変化するものです。

10件の事例を比較すると、8件は大差がなく、違いは階数差や向きの差、日当たり、間取りの良し悪しなどで多少の差は当然あるものの、50対100もの差が付く物件は、残りの2件の話です。

 

条件の悪さが全部揃ってしまった物件と、地域一番の好物件との差と言い換えてもいいでしょう。

 

ここまでの差があれば、分かりやすいものですが、現実は70対80か90の差の物件を比較しています。悩ましいと感じるのも当然です。

 

●購入価格との比較をしてみると

中古市場の物件をひとつひとつ見ているとき、「高い市場価格だが、買い値はいくらだったのだろうか」という下世話な興味は尽きません。

 

まあ、「いくらで買ったものを今回いくらで売ることになりました」などという解説は付かないので、想像の域を出ないのですが、たまたま分譲時の価格表を発見したときは「やはり」と得心しながら、買い手の心情にも思いを馳せています。

 

ともあれ、この10年ほどの値動きを見ていると、中古市場もご存知のような価格高騰が起きています。(グラフは首都圏の中古価格の動きを示しています)


 

「これ以上は上がってほしくない」誰かがそんなことを仰いました。中古も新築並みになったという声もあります。新築を超える高値の中古、理論的にはあり得ないのですが、買い手がそう感じるのも道理です。

 

しかし、新築を超える高値の中古価格が現れるのは何故でしょうか?筆者はこう考えています。「新築が全くない人気エリアだから、中古が高値になるのだ」と、「新築より価値ある中古もある」の二つです。

 

人気エリアとは、世に言う3A地区(赤坂・麻布・青山)や番町エリアが代表的ですが、他にも加えていい人気の街が東京にはいくつかあります。23区では、港区・千代田区・中央区・目黒区・品川区・文京区・渋谷区・世田谷区・杉並区といった城南・城西エリアが人気です。

 

こうした地区は、買い手が多いので、高値でも売買が成立しやすいのです。

 

次の「新築より価値ある中古」ですが、現実に築30年を超えても付近の新築を超える価格で取引が成立してしまう価値ある物件を知っている筆者は、そのわけはと尋ねられると、「まあダイヤモンドの輝き、言い換えると希少価値が半端でないからですと即座に答えます。

 

高くても構わん。そのマンションに住みたいと思わせるほどの価値あるマンションは、要するに外から見ただけで素晴らしい輝きを放っているのです。事実、そのマンションの室内設備や間取り・仕上げ等について言えば、新築マンションに勝ることはありません。

 

では何が魅力なのでしょうか? そうです。外が素晴らしいのです。外観デザイン、庭園等の外構、何より住環境が素晴らしいのです。「経年優化」という造語があります。時間とともに価値が上がって行くマンションという意味で使われるのですが、敷地に植えられた大小の樹木がよく育ち、都心にこんなマンション群があったのかと驚く人も多いことでしょう。

 

ゆえに、30年を経過しても新築並みの高値で取引が成立してしまうのです。中古マンションが付近の新築並みの価格で取引されるという事例は築後20年以内に限定すれば少ないですが、いくつか見られます。

 

●安い物件を追わない方がいい

中古マンションの価値は、非常に大きな差異があるという現実、これを踏まえて購入を検討しなければなりません。私たちは、安くて良い品物を求めようとします。これは特別なことではありません。しかしながら、マンションは安くて良い品はないのです。

 

高いなりに価値ある品を見つけることが大事です。

「安い物件を追わない方がいい」筆者はよく言います。「良い物はないか」から歩むべきです。良い物を探し求めれば、当然価格の壁にぶつかります。その結果、何かを妥協しようとします。

 

このとき、筆者が助言するのは、「立地優先。広さは我慢」です。

広さを求める心理はよく分かりますが、夢を広げ過ぎないことがコツです。先ずは現実路線で行きましょう。当分(10年程度)住める広さで割り切りましょう。立地の良い物件は高いものですが、売却価格も高いのです。つまり、買い換えるときの資金を生み出す公算が高いので、多少の狭さは我慢してでも立地優先で候補を絞りましよう・・・筆者はこうアドバイスするのが常です。

 

ついでにもう一言。筆者の提供する「将来価格の予測サービス」は、10年後、15年後の買い替えの期待度(危険度)を示唆するものです。

 

●高いなと感じても、それくらいがちょうど良いものだ

価値あるマンションが安く入手できるなどということはないものです。価値あるマンションは高いのです。高値のマンションは、予算の十分な人だけが買えるのですし、その種の買い手の住みたがる街でもあるのです。

 

「高いマンションは値打ちがある。将来の売却価格も期待できる」そう断言してよいほどです。

 

ただし、高いとは値打ちなりに高いという意味です。割高とは違うのです。しかし、この判断は簡単ではありません。読者の皆さんは、いっそうの研究をしていく必要があります。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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