第240回 「安い住戸を見つける」のではなく、「価値ある住戸はどれか」と考えるべき

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このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

新築マンションの購入者(予定者)からのご相談で気づくことのひとつは、「割安な住戸はどれか」という意識を持ってしまう人が意外に多いことです。買い手の心理としては「ごく自然な発想」かもしれませんが、「価値ある住戸はどれか」という発想をお持ちになることをお勧めします。

 

ご相談者とのやり取りから、ひとつの例をご紹介しましょう。

 

極端な例で、価格の安い1階住戸を選ぼうとしている人があります。筆者は「安い住戸はどれか?」ではなく、「価値ある住戸はどれか」と発想するべきと考えます。ともあれ、1階住戸の問題点について説明しましょう。

 

1階住戸は損をする?

1階住戸の問題点は眺望・見通しが悪いことにありますが、それだけではありません。一番の問題は防犯性です。カギを掛ければいいのですが、うっかり掛け忘れて外出したスキに泥棒に入られたらという心配を一日中しなければならないので、1階はやめておこうと考える人が多いのです。

 

自分は大丈夫と考えてしまう人もありますが、1階は防犯性が低いからやめておこうという人が圧倒的に多いのです。

 

マンションの良い点は、「玄関さえカギを掛ければ安心」の防犯性の高さにあります。オートロックのかかる分譲マンションは、玄関さえ施錠すれば外出時の戸締りの心配はありません。

 

しかしながら、1階住戸に限ると防犯は完璧ではありません。セキュリティシステムが発達して、1階の住戸に泥棒が入る心配はないという反面、システムを作動させるのを忘れて外出してしまったために外主先から戻らざるを得ないこともあるからです。

窓を閉めて来たかどうかの不安が頭をよぎるため、便利さは逆の心配を増やしています。

 

また、1階住戸は前方に2階建ての家がある場合、2階から見下げられるので、これを嫌う人もいます。

 

これらのことを全く気にしないで1階を購入する人もいるのは確かですが、安さに惹かれているためです。

 

新築マンションは全部の住戸の価格が一覧になっていて対比しやすくなっています。分割分譲方式を採用するために、全住戸の価格は見えないとはいえ、僅かな隙間から1階住戸の安さはたちまち分かります。

 

1階住戸は売りにくいので、売主業者は価格を安く抑えます。1階違いで平均的に100万円の差を設けている物件でも、1階だけは2階より300万円も安くしていたりするのです。そのくらいの安さにしないと売れないと判断してのことです。

 

筆者がマンションデベロッパーに在籍していたころ、採算上できてしまう1階住戸の魅力を高めることに知恵を絞った経験を思い出しますーー2階や3階住戸にない魅力を持たせれば1階住戸も買い手は来てくれるという信念のもと、広い専用庭を設けるのは最低の工夫、庭の一角に倉庫や学習室になる「離れ」を設けたり、専用のパーキングを付置したりと様々な工夫をしたのです。

 

その結果、1階住戸は2階・3階住戸より高値でも売れることを知りました。その工夫が足りない1階住戸はどうしても売れ残る傾向があるが、それでも価格を安くすれば売れることも学んだのです。

 

さて、元気なお子さんがいて室内を走り回ると、下階に迷惑をかけるからと1階を選ぶ人もあります。つまり、そのような買い手にとっての1階は魅力的な住戸なのです。

 

しかし、将来の売却時の買い手は同様の子育て世帯に限定されてしまうことを忘れてはなりません。買い手が少ないマンション・住戸は安値にリードされてしまうからです。言い換えると、安値で手放す覚悟もしなければならないのです。

 

1階住戸は2階・3階住戸にない魅力が付加されていないと、売却時の買い手が限定されてしまい、価格の下方圧力が高い住まいとなります。それゆえに、相当安く買っておく必要があるのです。

 

「安いマンションは、より安くなる」――そう覚悟しておかなければなりません。

 

半地下・地下住戸は論外

中古マンションの価格は需要と供給のバランスで決まるものです。従って、将来の売却で高く売りたいと思う人は、人気のあるマンション・人気のある住戸を選択するように心がけたいものです。

 

「魅力ある1階住戸は現実の問題として少ないのです。もし、1階住戸を選びたくなったら、現地をよく観察し、冷静にご判断ください。日当たり、プライバシー性、庭の広さなどに加えて1階住戸ならではの魅力の材料をチェックしまししょう。

 

次は地下住戸ですが、こちらは論外です。にもかかわらず、価値の低い半地下・地下住戸をデベロッパーはなぜ作ってしまうのでしょうか?

 

答えは簡単です。採算のためです。1億円で仕入れた土地に50戸のマンションを企画するより、地下も利用して60戸のマンションにした方が1戸当たりの売り値を安くすることができるからです。

 

地下住戸であっても、工夫すれば住戸内に光を採り入れることが可能です。地下を掘るのは建築費が高いという声もありますが、地下住戸を設けなくてもマンションは地下を掘らなければならない場合が多いので、建築費は大差ないのです。

 

地下住戸を設けるのは1戸当たりの土地代が安くなるからです。地価(用地費)の高い東京では、法制限内でいかに多数の住戸(販売可能面積)を増やすかは重要なテーマなのです。そうかといって、居住性の悪い住戸を増やしても売れなければ本末転倒です。

 

そこで、「地下だがこんな魅力がある住戸だよ」と工夫を凝らして販売の成功を狙うのですが、それにも限界があって、結局は「安さ」をアピールするほかないのです。

 

敢えて説明を加えますが、地下住戸の欠点・弱点は法的基準を満たしているとはいえ、「やっぱり暗い」ことですし、周囲から見下げられている家であることです。多くの人々は、意識しているかどうかは別に、窪地や谷地より高台の家に住みたいと考えています。周囲の建物が接近している家より、開放的な家に住みたがるのです。

 

筆者は言いたいです。「価格の安さに釣られて地下住戸を買ってはいけない」「安物買いの銭失い」という格言を思い出して、と。

 

価値ある住戸は高い—そう思いましょう

つまり、マンションを選ぶとき、価格が安いものを探そうというスタンスは基本的に間違いなのです。

 

安い価格を設定しているのは不人気だからです。新築の場合には、売りにくい住戸の価格を思いっきり安く設定し、下げた分を他の住戸に振り分けて乗せるといった手法を採るという売り手論理を知りましょう。

 

ここで、中古マンション1戸だけの売主さんの立場になってみましょう。安くした分を他で取り戻すなどという方法は選択できませんね。従って、不人気住戸の選択には一定の覚悟がいるということになるのです。

 

「安いものはより安く。高値のマンションはより高く売却が可能」と覚えておきましょう。

 

無論、どなたにも予算があって、その範囲で物件を選択するほかないわけですから、悩ましいのは確かです。だから「理想的には住戸Aだけど、予算が足りないので苦渋の選択として住戸Bにした」になるはずです。――それでいいのです。

 

東南の角で最上階――などという特別な部屋は少数の金持ちを狙って作るために、住戸面積も広く、同マンション内の他の住戸とは比較にならない飛び抜けた高値であったりするので、はなから検討対象外としてあきらめもつきますが、そこまで離れた価格帯でない「手が届きそうな住戸」の場合は悩ましいことでしょう。

 

しかし、予算的に可能なら「高値だが価値ある住戸」を選んでおくことをお勧めします。

 

買い手の視点が大事

ここでいう買い手とは、我が家を売却するとき、それを買ってくれる人の意味です。あなたがマンションを購入するときの視点は、次に売るときに現われる買い手の視点とは異なるということを覚えておきましょう。

 

万人共通の視点もないことはないですが、マンション選びには個人差があります。あなたが好んでいることが他人は嫌うこともあるのです。買うときの貴方は買い手の視点、売るときは売り手の視点に変わります。視点というよりは「立場」と言う方が良いかもしれません。

 

そもそも買い手としては「できるだけ安く買いたい」のですし、売り手の立場になると180度変わって「できるだけ高く売りたい」のです。この点を覚えておきましょう。

 

つまり、購入時の自分は良いが、売るときに「これを選んでしまって間違いないか?」、そう自問自答してみることが大事なのです。

1階住戸を選んでしまったが、将来これを手放すとき高く買ってくれる人は現れるか?などと自問してみましょう。

 

「自分の家なのだから自分が気に入れば、それでいいじゃないか」という反論も聞こえます。自分・家族ともに気に入る家だったらいいーー一理あります。

しかし、それは目先のことに過ぎないのではありませんか? マイホームは長く住むものです。また、マイホームは多額のローンを利用して買うものでもあるのです。

 

まず「長く住む」といっても、住んでいる間に自分と家族の事情が変わるではありませんか? 将来の変化にどう対応するかは考えましたか?転勤になったら、勤務先が倒産したら、転職したら、妻の仕事や子供の学校の所在など生活環境が変わってしまったら等々、人生には様々な事情と環境変化が起こります。その結果、買ったマンションを手放す必要に迫られることは誰にでもあり得るのです。

 

筆者もサラリーマンを辞めてからも転居を二度しています。その家は、好きで選んだものもありますが、全くの想定外の事情変化による選択もありました。その経験から、個人差はあるでしょうが「住まいは買い替えを旨とすべし」との信念が出来上がりました。

 

意図的な買い替えとは限りません。勤務先の事情、家族の事情変化によって自分の住まいも変わらざるを得ないのです。買い替えか、それとも売らずに賃貸するかは個人差があるはずですが、いずれかの時点で売却するときが来ます。

 

そのとき、「高値で売りたい、もしくは損をしない程度に売りたい」というのが普通の感覚です。それゆえに、今買おうとしている家が、将来どの程度の値段になるのだろう、損しないか、ローン残債を消せるのか、売却損を出しても手元資金に手をつけずに売れるのか――といった疑問を抱くのが普通です。

 

マンションを買うときから将来の売却(買い替え)を想定しておくことが重要なのです。今まさに買おうとしているマンション、そのマンションは果たして別の人から見てどのような、またはどのくらいの評価になるのだろうか?

 

「自分が気に入っていればいいではないか」という反論も聞こえて来ますが、自分を第三者の立場に置いて買い物を眺めるのは大事なことです。万人受けしないマンションを買ってはいけないなどと言うつもりはありませんが、次の買い手からの評価を想定しつつ購入するというのは大事なことです。

 

前にも書いた覚えがありますが、自分が住む目的で購入するマンションは底値で買って天井で売るなどという芸当はそもそも無理なのです。筆者は正反対の「天井で買って底値で売った」経験を持っていますし、その反対も経験しています。

 

自宅マンションは投資目的で売買するわけではありません。生活の基盤、家族の基地として買うのです。生活をしていく上で必須の買い物です。できたら、底値で買って天井で売却し、大儲けしたいが、天はそれを許しません。ゆえに、大損をしない買い物、家庭が破綻しない買い物というスタンスが必須になるのです。

 

マンション選びの際に大事なのは、「将来価格の予測」です。常々筆者が主張していることです・・・・・そのとき重要なのは「自分目線ではなく他人目線」です。

 

駅から徒歩10分以内と決めて探してきたが、今まさに決めかけている物件は条件ぴったりの徒歩8分という物件だが、筆者に詳細の物件評価を依頼したところ、8分は遠いという答えが返ってきてショックだったという声が最近届きました。

 

中古マンションの価格判定(取引価格)は、近辺の類似マンションもしくは同マンションの売却事例を探し、階数差や面積の差などを勘案して計算されます。つまり、取引事例比較法によるのです。その提示価格には幅があり、00万円~00万円と知らされます。

 

その数字を見て所有者は売出し価格を決めます。高く売りたい人は査定価格の上限を、急いで売りたい人は低めの価格を設定して売り出します。売り出し価格は持ち主が決めるものですが、売れそうもない価格を付けても意味がありません。

 

高く売りたければ、高評価のマンションを買っておくことが前提になります。マンション購入に当たっては、冷静に購入商品を眺めてみましょう。「あばたも笑窪」状態に陥っていないかと振り返ってみましょう。

 

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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