第233回 「続編:建築費はやっぱり下がりそうにない」

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このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

第232回「新築物件はもう買えないという嘆きの声に!!」に続いて、残念な話題を。

 

1月20日の日経新聞に、「未着工案件3.3兆円。最高水準」との見出しで見逃せない記事がありました。

 

要点を紹介すると、「人手不足で工期が長い、受注しながら未着工案件が最高水準」といった内容で、要するにオリンピック後も、仕事がなくて困る事情にはないというのです。

 

仕事がないときは安値でも受注に走る傾向がありますが、今のゼネコンは仕事をたくさん抱えて多忙とのことです。つまり、建築費が下がる兆候はないのです。建築費が下がらないとするなら、新築マンションの価格も下がらない・・・そう考えるべきです。

 

むしろ、まだ上がる傾向は続くのかもしれません。新築マンションの将来を占ってみました。

 

●建築費が下らない要因・背景

建築費が上昇したのは、東日本大震災以降、復旧復興工事に人手を取られ、建設職人に不足が生じるとともに人件費が高騰したためと言われます。

仕事はあっても、依頼を受けられない、もしくは通常1年かかる仕事を1年半の時間を見てほしいなどとゼネコンが発注者に要請するといった異常事態が続いているのです。先の新聞記事もそのことを伝えていました。

 

建設労働者・建設技能者の数が練ってしまったことが背景にあります。かつて建設業に従事していた人は業界を離れて他業種企業へ流れて行ったようです。 高齢化も進んでおり、抜本的な人で不足が解消できないのです。

 

ゼネコン各社は、外国人労働者を募り研修を受けさせたうえで戦力にしているということも事実ですが、その数はしれており、焼け石に水のようなものだと言われます。女子の採用も進んでいると言われますが、こちらも人手不足の解消には遠く及ばないのです。

 

人手不足は労務費の高騰につながります。人が足りない分を全国から集めるいしても、経費は膨らむのです。結局、建築費は上昇の一途をた辿って来たようです。

 

●用地費も下がらない?

新築マンションの2大原価の用地費が下れば、建築費の高騰を吸収してくれる可能性がありますが、その用地費も下がる兆しは見えません。

マンション用地は、通勤の便が良いこと、駅に近いこと、環境が良いことといった条件を満たしていなければなりません。

 

広さ(面積)も重要です。 小規模な土地は、小規模な建物しか建てられないのですから、建築コストも割高になりますし、付加価値の高いマンションを建てることも難しいものです。

 

大手は、大きな(広い敷地の)用地を求めます。中小デベロッパーとで、同じなのですが、広い用地情報が入って来ないために、大手が興味を示さない小さな土地を買うしかないのです。

 

都心に近く、最寄りの駅にも近く、かつ広い土地は少ないので、いきおいデベロッパー間でし烈な争いが展開され、取得費はいやおうなく高くなります。 駅に近く、規模も大きなマンションは付加価値の高い物件となるので、高値で用地を買っても採算は合う(高値でも売れる)という判断をし、結果的に信じられ信じられない高値で購入するデベロッパーが現れます。

 

バブル経済崩壊後の数年は売地が多かったので、デベロッパーにとって用地不足で難儀したという話を聞いたことがありませんでしたが、2010年頃を境に適地は急激に減って行ったのです。

 

そのためもあって、新築マンションの供給戸数は年々減少し、ピーク時の40%程度の水準にまで減ってしまったのです。 今後も増える見通しはなく、数年分の用地を確保している大手デベロッパーといえども、3年分しかないと言われます。

 

安く売地が出る確率は低く、なかんずく立地条件の良い、かつ広い土地は、極めて希少なので、供給戸数が増える見通しは立てにくいのです。

 

●新築マンションが買える人は幸運?

以上のような業界事情を知ると、新築マンションの価格は上がる一方だなと思わざるを得ません。かくして、前回もご紹介したようなマンション価格の高騰につながって来たというわけです。

 

新築が高いから中古も連動して高くなりました。 東日本大震災以降も続いてしまった各地の災害、熊本地震、西日本豪雨被害、北海道地震、北大阪地震など、次々に襲われた天災によって建設会社は慢性的に人手不足に苦しむ状況となりました。加えて2013年に決まった東京オリンピックも人手不足に拍車をかけることになりました。

 

オリンピック関連工事が終われば、少しは暇になって建築費は下がると予想する向きもありますが、どうやらその当ては外れてしまったようです。

 

用地費は高い、建築費も下がりそうにないとするなら、マンション価格も高値が続いてしまいそうです。 しかし、高値のマンションは購買力の限度を超えて「やがて値下がりする」と予想していた人を裏切ることになるのです。

 

現に、新築マンションの売れ行きは悪化しています。売れなければ、最後は値引き販売も辞さないデベロッパーも現れるかもしれません。しかし、その期待も裏切られるに違いありません。

 

もともと、新築マンションの分譲事業の利益率には余裕がないので、下げ余地が小さいのです。何より、定価で(高値で)買った初期の契約者とのトラブルを恐れるマンション業者は値引き販売を積極的に展開する作戦は取りづらいものです。値引き販売は、断行しても僅かな戸数を僅かな値引き率で秘かに行うものです。

 

共稼ぎ族が近年、随分増えました。そのせいで、購買力も上った反面、立地選定にはことのほか厳しいようで、都心・準都心の交通便のよいマンションに人気は集まります。従って、利便性の良いマンションなら、高値でもなんとか売れて行くようで、デベロッパー側も。強きを通しているように見えます。

 

 

DINKSを含む共稼ぎ世帯の増加は、購買力を押し上げているので、高値のマンションも立地条件さえよければ最後は売れる、デベロッパーはそう呼んでいるようです。つまり、値引きも期待も持てないのかもしれません。

 

●いつまで待てばいいの?

この質問を多数いただきました。筆者は、迷わず「待つのは得策でない」と答えて来ました。

 

適地は少なく、建築費は高い。従って、立地条件の良いマンションが安く売り出される確率は限りなくゼロに近い。筆者は最近6~7年、そう言い続けて来たのです。

 

その反面、上げ止まってくれることを願っても来ました。 高くなれば買い手はなくなって売れ行きは落ちる。そうなれば企業は存続できないから、どこかで反転する、反転はしないまでも「高止まり」するだろうと思いましたが、予想はことごとく裏切られました。

 

2019年のデータはまだ出て来ませんが、おそらく期待を裏切る高値になっているはずです。

 

今後、建築費が下ってマンション価格も下がる時期は来ないのでしょうか?先に述べた通り期待はできないと思うほかありません。

 

用地がない、たまに良い売り地に出会っても、高くて手が出せないと嘆くデベロッパーの声も届きます。それが本当なら、新築マンションは数も少なく、期待できる安値の物件が出て来ることもないと思うほかないのです。

 

新築が高くなったから、中古を探そうという志向も強くなって、中古マンションも高値が付くようになっています。 つまり、新築も中古マンションも良い物件はみな高いと覚悟しなければならないのです。

 

「待っていれば、、いつか安くなったマンションが市場にあふれるという状況は来ないでしょうか?」 こんな質問を受けたことがありました。筆者はこう答えました。

 

「買えるものがなければ仕方ない。しばらく様子を見よう。このように考える人も増えるでしょうね。すると、マンションは市場に売れ残り物件があふれるかもしれません。しかしながら、良い物件は高値でも売れているのです。売れ残りは問題物件ばかりです。待っても期待する状態になるとは思えません」と。 売れ残ったマンションが企業経営上、やむなく値引き販売に踏み切る局面はあるかもしれません。しかし、その決断に至る物件は多くありません。マンションデベロッパーは体力のある企業ばかりと言って過言ではありません。弱いデベロッパーは殆ど淘汰されてしまったからです」

 

別の質問「マンション用地が安く出回るようにはなりませんか?」がありました。

 

答えはこうです。「土地はそもそも有限ですが、マンション用地は特に条件が厳しいのです。歴史的な不景気でも来ない限り、売地がでても、買い手は直ぐ現れるでしょう。土地需要は根強くあると思いますし、マンション用地に限ると条件の良いものは希少です。待っていれば、好立地のマンションが次々に出て来るとはどうしても思えません」

 

安い土地がデベロッパーの手に渡る可能性は稀有ですし、建築費が安くなる見込みもない以上、売り出される物件の中から買いたいと思えるものがあったら、あまり悩まずに買ってしまう方がよいはずです。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

 

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