第230回「低迷続く?!新築マンション市場」

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このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

今年もあと6日で終わろうとしています。新築マンション市場は今年も低迷、発売戸数は前年(2018年)の37,132戸を16%も下回る31,300戸にとどまる見通しとなっています。

(データは不動産経済研究所)

 

来年の見通しを考えてみました。

 

●新築マンションの供給見込み

新築マンションの年間発売戸数は、2002年以降を振り返ると、下記のグラフでお分かりのように、2000年代の8万戸台と比べると、2014年以降は4万戸台に半減し、21016年以降は35000戸程度まで減ったのです。2019年は再び増加傾向に転じると期待させたものの、結果的に一段と減少したというわけです。

 


 

新築マンションの発売戸数は、バブル経済末期にも大幅に減少したことがありました。参考に記すと、1991年に25,910戸まで激減したのです。このころは、地価の高騰で採算の取れるマンション用地が皆無と言って過言でない状況になっていました。

 

購買力に見合う用地が消えてしまったときで、多くのデベロッパーは用地を求めて郊外へ向かいましたが、その郊外もやがては採算に合うような売地が消えてしまい、マンション開発は事実上ストップ状態になったのです。

 

記録によれば、1987年(昭和62年)の41,000戸台を最後に3万戸台、2万戸台と減り、1993年(平成5年)になってようやく4万戸台に回復するまで、5年もの間、新築マンションの発売戸数は大幅減少となりました。

 

しかも、詳細は割愛しますが、供給地域は大半が郊外で、通勤時間もおそろしく長い郊外・超郊外の都市も少なくなかったのでした。東京都では青梅市まで足を延ばさないと新築マンションは買えなかったのです。

 

バブル崩壊後は、地価も下がり採算の合う用地も出回るようになりました。2000年代初頭は先のグラフでもお分かりの通り、9万戸前後の大量供給が数年続くことになったのです。まるで堰を切ったように市場に新築マンションはあふれかえりました。

 

それでも待ち焦がれた需要が飛びつき、大量に売れたのです。バブル期に手が届かず、諦めていた人たちが潜在需要として大量に溜まっていたからです。

 

しかし、その後は次第にマンション用地の提供先がなくなり、供給数も減って行きます。

 

2013年に56,000戸台に増えたのですが、一時的な現象でした。その前後は4万戸台にとどまっており、これが新築マンションの需要の限界なのだろうと思わせました。

 

2016年から2019年の4年間は3万戸台に減ってしまいました。ここで疑問を持たれた読者もあると思いますので補足しておきます。

 

新築マンションは、売れ行きに応じて売出し戸数を調整するのが一般化しています。工事は止められないので商品在庫(売り出さない隠れ在庫)は積み上がって行くものの、「売れそうな数しか売り出さない」のです。これは業界共通の手法になっています。

 

従って、商品の供給余力を残したまま、売出しのタイミングを待っているということになります。工事は予定通りに進むので、建物が完成し入居が始まったころに、本当の売れ行きが世間の知るところとなります。

 

好調な時期は竣工までに全戸を売出し、全戸完売となるのですが、最近4年ほどの売れ行きは極端に悪化し、2019年には竣工時に6割も7割も残ってしまう物件も実は少なくない状況となったようです。

 

その昔、マンション販売は竣工時期に半分も売れ残ってしまうと、そのプロジェクトは大失敗とされ、大幅な値引き販売も辞さない、つまり失敗の烙印をみずから押して在庫処分に走るマンション業者も少なくなかったのです。売れ残せば、値引きが必須となり、加えて金利や管理費、商品管理費用やらの経費、何より広告費が予算を超えて利益がなくなってしまうため、竣工完売は至上命令でした。

 

しかし、値引き販売は、定価で購入した買い手からクレームが来るので、表立って仕掛けることもできず、売れ残りマンションの販売促進は現場の営業部隊を苦しめます。

 

時代は変わって金利はないに等しい現在、売れ残りをつくることにデベロッパーはマヒしているかのようです。竣工時点で2割も3割も残っている事態を深刻な問題には捉えていないかのような業界人の発言も耳にします。

 

●商品在庫はあるのか?

売れない物件は新たな売出しを止め、先延ばしにします。第1期の完売見通しが立ったら第2期を売り出そうと考えていても、完売見通しが立たなければ売出しができないのです。

 

売り手は、「予告広告」の名のもとに集客し、買い手候補のストックに努めますが、第1期が売れ残っていると第2期は売り出しづらいのです。下手に2期発売に踏み切れば、第1期の在庫に第2期の在庫が加わって在庫が増えてしまい、その処分に苦労することになりかねないからです。

 

結局、期待するペースで販売が進まければ、竣工時点で未販売住戸が大量に発生してしまいます。そうなると、既に購入した買い手は「高いものを買ってしまったのか」と残念に思うと同時に「このマンションは大丈夫か」と不安が頭をもたげて来ます。

 

筆者も過去に何度かご相談を受けましたが「売れないマンションを買ってしまった人」は一様に悩んでいる様子でした。「やめたいが、今の時期だと2割もの違約金を払わなければならない。どうしたものか」と。

 

筆者は「今となっては、違約金は避けられません。もっと早い時期にご相談いただければ、手付金1割の放棄だけですんだのですが・・・」というほかありませんでした。筆者にできるのは「将来これを売る時期が来たとき、どのくらい損をしてしまうかの予測をすること」くらいなのです。

 

話を戻しましょう。マンションデベロッパーは、売れ残りを多数抱えることになったら、着工もしていない新商品を売り出すことはしないのでしょうか?このような質問を寄せて来られた読者がありました。答えはこうです。

 

新規の着工をしてしまえば、新たな出費(主にゼネコンへの支払い)を余儀なくされます。新商品は買い手に新鮮な驚きを与え、ある程度は売れることでしょう。新商品を待っている買い手さんも必ず一定量はあるからです。

 

しかし、最初の数パーセントだけ売れればヨシではないので、一定時期(常識的には竣工時)までに完売できるかどうかが判断のポイントです。悪くとも80%以上は売れないといけません。予測が「半分」だったら、着工を止めるに違いありません。経営者は、販売部門の責任者と複数の関係者や外部のブレーンなどから意見を集めて着工するかどうかの判断をします。

 

危険と判断すれば、着工に踏み切ることをやめて凍結するでしょう。土地は腐らないので当分の間は空き地のままで置いておくか、駐車場などとして貸し出すかなどして着工を踏みとどまるのです。

 

一方で売り上げの確保は不可欠なので、全ての着工を休止するというわけには行きません。比較的販売リスクの小さいプロジェクトのみをスタートさせることになります。

その新規プロジェクトを成功させる取り組みと並行して、既に着工したプロジェクト、もしくは販売中のプロジェクトの早期完売に全力を挙げようとします。

 

ところで、デべロッパー各社は年間の売り上げを達成できるのでしょうか?企業経営は「売り上げ」だけではありません。利益を確保することの方が重要です。詳細の調査はしていませんが、マンション分譲主体の企業は苦境に立っているのだろうと想像できます。一方、大手デベロッパーは、多角的な経営を確立しているので、おそらくはびくともしないのではないかと思います。

 

問題は、未発売プロジェクトの価格にあるのではないかと想像します。価格が高過ぎるから売れないのであって、安くできれば問題はないのでは?そう考えてしまいがちですが、マンションの2大原価「用地費」と「建築費」は下がりそうにありません。

 

用地は既に買ってしまったので(一般的に2年分を先行取得します)、原価は下がりません。建築費はこれからの発注ですが、五輪が終われば下がるでしょうか? 詳細は割愛しますが、下がる可能性は低いと見られます。

 

商品のレベルを見直すというのはどうでしょうか? 設計のやり直し、設備の一部カットなどですが、大きな成果は望めないのです。既にコストを意識した設計で進んでいるため、これ以上は「乾いた雑巾をしぼる」か、品質を落とすほかないのです。ここでは詳しく述べませんが、最近のマンションは大半が「これ以上は落とせないレベル」までコストカットした設計になっています。

 

つまり、低価格の商品が続々と出て来る可能性は限りなくゼロに近いと見ておかなければなりません。

 

●3年待ったら価格は下がるか

マンション価格の2大原価は「用地費」と「建築費」です。ついでに言えば、」マンション分譲の粗利は20%、広告費や販売経費を引くと10%しか残らないのです。

 

値引きなしで、竣工までに完売できれば大きな売り上げと利益をデベロッパーにもたらしますが、言うまでもなく大量に売れ残ったら存亡の危機を迎えると言って過言ではありません。大手は、多角化を推進して来たので、マンション分譲の売り上げ・利益の落ち込みを様々な方法でヘッジしていますが、中小のマンション専業企業は大変です。

 

さて、マンションを買いたい人はたくさんある、首都圏では少なくとも年間に4万人以上が毎年発生すると考えても間違いではありません。しかし、価格が問題です。共働き家族が増えて来たことによって世帯単位の購買力が上昇、金利の低下で借入能力が高くなったことと合わせると、マンション価格との乖離幅は意外に小さいように見えます。

 

とはいえ、慎重に予算を組む家庭も増えているらしく、高値のマンションを前にして二の足を踏む人も少なくありません。

 

そんな家庭のご相談者から筆者に「少し待ったら価格は下がりますか」という問いが来ます。筆者は即座に「ノー」と答えます。下がる可能性はゼロではありません。しかし、下がるまで待って下がらなかったら機会損失になるでしょう。筆者はそう思います。

 

●来年の新築マンションの価格はどうなる

来年の新築マンションは新規売出しで下がる確率は、既に述べた通り低いのです。。ついでに補足しておくと、中古マンションも高値が続くことでしょう。

 

新築マンションの価格が下がるとしたら、それは公表されない値下げです。正確には個別交渉によって秘密裏に下げてくれる物件が増えるという予想です。

 

金利の低下で、デベロッパーにも借入金利のコストは利益の圧縮につながりますが、タダ同然のような低金利なので痛みは小さいのです。売れないために在庫が増え、借入金が増えれば貸し出し金融機関も警戒しますし、売り上げが減って利益も減れば企業経営に与える影響は小さくありません。

 

従って、売り主は多少の値引きをしてでも早期完売に向かうはずです。この3月は決算期ということもあり、完成しているマンションの販売は決算売り上げに直結するので、販売を促進しようとします。そのためには、値引きも辞さないはずです。

 

買手から見れば、決算期直前の完成マンションは、値引き交渉に成功するチャンスでもあるのです。一度は見送った物件でも、価格次第では買ってもよい意中の物件があるのでしたら、1-3月は10%程度の値引きが可能になる好機に当たります。

 

竣工間際、もしくは竣工から時間が経った物件は、値引き交渉のチャンスです。定価で(値引きなしで)買ってくれた先行契約者の手前、広告でも現場でもズバリの値引き額を提示して来ることはないでしょうが、既に竣工から半年以上を経過している物件なら、値引き幅も期待できます。思い切って、15%くらいの交渉をしてみてもいいでしょう。

 

新築マンションは来年も高値で売り出して来ることは間違いありません。そうせざるを得ないからです。しかし、たちまち大量に売れてしまうことはないので、新規発売の物件でも慌てて飛びつく必要はありません。最上階の角部屋など、特殊なプレミアム住戸は別として、第1期は様子を見るくらいの構えでいいはずです。

 

●価格が安いのは品質に問題があると思った方がよい

マンションデベロッパーに在籍し、企画開発の実務を経験した筆者は、用地ごとに条件が違い過ぎるので、案件ごとに生みの苦しみも味わいました。しかし、総じてマンションの商品企画は楽しい一面もありました。

 

ようやく手に入れた用地も様々な制約・条件があって、イメージした商品設計ができないことで悩んだこともありましたが、画期的な商品を開発して販売にも成功したときの喜びは、たとえようもない快感でもありました。

 

「安物買いの銭失い」ということわざがあるように、財産でもあるマンションは「安ければいい」という発想は厳に戒める必要がありました。しかし、条件の良い土地は同業者との競争になって、限度を超える高値の取得になりやすいという葛藤もありました。

 

多くのデベロッパーは、用地難に苦しみ、ようやく手に入れても商品の企画に葛藤し、最終的に建築費の交渉に苦悩して商品を世に送り出すのですが、最近数年のトレンドは、用地難と建築費の異常高騰によって、「高過ぎる価格」の前で苦悩するデベロッパーの姿が浮かび上がって来ます。

 

結局、高値でも売れるのは、特別な立地、特別な建物企画の物件に限定されてしまうのです。「取柄の少ない中途半端な物件が価格だけは世間並み」では販売は困難で、スタート当初に少し売れても、その後はぱたりと売れない状況が長く続いてしまうのです。

 

●安い部屋を狙うのも考えもの

話を真に戻しましょう。

価格が高い時期には少しでも安い部屋を選ぼうという心理が買い手に芽生えますが、安い部屋は、高い部屋との価値の差から安くしているのであり、絶対的な価値で「割安」とは言えない場合が少なくありません。

 

物件によりますが、安い部屋を狙わず、反対に条件の良い高値の住戸を狙った方が良い場合もあるのです。予算の関係があるので、「無理をしない程度に」というほかないのですが、できるだけ条件の良い部屋を選ぶ方が正解になる場合が多いのです。

 

「安い物件は買い手がつきにくいから安いのであって、価値ある物件を安く売ってくれるのではない」のです。新築マンションは価格は、住戸同士の価値の差を考慮して差異を決めています。

 

条件の良い・広い部屋は高く、条件の悪い・狭い部屋は安いのです。比較効果で安く、お得に見える住戸も、絶対価値では安くないという場合があります。中には、目玉商品的に極端とも思える割安住戸も見られますが、絶対価値としては普通で、「その住戸なりの価格に過ぎない」場合も多いのです。つまり、割安なのは錯覚に過ぎない場合が多いと言えそうです。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

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