第227回「高過ぎるマンションの行方」

スポンサードリンク

このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

次のようなお便りが届きました。

 

お便り①:「最近●●マンションを買った者です。第1期で2LDKの部屋を●●万円で購入しました。現時点で、永住の予定はありません。駅前で値崩れしにくいこと、再開発地域であること、地元●●エリアのNo.1マンションになりうること、などを考慮して第1期での購入を決断しました。

 

高いのは承知で買いましたが、第●期で1000万円も下がってしまいました。(階層差はあるのですが)・・・今後がとても不安です。

 

お便り②:別の方のお便りには次のようなものもありました。「私のように初期に高値掴みして、完成前に大幅に値下がりした場合、手付け金を放棄して同マンションの別部屋または違うマンションを購入すべきか。値下がりはあきらめて、マンションの中でも良い部屋を買ったと割り切るべきか」 ご意見頂戴できればと存じます。

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

個別のマンション購入相談のお便りの中には、高いことに驚いている。こんなに高いものを買って大丈夫か」とか、「高い状態は当分続くのか?」、「まだ上がるのか」と言った値上がりの傾向に驚き、どうすればいいのか」という戸惑いの声もたくさん見られます。

 

今日は、マンション価格の現況と今後の動向を念頭に置きながらどのような購買態度が良いのかについて筆者なりの見解を整理してみようと思います。

 

●高過ぎて売れないマンション続々登場

今のマンション市場を短い言葉で整理すると、「売れないマンション多数・売れ行きのスピード大幅ダウン」と言えましょう。

 

「売れない原因・理由は、ただただ価格が高いから」です。価格がどのように動いて来たかを、最近10年ほど前からトレースすると、次のグラフのようになります。

 


 

東京23区の10年間の新築マンションの価格の推移ですが、坪単価では以下のようになっています。

2008年:281万円➡2009年:263万円➡2010年:274万円➡2011年:268万円➡2012年:264万円➡2013年:285万円➡2014年:288万円・・・この7年間は、ほぼ横ばいでしたが、2015年:326万円➡2016年:332万円➡2017年:357万円➡2018年:376万円と高騰し、5年後の2018年は2014年比で30%ものの急騰となったのです。2019年も上昇傾向は止まっていません。

 

価格高騰は売れ行きの悪化となっています。発売初月の契約率という継続統計を見ているとよくわかるのですが、2016年1月に50%台に急落して以来、一進一退を繰り返しながら今日に至っていますが、間もなく4年になろうかという現在、売れ行き好転の兆しは見られません。

 

この間に住宅ローン金利の低下もあって、実質的に購買力が上がったので、価格の上昇分の何割かを吸収(相殺)する形となり、売れ行きのスピードダウンはあっても、何とか完売に持ち込めたという実態でもあったようです。

 

しかし、売れ行き好転というわけではないのです。高値を容認できる買い手の数は限られるからです。

 

●売れなければ企業は存続できなくなるのでは?

大手と中堅企業と分けて考える必要もあるのですが、一定期間の売れ行きが悪化して売り上げ計上金額が少なくなれば、決算数字は「売り上げ減」「利益減」となるのは必定です。

 

マンションの売り上げは「引き渡し」をもって計上するので、売れ行きが悪ければ、引き渡し戸数がずれ込み、決算上の売り上げも減ってしまいます。販売促進のために値引き策を講じれば、利益率も低下します。

 

マンション分譲を主体とするデベロッパーは、マンションの売れ行きが悪化すれば企業存続の危機に陥るのは必定です。しかし、大手デベロッパーは、多角化を進めて来たこともあって、屋台骨が揺らぐことはないようですが、分譲事業主体の「専業デベロッパー」は経営危機に陥っても不思議ではありません。

 

●売れなければ値引きしてでも・・・

マンション分譲ビジネスは多額の資金が必要です。土地代と建築費で原価の80%を占めますが、土地は銀行借り入れで取得します。一方、建築費の80%以上は売上代金を充当するのが一般的です。

 

従って、売れないマンションの場合、建築代金の支払いには新たな借り入れをしなければなりません。幸い、現状の借入金利は低いので、企業の存続を危うくするには至っていません。しかしながら、売れ行きが停滞したままでは銀行も懸念して新規貸し出しを渋りかねません。

 

大手デベロッパーや中堅デベロッパーでも親会社が別分野の大手企業で、安定もしくは順調な経営状態にあれば資金調達の懸念はないのかもしれません。

 

とはいえ、それぞれの企業には、その企業グループなりの様々な事情というものがあります。一部門または子会社の事業であっても、融資銀行が懸念を表明することがあるはずです。

 

マンションの売れ行きが悪ければ、グループ内においても軽視できなくなります。売れ行きが悪化すれば新規分譲の着手は無論、新たな用地の取得も待ったがかかるはずです。

 

●高値で買った人・適正価格で買った人。それぞれの将来

新築マンションの価格高騰は、中古マンションへ目が向けられルようになっています。中古マンション人気が顕著となって、中古マンションも値上がり傾向を見せていることは周知の事実です。

 

新築マンションの価格高騰の動きに少し遅れて中古マンションの価格も高騰の一途を辿っています。次のグラフは、その様子を如実に表しています。

 


 

 

 

●下落の可能性はないのか?

永遠の右肩上がりをあなたは信じますか? 実は、日本国民の多くが、不動産価格の永遠の高騰を信じてしまったことがありました。

 

多くの国民が、マンション価格は「高くなるので早く買おう」と動き、「上がるから買う。買うから上がる」という循環を生みました。そして、多くの国民が不動産価格は永遠に上がり続けるかのような錯覚に陥ったのです。1980年代後期から1990年代初期のことです。これを「バブル現象」と名付けました。

 

気付いたとき、マンション価格が誰も買えない高値になり、やがて国が対策に乗り出して地価とマンション価格は下落に転じました。バブルとは「泡」の意味ですから、大きくなりすぎてパンクしてしまったのです。

 

今、マンション価格は短期間に急騰して危険水域に入りかけていると言って過言ではありませんが、上昇率は30%台です。バブル期に比べると実はさほどではありません。1991年の23区の平均坪単価が@513万円、首都圏全体でも@301万円もしたというデータが筆者の手元に残っています。

 

2018年のデータが、23区平均@376万円、首都圏平均@287万円なので、バブル期の高さに驚かれる人も少なくないはずです。

 

上がり過ぎれば反動が来るということですが、現状はそこまでの異常さはないと言って過言ではありません。しかし、一段と価格が高騰すれば価格破壊が起こらないとも限りません。今後の経過を注意深く見て行かなければなりません。

 

●中古マンションの価格は下がるかも?

価格が上がり過ぎて誰も買わないとき、言い換えれば、多くの買い手が様子見に転じたとき、マンション業者は在庫を過剰に抱え込むことになり、やむをえず分譲業者の何割かが値引き販売を始めるかもしれません。

 

今のところ、その気配は感じませんが、全く兆しがないわけでもありません。低金利時代の今、デベロッパーの経営に重大な危機が迫っているようにも思えません。先述のように、大手デベロッパーもしくは大手企業の系列デベロッパーばかりになったと言って過言でないマンション業界の現状に照らすと、危機的状況は急にやって来るとは思えないのです。

 

しかし、売れないまま放置することはあり得ないので、何らかの策を講じるデベロッパーは現れるかもしれません。

 

一方、中古マンション市場は早い動きを見せるはずです。なぜなら、新築の売主と違って中古は個人が売主です。買い替えのための自宅売却なら、売れない状態を長く続けることはできないはずです。売却は、新たな買い物の資金に充当するはずですから、売却が不調だからと言って支払いを延ばし延ばしにするわけには行きません。

 

様子を見ながら価格の引き下げに動くに違いありません。

 

現状は、下げ余地のある売主が多いのも事実です。よほど窮屈な資金繰りをしていない限り、売れなければ下げる決断に踏み切るに違いありません。先に述べたように、短期間に新築マンションの価格は急騰しましたが、連動して中古も上がったのです。その市況の恩恵を得て買い替えをしようとしている人たちの自宅売却は、下げ余地も十分にあると見られます。

 

新築マンションの値下げ(値引き)は、企業存続に強く影響を与えるので、また、新築マンションの利益率は元々大きくないため、下げ余地も大きくないのです。新築マンションの価格引き下げは企業にとって重大な決断です。危機的な状況が来ない限り、値下げ期待は小さいと言わざるを得ません。

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

「下りづらい新築、市況に準じて柔軟に動く中古」とでも表現すればいいでしょうか。

2020年は大きな市場の変動がありそうにも思います。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。

 

新・マンション購入を考える

是非ご購読ください。690本以上の記事があります。

ちなみに、11月20日は第699回「綺麗に使う:を意識するとリセールに有利」です

 

ABOUTこの記事をかいた人

マンション業界の裏側を知りつくした、OBだからこその視点で切り込むマンション情報。買い手の疑問と不安を解決。マンション購入を後押しします。