こんにちは、やまちゃんです。
最近、若い女の子が小さい扇風機を持って歩いてるのを見ますが、流行ってるそうですね。火付け役である販売会社によると今年4~7月までで50万台も売り上げたそうで切っ掛けはSNSだそうです。SNS恐るべし。スムログもTwitter読者の方に拡散して頂いて大ブレイクしてくれないかなぁ。バズってくれないかなぁ~(でっかい独り言)
さて、今回のご相談です。
差出人:くら
いつも楽しく拝見させていただいております。
都心エリアにタワーマンションを所有しており、間もなく売却をしようと考えております。その際の仲介業者の選び方について、アドバイスをお願いします。
売却査定額が1億弱となり仲介手数料もかなりの額になるため、手数料割引や両手を前提に無料とする業者も候補にしているのですが、数パーセントの仲介手数料を気にするよりも大手が抱える顧客ネットワークを活用できる方がよっぽど売却価格が上がるという声もあるため、どこにするか悩んでいます。所有物件はいわゆる地域NO.1物件で指名買いも多い人気マンションとされていますが、それでも大手にお願いした方が良いものでしょうか。
質問ありがとうございます!ご回答しますね。
まず最初に断っておきますが、不動産の売却には「この方法が正しい」とか「この業者にお願いするのが正解」というものがありません。だいぶ個人的な見解であることをご了承ください。
本件、もしも私がくら様と同じ立場だとして、「仲介料無料/半額の業者」「大手仲介業者」の二者択一だとすると後者(大手)を選びます。
誤解のないようにお伝えしたいのは、手数料が無料/半額の業者をお勧めしませんという意味ではありません。手数料が安いことには道理がありますし、その決定をされる方がいても何らおかしい話じゃないです。
ただ、大手の仲介業者に依頼して高く売ってもらって、3%+6万円+消費税を満額支払った方が手残りが多いと信じているので、自分だったら回避しますね。。
(※以降の文章では、表現を簡単にするために、手数料が無料/半額の業者を「値引き業者」、また手数料の3%+「6万円」などの端数を省略して書いてます)
知り合いの話(高く売れ!)
数年前の話で恐縮ですが、私の知り合いが都内のマンションを売るときに、仲介手数料が定額(半額以下)の業者にお願いして、以下のようなことがありました。- 当初3ヶ月(仲手定額):5500万円で開始 → 売れないため順次値引き → 5000万円で成約せず3ヶ月が経過し終了。
- 続く3ヶ月(大手業者):5500万円で開始 → 2週間後に満額成約。
定額の手数料を書くと企業特定に繋がるかも知れませんので書きませんけども、ここでは仮に「手数料半額」とします。
- 前者は、もし5000万円で売れていたら手残り4915万円です。(手数料 1.5%+3万円+消費税)
- 後者は、5500万円で売れて手残り5315万円です。(手数料 3%+6万円+消費税)
知り合いは、前者の業者で売れなくてラッキーだったんです。400万円も多く手残りしました。
この事例1つ語ったところで、大手業者が有利なことにも値引き業者が不利なことにもなりませんし、またその意図もありません。
ここで言いたいことは、高く売れれば手数料の差分1.5%くらいは余裕で回収できますよ、ということです。
不動産は売れないときの価格の下げ幅が大きく5%、10%の変動は余裕であります。もちろん、売主の意思決定次第ですが。ただ、出来るだけ値下げせず高く売るために、大手の力というのはバカにできませんよ、と考えています。
このことは、くら様のご相談文にある以下意見に合致します。
数パーセントの仲介手数料を気にするよりも大手が抱える顧客ネットワークを活用できる方がよっぽど売却価格が上がるという声もある
ネット集客と囲い込み
値引き業者の話に入る前に、ちょっと目線を引いたところのご説明をします。以前、大手仲介業者の知人に聞いた話ですが、現状、個人の売主はインターネット経由で集めるのが主流で、大手だと全体の7-8割を占めるそうです。(裏を取ったわけではないので話半分でお願いします)
集客のインターネット化で力を増しているのは大手3社で、もともと知名度や信頼があり広宣費も豊富ですから、テレビCMをバンバン打ったり、チラシの新聞折込や投函で継続的に見込み客にアクセスできます。そのため見込み客から社名で検索されて集客できます。
ネット集客で最も歩留まり(=契約率)が高いのは、自ら検索して問い合わせしてきたお客です。こういった優良顧客からは良い案件を預かりやすく、専任で取れると両手で手数料を稼ぐチャンスになります。
少し前に業界の「囲い込み」体質が騒がれてお客の目が厳しくなり、今はいくぶんお行儀よくなっているかと思いますが、専任で売り物件を預かると、すぐには外部に情報を出さず販売することが可能になります。
宅建業法では、媒介契約を結んで専任で7日、専属専任で5日以内にREINSに登録しなければいけませんが、それを逆手にわざとREINSに登録せず、まず自分の顧客を徹底的に当たり商談に繋げて、未公開のまま両手仲介を成約させられると、経費もかからずビジネスとしてはとても儲かります。
仲介業者にとっては、そういった専任の未公開案件をどれだけ多く抱えるかが肝要で、物元になってしまえば(売り物件を預かってしまえば)、他社に知られず販売できる時間が得られます。
また情報公開後に買いの問い合わせが来ても「いや~、その物件は商談中ですね。。」と囲い込むことも可能です。(全部が全部ではなく社風に依存する傾向あり)
大手業者からすると、値引き業者に対しては、自分たちが得られるかも知れなかった大事な仲介手数料をダンピング販売して集客することから、良からぬ思いを持っている営業マンもいることでしょう。囲い込んで不利益を与えることもやろうと思えばできてしまいます。
こちら参考までに、ダイヤモンド社さんの「仲介業者の両手比率 試算(2018年版)」の記事から拝借しますと、
この表では2018年版と書いてますが、元データは16年度仲介実績がベースになっていること、また試算値のため数字上下があることにご注意下さい。
これを以って両手の取引比率が高い業者を批判する意図はなく、逆に私は両手比率が高い業者は優秀だと思ってます。
なぜなら囲い込みをするしない関わらず、両手比率を高めることは難しく、またルール違反でも何でもなく、会社利益が最大化されているからです。自身が売主になったときに注意する必要があるというだけです。
さて、値引き業者の【ネット集客&手数料半額】の業態は、私の知る限り2003年にはすでにありました。
もっと前からもあったのでしょうが、GoogleのAdwords広告や、YahooのOverture広告に代表される検索連動型広告が2002年に日本でリリースされて、検索ワードに応じて広告主が出稿することが出来るようになってから、この流れが加速したと理解しています。
当時は広告費もそれほど高騰していなかったこともあり、またSEO対策(検索エンジン上位表示対策)もめちゃくちゃ簡単で、ちょっとお金をかければ検索結果の上の方に自社HPを表示させて集客に繋げることが可能になりました。
私は当時、「これはすごい!インターネットの力で手数料半額が当たり前になる!これから大手業者が駆逐されるぞ!」と思いました。
でも現実には、そうなりませんでした。逆に、上に述べた通りで知名度や広宣費に勝る大手の寡占が進んでしまいました。
仲手無料/半額の業者(値引き業者)について
くら様はすでにご存知かと思いますが、スムログを読んで頂く読者の方のために簡単に説明します。一般的に売主が個人の場合(仲手無料/半額の業者が媒介)は、買主が法人か個人かによって仲介料が変わります。
1.買主が法人の場合
仲介業者は、買主(法人)に仲介料3%をもらえると、売主(個人)から仲介料をもらわなくても儲けが出ます。このため売主の仲介料をゼロに出来ます。
2.買主が個人の場合
(a)自社で買主(個人)を見つけてきた場合(両手)は、買主から1.5%もらって、売主から1.5%もらいます。
(b)他社が買主(個人)を見つけてきた場合(片手)は、売主から1.5%もらいます。
※業者によって取り方が異なる場合もあるので一例として捉えてください。
(※ 8/24追記)ツッコミ頂いたので補足しますと、売り物件を預かった値引き業者は、両手3%を狙います。売主・買主双方から1.5%ずつもらえたら計3%です。もし売主の手数料0にしようとすると買主から3%もらえないといけませんが、買主に対しても手数料半額と謳っていると両手1.5%(売主0・買主1.5%)では見合いません。買主が手数料3%払うケースは必然的に個人以外(=法人、買取再販の会社)になるため上記のようになります。一方、買主の手数料を0にして売主から3%取る業態もあります。(追記ここまで)
物元になっても、両手で3%しか手数料がもらえない、下手したら片手で1.5%しかもらえない業態って、分かりますでしょうか。
手数料を安くすれば、まだ集客できます。本当は、両手6%、片手3%を満額で欲しいんです。でも、媒介契約を取るためにやむを得ずこうする他ありません。
それでも営業活動、顧客対応、現地査定、価格交渉、ローン斡旋、契約書・重説など書類作成、重説の読み合わせ、決済など基本業務は変わりません。実態として薄利多売となり経営が苦しくなりやすいビジネスモデルです。
値引き業者が増えた背景は、集客に強い大手に優良の売り物を食われてしまい、物元になれなくなり、結果としてやむなく価格競争に突入している構図だと私は解釈しています。
参考事例として
またまた私事ですみませんが、10年ほど前まで自身で住んでいたマンション(23区内)を昨年秋に売却しました。出来るだけ高く売ってもらうために、複数の業者に来てもらってヒアリングしました。
くら様が仰せのような値引き業者にも話を聞きました。ビジネスモデルを詳しく理解していなかったため、単純に興味があったというのもあります。
手数料の話は上に書いた通りです。
その他、担当で来た営業マンへのヒアリング事項を箇条書きしますと、
- 媒介契約は専任のみ、一般媒介ではやらない
- REINSにだけ登録してPull型営業
- 新聞折り込みやポスト投函などの広告費をかけない
- スーモ、at home、Homes、Yahoo不動産などネット広告もなし
- 買い客のみネット広告で自社HPへ誘導
- 社用車を持たず電車移動で経費削減
- 事務所も雑居ビルでコストかけず経費削減
- その代わり手数料を安くして顧客に還元
- 常時100~120物件程度預かっている
- 毎月30物件程度は捌ける
- つぶれる中小の業者が多い中、うちは潰れず長く経営できている(営業年数は特定を避けるため書きませんが、あとでHPで調べたら、この年数で長いのか~という印象でした)
この話を聞いて「すごいビジネスモデルだ」と思いました。何がすごいって、確かにコスト管理を徹底して在庫もきっちり回して薄利でも潰れにくいモデルを築いているんです。
査定価格は、他の大手業者より少し高いくらいの金額を出してきました。出し値はこれで売れたら万々歳というレベルです。
価格はどの業者もREINSの成約データを根拠としますので、同等の査定が出て当然です。
そのため、査定通りに売れれば、仲手満額よりも、仲手無料/半額の方が明らかにお得であることは間違いありません。
そして同時に思ったんですよ。
、、、
、、、
、、、
売れるわけねーだろ。。。
いやまぁ、正直、やってみないと分かりませんよ。
営業マンが超絶優秀で、いいお客さんを捕まえてくるかも知れませんし、付き合いのある業者のネットワークがブリブリに強力で、優良見込み客を引っ張ってくれるかも知れません。
「手数料半額」で検索する消費者は、手数料が安いだけに物件を買い上がってくれるのかも知れません(買い上がる = より高いものを買う)。
だから、人様がこの業者を選ぶならそれで良いと思いますし、確実に仲手は安いですからお得感があります。
でもですね、自分の大事な大事な売り物件を出来るだけ高く売る目的のために、ちょっと私には専任で預ける気にはなれませんでした。
(※その時は最終的に、大手3社に一般媒介で出しました。どこか1社に専任で出さなかったのは囲い込みの機会損失リスクや両手狙いの値下げ圧力などを懸念したためです。特徴的な売れ方をしたので後日記事にしようと思います。)
この値引き業者にお願いすると、情報がREINSにしか載らない、不動産ポータルに一切出ない、紙媒体も一切なし、大手ほどのネットワークも知名度も持ち客もない、、
一体どうやったら、大手よりも高く売れるのでしょうか。
- 買主が個人だったら、直接情報に触れる機会そのものがありません。つまり仲介業者の紹介に依存します。
- 買主が業者だったら、物件を仕入れた後に転売しますから、きちっと利が乗る価格(=安価)でないと買いません。なんなら買い取り業者に直接来てもらった方が無駄な中間マージンが発生せずハッピーです。
ただし、1点分からないことがあります。
値引き業者は「手数料半額」「手数料無料」と検索した買い客をたくさん呼び込めます。大手には不可能な集客方法です。これで来客する消費者にどれほど購買力があるか、購買意思があるか、すみませんが知識不足で私には分かりませんので、過小評価しているかも知れません。
くら様のマンションが、「いわゆる地域NO.1物件で指名買いも多い人気マンション」ということで、同物件で同時に似たような部屋が売りに出されることも多々あると思います。
そういった僅差の場面で優劣を決めるのは結局のところ営業マンのガチのコミットがあるかどうかだと思います。そして、そのコミットの源泉は、悲しいかな両手取引へのモチベーションだったりします。
両手取引するために連れてくる買い客は、大手と値引き業者どちらが多く確保できるのか?
どちらなんでしょうね、、、分かりません(笑)
さて、最後に念のためフォローしておきますが、値引き業者の話は同じ業態でもやり方が異なる場合もあるでしょうし、予めご了承ください。
まとめ
不動産を高く売って手残りを多くするための戦術は本当にたくさんあります。また業者の組織力や営業マン個人の営業力、そしてこれ言っちゃオシマイですが運の要素も無視できないレベルで大きいため一概には言えません。実際、成約事例を見ると、同じマンションで似たような属性の部屋が同じ時期に売れても、坪単価が全然違うことは往々にしてあります。
もしも、値引き業者にお願いする妥当性があるとすれば、その業者(営業マン)の販売能力がとても高いと、くら様が知っている/知ったのであれば検討されてみて良いのではないかと思います。
または時間的に余裕があるなら、試しに任せてみるのも大いにアリだと思います。1~2ヶ月短期勝負でお願いしてみて、売れればラッキーくらいの気持ちで預けるのは面白いかも知れません。
なぜなら値付けや値下げは売主(くら様)が決めることだからです。
調子の良い査定額を出してきておいて、しばらくして弱気になって値下げを言って来たら断れば良いだけの話です。媒介契約は3ヶ月を待たず一方的に打ち切って乗り換えても差し支えありません。
繰り返しますが、この記事全部を通して値引き業者をお勧めしない、の意図はありません。
ここに書いたことは、過去に私はお願いしなかったという事実と、その判断をした理由と、お願いする場合のプランです。
くら様が検討される際は、当該業者がどういう売り方をするのか必ずヒアリングをされて下さい。なぜなら人件費・広告費・その他経費を圧縮できないとなかなかに難しいビジネスモデルだからです。
査定価格はいくらでも出せます。
大事なことは、その価格で売れる実力があるかどうかです。
その実力が認められるなら、手数料無料/半額はとてつもなく大きなメリットなので、大いに活用されてください。
以上、ご参考になれば幸いです^^
(2019.11 追記)こちらの記事も併せてどうぞ!
当方からのご回答は、過去にスムログに頂いた古めの質問をピックアップさせて頂いております。特定のケースについてご質問の際、その内容を一般化して多くの方に関係する内容とさせていただく場合があります。また本記事は、当方の個人的な見解・意見であり、その内容に関していかなる責を負うものではありませんので予めご了承下さい。